« 2016年7月 | トップページ | 2016年9月 »

2016年8月

2016年8月28日 (日)

ライムライト 天切り松闇がたり第五巻

2464「ライムライト 天切り松闇がたり第五巻」 浅田次郎   集英社文庫   ★★★★

いわずと知れた天切り松が物語る、盗人たちの痛快な生き様。待ってましたの第5巻!

「男意気初春義理事(おとこいきはるのとむらい)」「月光価千金」「箱師勘兵衛」「薔薇窓」「琥珀色の涙」「ライムライト」の6編。

相も変わらずかっこいい目細の安吉親分とその子分たちが、大活躍します。今回は、少々年をとってきた兄貴分たちの姿が寂しかったですが。

振袖おこんと目細の親分の出会いが描かれた「月光価千金」、黄不動の栄治の育ての父が亡くなる「琥珀色の涙」、チャップリン暗殺計画に百面相の書生常が立ち向かう「ライムライト」が印象的でした。

特に「琥珀色の涙」には泣かされました。相変わらず、浅田さん、こういうのめちゃくちゃうまい・・・。

2016年8月15日 (月)

新 怖い絵

2463「新 怖い絵」 中野京子   KADOKAWA   ★★★★

中野京子の「怖い絵」シリーズ、新章スタート!

もう終わっちゃったかと思っていた大好きなシリーズ、再開です。いつもながら、幅広い知識で楽しませてくださいます。

フリーダ・カーロが取り上げられたのが、うれしかったです(すごく興味のある画家なので)。

今回取り上げられた20の作品のうち、知っているのはごくわずか。あとは、今回、初めて見た絵です。その中で、一番印象的だったのは、ゲイシー「自画像」。実はこの人、画家ではありません。その正体は・・・。怖いですよ。

2016年8月12日 (金)

暗幕のゲルニカ

2462「暗幕のゲルニカ」 原田マハ   新潮社   ★★★★

ニューヨーク近代美術館のキュレーターである瑤子は、ピカソの「ゲルニカ」を、プラド美術館から借り受けるべく奔走していた。それは、9・11のテロで亡くなった夫のためでもあった。しかし、交渉はうまくいかず、さらに衝撃的な出来事が・・・。

「楽園のカンヴァス」「ジヴェルニーの食卓」を経て、ここにたどり着いたのね・・・と、感慨深く読みました。

「ゲルニカ」制作中のピカソを、その愛人・ドラの目を通して描くパートと、MoMAのキュレーター・瑤子がその「ゲルニカ」を借りるために奔走する現代のパートとが交互に描かれ、物語が展開していきます。

なんといっても圧巻なのは、「創造主」パブロ・ピカソの人物像です。1937年から1945年までの彼が描かれますが、決して「いい人」ではないのに、その魅力にとらわれてしまいました。また、彼の愛人として後世に名を残したドラ・マール(「泣く女」のモデル)の存在感も、物語に強い力を与えています。

彼らが「ゲルニカ」を制作する過程は、実に興味深く、原田マハ渾身の筆だったのではないでしょうか。

一方、現代パートは、ちょっとなじめない感じで読んでいたのですが、途中で「過去」と「現在」がつながったときには、鳥肌が立ちました。そういうことだったのか、と。

読み終えて、作品冒頭に掲げられたピカソの言葉の意味が、重く胸に残りました。

「芸術は、飾りではない。敵に立ち向かうための武器なのだ。」

2016年8月 7日 (日)

倒れるときは前のめり

2461「倒れるときは前のめり」 有川浩   角川書店   ★★★★

有川浩の初エッセイ集。

好きな作家さんのエッセイを読むのは楽しいものです。

有川浩という人は、自分が言葉を発するということに対して、非常に自覚的な人だということを再確認させられました。その覚悟は、さすがだと思います。このエッセイ集のタイトルがぴったりな気がします。

印象的だったのは、東日本大震災に関する一連の記述。阪神・淡路大震災を経験した有川さんは、経験者だから言えることを必死で発信していたそうです。特に「自粛」が何の役にも立たないということを。

