2018年6月19日 (火)

源氏物語の時代

2759「源氏物語の時代 一条天皇と后たちのものがたり」 山本淳子   朝日選書   ★★★★★

藤原道長が権勢をふるった、一条天皇の御世。「枕草子」や「源氏物語」など、千年以上読み継がれる文学作品が生まれた背景には、何があったのか。数々の史料をもとに、一条天皇と、定子・彰子という二人の「キサキ」たちとの関係を軸に、この時代を読み解く。

「枕草子のたくらみ」があまりにもおもしろかったので、こちらにもチャレンジ。副題に「ものがたり」とありますが、史実に基づいた記述なのですが、難しくない。まさに、物語を読んでいるように、スイスイ読めます。そして、読み応えあります。

これは、一条天皇の時代にスポットを当て、天皇と皇后・定子との悲恋(と言っていいでしょう)と、それがこの時代にどのような影響を与えたのか、さらに「枕草子」「源氏物語」にどのような影響を与えたのかを分析しています。

人物を中心に、出来事を順に追っていく記述で、実にわかりやすかったです。特に、「枕草子のたくらみ」ではちょっとわかりにくかった定子出家の顛末と、その後の扱いについて、これを読んでよくわかりました。本当に、物語のような人生・・・。また、一条天皇の先代・花山天皇のことも説明されていて、助かりました。いや、定子の兄・伊周が失脚するきっかけになる事件に登場しますが、そのわりにどんな人物だか知らなかったので。読んでドン引きしましたけど(苦笑)

おもしろかったのは、一条・定子の激しくも悲しい恋の対極にいた中宮・彰子が、徐々に存在感を増し、やがて天皇家の「母后」として力を発揮する、その意外な人生の道のりでした。定子とは何から何まで対照的な彰子とそのサロン(むしろ、定子サロンが型破りだった)。その中心で、彰子は何を思っていたのでしょう。

私は、彰子という人は、何不自由ない生い立ちゆえ、堂々とした女王様然とした女性を想像していました。ところが、浮かび上がってきたのは、全く違う姿。父は時の権力者、母は皇族の血をひくという、キサキにうってつけのお姫様。それゆえに失敗を極度に恐れ、感情をあらわにすることもない、おもしろみに欠ける気性。明るく、かろやかで、機知に富んだ定子とは、全く逆のベクトルをもつ彰子は、どんな思いで一条天皇に接していたのでしょうか。

彰子が「変化」していく過程は、これまた物語のようにおもしろいのですが、そこに紫式部が関わっていたこともまた、実に興味深い。紫式部の深い教養と知識が、彰子の人間としての底力を鍛えたのではないかと思えるのです。

そして、道長に翻弄されたかのように思われていた一条天皇が、己の信念に基づき、国を安んじるために精一杯努力し続けた名君であったというのも、意外でした。

その時代に生まれ、己の役割を果たし、懸命に生きた人たち。その生き方が、同じ時代の人たちに心を動かし、生まれた物語が千年以上読み継がれ、今の私たちがまた心揺さぶられている。その広大な時間の流れに圧倒されつつ、古典のもつ重みを改めて感じるのでした。

 

2018年6月17日 (日)

宇喜多の楽土

2758「宇喜多の楽土」 木下昌輝   文藝春秋   ★★★★

戦国の梟雄・宇喜多直家から備前備中美作五十七万石を受け継いだ秀家。それは、己の誇りを捨てて、領民の安寧を守るための戦いの始まりでもあった。時の権力者・秀吉の覚えもめでたく、足元を着々と固めるかに見えた秀家だが、家中はおさまることがなく、さらに秀吉に死期が近づき・・・。果たして、秀家は領国の民を守ることができるのか。

「宇喜多の捨て嫁」の主人公・直家の嫡男・秀家を主人公にした長編。秀家が家督を継ぐところから、関ヶ原、その後までを描きます。

宇喜多秀家がなぜ五大老なのか、豊臣家とどういう関わりがあったのか、よくわかっていなかったのです。大河ドラマ「真田丸」での宇喜多秀家は太閤に忠義一筋の熱血漢で、なかなかうっとうしい存在でした(笑) 関ヶ原には西軍として活躍したこと、家中が不安定だったこと、関ヶ原で負け、逃げ回ったのちに八丈島に配流となったこと・・・などは、その後読んだ司馬良太郎「関ヶ原」で仕入れた知識。

