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2015年7月19日 (日)

過ぎ去りし王国の城

2327「過ぎ去りし王国の城」 宮部みゆき   角川書店   ★★★

中学3年の2月。高校への推薦入学が決まった尾垣真は、ひまな時間を持て余していた。そんな時、たまたま言った銀行で、一枚の絵に目が留まる。精密に描かれた、古城のデッサン。奇妙なほどその絵に心惹かれた真は、その絵の中に入り込めることに気づく・・・。その絵の中で自由に動き回るためには、自分の姿を写実的に描きこめばいいらしい。絵が苦手な真は、絵のうまい城田珠美に頼むことを思いつく。

ある女子高生が黒板にチョークで描いた絵。それが、この本の表紙に使われている・・・というのをテレビで見て、気になっていたのです。その絵が、あまりにもすごかったので。それで、書店で見つけて、つい買ってしまいました。

可もなく不可もなく、そこそこ普通に生きてきた真。成績もよく、絵もうまいけれど「ハブられて」いる珠美。二人は、アバターを使って絵の中に入り込む・・・というファンタジー設定。その絵の塔の中に一人の女の子がいることに気づき、またもう一人の探索者・パクさんと出会うことで、彼らは不思議で過酷でせつない体験をすることになります。

ファンタジーなのだけど、登場人物たちが背負っている現実は、現代社会のどこにでもありそうなことばかり。エピソードとして語られていくそれらが、ひどく重くのしかかってきます。女の子を救うことで、自分の人生も変えたいと願う珠美とパクさん。今の平穏な生活を変えたくないと思う真。終盤のこの対立は、どちらの気持ちもわかるだけに、読んでいてつらいものがありました。そして、どう決着するのか・・・。それは、読んでみてのお楽しみです。

ちょっとページが足りなかったのかなという気もして、★3つにしましたが、正確には3つ半ってとこです。物語の結末は、せめてこうであってほしいという、作者の祈りだと感じました。

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宮部みゆき」カテゴリの記事

コメント

こんばんは(^ー^)ノ
清々しい誤読感とは言いがたいのですが、頑張れ〜と応援したくなりました。
虐待、いじめ、、、どんなに読んでも切ないです。
作者の祈りをかんじました。

chiiさん、こんばんは。
そうですね。応援したくなる感じ、わかります。
彼らが現実世界で自分らしく生きていってほしいと思わずにはいられませんでした。

まゆさん、宮部さんはいつも、若い人達にメッセージを発していると思います。
 「今が辛くても、楽しくなくても、人生は十代で全てが決まる訳じゃない」
 二人の中学生は、とても聡明だから、どんな理不尽も悲しみも乗り越えて行かれると思います。・・・いじめとか虐待とか、無力な子供たちに圧し掛かる恐ろしい暴力。
 現実でも本当に嫌な事件が多く、周囲でもいじめや不登校の話があります。

 表紙、白墨で書いた絵なんですね!
 何となく、不気味でしかも、哀愁に満ちていますよね。
 シャーリィ・ジャクソン「ずっとお城でくらしてる」
 何となく気になる作品です、

まるさん、若い人たちへのメッセージ…ほんとにそうですね。
二人の置かれた状況はリアルすぎて、読んでいてつらいものがありました。
でも、なんとか生きていってほしいと、願わずにはいられません。

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