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2010年5月14日 (金)

智恵子抄

1491「智恵子抄」高村光太郎   新潮文庫   ★★★★

 「智恵子は東京に空が無いと云ふ」で始まる「あどけない話」を初めて読んだのは、中学生の時。光太郎と智恵子の愛の物語に興味をもって、「智恵子抄」を読んだものでした。けれど、なんだかよくわからなかったというのが正直な感想。それから、何度か読み返しているのだけれど、印象に残るいくつかの詩はあっても、それだけでした。

 3月、十和田湖の「乙女の像」(高村光太郎制作)を見て、宿に向かう車中で、夫から「詩人・高村光太郎」についてレクチャーを受けました(笑) 私は全くわかってなかったので・・・。「口語詩の草分け」と聞いて、「え?そんなすごい人だったの?」  

 4月、花巻にある「光太郎山荘」と「高村光太郎記念館」を初めて訪れました。雨の降る寒い日でしたが、山奥に一人さびしく住んでいた光太郎の生活を彷彿とさせる風情でした。そこで見た「智恵子が織った布で作った光太郎の服」と、「智恵子の切り絵」、そして、「智恵子はある意味光太郎の犠牲になったともいえる」という説明文が印象に残り、もう一度、「智恵子抄」を開きました・・・。

 すべてをわかったとは言えません。男性の目から見た観念的な部分は、理解しがたいものがあります。でも、今回初めて、読んでいて涙が出ました。なぜと聞かれると困るのですが・・・記念館で見た二人の写真がオーバーラップしたからかもしれませんが・・・お互いに唯一無二の存在として愛し合い、それゆえに己を失った妻と、その妻を失った夫の思いが、せつせつと胸に迫ってきたのです。

 同じ夢を追えるというのは幸せなことだけれど、どちらかの夢が頓挫した時、それは非常な苦痛をもたらします。また、「生活」が二人の間に横たわると、自分のやりたいことだけを追求するのは難しくなります。光太郎も智恵子も、純粋すぎたのではないでしょうか。だからこそ、二人は一心にお互いを求めあい、愛し合ったのだとも言えるのですが。その純粋さを尊いと思う一方、私自身は、智恵子のようにならないように・・・生きていけるしたたかさも身につけたいと思うのです。

 智恵子を失ってからの、光太郎の静かな詩が、すごく心にしみました。

 また何年後かに読み返してみたい一冊です。その時は、何を感じるでしょうか。

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