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2016年10月

2016年10月29日 (土)

もののけ物語

2483「もののけ物語」 加門七海   角川文庫   ★★★★

なぜか買ってしまった「もの」たちは、なぜか不思議な体験をさせてくれて・・・。実録怪談エッセイ。

「もの」との不思議なご縁を感じる「もののけ物語」、怪にまつわる日常を記録した「怪談徒然日記」、主に旅先で遭遇した不思議譚「ほんとだよ」の3本立て。

加門さんの実話怪談は、そこにどっぷり浸ってしまわない、地に足の着いた感じが好きなので、見かけると買ってしまいます。でも、たいがい、発売当初は存在に気づかないんですよね。どうしてでしょう。これも、文庫化から2年以上たってます・・・。

今回は、「怪談徒然日記」が怖かったです。一つ一つは、ネタにならない程度の小さな話なんですが、数を重ねると、ねえ。でも、出てくる「もの」を蹴っ飛ばす加門さん、いいなあ(笑)

しかし、これを読んでいる間、なんだか寒くて寒くてしょうがなくて、読み終わったとたん、日が差してきて、体もポカポカしてきたのは・・・偶然ですよね、きっと。

2016年10月26日 (水)

ショパン・コンクール

2482「ショパン・コンクール」 青柳いづみこ   中公新書   ★★★

5年に一度のショパン・コンクール。ピアニストにとっての憧れの舞台では、何が起こっているのか。2015年のコンクールのレポート。

恩田陸「蜜蜂と遠雷」を読んで、これにも手を出しました。

ショパンだけを弾くという特殊なコンクールだけれど、知名度はたぶん一番という。コンクールの過酷さは「のだめカンタービレ」と「蜜蜂と遠雷」くらいでの知識しかないのですが、あらためてその凄まじさに圧倒されました。

小説や漫画に負けないくらいの魅力的な個性をもつコンテスタントたちも登場しますが、人数が多くて、何がなんだか(カタカナ名前は覚えるの苦手なもので)。

筆者は、ピアノ教授で著述業もなさる方なようですが、この本では、審査の面に焦点をあてています。微妙な、時には不可解な採点がなされるコンクールというものを、予選からずっと通して聴いたレポートです。

「楽譜どおり」は正しいのか、コンテスタントたちの苦労、審査員たちの思惑、使われるピアノと調律師の仕事などなど、興味深い着眼点がたくさんありました。ただ、演奏を言葉で表現するのって難しいですね。それを考えると、「蜜蜂と~」の恩田陸はすごいです。

2016年10月22日 (土)

あきない世傳 金と銀 源流篇

2481「あきない世傳 金と銀 源流篇」 高田郁   ハルキ文庫   ★★★

村の学者の娘・幸は、父の死によって大坂天満の呉服商・五鈴屋の女衆として奉公することに。おなごの身ながら学ぶことに興味をもつ幸だったが、奉公人の身ではそれはかなうべくもない夢だった。しかし、聡い幸に興味をもった番頭・治兵衛は、こっそり手ほどきをしてくれて・・・。

新シリーズですね。出てすぐ買ったのですが、積読してました。どうも商いってあまり興味がもてなくて(苦笑) でも、読み始めたらおもしろかったです。

田舎の学者の娘・幸。歳の離れた兄は幸の「学びたい」という気持ちの理解者だったけれど、若くして死んでしまいます。享保の大飢饉と、この兄の死と、さらに父の死が、幸の運命を大きく変えていきます。

摂津で家族むつまじく暮らしていた子どもが、いきなり奉公人になるつらさ。ただ、幸は奉公先でさほど理不尽な目には遭っていないですね。むしろ、「お家さん」の富久の覚えがめでたく、かわいがられています。それに、幸の才能に目をつける人たちも現れているし。

もっとも、まだ「源流」なので、幸の人生が本当に回りだすのは次巻以降でしょう。とりあえず、次も読んでみるかな。

2016年10月21日 (金)

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

2480「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」 加藤陽子   新潮文庫   ★★★★

日本人はなぜ、戦争への道を突き進んだのか。明治以降の四つの対外戦争を取り上げることで、見えてくるものとは。中高生への5日間の集中講義の記録。

小林秀雄賞受賞作。

正直言って、難しかったです。知らないことばっかり。私ってこんなにいろんなことを知らないんだなあと思いながら、5日以上かかってようやく読みました(実は、序章で一度ギブアップした)。

日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、太平洋戦争。このうち、多少なりとも知識があるのは太平洋戦争で、それですら第二次世界大戦という枠で見ると、とたんに混乱する始末。日清・日露は「坂の上の雲」で得た知識が大半だし、第一次世界大戦で日本が何をしたのかはほとんど知りませんでした・・・。

東大の教授が中高生に集中講義をしたこの内容、難しかったのですが、力技で読み進めていくうちに、とってもおもしろくなってきたのです。

私たちは歴史を「結果」から眺め、「こういう結果になったのはなぜか」を考えることが多い気がします。そのとき、「こういう結果になったのだから、当然こうだったに違いない」というバイアスがかかっていることが多いのではないでしょうか。そういうものの見方を、根底から覆してくれるような内容が、たくさん出てきます。