それで思い出しましたが、あの当時、岩手県でも私のような内陸在住者は、ひどく複雑な思いを抱えて、鬱屈した毎日を過ごしていました。沿岸部のように津波の被害を受けていない私たちは、被災者ではない。でも、普通の生活を送るのはなんだか申し訳ない。だから、本も読めなかったし、お酒も飲めませんでした。

借りっぱなしだった図書館本を返しに行った際、館長さんとお会いして、「こういうときほど、本をどんどん借りていきなさい。返すのはいつでもいいから」と言われ、救われる思いがしたこと。

後ろめたい思いもあったけれど、気分転換をしたくて、隣県の温泉宿に行った際、岩手から来たと聞いて、とても丁寧かつ心温まるサービスをしてくれたスタッフの方々。私たちは被災者じゃないので・・・と言ったのに、「いえいえ、岩手は大変だったでしょう。地震も大きかったし」と、宿を出るときはみなさんで見送ってくださった。

そんなことを思い出しました。

自分の言葉で物申すのが、どんどん難しくなっている時代。それでも、覚悟をもちつつ、発信することをやめない有川さんの「強さ」を尊敬します。

2016年8月 6日 (土)

真実の10メートル手前

2460「真実の10メートル手前」 米澤穂信   東京創元社   ★★★★

太刀洗万智がジャーナリストとして追った6つの事件。「真実」を追った彼女に見えたこの世の景色とは・・・。

ものすごく読みたかった一冊です。「さよなら妖精」「王とサーカス」に続く、太刀洗万智の物語。

私は万智みたいなタイプに弱いようです。この短編集でも、すっかり魅せられてしまいました。

「真実の10メートル手前」「正義漢」「恋累心中」「名を刻む死」「ナイフを失われた思い出の中に」「綱渡りの成功例」の6篇。

それぞれに万智らしさがあふれていますが、「さよなら妖精」のマーヤの姉が登場する「ナイフを~」は、やはり「太刀洗万智」というキャラクタを理解するのに一番かもしれません。「名を刻む死」や「綱渡りの成功例」も、フリージャーナリストの万智の有り様を、実に印象的に描いています。

表題作(このタイトルが秀逸!)の原型は、「王とサーカス」の序章として書かれたものだったそうです。なるほど、この事件があって、彼女は・・・と、なんとも言えない気持ちになりました。

やりきれない事件は現実でも多いけれど、「やりきれない」という言葉で記号化して、自分と距離を置こうとすることを、万智は決して良しとしない。その生き様に、激しくあこがれます。

そういえば、「さよなら妖精」では、万智は「せんどー」と呼ばれていたのでしたね。「正義漢」に登場したのは、あの彼でしょうかね。

できることなら、万智の物語をもっと読みたいと思います。ところで、米澤さん、あのスイーツシリーズ、いつか書いてくださいますよね?

2016年8月 2日 (火)

サブマリン

2459「サブマリン」 伊坂幸太郎   講談社   ★★★★

家裁調査官の武藤は、無免許運転で人をひいてしまった棚岡少年の事件を担当している。ところが、上司の陣内にひっかきまわされ・・・。その挙句に見えてきた「真実」は。

「チルドレン」の世界、ふたたび。

いつもいつも、伊坂さんの物語の設定は、息が詰まりそうになるほど苦しい。どうしても考えてしまうのだ。「もし、私ならどうする?」

今回も、そんなふうでした。その苦しさに風穴をあけてくれるのが、陣内。普通の人は決して口にしないようなことを言い、ありえない行動に走る。でも、それが私たちの苦しさを救ってくれるのです。

ただ、現実に陣内がそばにいたら、すごく嫌でしょうけれど(笑)

こんなに重いテーマを扱って、エンタメ作品として成立させる伊坂さんの手腕はさすがです(いつものことですが)。でも、やっぱりどこかで「で?あんたならどうするの?」と問われている気がするのです。

« 2016年7月 | トップページ | 2016年9月 »

2017年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

カテゴリー