私と踊って
1968「私と踊って」 恩田陸 新潮社 ★★★★
「私と踊って」 その一言で、壁の花だった私を踊らせてくれた彼女。大人になり、舞踏家として名を成した彼女だったけれど・・・。(「私と踊って」)
しばらく恩田陸を読んでないなあと思っていたら、今年、立て続けに単行本が出て、嬉しい悲鳴。とりあえず、短編集の方から読みはじめ、あっという間に読み終わってしまいました。
表題作を含む、19編を収録。いずれも、「奇想」と呼ぶのがふさわしいような、なんともカテゴライズしづらい短編ばかり。まあ、いつものことですが。
恩田さんの書くものって、現実からほんの少し浮いているような感じがして、妙なリアリティと、それに相反する非現実感のバランスが、気持ち悪いんだけど癖になる、のです。私にとっては。そして、ところどころ、ハッとさせられるようなフレーズがあったり、ひどく共感してしまう部分があったり。今回も、それをつくづく感じました。
いちばんインパクトがあったのは、「死者の季節」。これだけは、小説というより随筆のような、作者の実体験が書かれたものだそうですが。あの事件をリアルタイムで知っている、ということが、ものすごい説得力をもつのです。
「聖なる氾濫」「海の泡より生まれて」「茜さす」は連作になっていて、もうこの設定が、ものすごく好みでした。奈良が大好きなので、「茜さす」が一番好きです。
ちょっとわかりにくかったけどおもしろかった「思い違い」、発想がおもしろい「忠告」と、対になる「協力」もなかなか。「二人でお茶を」も、好きな話です。
「東京の日記」は、珍しい横書き。最初は違和感がありましたが、徐々にそれがパラレルワールドの「現実からほんの少し浮いている」感じにフィットしていくのが、すごい。しかし、これ・・・ほんとにしゃれになりませんね。
「交信」は・・・これ、図書館本ではどうするんでしょう? 私は買ったから読めましたけど。うーん。
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» 「私と踊って」恩田陸 [粋な提案]
この世の終わりに踊る時も、きっと私を見ていてね。ダンサーの幸福は、踊れること。ダンサーの不幸は、いつか踊れなくなること――稀代の舞踏家ピナ・バウシュをモチーフに、舞台を見る者と見られる者の抜き差しならない関係をロマンティックに描いた表題作をはじめ、ミステリからSF、ショートショート、ホラーまで、物語に愛された作家の脳内を映しだす全十九編の万華鏡。
パーティ会場でぽつんとしていた私に不思議...... [続きを読む]
» 『私と踊って』 恩田陸 新潮文庫 [アン・バランス・ダイアリー]
恩田さんのノンシリーズ短編集。ミステリがあったり、SFがあったり、怖かったり、表裏の二編があったり、うっとりしたり、にやりとしたり、結局よくわからなかったものもあったり ... [続きを読む]
こんばんは!
今日、図書館の新刊本の棚に置いてあり
久しぶりの恩田さん♪るんるんと借りてきました。
まゆさんの感想を読み、ぬぬぬ?交信・・・ですか
やっぱりこんなところにあったのか!隙間をのぞいて発見しましたが読めません。
本屋さん頼りにします。
また読み終えたらゆっくりきます!
投稿: three-bells | 2013年2月 3日 (日) 19時37分
読みました♪
不思議なんだけれど妙なリアリティ。
まゆさんのおっしゃる通りです。
ちりばめられた連作もワクワクしました。
「使者の季節」はあとがきを読んで、さらにぞくっとしました。
投稿: three-bells | 2013年2月 8日 (金) 23時48分
three-bellsさん、お返事遅くなってごめんなさい!
もう読み終えたのですね。
久しぶりに恩田ワールド、楽しみました。
「交信」は・・・図書館本ではどうにもならないですよね(苦笑)
投稿: まゆ | 2013年2月10日 (日) 21時28分
まゆさん、やっと回ってきた図書館の本、裏表紙はコピーされてました。凄い司書の方だと感動いたしました。
さて内容ですが、とてもバラエティに富んでいるし、様々な彼女の側面を見ることも出来ます。恩田さんは舞踊や音楽にも精通しているのが判りますね。作風も様々。稲垣足穂風のスケッチににっこりし、「犬と猫」のショートショートは「こうだろうなあ」と思う。私は犬を飼っていたけれど彼らは飼い主につくというか。結婚したばかりの頃、家の庭に臨月近い猫が居付きました。、どうしようかと思っていたらふらーっと、出て行ってしまった。しばらくして生んだ子猫を見せに来た時はびっくりでした! この猫などは「家」に居ついていただけでしたよ。
「夜のピクニック」多部未華子が主演だったっけ。
好きなドラマなどに彼女が出ている事が多く、当惑しておりましたが、「劇場を出て」で少し、その印象が変わった気がします。
投稿: まるさん | 2013年3月20日 (水) 13時10分
まるさん、その図書館はすごいですね!
本当に、本が好きな司書さんがいらっしゃるんでしょうね。
恩田さんは、いろんな引き出しをたくさん持っているので、
こういう短編集は、宝石箱をひっくり返したようで、とても楽しめます。
でも、もったいない気も・・・。
やはり、恩田さんの醍醐味は長編だと思うので。
投稿: まゆ | 2013年3月22日 (金) 21時11分
「死者の季節」、あの事件が恩田さんにあんな関わりがあったとは、驚きでしたね。
本当にいろんな世界観が楽しめる楽しい短編集でした♪
設定に驚かされたり、ちょっとしたフレーズでドキッとさせてくれたり、そういう感じ方もあるのか、ってハッとさせられたり、恩田ワールドを堪能できました♪
投稿: EKKO | 2015年5月16日 (土) 11時49分
EKKOさん、恩田さんって基本的に長編作家だと思うんですが、
この短編集はよかったです。
それぞれ趣向は違うんだけど、粒ぞろいな感じで。
「死者の季節」は、実録怪談と解説しているとおり、
ちょっとゾッとさせられました。
投稿: まゆ | 2015年5月16日 (土) 20時58分