大地の子(二)
1446「大地の子(二)」山崎豊子 文春文庫 ★★★★
破傷風にかかった自分を助けてくれた看護婦・江月梅と再会を果たした陸一心だったが、日本人であるゆえに、月梅の純粋な愛を受け入れることができず、苦悩する。養父・徳志は天職である教師の仕事もなげうって、一心の冤罪を晴らそうと奔走する。親友の袁力本の助力もあり、とうとう北京に帰ってきた一心は、月梅と結婚する。その後、日中の共同プロジェクトである製鉄所建設に関わることになった一心は、日本側のプロジェクト参加者の松本耕次が中国語に堪能であることに不審を抱く。彼こそ、一心の実の父親であった・・・。
こうしてあらすじを起こしてみると、けっこう怒涛の展開です。ドラマで一度見てしまっているので、意外性はないのですが・・・。松本耕次が登場するのは、2巻の後半からです。それまで、一心の日本の父は全く登場しません。
ドラマで割愛されていたのは、その松本耕次が開拓団で果たした役割です。説得されて、信濃郷開拓団の先遣といった立場になり、他の家庭を誘って、開拓団の中心になった松本耕次。「松本さんが行くなら」という形で満州の地に渡った人たちが、現地で虐殺にあい、自分だけが生き残ってしまったというのは、地獄の責苦にも似た思いだったでしょう。単に「家族を失った」だけではない思いがあったのですね・・・。それは、あまりにもつらすぎます。残留孤児として里帰りした咲子が、松本に抱きついて泣いたのも、彼が開拓団の拠り所となる人物だったからなのでしょう。
一方、一心の日本に対する憎悪にも似た感情、また、かつての恋人・丹青に対する態度も、ドラマではあまり感じられないものでした。でも、それまで「日本人」だということで一心が舐めてきた辛酸を考えれば、当然だともいえます。ただ、実の父・松本に対する厳しい態度(もちろん、一心は実の父だとは知りません)は、読んでいてやりきれなかったです。
今回、ちょっと苦戦したのは、中国の政権闘争がらみの、いろんな駆け引きです。あまりそういうものに興味のない私は、製鉄所建設までそういう政治闘争の具にされる(まあ、どこの国でもそんなものなんでしょうが)というのが、どうにも苦手で、そこだけは読むスピードが落ちてしまいました(苦笑)
それにしても、丹青は、とんでもなく嫌な女として描かれてますね~(笑) ドラマではもう少し抑え目でしたけど。
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こんにちは。カテゴリーで分別始めたのですね。量が多いから、大変じゃありませんでしたか?
本の内容に関係なくて、ごめんなさいね。またおじゃまします。
投稿: ほっそ | 2010年3月13日 (土) 21時29分
ほっそさん、そうなんですよ。
最近の本はジャンルでカテゴライズするのが難しいので、著者別のカテゴリーにしたのですが・・・多すぎて(苦笑)
しばらく、あれこれいじってみます。
投稿: まゆ | 2010年3月15日 (月) 16時52分