2017年6月12日 (月)

おおあたり

2590「おおあたり」 畠中恵   新潮社   ★★★

相変わらず病弱な若だんなだけれど、相変わらずもめごとには巻き込まれて・・・。シリーズ第15作。

「おおあたり」「長崎屋の怪談」「はてはて」「あいしょう」「暁を覚えず」の5話。今回は、いろんな「大当たり」が描かれます。

大妖おぎんの命によって、一太郎のもとにつかわされた若き日(?)の佐助と仁吉の話「あいしょう」と、若だんながなんとか仕事に行こうとする「暁を覚えず」がよかったです。

しかし、若だんなの幼なじみ・栄吉の作るあんこって、いったいどんな味がするんでしょうねえ。妖たちが気絶するって(笑)

2017年6月10日 (土)

さよならクリームソーダ

2589「さよならクリームソーダ」 額賀澪   文藝春秋   ★★★

美大に合格した寺脇友親は、仕送りを断って、自活していた・・・はずだったが、バイト料の払い込みが遅く、すきっ腹を抱えていたところを、同じアパートに住む先輩・柚木若菜に救われる。四回生で、ずば抜けた才能をもつ若菜は、人当たりもいいが、どこか人に心を許さないような雰囲気をもっていた。一方、友親も、人には言えない悩みを抱えていて・・・。

美大を舞台にした青春もの。いろんな場面で「色」のイメージがあふれています。それから、尾崎豊。私が尾崎をよく聴いていたのは、高校から大学にかけてだったので(年がバレる)、懐かしい気分で読みました。

親の再婚、新しい家族、という状況で、いい子で居続けようとした友親と、いい子でいることをやめた若菜。単純に言えばそういう構図なんですが、それぞれにいろんな人間関係が絡んできて、二人とも苦しんでいます。さらに、若菜の方は大きな喪失感を抱えていて・・・。

若い頃の不器用さとか、みっともなさとか、イタイんだけど、その当時しか感じられないようなまっすぐさとか・・・まぶしい世界でした。

2017年6月 6日 (火)

バッタを倒しにアフリカへ

2589「バッタを倒しにアフリカへ」 前野ウルド浩太郎   光文社新書   ★★★★

アフリカでのバッタ被害を食い止めるために、バッタ博士はモーリタニアへ向かった。それは、「修羅への道」の始まりだった。バッタ博士による「科学冒険就職ノンフィクション」。

いやあ、本来なら手に取らないタイプの本です。昆虫、そんなに興味ないし(どちらかというと苦手)。科学系の話には頭がついていかないし。だいたい、表紙と題名のインパクトがすごすぎるし。

でも、「おもしろい!」と評判なので(なかには「泣ける!」という感想もちらほら・・・)、じゃあ読んでみようかと買ってきました。

いきなり「まえがき」から笑ってしまいました。バッタの研究しすぎて、バッタアレルギーになったバッタ博士って・・・。そして、夢が「バッタに食べられたい」って!

ポスドク(ポスト・ドクター)という不安定な立場で、単身モーリタニアに渡り、サバクトビバッタのフィールド研究をしようと決意した筆者。勝手がわからぬアフリカの地で、現地の研究所のババ所長や、ドライバーである相棒ティジャニたちに助けられながら、砂漠へと飛び込んでいく。

自然のままならなさ。現地の人たちとの交流。そして、何よりバッタとの邂逅。昆虫学者という専門家ながら、平易かつユーモラスな文章で語られるそれらに、すっかり魅了されました。(なぜ、そんな文章を書くようになったのかは、後半を読めばわかります)

そして、すさまじい就職活動。京都大学白眉プロジェクトの面接でのエピソードには笑ってしまったり、思わず涙したり。

とにかく、好きなことをひたすら突き詰めて、まっすぐに突っ走ってきたその生き方に、賞賛の拍手を送りたくなります。

ほんと、これ、いろんな人に読んでほしい! ただ、昆虫が苦手な人(特にバッタ)は、写真けっこうあるので、注意して下さいませ。

2017年6月 4日 (日)

