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2016年6月

2016年6月21日 (火)

下町ロケット2 ガウディ計画

2445「下町ロケット2 ガウディ計画」 池井戸潤   小学館   ★★★★

佃製作所をわけあって去った真野が、新たな仕事をもたらした。それは、医療という新しい分野に佃たちを誘うものだった。ロケット品質は、果たして医療に通用するのか。さらに、ライバル・サヤマ製作所が現れ・・・。

いまさらですが、読みました。

ドラマを見ていたので、脳内キャスティングはそのまま。ストーリーもドラマとほぼ変わらないので、ドラマの場面がフラッシュバックしていました。

ものづくりというものを、ここまでエンタテイメントとして読みごたえのある作品に仕上げるのは、さすがですね。もっとも、ドラマを先に見ていなかったら、ちょっとついていけないところはあったかもしれません(池井戸作品にはよくあるパターン)。

熱い男たちのドラマなんですが(あ、女性も若干)、それがうっとうしくない、絶妙のさじ加減、楽しませていただきました。

2016年6月20日 (月)

なぜ独裁はなくならないのか

2444「なぜ独裁はなくならないのか」 千野境子   国土社   ★★★

副題「世界の動きと独裁者インタビュー」。アラブの春をはじめ、東欧、中南米、そしてヒトラーまで、独裁者に迫った記録。

ジャーナリストの著者が書いたものならわかりやすいかなと思ったのですが、意外とてこずりました(苦笑) 

というのは、私に基礎知識がないからです。アラブの春に興味があったので手に取ったのですが、う~ん。むしろ、東欧やキューバ、フィリピンのイメルダ夫人や、ヒトラーの話がおもしろかったです。

しかし、なぜ独裁はなくならないのか。明確は答えは見つけられませんでした。でも、独裁を望む心理というのもたしかに民衆の側にあるのだということは、わかりました。恐ろしいことだけれど。

2016年6月17日 (金)

パンプキン! 模擬原爆の夏

2443「パンプキン! 模擬原爆の夏」 令丈ヒロ子   講談社   ★★★

模擬原爆って何? 小学5年生のヒロカは、いとこのたくみから不思議な言葉を聞く。興味をもったヒロカは、戦争のことを調べ始めるが・・・。

児童書ですが、前から気になっていた本です。

模擬原爆は、通称パンプキン爆弾。原爆投下の練習のために、日本全国に落とされた爆弾のことです。当然、爆弾ですから、爆発します。これによって亡くなった方々もいます。

全然、知りませんでした。戦争についてはちょっとした知識をもっているつもりでしたが、「知っているつもり」がいかに浅はかか、痛感させられました。

短い話ですぐ読めるので、大人の方にも読んでほしいです。私たちが知らねばならないこと、まだまだいっぱいあるのでしょうね・・・。

2016年6月12日 (日)

エストニア紀行

2442「エストニア紀行」 梨木香歩   新潮文庫   ★★★★

バルト海に面した国・エストニア。他国に支配された歴史をもつ小国は、豊かな自然と文化が息づく場所だった。

副題「森の苔・庭の木漏れ日・海の葦」。印象的な虹の写真を表紙に戴いた紀行文です。

エストニアについては、よく知りません。なんとなく心惹かれるものはあるのですが、今まで特にこれといって知ろうとはしませんでした。

梨木さんの視線は、ありとあらゆるものに向かいます。町並みや、そこに暮らす人々、森の様子、動植物の在り様などなど。それを読んでいると、いつのまにかエストニアを自分も旅しているような気分になります。

そして、どんどん深化していくその視線は、いつか地球規模にまで拡大し、飛躍します。生きることの意味。この世界で生きることの意味。そんなものを考えさせられます。

一冊の本としては短いものなのですが、梨木さんからのメッセージは膨大で、まだ消化しきれていません。じっくりかみしめていきたいと思います。

2016年6月11日 (土)