さて、この物語は、秀家の少年時代から始まります。気持ちの優しい秀家は、領主となることに不安を抱きつつも、父・直家が領民のために干拓事業を行っているのを知り、それを受け継ぐことを決意する。「民のために命をかける」・・・父との約束を胸に歩みだした秀家。しかし、その道のりは険しいものでした。

一つにまとまらぬ家臣団。本能寺の変から豊臣政権、そして関ヶ原へという激動の時代。秀家は自分自身の誇りよりも、民のためにという一念のもと、ひたすら耐え抜きます。

単に秀吉に気に入られたから出世したということではなく、すさまじい駆け引きのうちに、綱渡りのように中央政界で五大老となり、領国経営に命がけであたり・・・。それでも、彼の人生は思うままにいくことなど、ほとんどなかったのです。

数々のエピソードが断片的に感じられたのがちょっと気になりましたが、「自分らしく生きること」の意味を考えさせられました。修羅場をくぐってきた秀家ですが、一番心に残ったのは、八丈島でのラストシーンでした。

2018年6月14日 (木)

たゆたえども沈まず

2757「たゆたえども沈まず」 原田マハ   幻冬舎   ★★★★

パリに行きたい。19世紀末、その夢をかなえてパリにやってきた加納重吉。日本での先輩・林忠正が助手として呼び寄せてくれたのだ。林は、パリで画商として活躍していた。折も折、空前のジャポニズムのブームにわくパリで、林と重吉は、浮世絵の販売で確固たる地位を築いていく。彼らは、浮世絵を通して、画廊の支配人・テオドルス・ファン・ゴッホと兄のフィンセントと知り合う。「画家の卵」のフィンセントを支えるテオと、重吉は急速に親しくなっていくが・・・。

原田マハさんアートもの新作、やっと読めました! なんたって、ゴッホ! 表紙が大好きな「星月夜」! ゴッホをどんなふうに描いてくれるんだろうと、楽しみで仕方ありませんでした。

意外だったのは、林忠正と加納重吉という、二人の日本人が絡んでくること。しかも、フィンセントとテオの兄弟にとって、林たちはなくてなならない存在になっていくのです。

まだまだ日本人が侮蔑の対象であった時代、花の都パリで商売をするのは並大抵の苦労ではなかったでしょう。それをやりとげた林忠正という人物(参考文献を見るに、実在したのですね)の凛とした生き方が、新しいアートの芽を育み、ゴッホという大樹になるまでに育てたのだという構成が、実に見事でした。

もちろん、フィンセントと双生児のように魂を分け合った弟・テオのことも、存分に描かれています。テオなくしては、ゴッホは生まれなかったでしょう。

そして、林の助手でありながら、兄弟の良き友人となった重吉の視点は、私たち読者のそれに最も近く、ごく自然に19世紀のパリに、新しいアートの世界に、私たちを誘ってくれます。

最後まで読み終えて、もう一度冒頭の場面に戻ると、あの老人が何者だったのかがわかります。そして、彼が持っていたあの手紙。いったいいつ、あの手紙は書かれたのでしょう。日付を頼りに本文に戻っても、見つけられなかったのですが・・・。そんなふうにして、彼は兄弟を励まし、支えていたのだと、胸が熱くなりました。

2018年6月12日 (火)

騙し絵の牙

2756「騙し絵の牙」 塩田武士   KADOKAWA   ★★★

大手出版社の雑誌編集長をつとめる速水。小説に対する愛情が深く、文芸編集者時代から、作家たちの信頼を得てきた。しかし、昨今の出版不況のおりから、雑誌の廃刊が現実に。雑誌の存続を楯に、会社の派閥争いに巻き込まれていく速水だったが・・・。

大泉洋をあて書きし、本の表紙から章扉にいたるまで、大泉洋の写真が飾るという、珍しい企画もの。もちろん、主人公・速水輝也は、大泉洋そのまんま(笑) 彼が笑い、話し、涙している場面がありありと脳裏に浮かびます。