雨利終活写真館

2588「雨利終活写真館」 芦沢央   小学館   ★★★

祖母の遺言状をめぐり、生前に遺影を撮影した写真館を訪れたハナ。そこには、一風変わった人たちがいて・・・。

「今だけのあの子」がとってもよかったので、図書館で借りてきました。が・・・期待値が高すぎたかな。

4つのエピソードから成る物語。巣鴨にある、生前遺影の撮影をする雨利写真館。祖母の遺言状の謎を解くきっかけをもらったハナは、そこで働くことに。奇妙な依頼の謎を一つ一つ解き明かしていく過程で、傷ついていたハナの心も前を向き始め・・・という物語。

それぞれ、日常の謎ミステリとしておもしろかったのですが、キーマンであるべきカメラマンの雨利の影が薄かったのが残念でした。それに、なぜかハナにいまいち共感できなかったのも痛かったです。

2017年6月 3日 (土)

夜行

2587「夜行」 森見登美彦   小学館   ★★★★

10年前の夜、英会話スクールの仲間6人で、「鞍馬の火祭」に出かけた大橋たち。そこで、仲間の一人、長谷川さんは消えてしまった。10年後、5人で再び火祭を訪れた大橋たちは・・・。

久しぶりの森見さんは、今までとは違った幻想世界へ誘ってくれました。

忽然と消えてしまった長谷川さん。10年ぶりに集まった仲間が語る物語。そこに現れる岸田道生という画家の連作「夜行」。奇妙なその銅版画に導かれるように、大橋たちはこの世ならぬ世界を旅する。

今までの森美作品の多くは、主人公の(あるいは作者の)脳内の妄想が爆発するような世界が多く、その熱量もすさまじいものがありました(←ほめてる)。

でも、この作品は、静謐でもの悲しく、ノスタルジーも感じさせる。今までの爆発的な熱を水面下に潜め、淡々と物語が進みます。しかし、はらんだ狂気は少しずつ読者をとらえていき、いつのまにか、自分も「夜行」の世界に囚われたような気分にさせられるのです。

森見さんの新しい一面を見たような気がする物語でした。

2017年6月 1日 (木)

ヒア・カムズ・ザ・サン 東京バンドワゴン

2586「ヒア・カムズ・ザ・サン 東京バンドワゴン」 小路幸也   集英社文庫   ★★★★

堀田家の面々は相も変わらず元気いっぱい。奇妙な事件が持ち込まれるのも相変わらず。そして、研人の高校受験もせまってきて・・・。

シリーズ10作目です。

登場人物がどんどん増えていって、覚えるのも大変になってきました(笑) でも、その辺のおさらいもうまくやってくれるので、安心して読めます。

何かしら事件が起こり、すったもんだしたあげく、最後はなんとかおさまるとこにおさまって・・・というパターンだとわかっているのですが、いいんですよね、これが。何が起こっても、堀田家の面々が大事にしているのは、「人の心」。手助けをしたり、忠告をしたりはするけれど、相手の心を力づくで動かそうなんてしない。その辺が、すごく好きです。「LOVEだねえ」という我南人のきめ台詞が、最近腑に落ちるようになってきました。

このシリーズを読み始めたのは、私の人生で1、2を争うつらいことがあったときで、今でも読んでいるとそのときのことを思い出して、ちょっとつらくなることもあります。でも、堀田家の人たちに、励まされてるような気になるのも事実。生きていれば思うに任せないことは当然あるけれど、生きていればいいこともあるさと思えるのです。

2017年5月28日 (日)

眠れない夜は体を脱いで

2585「眠れない夜は体を脱いで」 彩瀬まる   徳間書店   ★★★★

「あなたの手の写真をアップして」・・・掲示板でのそんな声に集まったさまざまな手の写真。そんな「手」の持ち主たちは、何を思っているのだろうか。

この本を読んだ人は、本と自分の手の写真をあげる・・・発刊からまもなく、ツイッターでそういう投稿が続いたことがあって、何?と思っていたのですが、そういうことでしたか。私は、自分の手は大嫌いなので、写真をあげるのは絶対嫌なのですが。

