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2010年5月28日 (金)

小暮写眞館

1500「小暮写眞館」宮部みゆき   講談社   ★★★★★

「花ちゃん」こと花菱英一は、都立三雲高校の1年生。両親と、とっても優秀な弟の「ピカ」こと光の4人家族。両親が結婚二十周年を記念して購入したマイホームは、古い商店街の中にある写真館だった。しかも、その家は幽霊つき。写真館の主だった老人が、ときどき姿を見せるというのだ。そんな英一のもとに、一枚の写真がもたらされる。それは、写るわけがないものが写っている・・・そう、心霊写真だった。英一は、親友のテンコたちの力を借りて、その写真に写っている人たちについて調べはじめたが・・・。

「宮部さん、おかえりなさい」・・・読みながら、そんな気分でした。帯によると、宮部さんの現代エンタテイメント作品は3年ぶりだそうです。

デビュー当時からずっと追いかけてきた作家さんですが、最近はちょっと遠ざかっていました。SFはちょっと苦手だし、ゲーム(RPG)っぽいのも苦手だし・・・そして、「理由」「模倣犯」あたりで、「これはすごい!」と思いつつ、読むのがしんどいなあ・・・と思い始めたのも事実で。宮部さんが書きたいことはわかるし、それに真っ向から向き合おうとする宮部さんの姿勢は尊敬します。でも、しんどい。それが正直な気持ちでした。

でも、これは・・・初期の宮部作品のような温かさとせつなさが感じられる、とっても素敵な物語でした。こういうのが読みたかったのよ!と嬉しくて・・・700頁の分厚い本を、三日かけて、ゆっくりゆっくり読みました。

長い物語でしたが、全然長さを感じませんでした。四つの物語に分かれていて、時間がゆっくりと経過していきます。花ちゃんが幽霊つきの家に引っ越して、心霊写真バスターみたいになっちゃって・・・ユーモラスなムードが漂っていますが、花ちゃんが遭遇する不思議は、花ちゃんとその周囲の人たちが抱えているものを大きく揺さぶっていきます。誰もが負っているだろう「傷」と、そこからの再生と・・・ひとくくりで言ってしまえば、そういう物語なのでしょう。でも、その「傷」はさまざまで、そこからの再生のしかたもさまざま。そんな、人々の生き方を見つめる、作者の視線の厳しさと優しさに、思わず涙がこぼれました。

特に、最終話「鉄路の春」は、読んでいると、胸がギュウッとなってしまって、後半からは泣きっぱなしでした。ハッピーエンドといえばそうなのでしょうけど・・・こんなにせつないハッピーエンドもないよなあ、と。

宮部さんらしく、キャラがとってもいいです。ピカみたいな男の子は宮部さんのお得意ですが、花ちゃんのコンプレックスを刺激する友人のテンコや、美人じゃないけどとっても素敵な女の子のコゲパン、不動産屋の事務員の垣本順子・・・あ、花ちゃんのお父さんもとってもいいキャラ。みんな物語の中で生き生きしています。なんか、こういうのも久しぶりな気がする・・・。

この物語、口当たりはいいですが、宮部さんが今までずっと書いてきたいろんなテーマやモチーフがてんこ盛りです。油断してると、ドキリとします。でもやっぱり、こういう書き方の方が好きだなあ。

さて、この本が、「1500冊目」です。本の感想サイト「本のプロ」時代からの通算読書冊数となります。つくづく思うのは、本プロが存続していたなら・・・ということです。できることなら、本プロで1500冊達成の報告をしたかったです。あのサイトと出会ったことで、私は読書の楽しさを改めて知りました。心から感謝しています。

1500冊目の読書は、とても充実した、よいものとなりました。心の琴線に触れる本との出会い、これからも大事にしていきたいです。

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宮部みゆき」カテゴリの記事

コメント

こんにちは、お久しぶりです。
と言っても、コメントを書くのが久しぶりなだけ。よくお邪魔してます。
1500冊、おめでとうございます。

私は本プロの最後の方でカウントがめちゃくちゃになって以来、mixiに引っ越したので何冊になってるのかよく分からないの。
一応mixiではその年の通し番号は付けてますが。

この本は図書館に予約中です。まゆさんの日記を読んで、くるのがとても楽しみになりました。

ときわさん、ありがとうございます。
本プロがなくなったのがすごく悔しかったので、絶対、冊数のカウントだけは続けようと思ってました。
管理人さん達が最高冊数を「1500」に設定してくれたので、そこまでは何があっても到達しようと。
でも、到達したと思っても、通過点でした。これからもよろしくお願いします。

さて、この本、ときわさんがどう読まれるか、ドキドキです(笑)
私はこういうテイストの宮部さんが好きなんですよねぇ。

読みました!
実は最初のうち、「これ、はずれだったかも」と思って読んでたんです。私があまり好きでない宮部ファンタジーの感じだったから。
ぐっと評価を変えたのは第4章に入ってから。私も泣いてしまいましたよ。胸が痛かった。
でも最後にあの本の表紙のような爽やかな気持ちになれました。読んで良かったです。

ときわさんの評価が良くてホッとしました(笑)
最初は、心霊写真ネタで、宮部さんの初期のころのSFもしくはホラー系?と思ったのですが、そこからどんどん話が展開していって・・・そういう着地をするとは。
最近、宮部さんからは遠ざかっていましたが、これを読んで、やっぱり宮部さんはいいなあ・・・と再確認しました。
ときわさんのおっしゃる通り、この本の表紙、素敵ですよね。読み終えて、この表紙をしばらくぼんやり眺めていました。

そうか~

なるほど、これが記念すべき1500冊めだったんですね。
私はこの夏イチの本になりました。
登場人物がすごくよくて、みんな底抜けに明るいんですけど、それだけではないんですね。
個人的にもいろいろ思うところがあったり…
忙しさにゆっくり、ゆっくり味わうように読みましたが
本当に読んでる間じゅう、幸せな気分でした。

なぎさん、そうなんです、これが1500冊目。
とっても素敵な物語で、読んでよかったなあとしみじみしちゃいました。
やっぱり宮部さん好きだなあ。
またいつか、再読してみたいです。

宮部作品、数は読んでいませんが、それでも読むのがちょっとしんどくて離れていたのでまゆさんの言葉にうなずいてしまいました。

>この物語、口当たりはいいですが、宮部さんが今までずっと書いてきたいろんなテーマやモチーフがてんこ盛りです。油断してると、ドキリとします。

巧いですよね~読んでよかったです。

初期作品の感じと似てるんでしょうか?
こういう雰囲気が好きなのでまゆさんのおすすめをぜひ教えてほしいです。

はぴさん、これはほんとみなさんにおすすめしたい作品です。
「模倣犯」とか「理由」とか、わかるけどかなりしんどかったので・・・(宮部さんも書いててしんどかったみたいだし)。

さて、おすすめですが・・・。
最近映画化されたらしい「パーフェクト・ブルー」なんかいかがでしょう。
短編集なら「我らが隣人の犯罪」。
個人的に一番好きなのは、双子の兄弟と泥棒さんが疑似親子になる「ステップファザー・ステップ」です。

まゆさん、ありがとうございます!
『パーフェクト・ブルー』は映画化されたんですね。
知りませんでした。
おすすめいただいた3作、ぜひ読みたいと思います。
チェックしておきますね。

はぴさん、お好みに合うかどうかわかりませんが、
よろしければ読んでみてくださいね。

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