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2005/09/05

「忍ぶ川」

 小学生の頃。
 「拳銃と十五の短編」という奇妙なタイトルの本が、家にあった。
 本を読まずにいられない子供だったから、当然頁をめくってみる。
 わかるような、わからないような・・・。
 作者は三浦哲郎。

 そういえば、もっと幼い頃に、町がお祭り騒ぎになった。
 三浦哲郎という人の書いた小説が映画になって、
 この町も舞台になったのだという。
 よく遊んでいた橋のたもとに、「忍ぶ川」文学碑ができたのも、
 その頃だっただろうか。

 三浦哲郎って、この町の人なの?と尋ねる私に、
 母が教えてくれた。
 もともとは八戸の人だけど、事情があってこの町に家族がいるのだと。
 そして、二人の姉が自殺し、二人の兄が失踪したのだと。
 どうして母がそんなことを知ってるのか、驚いていると、
 全部、本に書いてあるんだよ、と言った。

 「忍ぶ川」を初めて読んだ時、私は大学生。
 作者をモデルにした主人公が、志乃という女性と出会い、結婚するまでの物語。
 あまりの感動に、涙があふれて、困った。
 (だって、本屋で立ち読みしてたから)
 
 数年後、卒論に「忍ぶ川」を選んだ。
 不幸の中で嘆くだけでなく、自らが幸せになろうとすることで周りをも幸せにしていく・・・
 そういう主人公の生き方が、単なる私小説の枠をこえて、
 読者の心をうつのだと書いた。
 
 
 三浦哲郎が「ふるさと」とした町に生まれたことが運命だったように、
 その作品に魅せられ、読みつづけている私。
 昭和を代表する名作の一つ、と信じて疑わない「忍ぶ川」だが、
 知らない人の方が多いのだろう。
 それでも、私にとっては幼い頃の思い出とともに、
 一生忘れることのできない物語であり、作家なのだ。

 
 先日、久しぶりに三浦さんの実家のある界隈を通った。
 近所に同級生の家があり、子供の頃はよく遊びに行っていたあたり。
 せつなくなるほど変わらぬたたずまいの町並みに、
 幼い日の光景がよぎった。
 
 主人公が志乃を連れ帰ったあのふるさとの物語を、
 久々に読み返してみようか。

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