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2010年7月31日 (土)

フリーター、家を買う。

1535「フリーター、家を買う。」有川浩   幻冬舎   ★★★★

誠治は入社三カ月で会社をやめた。バイトも長続きしない。父や母と顔を合わせるのも嫌になっていた頃、名古屋に嫁いだ姉が突然帰ってきた。母の様子がおかしいというのだ。母は重度の鬱状態と診断された。原因は、二十年以上にわたる近所からのいじめ。その引き金になったのは、父だった。誠治は、母にもう一度笑ってもらうために、自分のできることに取り組もうとするのだが・・・。

事前のリサーチを全くしないで、「フリーターのくせに家を買っちゃって、その支払いに四苦八苦する話かな」なんて思ってました。甘かったです。

要するに、誠治の成長物語ではあるのですが、そのきっかけが母の鬱というのは・・・。しかも、その根は深く、父は病気に対して全く理解を示そうとせず・・・。最初は読んでいてしんどかったです。

が、要するに「甘ちゃん」だった誠治が、徐々に大人になっていく過程を読んでいると、ああ、そうそう、そうだよねえ、私も昔はそうだったよ・・・としみじみ。時には、「げ。私、今でもそういうとこあるかも」と思ってドキッとしたり。

「家を買う」というのも、無謀な行動ではなくて、その必然性が身にしみてわかりました。誠治の成長とともに、家族の再生の物語でもあって、そのとりあえずのゴール地点が「家を買う」ことだったのですね。

ただ、誠治が正社員になったあたりから、いろんなことがあまりにもトントン拍子にいきすぎた気がしちゃいました。無理して恋愛からめなくてもよかったかなと思ったり。それはそれで、別の話として書いてほしかったなあ。

あとがきを読んでいて気づいたのですが・・・有川作品って、けっこう正論吐くキャラが登場して、痛いとこをついてくるのです(今回なら、誠治の姉・亜矢子)。でも、それが嫌味になりすぎない。なんでだろう・・・と思っていたのですが、有川さんはそれを「言われる側」の気持ちで書いているのでしょうね。だから、ギリギリのところで嫌味じゃない。言ったことにも納得できるけど、言われて凹む側の気持ちも理解できるという、微妙なバランスを保ってるのかなと感じました。

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有川浩」カテゴリの記事

コメント

これ、就活の手引きみたいでしたね。
ほんと、後半は、ちょっと上手くいきすぎですね。
私も、そう思いました。
それと、恋愛の部分もない方がすっきりするような気がします。
でも、これは、お約束だから仕方がないのかな。

私は、ご近所さんが恐くて、おかあさんに同情してしまいました。
姉は気づいていたのに、弟は全くノー天気に過ごしてたのもある意味スゴイなと思いました。
でも、何はともあれ、結果がいい方向に向かったのは、ほっとしました。

確かに恋愛エピソードはなくても良かったですね。前半は読むのがしんどかったですが、誠治の成長とお父さんの変化にホッとしました。
「正論を言われる側」説、なるほど~と思いました。

青子さん、私は就活に苦労しなかったバブル世代なので、読んでてちょっとイタタタ・・・ってとこもありました。
有川さんと言えばラブコメなんですが、今回は蛇足な気がしましたね。
それより、正社員になってからもうひと波乱あった方が、なんて思ってしまいました。

ご近所の人間関係って実際難しいです。
男の人って、わりと無頓着ですけどね。
誠治が気づかなかったのも、ある意味お父さんに似てるのかも(笑)

ひなたさんもやっぱりそう思います?
恋愛ネタはなしでもいけたと思うんですけどねえ。
こんな重い話だと思わずに借りてきて、読み始めてから「ちょっと選択間違えたかも・・・」と青ざめました。
夫にも「なんで今そんな話を読むかな」と言われ(苦笑)
でもまあ、最後はそれぞれに未来が開ける感じでホッとしました。

家族の絆と主人公のがんばる姿がとても良かったです。
最初は誠治も父親も「なんてひどいヤツ!」と思えたのですが、
二人が母親のために少しずつ変わっていく姿に、根底では繋がっていた家族だったのかなと思いました。
皆さん、おっしゃっているとおり、恋愛テイストは余計だと思いました!
誠治が後輩たちとがんばっている姿を見せてくれるだけで、良かった気がします。

kanakanaさん、そうなんですよ。
一見バラバラに見えた家族も、実はしっかりつながっていて、つまずきながらも再生していく様子がすごくよかったので。
恋愛ネタはない方が、この物語の良さが際立ったと思うんです。
でも、後味がよくて、好きな話ですけどね。

タイトルからは想像できませんでしたねー
でも相変わらずサクサク読めて、私はとっても楽しめちゃいました。

どちらかというと自分はお姉ちゃんのような立ち居ちだなーと・・言われる側の特にお父さんの気持ちも解り反省したりもしつつ読んでいました。

お父さんが誠治の相談に乗るうちに家長としての自分の面目も立ち、意固地さも減っていく様子がとっても好きです。

お名前が無いけど、きっとhitoさんですね?

私もどっちかというと、立ち位置も性格もお姉ちゃんに近いです。
確かに正論なんだけど、それってかえって人を追い詰めることもあるのね・・・なんて、ちょっとドキリとしました。

とりあえず、なんとか家族が再生できたみたいで、ホッとしました。

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