浮世女房洒落日記
1868「浮世女房洒落日記」 木内昇 ソニーマガジンズ ★★★★
古い洋館の屋根裏に置かれた木箱。その中から出てきたのは、江戸時代の日記の現代語訳。その著者お葛は神田にある小間物屋の女房で、二人の子をもつ母。二十七歳のお葛の日常とは・・・。
以前お薦めされていた一冊、ようやく読みました。いやあ、おもしろかったです。
お葛の日常は、ごくごく普通の江戸の女房そのもの。生粋の江戸っ子を夫にもち、小間物屋を切り回す日々。生活はカツカツだけれど、それはいずこも同じ。火消目当てに火事見物にはせ参じたり、隣の扇子屋の娘おさえの恋路にやきもきしたり。ご近所とのつきあいや、花見、花火見物、芝居見物、神田祭の大イベント。子供の成長に一喜一憂し、亭主との喧嘩では何が何でもやりこめないと気が済まず・・・。
ものすごく共感できるお葛の心情。それに、江戸時代ならではの風習が描写されていて、「時代が変わっても、人の感じ方は大きく変化するわけではない」ということを、強く感じます。
お葛は「笑い」に対してこだわりがあり、何度か記述があるのですが、そこがとても印象的でした。あきらめて、なげやりな笑いではなく、生きていくために大切な笑い。実際、お葛と亭主とのやりとりなんか、こちらも笑ってしまうのですが(本人たちは大真面目)。
この日記は、ある一年の元日から大晦日まで。とんでもない出来事は起こらないけれど、お葛にとってはそれなりに大きな出来事があったり、ささいなことどもは絶えず起こり・・・。世の中の動きなんて全く無関係、日々の暮らし、自分の目の届く世界が全てのお葛ですが、毎日の生活というのはそういうものかもしれません。


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