実は、以前、大泉洋という役者さんが苦手で。笑っていても、腹にいちもつあるような。人当たりがいいけれど、何か恐ろしいものを隠し持っているような。そんな怖さを感じる役者さんだったので。いろいろな作品を見てわかってきたのは、この人はその怖さが魅力なのだということ。人間のもつ二面性を、実に鮮やかに演じられる稀有な役者さんだということ。以来、すっかりファンなのです。

この物語も、そんな二面性を実にうまく生かした話。これ、大泉洋だから、妙な説得力が生まれるのです。そうでなかったら、意外に陳腐な社会小説で終わったかもしれません。仕事でも、家庭でも、八方塞りになっていく速水の姿は、読んでいて本当につらかったのですが・・・。

最終章で「まさか」の。ほんと、洋ちゃんの持ち味を生かしきってますねえ。参りました。

速水以外の登場人物、どの役者さんだったらはまるかなあと想像して読むのも楽しかったです。

2018年6月10日 (日)

文豪たちの友情

2755「文豪たちの友情」 石井千湖   立東舎   ★★★

一筋縄ではいかない「文豪」たちの人間関係とは? 明治・大正・昭和の文壇を彩った彼らの友情にスポットをあてた文学の入門書(?)。

私は、どうも「作家」という人たちの生き方に興味があるようで。大学の卒論を書くときも、担当教官に「あなたがやりたいのは作家論なんだね。でも、卒論では無理だから、作品一つにしぼって、作品論をやりなさい」と言われた記憶が。

びっくりエピソードに事欠かない彼らの生態もさることながら、なぜこんな作品を書こうと思ったのか、どこからこの物語は生まれてきたのか、そういう点にものすごく興味をもって、そこから「文学」なるものに入っていったのです。

なので、こういう本は大好物(笑)

「第一章 永遠のニコイチ 自他ともに認める親友」「第二章 早すぎる別れ 夭逝した文豪と友人たち」「第三章 愛憎入り交じる関係 ケンカするほど仲が良い二人」という構成で、夏目漱石と正岡子規、芥川龍之介と菊池寛、太宰治と坂口安吾など、有名な文豪たちが取り上げられています。「二人」の関係に限定するのでなく、さまざまな人間関係に触れているので、意外な接点があることがわかります。

梶井基次郎のこととか、国木田独歩とか、あまり知らない話もあって、興味深かったです。徳田秋声と泉鏡花の確執もよく知らず、以前、金沢の記念館に行ったときに、「ふうん?」と思っていたのが、やっと理解できました。

それにしても、佐藤春夫! いろんなところに名前が出てくるなあと思ったら、筆者あとがきを読んで、やっぱり!と。読んだことないのですけれど、がぜん気になってきました。夫の本棚の文学全集の中に、佐藤春夫の巻もあるのですよねえ。読むべきかなあ。

2018年6月 5日 (火)

あやかし草紙

2754「あやかし草紙」 宮部みゆき   角川書店   ★★★★★

三島屋の姪・おちかが、客人の話を聞き、「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」にする風変わりな百物語を続けて三年。最近では三島屋の次男・富次郎も聞き手に加わるようになった。おちかの心の傷は確実に癒え、そして新しい道が・・・。

「三島屋変調百物語 伍之続」は、「開けずの間」「だんまり姫」「面の家」「あやかし草紙」「金目の猫」の5話。そして、シリーズ第1期完結篇!

第1話の「開けずの間」がとにかく怖くて。人ならば誰もが抱く望み。願い。その思いの強さと、人の心の弱みにつけこむ「神」の恐ろしさ。誰も幸せにならないその顛末に恐怖を感じるのは、誰しもその「魔」に魅入られてしまう可能性を、自分の中に感じるからでしょう。

第2話「だんまり姫」は、亡者を呼ぶ「もんも声」をもって生まれたために、故郷の村にいられなくなったおせいの話。さまざまなゆくたてがあって、お城のお姫様にお仕えすることになったおせいが出会った、子どもの亡者。その子がなぜお城にとらわれているのか、なぜ死なねばならなかったのか。