また、日本の歴史を考えるときに、日本のみに焦点をあてる癖もあるような気がしますが、他国との関わりは切っても切れないもので、そういう視点で見ていくと、意外な思考の流れが見えてきたりもします。

とにかく、「こういう結果」になるための答えを見つけるような講義ではなく、「そのとき、何が起こっていたのか」「当時の人たちはどう考えていたのか」というのを、史料から読み解き、「それでも」こういう結果にいたったのだ・・・という、歴史の見方というのはかくあるべきだと思わされるものでした。

もし、自分がその当時生きていたらどうしていたのか・・・。そういう視点で物事を見ていくことの大切さを痛感しました。

2016年10月12日 (水)

活版印刷三日月堂 星たちの栞

2479「活版印刷三日月堂」 ほしおさなえ   ポプラ文庫   ★★★★

「三日月堂」は昔ながらの活版印刷所。店主の弓子は、客の注文に応じて、活字を組み、印刷する。そこには、いろんな思いを抱えたお客がやってきて・・・。

「世界は森」「八月のコースター」「星たちの栞」「ひとつだけの活字」の4編。

第一話からやられました。女手ひとつで息子を育ててきたハルさん。その息子が大学生になり、家を出る話。それが、弓子さんが「三日月堂」を再稼動させるきっかけになって。いかにも泣かされる設定で、泣くもんかと思っていたのですが、ほろりときました。

どの話も、活版印刷ならではの味のある話で、とっても素敵。特に、「八月のコースター」は、こういう喫茶店に行ってみたいと思いました。うっとり。

ものすごく手間がかかる活版印刷。でも、その味わいってわかる気がします。そうして手間をかけて印刷していたころ、私たちはものをもっと大事にしていたのかもしれませんね。

この文庫、表紙がすごくきれいで、実は表紙買いしました(笑) 当たりでよかった~。

2016年10月10日 (月)

あの戦争から遠く離れて

2478「あの戦争から遠く離れて」 城戸久枝   文春文庫   ★★★★

父は、日本人戦争孤児だった。国交正常化前に奇跡の帰国を果たした父の人生をたどることで、著者は二つの国の歴史について、考えさせられることになる。

副題「私につながる歴史をたどる旅」。

NHKの「ファミリーヒストリー」という番組がけっこう好きなのですが、スタッフの取材力にいつも驚かされます。これは、いってみれば、著者が自力で「ファミリーヒストリー」をたどり、それをまとめたノンフィクションです。ずっと読みたいと思っていたものを、ようやく読めました。

前半は、著者の父・城戸幹さん(中国名・孫玉福)が中国で「孤児」となってから、日本に帰国し、日本人として生活するまでの人生を三人称でたどったものです。運よく優しい養母とめぐりあったものの、日本人であることがその人生を大きく狂わせて行くさま、文化大革命の中の危険と隣り合わせの日々など、まるで「大地の子」そのもの・・・と思って読んでいました。が、「大地の子」のドラマを見たお父さんの感想は、「こんなもんじゃなかった・・・」。当時の中国の状況というのは、想像を絶するものだったのですね。

後半は、著者の中国への留学体験と、その後、帰国した残留孤児たちとの関わりなど、著者の物語になっていきます。早期帰国した「残留孤児」を父に持ち、日本で生まれた著者は、徐々に中国に興味をもち、その地へ旅立ちます。そこで、父の「親戚」や友人たちと出会い、また、日本人への偏見とも向き合うことに。そうして彼女は、二つの国にまたがる自分の「縁」について考えざるを得なくなります。

あまりにも壮絶な現実に、なんと感想を書いていいのか、正直言ってよくわかりません。わかるのは、「知らないことが多すぎる」「知ろうとしていないことが多すぎる」ということでした。

中国残留孤児の帰国は、当時、大々的に報道されていたので、よく新聞等で読んでいたのですが、その後の彼らがどうしているのか、私は全然知りませんでした。また、城戸さんのお父さんのように、個人の努力で帰国した人がいたなんてことも、全く知りませんでした。それを知ることができただけでも、読んでよかったと思います。

城戸幹さんの人生は、私たちの世代からは想像を絶するものですが、こんな生き方をした日本人がいるのだということを、私たちは知るべきだと思います。そのもとになったのが、「あの戦争」だということも。

著者は、非常にフラットな立場で、二つの国をとらえています。そのスタンスが、見事だと思いました。

2016年10月 9日 (日)

戦国と宗教

2477「戦国と宗教」 神田千里   岩波新書   ★★★

戦乱のただなかで、戦国大名たちは宗教とどう向き合っていたのか。戦国は、信仰の時代だったのか?

