« 怖い絵 | トップページ | 利休にたずねよ »

2011年4月23日 (土)

遠くの声に耳を澄ませて

1687「遠くの声に耳を澄ませて」宮下奈都   新潮社   ★★★★

農業を営み、生まれ育った県から一度も出たことがない祖父。かつて祖父の家で暮らしていた瑞穂は、祖父が倒れたのを機に、久しぶりに田舎の町を訪れた。病床の祖父が口にしたのは、「キト」という町のこと。幼い瑞穂に毎夜語り聞かせた架空の町の風景。ところが・・・。

最近、まとまった読書の時間がとれないので、何冊かの本を併行して、その時々の気分で細切れに読んでいます。これは、短編集のようだったので、細切れに読むのにはちょうどいいかなあ・・・と。

宮下さんの文章は、私の中につるりと入ってくる感じがして、非常に読みやすいのです。が、逆にするする読んでしまう怖さもあって、あえて少しずつ、ちまちま読みました。まず、第1話の「アンデスの声」が、ささいな物語なんだけど意外なところに飛躍していって・・・。それですっかりはまってしまいました。

心に残ったのは、「どこにでも猫がいる」と、「クックブックの五日間」。どちらも、人生の転機を経験した女性が、それを振り返る・・・というような構成。これは、若い時ならあまりピンとこなかったかもしれません。

で、読み進めるにつれ、「ん?」と。微妙に、話がリンクしているじゃないですか。一話ずつ読んでいたので、最初は気がつかなかったです。思わず、最初に戻って確認してしまいました(笑)

だから、「白い足袋」で、花嫁の名前を見た時は、感無量でした。ただ、この話、発電所のことが出てきて、今がこんな時だけに、複雑な気分でしたけど。

最近、同世代の作家さんがけっこう世に出てきて、ついつい読んでしまうのですが・・・やはり、「同じ時代を生きてきた」という空気を、すごく感じるのです。理屈でなくて、「ああ、わかる」と。その中でも、宮下さんは、私にとって別格になりつつあります。同性だからというのもあるかもしれませんが・・・。人との距離感や、ものごとの価値観など、なんとなく共感できることが多い気がします。

この物語では、「人が生きていくこと」が描かれています。それぞれの立場で、それぞれの思いで。そんな姿を見つめている作者のまなざしに、私は惹かれているのかもしれません。

« 怖い絵 | トップページ | 利休にたずねよ »

宮下奈都」カテゴリの記事

コメント

私が読んだ、宮下さんの初作品でした。
なんだかリンクしている?って私も途中で気が付き、ぐっときました。
その後、「よろこびの歌」「スコーレNO4」を読んで、共感でき、魅力をかんじる作家さんの一人です。

chiiさん、私は「よろこび」→「スコーレ」で、これにきました。
いずれもはずれなし、です。
読めば読むほど、好きになってきた作家さんです。

この作品、さりげないリンクの仕方がいいですね。

今のところ、宮下さんマイベストはこの本です。借りて読んだので、文庫が出たら買って手元に置きたいです。
何気ない言葉がいちいち感性を刺激してくれて、読み終わるのがもったいないと思いました。まゆさんがおっしゃるように、年代が近いということもあると思いますが、やっぱり感性に惹かれるのかなと思います。こんな風に自分もいろんなことを感じられたら素敵だな~と思いました。

リンクの微妙さも絶妙で・・・皆台湾に行っちゃうのも不思議で面白かったです。

EKKOさん、これ、以前におすすめいただいてから、ずっと読みたくて、でも貸し出し中で・・・。
やっと借りられたんですよ~。
期待を裏切らぬおもしろさでした!
やっぱり、宮下さんの小説、好きだなあ。

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 遠くの声に耳を澄ませて:

» 『遠くの声に耳を澄ませて』  宮下奈都  新潮社 [アン・バランス・ダイアリー]
遠くの声に耳を澄ませて著者:宮下 奈都販売元:新潮社発売日:2009-03おすすめ度:クチコミを見る 宮下さんの作品は「スコーレNo.4」に続いて2冊目ですが、これも良かった!これを ... [続きを読む]

» 「遠くの声に耳を澄ませて」宮下奈都 [りゅうちゃん別館]
見えないスイッチが入る12の短編集。 宮下の世界を堪能した。    【送料無料】遠くの声に耳を澄ませて [ 宮下奈都 ]価格:515円(税込、送料別) 「旅」に連載されたエピソードたち。 静かで地味だが何かが変わる様を描いている。いくつか抜粋で紹介。 「アンデスの…... [続きを読む]

« 怖い絵 | トップページ | 利休にたずねよ »

2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

カテゴリー