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2013年2月 3日 (日)

私と踊って

1968「私と踊って」 恩田陸   新潮社   ★★★★

「私と踊って」 その一言で、壁の花だった私を踊らせてくれた彼女。大人になり、舞踏家として名を成した彼女だったけれど・・・。(「私と踊って」)

しばらく恩田陸を読んでないなあと思っていたら、今年、立て続けに単行本が出て、嬉しい悲鳴。とりあえず、短編集の方から読みはじめ、あっという間に読み終わってしまいました。

表題作を含む、19編を収録。いずれも、「奇想」と呼ぶのがふさわしいような、なんともカテゴライズしづらい短編ばかり。まあ、いつものことですが。

恩田さんの書くものって、現実からほんの少し浮いているような感じがして、妙なリアリティと、それに相反する非現実感のバランスが、気持ち悪いんだけど癖になる、のです。私にとっては。そして、ところどころ、ハッとさせられるようなフレーズがあったり、ひどく共感してしまう部分があったり。今回も、それをつくづく感じました。

いちばんインパクトがあったのは、「死者の季節」。これだけは、小説というより随筆のような、作者の実体験が書かれたものだそうですが。あの事件をリアルタイムで知っている、ということが、ものすごい説得力をもつのです。

「聖なる氾濫」「海の泡より生まれて」「茜さす」は連作になっていて、もうこの設定が、ものすごく好みでした。奈良が大好きなので、「茜さす」が一番好きです。

ちょっとわかりにくかったけどおもしろかった「思い違い」、発想がおもしろい「忠告」と、対になる「協力」もなかなか。「二人でお茶を」も、好きな話です。

「東京の日記」は、珍しい横書き。最初は違和感がありましたが、徐々にそれがパラレルワールドの「現実からほんの少し浮いている」感じにフィットしていくのが、すごい。しかし、これ・・・ほんとにしゃれになりませんね。

「交信」は・・・これ、図書館本ではどうするんでしょう? 私は買ったから読めましたけど。うーん。

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恩田陸」カテゴリの記事

コメント

こんばんは!
今日、図書館の新刊本の棚に置いてあり
久しぶりの恩田さん♪るんるんと借りてきました。
まゆさんの感想を読み、ぬぬぬ?交信・・・ですか
やっぱりこんなところにあったのか!隙間をのぞいて発見しましたが読めません。
本屋さん頼りにします。
また読み終えたらゆっくりきます!

読みました♪
不思議なんだけれど妙なリアリティ。
まゆさんのおっしゃる通りです。
ちりばめられた連作もワクワクしました。
「使者の季節」はあとがきを読んで、さらにぞくっとしました。

three-bellsさん、お返事遅くなってごめんなさい!
もう読み終えたのですね。
久しぶりに恩田ワールド、楽しみました。
「交信」は・・・図書館本ではどうにもならないですよね(苦笑)

まゆさん、やっと回ってきた図書館の本、裏表紙はコピーされてました。凄い司書の方だと感動いたしました。
 さて内容ですが、とてもバラエティに富んでいるし、様々な彼女の側面を見ることも出来ます。恩田さんは舞踊や音楽にも精通しているのが判りますね。作風も様々。稲垣足穂風のスケッチににっこりし、「犬と猫」のショートショートは「こうだろうなあ」と思う。私は犬を飼っていたけれど彼らは飼い主につくというか。結婚したばかりの頃、家の庭に臨月近い猫が居付きました。、どうしようかと思っていたらふらーっと、出て行ってしまった。しばらくして生んだ子猫を見せに来た時はびっくりでした! この猫などは「家」に居ついていただけでしたよ。
「夜のピクニック」多部未華子が主演だったっけ。
好きなドラマなどに彼女が出ている事が多く、当惑しておりましたが、「劇場を出て」で少し、その印象が変わった気がします。

まるさん、その図書館はすごいですね!
本当に、本が好きな司書さんがいらっしゃるんでしょうね。

恩田さんは、いろんな引き出しをたくさん持っているので、
こういう短編集は、宝石箱をひっくり返したようで、とても楽しめます。
でも、もったいない気も・・・。
やはり、恩田さんの醍醐味は長編だと思うので。

「死者の季節」、あの事件が恩田さんにあんな関わりがあったとは、驚きでしたね。
本当にいろんな世界観が楽しめる楽しい短編集でした♪
設定に驚かされたり、ちょっとしたフレーズでドキッとさせてくれたり、そういう感じ方もあるのか、ってハッとさせられたり、恩田ワールドを堪能できました♪

EKKOさん、恩田さんって基本的に長編作家だと思うんですが、
この短編集はよかったです。
それぞれ趣向は違うんだけど、粒ぞろいな感じで。

「死者の季節」は、実録怪談と解説しているとおり、
ちょっとゾッとさせられました。

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