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2007年11月12日 (月)

風の果て(上・下)

1210「風の果て(上・下)」藤沢周平   文春文庫   ★★★★

 下士の次男から、藩の家老職にまでのぼりつめた桑山又左衛門のもとに、果たし状が届いた。相手は片貝道場で出会った友の野瀬市之丞。彼は五十を過ぎた今も娶らず禄食まぬ、「厄介叔父」と言われる部屋住みだった。なぜ、友と斬りあわねばならぬのか。困惑する又左衛門の胸中を、来し方が去来する。

 NHK木曜時代劇で放映中の「風の果て」原作です。山本耕史につられて見た「陽炎の辻」に引き続き見ています。あちらは娯楽ものの色合いが濃かったのに比べて、こっちは暗く、重いです。でも、けっこうおもしろくて、欠かさず見ています。で、とうとう原作にも手を出してしまいました。

 原作もドラマ以上におもしろかったです。一章ごとに、桑山又左衛門が、過去を回想する・・・という構成になっているのですが、まだ部屋住みで「上村隼太」だった頃から始まって、彼を取り巻く環境が激変していく過程が実におもしろいのです。もっとも、起こる事件はどちらかというと暗いものが多く、やりきれないような気持ちになるのですが。

 一番大きいのは、市之丞はじめ、友との関わりです。隼太と同じような下士の部屋住みの市之丞、一蔵、庄六、そしてたった一人、元家老の嫡男の鹿之助。身分の隔てもなく、将来への不安をリアルに感じることもなく、友として笑って過ごしていた日々のなんとまぶしいことか。それが、「大人」になるにつれ、彼らは過酷な運命に取り込まれてしまうのです。

 家老という権力の中枢にまでのぼりつめながら、それゆえに失ったものの大きさを痛感する又左衛門。しかし、彼は清廉潔白な人物ではなく、それなりに野心もある等身大の人物として描かれます。それが、非常に説得力をもっているのです。自分の人生を、必死に生きてきた一人の男として。

 上下巻一気に読んでしまいましたが、それだけの力がある物語でした。人生の光と影・・・そんなことを考えさせられました。

 ドラマは、原作にない場面がけっこう加えられています。が、それがドラマとしては成功していると感じました。小説であれば、読者にゆだねてもいい部分を、ドラマでははっきり「こうだ」と説明しています。そこが、小説とテレビの違いなのかもしれません。

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