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2007年9月 2日 (日)

黄色い目の魚

1169「黄色い目の魚」佐藤多佳子   新潮文庫   ★★★★★ 

 家族とうまくいかないみのりは、漫画家の叔父の家に入り浸っていた。同級生の木島は、一度だけ会った父親にひかれるように、絵を描いていた。
 美術の時間、木島がみのりのデッサンをして以来、二人の世界が交錯し始めた。友達というには強い、でも、つきあっているわけでもない。名づけようのない思いに、二人の心は揺れる。


 
積読してました。職業柄、中学生や高校生が主人公のものは、どうしても読む気になれない時があります。今はふっとスイッチが入った感じで、手に取りました。
 「絵」を媒介にして、互いの存在を強く意識するようになったみのりと木島。もっとも、みのりは叔父の通ちゃんが大好きで。木島にも憧れてる人がいて。最初は恋愛感情なんてなくて。木島にはみのりのとってもキレイなところが見えていて。みのりにも、木島のとってもピュアなところが見えていて。当然、惹かれていくでしょう?と思うのだけど、その過程が、実によいのです。
 木島が、ロクデナシの父親とたった一度会った日を描いた「りんごの顔」。中学時代、すべてにイライラして、いろんなものが大嫌いだったみのりを描いた「黄色い目の魚」。この2編が、高校2年になった二人の物語に、じわじわと効いてくるのです。
 親にサッカークラブに連れて行かれ、テッセイに対抗するように絵を描いていた木島が、自分の意志でサッカーをし、絵を描く道を模索し始める。嫌いなものばっかりだったみのりが、「好き」なものを見つけられるようになる。その変容が、実にゆるやかに、自然に、描かれています。
 みのりが見つけた「好き」の一つが木島。そして、木島も・・・。この恋は、読んでいて、胸がキュウッとなるくらい、せつなかったです。この年になって、こんな思いに共感するとは思わなかった(笑)まっすぐに見つめ合う二人の姿が、とても好きでした。

 木島のサッカーの場面も、かなり好きでした。へたくそなゴールキーパーが悪戦苦闘する姿が。

「マジになるのは恐かった。マジになると結果が出る。自分の限界が見えちまう。マジで勝負をしなければ、なくすものもない。負けてみすぼらしくなることもない。すべて曖昧なままにしておけば、誰に何を言われてもヘラヘラ笑っていられる。」

 みのりは、木島のこういう気持ちを許さない存在なのです。佐藤多佳子さんも、そういう方なのだろうなと思います。私は、佐藤さんのそういうところが好きなのです。

three bells > まゆさん、スイッチはいってよかったですね♪佐藤さんサッカーに詳しいな~とこの頃から感心していました。
純粋、純真、まぶしい小説でした。 (2007/09/02 20:26)
まゆ > three bellsさん、読めてよかったです。こういう物語に感動する気持ちは、いくつになってもなくしたくないなと思いました。 (2007/09/03 20:13)

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佐藤多佳子」カテゴリの記事

コメント

不器用な二人の距離が少しずつ縮まっていくのがいいですよね。
サッカーの部員達とのエピソードも好きでした!
佐藤さんらしい温かい視線での物語でしたね。

木島の妹の恋愛がちょっと受け付けなかったです~。

hitoさん、サッカー部のエピソードもいいですよね。その辺は佐藤さんのサッカーに対する思い入れの強さが伝わってきました。
私も木島妹の年の差恋愛は理解できないのですが・・・世の中にはそういう人たちもいるのかな?くらいで読んでました。

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» 本 「黄色い目の魚」佐藤多佳子著 [日々のつぶやき]
「木島悟は父親のテッセイと一度会ったことがあるだけ、テッセイが絵を描いていたからお母さんは悟が絵を書くのを嫌う。 家族や友人の上手くいかず常にピリピリして叔父で絵描きの通ちゃんの元に通う村田みのり。 二人は高校での美術の授業でお互いの顔を描くことになり... [続きを読む]

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