アンネ・フランクの記憶

2441「アンネ・フランクの記憶」 小川洋子   角川文庫   ★★★★★

「アンネの日記」との出会いが、作家になるきっかけでもあった小川洋子。彼女が実際にアンネの足跡をたどった旅の記録。

仕事がらみで、小川洋子を続けて読みました。前日読んだ「偶然の祝福」は、語り手が小説家なのですが、その中にちりばめられたエピソードの根っこが随所に感じられて、予想外の深みを感じることになりました。

さて、読んでいて何度も泣きそうになりました。感傷的な意味ではなく、何かを強く感じているのだけど、それがうまく言葉にならなくて、涙になってあふれ出そうになる・・・そんな感じです。小川さんも、実際、旅の中でそんな思いを味わっている場面があります。アンネたちの支援者であったミープさんと会った時とかに。

アンネ・フランクの隠れ家やアウシュビッツをはじめ、アンネの痕跡をたどるための場所をめぐり、ミープさんやアンネの友人・ジャクリーヌさんと会い、小川さんが感じたことをまっすぐに丁寧に書いた、そんな旅行記です。

歴史のどうのこうのではなく、「書くこと」が特別だったひとりの女の子が生きて、書いて、そして死んでいったという事実をたどる、そんな旅です。でも、いやおうなしにその時代や、そこに生きていた人々の無数の思いが行間からあふれてくるのです。

「書く」ことが好きで、アンネに共感と反感を抱いたことのある少女だった私も、あのころに戻って一緒に旅をした気がします。小川さんの祈りは、私の祈りでもあります。

しみじみと、読んでよかった・・・と思える一冊でした。

2016年6月10日 (金)

偶然の祝福

2440「偶然の祝福」 小川洋子   角川文庫   ★★★★

「私」の周りには、いつも失踪者がいた。その一番身近な人は、伯母だった。・・・小説家の「私」が失ったもの。その美しさ、せつなさ。それらは、ゆるやかに「私」を形作っていく。

「失踪者の王国」「盗作」「「キリコさんの失敗」「エーデルワイス」「涙腺水晶結石症」「時計工場」「蘇生」・・・7つの連作短編です。

時系列になっているわけではなく、その時々に描かれる断片から、徐々に「私」が浮かび上がってきます。両親のこと、弟のこと、恋人のこと、息子のこと、愛犬アポロのこと・・・。

いちばん好きなのは、「キリコさんの失敗」です。これは、ものを書くことに執着を感じたことのある人ならば、すごく共感できるのではないでしょうか。誕生日にもらった万年筆がきっかけで、「書く」ことにめざめた少女の物語です。

私は小川作品はそれほど読んでいないのですが、今まで、現実から一歩だけ片足を踏み出したような世界で展開する物語という印象をもっていました。今回、小川作品は「何かを失うこと」を描くものなのではないかという思いを強くしました。もう戻ってこないもの、かえらぬ時間、人、物・・・。そのはかなさとせつなさが、美しく結晶しているのが、小川作品の魅力なのではないか、と。

そして、物語を読むたのしみを、じゅうぶんに味わわせてくれる作品なのです。

2016年6月 5日 (日)

オール・ユー・ニード・イズ・ラブ 東京バンドワゴン

2439「オール・ユー・ニード・イズ・ラブ 東京バンドワゴン」 小路幸也   集英社文庫   ★★★★

堀田家の子供たちはすくすく育ち、今日もまたにぎやかな一日が始まる。そして、古書店「東京バンドワゴン」に今日もやってくる訳ありの客たち。さて、今回巻き込まれる事件とは・・・。

シリーズ第9弾。

いつもながらの堀田家とその周辺の人々ですが、その「いつもながら」が実は貴重なことだ・・・という、サチおばあちゃんのメッセージが、今回はやけに胸にひびきました。

店にやってくる人々の抱えるいろんな問題に積極的に巻き込まれ、それを解決しちゃう勘一をはじめとする堀田家の面々。そんなにうまくいくかーい!とツッコみつつ、でも、癒されるんですよね。

もちろん、すべてがいい方向にいくとは限らないわけで、まさに「とかくままならないのが人生」なわけで。

それでも、元気に生活していく堀田家のパワーに、こちらまで元気をもらいました。

2016年6月 4日 (土)

クラスメイツ<後期>

2438「クラスメイツ<後期>」 森絵都   偕成社   ★★★★

問題だらけの1年A組。残すところはあと半年。彼らのクラスは、いったいどうなる?

