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2010/09/01

拝啓 三浦哲郎さま

今年の夏は岩手も猛暑続きで、県北の一戸町でも連日の真夏日でした。
涼を求めつつ馬淵川でジャッコ釣りをする人の姿も、多く見かけました。

一週間ほど前、朝日新聞の記事を読みました。
「久しぶりに小説を書く意欲が戻ってきた」というお話でした。
涙が出るほど嬉しかったです。
お体を悪くされてから、小説を発表されていなかったようなので、
もう新作を読むことはないのかなと、寂しく思っていたからです。

今年、久しぶりに随筆集が出版され、それだけでもじゅうぶん嬉しかったのですが、
また小説を書くというお話は、本当に嬉しくて・・・。
しかも、『白夜を旅する人々』の続編にあたる物語を、というお話でした。
ああ、やはり・・・と思ったのです。

『白夜~』は完結していない、と、ずっと思っていました。
ただ、あの後を書くとなれば、唯一残ったお姉さまについて触れなければなりません。
遠い町で、一人で暮らしているお姉さまのことを慮って、二の足を踏んでいらしたのではないでしょうか。
そのお姉さまは強く生き、人生の見事な幕引きをなさいました。
それを、ぜひ書いていただきたいと、私も強く思いました。
そうすることで、三浦文学は完結するのではないか、と。

その一週間後の訃報でした。

子供の頃から、身近に「三浦哲郎の本」がありました。
ご家族の住んだお家のあたりは、遊び場の一つでした。
「忍ぶ川」の文学碑も、何度行ったかわかりません。
啄木よりも、賢治よりも、近しい気がする「ふるさとの作家」だったのです。
わけがわからない小学生の頃から、親が読んでいる「三浦哲郎の本」を読み、
卒論で「忍ぶ川」を選び、ほぼすべての作品を読み漁り・・・。

そうして親しんできた三浦さんの訃報は、一番聞きたくない知らせでした。

私小説作家と言われますが、いわゆる「自伝的作品」の類は、
生きていくための杖のようなものだったのではないでしょうか。
ささやかに、力強く生きている人間への深い愛情と共感に満ちた作品群は、
露悪的な詩小説とは異なり、読む人の心をあたたかい愛情で満たしてくれるものです。

三浦さんがこの世に遺してくださったそれらの作品を、
大切に大切に、読み継いでいきたいと思います。
もう新作が読めないことが、ただただ残念ですが。

天国では、なつかしいご両親や、お兄さま・お姉さまたちと再会できているでしょうか。
ブルドックのカポネとも。


もともと面識もない、ただの読者ですので、お別れの言葉は言いません。
作品を読めば、いつでも三浦さんに会えますから。

どうか、安らかに。
天国は、地上のような炎暑ではないことを祈っています。

                               敬具

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