記憶の中の町
三浦哲郎の「作家生活50年」記念展に行ってきた。
地元の図書館で、パネル展示だけなんだけど。
三浦哲郎の作品紹介や若き日の写真。
卒論を書くのに、こういうのを一生懸命調べたっけ。
なつかしい思いでパネルを眺めていると、
ふと目に止まったのは、昔の町の写真。
今はもうなくなってしまった風景。
私が幼い頃に架け替えられた朽ちた木の橋。
子供の頃、よく通った裏道の板塀。
崖下に川を見下ろす三浦哲郎の実家。
その対岸の川べりにあった銭湯。
私の記憶の中の風景が、
そっくりそのまま写真の中に残されている。
昭和40~50年代にタイムスリップしたような、
あまりに生々しい記憶の奔流に、
言葉も忘れて、立ちつくす私。
気づくと、涙ぐんでいた。
子供時代は、思い出したくないことの方が多い。
そう思っていた。
こんなに懐かしさを感じるなんて・・・。
ふるさとは、さらさらとした粉雪であった。
三浦哲郎が「忍ぶ川」でそう描写した町。
私の心の中のふるさとの町は、
きっと時間がたっても、色あせることがない。
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