でも、「自分の手が嫌い」だけでなくて、自分のこういうところがどうしても好きになれない。あるいは、どこか世の中になじめない。生きづらい。そんなふうに感じている人は、意外に多いのかもしれない・・・と、これを読んで感じました。

「こうあるべき」というスタンダード。いつのまにかそう決められている価値観。そこからはみだしている自分を持て余していたり、あるいは生きていくためにイレギュラーな自分を封印していたり。

なんというか・・・ああ、私だけじゃないんだな、とホッとしました。そして、彩瀬さんは、ずっと「生きにくさ」を抱えた人たちを描いてきたんだなあ、と。

「小鳥の爪先」」「あざが薄れること」「マリアを愛する」「鮮やかな熱病」「真夜中のストーリー」の5編。おすすめです。

2017年5月27日 (土)

マカロンはマカロン

2584「マカロンはマカロン」 近藤史恵   東京創元社   ★★★★

フレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マルは、三舟シェフ以下四人のスタッフで切り盛りする小さなお店。今日もまた、不思議な「謎」がお店に持ち込まれて・・・。

このシリーズ、前作で完結したかと思っていたので、続刊が出ると聞いたときは、すごくうれしかったのです。ようやく読めました。

今回は、8つの「謎」を三舟シェフが解き明かします。

いわゆる「日常の謎」系短編集で、一つ一つの「謎」は大きな事件にならないものがほとんどなのですが、当事者の抱えているものはけっこう重かったりして、読み応えありました。

そして、とにかく「パ・マル」の雰囲気と、おいしそうな料理がたまりません。今回は、三舟シェフの変人ぶりはちょっと影を潜めた感じでしたが・・・。

できることなら、さらに続けて欲しいシリーズです。

2017年5月25日 (木)

バベル九朔

2583「バベル九朔」 万城目学   角川書店   ★★★

雑居ビルの管理人をしながら作家を目指している俺は、ある日突然、とんでもない出来事に巻き込まれてしまう。これは、夢か、現実か。俺ができることとは・・・。

万城目さんの10周年記念作品(?)。

いつも万城目ワールドには翻弄されます。どうしたらこんな話を思いつくんだ?と思いながら、その世界を堪能していたのですが・・・。今回は、ちょっとついていけないというか、振り回されっぱなしで終ってしまった感じでした。

う~ん、設定はじゅうぶんおもしろそうだったのですが。世界観をつかみきれなかったというか。体調いまいちのときに読んだのもよくなかったかも。

もっとも、万城目さんは一作ごとに物語の世界が広がっていく感じなので、おいていかれないように追いかけたいと思います。

2017年5月21日 (日)

今だけのあの子

2582「今だけのあの子」 芦沢央   創元推理文庫   ★★★★

一番の親友だと思っていた。それなのに、どうして私にだけ結婚式によばれない・・・。彼女への不信感が頂点に達したとき、明かされた真実とは。

女の友情をテーマにしたミステリ短編集。

「届かない招待状」「帰らない理由」「答えない子ども」「願わない少女」「正しくない言葉」の5編。

ツイッターで高評価が続いていたので、読んでみました。当たり、でした。

女の友情という言葉から単純に連想されるドロドロ感はありません。というか、どの物語も、最後にきれいにひっくり返されます。

冒頭の「届かない招待状」が一番印象的。もう最悪のパターンを予想させる展開なのですが・・・。一応、ミステリなのでネタバレ厳禁ということで、ここまで。

とにかく、いわゆるイヤミスではありません。ほろ苦さも残しつつ、そのときどきの「女の友情」がみごとに描かれています。

5編がリンクしていて、「あ!あの人がここに・・・!」という楽しみもあります。

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