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2016年9月

2016年9月30日 (金)

関ヶ原

2473「関ヶ原」 司馬遼太郎   新潮文庫   ★★★★

秀吉亡き後、天下は揺れ動いている。豊臣家の天下を守ろうとする石田三成は、徳川家康と激しく対立。諸侯は右往左往している。三成の家老・島左近は、三成のために奔走するが・・・。

いやあ、長かった・・・。文庫で3巻だから、ある程度の長さは覚悟していましたが、とにかく関ヶ原に行くまでが長い(苦笑) 「真田丸」で関ヶ原が40秒で終わってしまった衝撃で、つい手にとってしまったこの本でしたが、関ヶ原の戦いに行くまでが長くて長くて。

冒頭が島左近で始まるので、三成方の話が中心かと思えば(ある意味そうなのですが)、徳川方や、それぞれの側についた諸侯の動向なども描かれていて、読み進めるにつれて、それがめっぽうおもしろくなってくるのでした。もちろん、脳内イメージは真田丸のキャストで(笑)

それにしても、三成・・・。真田丸でもかなりの人づきあい下手っぷりでしたが、こちらもまたひどい。優秀な人なのですよね。悪人ではない。でも、優秀すぎるからやらかしてしまう、その人情の機微が、なんとも言えなかったです。

これを読んでいるあいだ、ちょうど真田丸では父・昌幸の最期が描かれたわけですが。「軍団をひとつの塊と思うな。一人ひとりに思いがある」という台詞に、ハッとしました。まさに、この物語がそうではないですか。歴史は人が編んでいくものなのだと、・・・そして、それぞれが与えられた場で必死に生きていたのだと、痛感させられました。

2016年9月24日 (土)

美術品でたどるマリー・アントワネットの生涯

2472「美術品でたどるマリー・アントワネットの生涯」 中野京子   NHK出版新書   ★★★

来月から、「マリー・アントワネット展」が東京であるのですね。それにさきがける形で出版された本書。

中野京子さんのアントワネットに対するスタンスは、今までの著書でわかっているので、安心して読めました。

アントワネットの生涯をたどると、歴史のおもしろさというか、運命の皮肉というか、そんなことをつくづく考えさせられます。

「美術品でたどる」ということでしたが、やっぱり絵画が多目かな。しかし、「ヴィジュアル版」とうたうくらいなら、オールカラーにしてほしかったです。

2016年9月19日 (月)

卯月の雪のレター・レター

2471「卯月の雪のレター・レター」 相沢沙呼   創元推理文庫   ★★★★

祖父のもとに届いた一通の手紙。それは、6年前に亡くなった祖母からのものなのか? しかも、その内容はなんだかよくわからないもので・・・。孫の小袖は、意外なところからその真相を知ることになる。

「小生意気リゲット」「こそどろストレイ」「チョコレートに、躍る指」「狼少女の帰還」「卯月の雪のレター・レター」の5編を収録。いずれも、青春ミステリの秀作です。

たとえば姉妹や友人、近しい間柄だからこそのもどかしさとか。未来が見えない焦りとか。周りにとけこめないことへの苛立ちとか。誰もが何かしら感じたことがある思いが立ち込めている、そんな物語たちです。

そして、見事にミステリ。日常の謎系なのだけど、物語としての強さと、ミステリとの按配が実によく、読み応えがありました。

物語として好きだったのは、やはり表題作ですかね。私も、よく言われました。「本を読んでると頭がいい」って。そんなことはありません(笑)

ミステリとしては、「チョコレート~」が、ちょっと予想を超えていました。う~ん、やられた。物語としては、すごくせつないんですけどね。

創元推理文庫、3連投の3日間でした。いや、単に積読していたという・・・。まだあるのですよ、実は。

2016年9月18日 (日)

ディスリスペクトの迎撃

2470「ディスリスペクトの迎撃」 竹内真   創元推理文庫   ★★★

売れっ子ミステリ作家・辻堂珊瑚朗の昔の作品がドラマ化されるという。ところが、何やらトラブル続きで・・・。銀座の文壇バー・ミューズのミーコママと、甥っ子のボーイ・了を聞き手に、サンゴ先生が華麗に謎を解くシリーズ第2弾。

「チェスセットの暗号」「ファンサイトの挑戦状」「トラブルメーカーの出題」「ポー・トースターの誘拐」「ディスリスペクトの迎撃」の5編。今回は、サンゴ先生の推理小説がドラマ化されるという話題に絡めての連作です。

安楽椅子探偵ものは好きなんですが、なんといっても文壇バーの世界が魅力的。まったく未知の世界ですが、その雰囲気を楽しみながら読んでます。

「ディスリスペクト~」というタイトルに、なんのこっちゃ?となってましたが、読んで納得。さすがです、サンゴ先生。

残念ながら、第1話のチェスの話はよくわかりませんでした。将棋も全然わからない人間なので・・・悲しい。

2016年9月17日 (土)