久保由佳、心平、田町、日向子、ノムさん、このちゃん、近藤、楓雅、レイミー、真琴、イタル、ヒロ。今回は、彼らが主役。

前期は脇役だった彼らが、いよいよ主役に。もちろん、前期で主役だった子たちも登場して、それぞれに「変化」を見せます。

不登校になっていた田町の話や、福祉施設に体験にいったこのちゃんの話が印象的でした。

彼らは、すごく純粋。中学生って、こういう時代なんだなあと、つくづく思いました。日常はそんなこと思いもしませんけど(苦笑) 職業柄、学校ものは敬遠しがちなんですけど、これは気持ちよく読めました。

ラストはどうするのかなと思ってたら、そうきましたか。いいですね、こんな感じ。

2016年6月 3日 (金)

クラスメイツ<前期>

2437「クラスメイツ<前期>」 森絵都   偕成社   ★★★★

公立の北見第二中学校。1年A組24人それぞれを主人公にした24のストーリー前編。

森絵都さんを読むのは久しぶりです。

まず、アイディアがおもしろいな、と前から気になっていて。

前編は、4月から9月まで。千鶴、しほりん、蒼太、ハセカン、里緒、アリス、吉田くん、陸、ゆうか、美奈、敬太郎、タボの12人が主人公。

ごくごく普通の子たち。どこにでもいそうで、どこでもありそうな出来事の連続。もちろん、ちょっとした事件は起こるけど。イマドキの子というより、親世代の私でも「ああ、そうだよなあ」と共感できてしまうのです。

それに、主人公が変わると、さっきまで主人公だった子が脇役になって、別の面を見せたりする。当たり前のことなんだけど、それがすごくおもしろかったです。同じ場面でも、視点が違うと全然違うものに見えたり。

一編一編、どこまで書くかって難しい気がするのですが、これは書きすぎないところでさらっと終わりになる。そのバランス感覚がすごく好きでした。

2016年6月 1日 (水)

タマゴマジック

2436「タマゴマジック」 恩田陸   河北新報出版センター   ★★★★

空からブリキの卵が降ってきた。それが孵ったとき、起こったこととは・・・。東北を舞台にした恩田ワールド。

恩田さんにしては普通のタイトルだなあと思いつつ手に取りました。中身は、やっぱり恩田ワールド炸裂してました。

小説「魔術師一九九九」と「魔術師二〇一六」の間に、河北新報(宮城県中心のローカル紙)に連載された「ブリキの卵」と、エッセイ「この世は少し不思議」をサンドイッチした構成。ちなみに、「ブリキ~」と「この世は~」は、連載一回分ずつ交互に掲載されています。

「魔術師一九九九」は、『象と耳鳴り』の「魔術師」と同じものです。関根多佳雄(わかる人はわかりますね)が登場します。舞台となるS市は、もちろん仙台市。泉市と合併して政令指定都市になったまさにその時期、私は仙台に住んでいたので、この独特の空気は、すごくよくわかります。都市そのものが肥大しようとしているかのような感覚。漠然とした不安と熱気。

そして、「ブリキの卵」は、そのS市を舞台にしたSFっぽい話。これ、フィクションですよね、恩田さん。実際の地名等出てくるので、なんだかリアリティがあって、怖いんですけど。

さらに、「この世は少し不思議」を読んでいると、何が起こってもおかしくないような「場」ができていくような気がして。

最後の「魔術師二〇一六」は、震災を経たS市が舞台。多佳雄の長男・関根春が登場します。震災は都市に何をもたらしたのか。人々は、どう向き合ってきたのか。・・・これを読んでいて、私は泣きそうになりました。恩田さんは当時東北にいたわけではないだろうに、どうしてこんなに生々しい気持ちが書けるのだろう、と。

まあ、今回は久々に関根ファミリーに会えたのが、個人的にはすごくうれしかったのです。

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