終盤は、とにかく泣けてしかたなかったです。その子が死んだのは、あまりにも理不尽な理由からでしたし、幼いながらにそれを受け入れるしかなかったのはあまりにも哀れでした。そして、おせいの活躍で、ようやく広い世界に解き放たれたその子が望んだことは・・・。こんなにつらい目に遭っても、誰かのためになろうとする。なんとけなげなことか。

さて、つらい事件に心を凍らせて、江戸の三島屋で暮らすことになったおちかですが、あれから三年。変わり百物語を通して、少しずつ、少しずつ、心を覆っていた氷も解け、自分の人生を生きることを考えてもいいような心持ちになってきました。おちかが巻き込まれた事件は消えてなくなりはしないし、おちかが故郷に帰ることはできないだろう。それでも、おちかも歩き出してもいいのだ、と。

おちかを受け止め、守ってきた三島屋の面々。おちかを案じながら、周囲の冷たい視線に耐え、故郷の宿場町での商いを続けてきた両親と兄。皆々の愛情に背を押され、おちかはとうとう新しい人生へと踏み出します。

そうなるか!と、ちょっと驚きましたが、おちかたちの幸せな様子は、こちらまで涙が・・・。ここまでおちかが経験したすべてのことが、一つ一つ血肉となって、おちかを大人にしてきたんだなあ、と感無量でした。なるほど、第一期、見事な幕引きでございました。

さてさて、第二期はどうなるのか? おちかから百物語を引き継いだあの方が、聞き手となるのでしょうが・・・。おちかの再登場はあるのかな。今後が楽しみです。

2018年6月 3日 (日)

捨てる

2753「捨てる」 アミの会(仮)   文藝春秋   ★★★★

女性作家によるアンソロジー集団「アミの会(仮)」による、書き下ろしアンソロジー第1弾。

順番が前後しましたが、ようやく第1弾にたどりつきました。

大崎梢「箱の中身は」、松村比呂美「蜜腺」、福田和代「捨ててもたっていいですか?」、篠田真由美「forget me not」、光原百合「四つの掌編  戻る人形 ツバメたち バー・スイートメモりーへようこそ」、新津きよみ「お守り」、永嶋恵美「ババ抜き」、近藤史恵「幸せのお手本」、柴田よしき「花子さんと、捨てられた白い花の冒険」

テーマが「捨てる」。どんなふうに料理してくるのかなあと思ったら、けっこうダイレクトに「捨てる」話が多かったかな、と。

一番インパクトがあったのは、松村比呂美「蜜腺」。梓の夫は、保険金のために自殺した。その原因になった姑に、毎晩夕飯を作っている梓は・・・。姑の人でなしっぷりもすごいですが、梓が考えた「弔い」というのが、なんとも(苦笑) ちょっとトラウマになりそうな話でした。

どの話もおもしろく、充実したアンソロジーでした。個人的には新津きよみ「お守り」、柴田よしき「花子さんと~」が好きかな。

会員やゲストも回を追うごとに増えていって、毎回楽しみな「アミの回(仮)」のアンソロジー。今後もぜひ続けてほしいものです。

2018年5月31日 (木)

春を背負って

2752「春を背負って」 笹本稜平   文藝春秋   ★★★★

一流会社での研究職を辞め、亡父から奥秩父の小さな山小屋を引き継いだ長嶺亨。周囲は驚いたが、亨自身はようやく生きがいを見出したような気持ちでいた。父の後輩・ゴロさんと共に山小屋経営に取り組んで四年。どうにか軌道に乗ったと感じた矢先、ゴロさんを訪ねてきたのは・・・。

「春を背負って」「花泥棒」「野晒し」「小屋仕舞い」「擬似好天」「荷揚げ日和」の6編からなる連作短編。奥秩父の小さな山小屋・梓小屋の若き小屋主・亨を主人公に、山の四季とそこで起こった出来事を描いたもの。

以前、「サイド・ストーリーズ」という番外編だけを集めた短編集で、この作品のスピンアウトを読んで、興味をもったのでした。山は門外漢だし、登山はする気もないですが、山の小説は好きなんですよねえ。

