ただ歩くだけの ~80キロ行軍~
私の母校から、県営球場まで、約80キロ。
毎年、高校野球の県大会が始まる前に、応援団+有志が、一昼夜かけて80キロを歩き通す。名目は、甲子園出場祈願。名づけて「80キロ行軍」。
途中、仮眠はとるものの、ほとんど歩きづめ。ジャージなんて動きやすい服じゃなくって、応援団らしく学ラン。バンカラが売り物だった応援団ゆえ、足駄を履いてる無謀なヤツが、毎年一人はいた。ゴールする頃には、みんなボロボロ。足を引きずるようにして歩いていた。
女子は参加できないので、差し入れに行ったりするのだが、前の晩、団にいた友人から電話がかかってきた。
「氷、差し入れてくれないか」
膝をいためていて、ほんとはドクターストップがかかっているのだという。
そこまでして歩きたいの?と言おうとして、口をつぐんだ。歩きたいに決まってる。それが彼のプライドなのか、信念なのか、責任感なのかはわからないけど。
当日、休憩場所に氷を運んだ。彼は、物陰に隠れて膝を冷やしていた。ほかの団員にもナイショなのだという。
そんな姿を見ていて、泣きたいような気持ちになった。「やめなよ」と言いたい。でも、言えない。
「がんばってね」としか、言えなかった。
あの夏。
野球部は甲子園出場を果たし、応援団の「80キロ行軍」はNHKが取材に来て、ドキュメンタリー番組になった。
けれど、テレビカメラに映っていない、決して映せない「何か」が、あの夏にはあった。
歩いた彼らにも。野球部のヒーローたちにも。
そして、私にも。
ただ歩くだけのことなのに。
夏が来るたびに、それぞれの「80キロ行軍」が、今も鮮やかによみがえる。
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コメント
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まゆさん!きましたよー。
ふふふ。待ってたんですよー。
まゆさんがブログ始めて、私がリンクはらせてくださいって、頼むの。
うれしいなうれしいな。
>決して映せない「何か」が、あの夏にはあった。
というところ、うんうん頷きました。
その場にいた人にしかわからない「何か」。
それはそこにいた人の、特権なのかも。
でも日々実はそういう瞬間の積み重ねなんだろうなあ。
本当に何気なくても。
私にしか感じられない空気。
大事にしようと思います。
ではでは、また遊びにきますね。
投稿: のろのろ | 2005/07/04 21:48
のろのろさん、いらっしゃ~い!
初コメントです。うふふ。うれしいよん。
私もリンクはらせてもらいました。これからもよろしゅうに。
80キロ行軍ネタは、もうすでにのろのろさんには何度か語ってますが、「夜のピクニック」を読んでから、ものすごく思い出すのです。
うん、のろのろさんの言う通り、今の日々も後になって思い返せば、きっとかけがえのないものなんでしょうね。今、この瞬間はそんなことを思う余裕もないけれど。ふふふ。
投稿: まゆ | 2005/07/04 23:04