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2011年3月25日 (金)

おはぐろとんぼ

1675「おはぐろとんぼ」宇江佐真理   実業之日本社   ★★★★

日本橋の「末広」という小料理屋で働くおせん。板前だった亡き父に鍛えられ、料理の腕は一人前だが、女であるがゆえにその立場は微妙なものだった。上方からやってきた新しい板前の銀助は、荒っぽいけれどツボを心得た料理人で、おせんのことをきちんと認めてくれる。やがて銀助はおせんに思いをかけるようになるが、おせんはどうしてもそれを受け入れられなくて・・・。

表題作を含め6編の人情物。今回は、「江戸人情堀物語」とある通り、堀に絡めて物語が展開します。

一番好きだったのは、表題作。女料理人のおせんが、幸せをつかむまでの話。母と妹には生き別れ、たった一人の父も亡くなり、女だてらに料理人として生きてきたおせん。しかし、そこにあるのは料理の腕と意地だけで、心は空っぽに近い状態。そこに入り込んできたのが銀助で・・・。銀助の娘・おゆみがとってもかわいくて。最後も無事まるくおさまって、すっきりしました。

それから、姉と弟の愛情を描いた「御厩河岸の向こう」や、遊女屋の女将のおなわの話「裾継」も好きでした。

いずれも、市井の名もない人たちの日常の物語。泣いたり笑ったり、時には思わぬ事件が起きて、その日常がひっくり返ってしまうことも。それでも、身の丈にあった小さな幸せを見つけて、「滅法界もなく幸せなんですよ」と泣き笑いする江戸の人たちに、こちらが励まされるような気分で、一気に読んでしまいました。

大それたことは望まない。日々の暮らしが立ち行けば、家族が仲良く暮らせれば、それで人間はじゅうぶん満ち足りていられるはずなのに。そんな気持ちを、私たちはどこに忘れてきてしまったんでしょうね。

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