1384「夏から夏へ」佐藤多佳子 集英社 ★★★★
世界陸上大阪大会。日本代表の4×100mリレー(4継)の選手たちは、いかに戦ったのか。陸上小説の傑作「一瞬の風になれ」の作者・佐藤多佳子が、初のノンフィクションに挑む。
こういうものを書こうとしている・・・というのを佐藤さんのブログで知って以来、ずっと読みたい読みたいと思っていた作品です。
「一瞬の風になれ」は、傑作です。陸上に関しては素人の佐藤さんが、あそこまで描ききるには、相当の取材が必要だったはずです(実際、4年にわたって、取材したらしい)。そして、見たことをよく理解し、陸上競技に愛情を感じていなければ、あの物語は成立しなかったと思います。そういう人の目を通して語られる世界陸上、そしてスプリンターの素顔をいうものを、ぜひ読んでみたい・・・。やはり、陸上は素人だけれど、その魅力にとりつかれている私がそう思っても、なんの不思議もないと思うのです。
前半は、世界陸上の観戦記。後半は、4継の4人の選手(塚原、末續、高平、朝原)と、補欠の小島への素顔にせまる内容。私はノンフィクションが好きな割に、読むのはいつも苦戦するのですが、これはスイスイ読めてしまいました。やはり、物語書きだなあ・・・と思うのですが、ノンフィクションだけど、なんだかストーリーがあるのです。事実の列記になっていないというか・・・。ガチガチのノンフィクションがお好みの方には合わないかもしれませんが、私にはすごく読みやすかったです。
心地よかったのは、佐藤さんが知ったかぶりをしないで、わからないものは「わからない」と言ってしまうところ。どれだけ取材しても、やっぱり、わからない。あるいは、どうしても突っ込んでインタビューできない。聞くべきだった、でも聞けなかった、という思いは、すごく共感できました。
4人の選手は、みんなアスリートとしてはもちろん、人間としても魅力的です。ただ、それ以上に印象的だったのは、補欠の小島選手でした。なかなかできることではないです。みんながレースに行ってしまったあと、サブトラックを泣きながら走っていた・・・というエピソードにはグッときました。
さて、ここまで読んだら、ぜひ「北京の銅メダル」までも読んでみたい・・・と思うのは、私だけでしょうか。
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