星読島に星は流れた

2469「星読島に星は流れた」 久住四季   創元推理文庫   ★★★★

その島には、隕石が降ってくるという。ボストン近郊の町の医師・加藤盤は、その島で行われる天体観測の集まりに参加することになった。絶海の孤島に果たして隕石は降ってくるのか。ところが、三日目に、参加者の一人が遺体で見つかり・・・。

創元推理文庫の新刊です。米澤穂信の推薦文がついていたのと、表紙がきれいだったのとで、迷わず購入。当たりでした。

数年ごとに隕石が、大西洋上の小さな島に必ず降ってくる・・・?これってSFじゃないよねえ・・・?と思いながら、読み進めました。

登場人物がやや類型的な気がするとか、ツッコミどころがないわけではないのですが、ミステリとして、物語として、じゅうぶん美しくできあがっていると思います。何を書いてもネタバレになりそうで、怖くて書けません(笑)

絶海の孤島という、ありがちな設定ですが、それがいつのまにか説得力のある設定になっているのです。お見事。米澤穂信いわく「ミステリを読む楽しみとはこういうものだった」・・・納得です。

2016年9月13日 (火)

姉・米原万里

2468「姉・米原万里」 井上ユリ   文藝春秋   ★★★★

副題「思い出は食欲と共に」。

米原さんの思い出を、実の妹・ユリさんが、食べ物を通して書いたエッセイ。

もう、ユリさんじゃなきゃ書けないというものでした。万里さんが私たちに見せていたのとはまた違う顔が見えてきて、なんというか・・・感無量でした。

でも、お人柄なんでしょうね。全然、しめっぽくならない。そういうところは、よく似た姉妹なのだなと思います。

米原万里ファンには必読の書です。

2016年9月10日 (土)

女官

2467「女官」 山川三千子   講談社学術文庫   ★★★★

副題「明治宮中出仕の記」。

どこかで読んだことがあるような・・・と思ったら、「明治宮廷のさんざめき」に引用されていた文献の一つでした。

明治天皇皇后のおそば近くに仕えた女官の貴重な証言です。出仕したのは明治42年なので、それほど長い期間ではないのですが、それまで決して語られることのなかった「奥」の様子が記されたものとして、その貴重さはわかります。

この手記が発表されたのが、1960年。もう昭和の世ですが、なかなかセンセーショナルだったのではないかと。かなりつっこんだところまで書いている部分もあるので。

当時の宮中の様子や、明治天皇夫妻の人となりを知るうえでは、非常におもしろい資料です。

2016年9月 3日 (土)

一〇〇年前の女の子

2466「一〇〇年前の女の子」 船曳由美   文春文庫   ★★★★★

明治四十二年、夏。雷の日に生まれた女の子・寺崎テイは、母と引き離されて育った・・・。著者の母の記憶をたどり、当時の生活風俗なども記録した物語。

あとがきを読んでいて、涙が止まりませんでした。「母恋の物語」としても読めるのですが、当時の村の風習や日常の生活の記録として、実におもしろい物語です。個人的には、ものすごく懐かしい、自分の心のふるさとに帰ったような気持ちになりました。

私の母は昭和の生まれですが、田舎の山奥育ちで、テイさんが経験したのと似たような育ちをしたと思われます。私もそれを聞かされて育ちました。年中行事のあれこれや、日々の生活の大変だったこと、楽しかったこと。自然の中で、自然と共存していた日々のこと。その記憶は私の中でも鮮明に息づいており、著者がこの本を書きたいと強く思った気持ちが、わかるような気がしたのです。

なんともいえず、懐かしい気持ちになり、気がつくと、涙がポロポロこぼれていました。

もちろん、私のような感傷的な気持ちになるのでなく、100年前の日本の風景のひとつとして読めば、それはそれでじゅうぶんおもしろいと思います。

この本、出版当時から気になっていて、文庫になってから買ったのですが、ずっと手元においておきたい一冊になりました。買ってよかったです。

2016年9月 1日 (木)

杉の柩

2465「杉の柩」 アガサ・クリスティー   ハヤカワ文庫   ★★★★

ロディーとエリノア。婚約中のカップルの前に現れた美しいメアリイ。ロディーはたちまちメアリィに心奪われてしまい、婚約は解消された。そして、エリノアの作った食事を食べたメアリイが死に、嫌疑は当然のごとくエリノアにかかった。果たしてエリノアは「黒」か「白」か。名探偵・ポアロが真相に挑む。

久しぶりのクリスティです。

ありがちな設定なのだけど、読んでいてドキドキしました。だって、どう考えても、エリノアが黒としか思えない状況なのだもの。しかし、そう簡単にはいかないだろうとは思うわけで。

じゃあ、犯人になり得るのは誰?と考えると、これがなかなか悩ましかったり。

ポアロ登場前の第一部でもじゅうぶんおもしろかったのですが、彼が登場して、それまで見えなかった「裏」が見えてくると、また・・・。

なんというか、恋愛と結婚というものの本質にせまってくるような話でしたねえ。

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