エリートだったのに人生に行き詰ってしまい、父の死をきっかけに山小屋を引き継いだ亨。そんな彼の前に現れたゴロさん。年の離れた二人が阿吽の呼吸で仕事に、事件に、対処していく様子はとても心地よいし、途中から美由紀という女性もそこに加わって、梓小屋は最強の布陣となります。

とはいえ、思いもかけない出来事に見舞われ、その中で亨は思い悩むこともあるわけですが・・・。

生と死に直面する出来事が多く、身につまされることが多かったです。

ゴロさんが病に倒れる「小屋仕舞い」と、冬山での「擬似好天」が印象的でした。

2018年5月27日 (日)

長く高い壁

2751「長く高い壁」 浅田次郎   角川書店   ★★★

1938年。流行探偵作家の小柳逸馬は、従軍作家として北京に派遣されていた。ある日突然、万里の長城・張飛嶺へと派遣される。守備隊の兵士十名が全員死亡した事件の調査が目的であるらしい。検閲班長の川津中尉とともに、調査にあたる小柳だったが、軍隊ゆえの「真理」に振り回される。果たして戦死か、殺人事件か。なぜ、作家の小泉に白羽の矢が立ったのか。彼が見出した「真実」とは。

浅田次郎の推理小説?と、ちょっと意外な感じもしましたが、初期の「日輪の遺産」なんかは、ミステリ仕立てでもありました。

前線で、分隊の全員が死亡したという事件。ゲリラとの戦闘による戦死かと思われたが、どうやらそうではないらしい。では、誰が、なぜ、どうやって任務に当たっている兵士を10人も殺害したのか。そんな奇妙な「戦場での事件(?)」を解き明かすのが、憲兵でも警察でもなく、単に探偵小説を書いている、売れっ子作家の小柳逸馬という、これまた風変わりな設定。

幸か不幸か軍隊に縁がない生き方をしてきた小泉は、軍隊の論理が理解できないのですが、お目付け役(というか、本人は小泉の助手のつもり)の川津中尉や、現地憲兵隊の小田島曹長の手助けのもと、徐々に真相に近づいていき・・・。

軍隊の階級や、価値観、独特の論理など、今まで漠然と知ったつもりになっていましたが、改めて「そうだったのか」ということがたくさんありました。

ただ、帯にあった「軍人にとっての戦争」とは何か、わかったような、わからないような・・・。

動機は理解できるのですが、その結果としての行動が彼にとっての「戦争」というのが、もう一つ腑に落ちませんでした。うーん。私の読み方が浅かったかなあ。

相変わらず、語りの文章は上手いですが、正直、「またか」と思うところもあり。うーん。

2018年5月20日 (日)

RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴

2750「RDG レッドデータガール 氷の靴 ガラスの靴」 荻原規子   角川書店

「RDG」のその後・・・。泉水子と深行は何事もなかったかのように学園に戻ってきた。二人のあまりの変わらなさに、真響は苛立つ。そんな真響のもとに、従兄弟の克巳が現れる。真響の婚約者に名乗りをあげる克巳に、動揺する真響だったが・・・。

「RDG」のスピンオフ集。

「影絵芝居 相楽深行・中三の初夏」「九月の転校生 相楽深行・中三の秋」「相楽くんは忙しい 相楽深行・高一の秋」の短編三篇と、「氷の靴 ガラスの靴 宗田真響・高一の冬」の中編一篇。

泉水子視点ではスーパー同級生の深行と真響が、それぞれの視点で紡ぐ物語は、とってもおもしろかったです。本編読んで、だいぶ経ってるからな~、忘れちゃったかな~、と不安でしたが、読んでいくうちに思い出しました。

深行が、なんだかんだ言って、泉水子をめちゃくちゃ意識しているのがかわいかったし(笑) 本編では魅力的だったけれど、いまいちつかみきれなかった感のある真響も、なんだかようやく理解できた気がしました。

「あとがき」で、荻原さんが、泉水子の友人には、ドラマの主人公になれる背景をもっていたほしかったと書いているのを読んで、はっとしました。たしかに、よくできた物語って、そうなんですよね。物語のために登場人物がつくられるのではなく、それぞれが生きていて、その一場面を切り取ったのがこのお話ですよ、という感じ。私が好きなのは、そういう物語なのだなあと、実感しました。

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