かつては戦国マニアでしたが、実は一向一揆のこととか、キリシタン大名のこととか、よくわかっていなかったので、ちょっとお勉強。

主に、上杉謙信や武田信玄の「戦勝祈願」、一向一揆と信長との関わり、キリスト教に対する信長・秀吉の姿勢とキリシタン大名のことなどが書かれています。

戦国武将たちが神仏を信仰するのは、戦の勝敗が軍事力のみでなく、人間の力を超えた摂理によるものだと考えていたから、というのは、すごく納得できました。だからこそ、戦国と宗教は切っても切れないものなのですね。

信長と宗教のかかわりについても、まだわからないことが多いようですが、一向宗を目の敵にしていたとか、仏教を憎むあまりキリスト教を保護したとか、そういうことではない、と。その辺のことがわかってきたら、また新しい信長像が見えてくるのかも。

キリシタン大名も、家臣の承諾がなければ大名も入信できなかったというのは、なんか意外でした。

2016年10月 8日 (土)

遠い唇

2476「遠い唇」 北村薫   KADOKAWA   ★★★★

学生時代のコーヒーにまつわる思い出。それは、不思議な暗号が書かれた葉書。それが解読できたとき、わかったこととは・・・。

「遠い唇」「しりとり」「パトラッシュ」「解釈」「続・二銭銅貨」「ゴースト」「ビスケット」の7編を収録した短編集。あとがきによると、「謎と解明の物語」を集めたもの。

一番印象的だったのは、表題作「遠い唇」。暗号ものですが、物語としての味付けがとても素敵でした。そして、コーヒーが飲みたくなりました。

おおっ!と思ったのは、「ビスケット」。あの名探偵・巫弓彦が18年ぶりに登場します! 物語の中でも18年の時間が流れ、それはある残酷な事実を私たちにつきつけますが・・・。それでも、私は久しぶりに巫と、姫宮あゆみに会えて、すごく嬉しかったです。ちなみに、こちらはダイイング・メッセージもの。

それから、「解釈」は笑ってしまいました~。まさか、あの名作がそんなことに・・・(笑) 一番ウケたのは、「セリヌンティウスの人間以外の友人」でした。

2016年10月 2日 (日)

蜜蜂と遠雷

2475「蜜蜂と遠雷」 恩田陸   幻冬舎   ★★★★★

芳ヶ江国際ピアノコンクール。世界的にも有名なこのコンクールに、それぞれの思いを胸に集うコンテスタントたち。亡きピアニスト・ホフマンから届けられた「ギフト」とは、いったい何を意味するのか。今、コンクールの幕が上がる。

読んでいる途中から、完全に魂もっていかれてました。前半を読んだだけで、こんなに盛り上がって、緊張感も半端なくて、この先どうなるんだ?と思っていたら、後半はさらに加速し、物語は大きくうねり・・・。

本を読んでいるのに、ずっと音楽のなかに浸っていた気分。活字で音楽をあらわすってのは容易なことではないのに、コンサートホールの中に、あるいは演奏者の宇宙の中に、完全に「入って」いました。そう、舞台はほとんどコンクールが行われるホールの中。その数日間の物語なのです(ああ、恩田さん得意の限定された時空間の物語でもあるんだ)。

風間塵。栄伝亜夜。マサル・カルロス・レヴィ・アナトール、高島明石。4人のコンテスタントを軸に、物語は進みます。彼らはそれぞれ異なるバッググラウンドをもち、このコンクールに参加。そして・・・。

もうこれ以上は書きたくありません。どうか、この本を読んで、その奇跡を味わってください。

人が自分の生きる道を見出すというのはどういうことか、人とのかかわりとは何なのか・・・私は何度も目頭が熱くなりました。一番泣かされたのは、亜夜にですけれどね。

私は「六番目の小夜子」以来の恩田陸信者ですが(笑)、それをさっぴいても、これには★5つつけられます。

2016年10月 1日 (土)

静かな炎天

2474「静かな炎天」 若竹七海   文春文庫   ★★★★

女探偵・葉村晶は、古本屋でアルバイトをしながら、「白熊探偵社」の唯一の調査員をしている。そんな彼女がたまたま遭遇した大規模な自動車事故。その現場で晶が見た人物とは。

久しぶりの葉村晶シリーズです。今回は、「青い影」「静かな炎天」「熱海ブライトン・ロック」「副島さんは言っている」「血の凶作」「聖夜プラス1」の6作。7月から12月までの半年間、晶が依頼された事件を追います。

私としては、このシリーズはハードボイルドだと思っているのですが、どうなんでしょう。だって、晶はカッコよくて(四十肩だけど)、タフで、孤独で、自立してて。ひどい目にあうという、ハードボイルド探偵の条件も満たしているし。でも、どこかユーモラスな感じもするのですけれどね。

まるで事件に振り回されるようにして調査にあたる晶ですが、思わぬところから真実にたどりつく、その展開の妙がたまりません。

それから、晶の雇い主・富山さんとの掛け合いもおもしろい。

というところで、はたと気づいたのですが、私、この前作の「さよならの手口」を読んでないことに気づきました。買いに行かなきゃ。やっぱりこのシリーズは毒もあるけれど、好きなんですね。

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