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2005年8月17日 (水)

涙堂 琴女癸酉日記

843「涙堂 琴女癸酉日記」宇江佐真理   講談社文庫   ★★★

 同心だった夫が何者かに斬り殺された。誰が?なぜ?
 何もわからぬまま、浮世絵師になった末息子・賀太郎と、日本橋通油町に住み始めた琴。幼なじみの医師・清順や、絵草紙問屋の伝兵衛、元岡っ引きの伊十らと親しみ、町屋暮らしを続けるうちに、意外な真相があきらかに・・・。

 琴を主人公にした連作短編。夫の死の真相をめぐるミステリでもあり、時代物としても宇江佐さんらしい筆の冴えが楽しめます。
 琴は厳格な夫に仕え、貧しいながらも幸せに暮らしてきた、八丁堀育ちの奥方。子供は五人。長男健之丞は父の跡を継ぎ、三人の娘はそれぞれ町方役人に嫁ぎ、安泰な生活。ところが、末っ子の賀太郎だけは何を思ったか、絵師になりたいと勘当される始末。そして、夫の死後、琴はこの賀太郎のもとで生活するのです。
 近所には幼なじみ(つまり八丁堀育ち)で、武家ではなくなった清順や伝兵衛がいて、いまだに親しく行き来している。清順の末の娘はしょっちゅう派手な夫婦喧嘩をして実家に逃げ帰り、夫もそれを追いかけて大立ち回りを演じる。伝兵衛はその仲裁に入り・・・とまあ、それぞれの人間模様が描かれます。
 主人公の琴は、まったく普通の人間。できた人間なんかじゃなくって、怒ったり、人にあたったり、嫌味を言ったりもします。賀太郎が年上で子持ちの女性に入れ揚げると、そりゃもうご機嫌が悪い。その普通の女性である琴の目から見た世情が、妙にリアリティをもってせまってくるのです。宇江佐さんのすごさはそこだと思うのです。長所も短所もある、生身の人間を描く力。
 最終話の大晦日の晩の描写は、読んでいるだけでしんと静まり返った雪の夜の風情がせつなく感じられてきます。

nanao > 浮世離れしていですね、たしかに。
凄いヒーローはいないけれど、心に迫るものがありますね。
この作品も読んでみたいです。 (2005/08/18 08:18)
まゆ > みっともなくも憎めない、私たちとよく似た登場人物たちのことを他人事とは思えない。そんな宇江佐さんの物語にすっかり夢中です。まだ積読してるのもあるので、読まなくては・・・。 (2005/08/18 20:42)

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