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2017年3月

2017年3月21日 (火)

茨木のり子

2552「茨木のり子」 KAWADE夢ムック   河出書房新社   ★★★★

「没後10年 『言の葉』のちから」という副題の通り、詩人・茨木のり子をあらゆる角度から描き出したムック。代表詩選をはじめ、対談やエッセイ、論考などなど。未刊行の「川崎洋論」「工藤直子論」なども掲載。充実の内容です。

私が茨木さんの詩集でもっとも好きなのは、「歳月」です。死後に発表されたこの詩集で、私の中の茨木のり子のイメージは大きく変わりました。それまでの凛とした女性のイメージから、たおやかさが加わったというか。これほど情感豊かな詩を書く人だったのか・・・と、驚かされたのです。

最近、詩からも遠ざかっていましたが、また読みたくなってきました。

2017年3月20日 (月)

活版印刷三日月堂 海からの手紙

2551「活版印刷三日月堂 海からの手紙」 ほしおさなえ   ポプラ文庫   ★★★★

ある機会に目にした活版印刷の名刺に心惹かれた昌代は、その印刷所を訪れてみる。祖父のあとを引き継いだという店主の弓子と話しているうち、昌代はかつてやっていた銅版画を再び刷ってみることに・・・。(「海からの手紙」)

シリーズ第2作。「ちょうちょうの朗読会」「あわゆきのあと」「海からの手紙」「我らの西部劇」の4編。

どれも心に響く物語でした。活版印刷という時代に取り残されたようなものとの出会いが、人と人とをつなぎ、世界が広がっていく・・・。どの話もよかったのですが、「あわゆきのあと」には泣かされました。読み終えて、表紙の写真を見たら、もう・・・。

三日月堂に訪れるお客たちだけではなくって、弓子さんも彼らとの出会いで、自分の時計を進めているのですよね。

今回は、素敵な栞がついていました。なくさないようにしなくちゃ。

2017年3月19日 (日)

うた合わせ

2550「うた合わせ」 北村薫   新潮社   ★★★★

北村薫がテーマごとに選んだ現代短歌50組100首。それらに関わる随想。「北村薫の百人一首」です。

短歌からはなんとなく遠ざかっていて、現代短歌はほとんど知らない私ですが、たいへんおもしろく読みました。

冒頭に掲げられた一組の短歌だけでなく、そこから広がる世界がもう果てしなく広くて、深くて。北村先生の「謎解き」を堪能いたしました。

一気読みしてしまうのはもったいなくて、少しずつ少しずつ読んできましたが、とうとう終わり。でも、巻末の穂村弘・藤原龍一郎との鼎談を読むと、また始めに戻って読み返したくなります。

2017年3月17日 (金)

生きて帰ってきた男

2549「生きて帰ってきた男」 小熊英二   岩波新書   ★★★★

あるシベリア抑留者がたどった人生。それは、戦前・戦中・戦後の日本を映し出す鏡でもあった。筆者が父親の人生を取材することで、見えてきた「歴史」とは。

副題「ある日本兵の戦争と戦後」。第14回(2015年)小林秀雄賞受賞作。

予想と違う・・・それが、読みながらずっと感じていたことでした。もっとエモーショナルな書き方をされているのかと思っていたら、実に淡々と書かれているのです。意外でした。

それは、「生きて帰ってきた男」こと小熊謙二氏が、実に冷静に客観的に、ある意味冷めた目で現実を見ているからで、息子である筆者も、それに忠実であろうとしたからなのでしょう。

終戦まぎわに徴兵され、武器の一つも与えられずに満州へ送られた謙二氏は、そのままシベリアへ送られ、3年をそこで過ごします。徴兵されるまでの生活も決して裕福ではなく、兵隊としても落ちこぼれだった謙二氏は、「どん底」の生活を送るのです。シベリアから帰ってきてからも。

しかし、そこに変な悲壮感はなく、ただひたすら、生きるために働くわけです。いわゆる中産階級やインテリとかいう層とは全く無縁の、日本の庶民の多数派であっただろう謙二氏の生き方、ものの見方は、むしろ新鮮でした。そして、ものすごく腑に落ちました。きっと、大多数の人は、こんなふうに世の中を見ていたのかもしれない、と。

ここに描かれているのは、ドラマティックでもなんでもない人生です。しかし、その人生は、戦争によって大きく歪められたのは、事実です。淡々と語られる謙二氏の戦争に対する思い。それは、華々しく語られる物語よりも、重く響きます。これは、多くの人に読み継がれてほしい一冊です。

2017年3月13日 (月)

葬儀を終えて

2548「葬儀を終えて」 アガサ・クリスティー   ハヤカワ文庫   ★★★★

「だって、リチャードは殺されたんでしょう?」・・・リチャード・アバネシーの葬儀を終えた後、末妹のコーラが放った一言。そして、翌日、コーラは死体となって発見された。ポアロが見出した真実とは。

名作との評価が高いということで、おおいに期待して読みました。そして、期待は全く裏切られませんでした。

クリスティの構成・描写の巧みさにうならされました。うーん、すごい。見事にしてやられました。そういうことか・・・。読み終えると、すべて納得できるのです。

最初は登場人物の人間関係が頭に入ってこず、冒頭の家系図を何度も見ながらでしたが、前半はエントウイッスル弁護士がうまく人物紹介をしてくれて、ポアロが登場する中盤以降はするすると物語の中に入っていけました。

リチャードは本当に殺されたのか? コーラを殺したのは誰なのか? 次々続く「事件」の犯人は? ・・・すべてがわかったときには、ちょっと鳥肌がたちました。

今まで読んだポアロものの中でも、一、二を争うおもしろさでした。

2017年3月10日 (金)

狂乱廿四孝/双蝶闇草子

2547「狂乱廿四孝/双蝶闇草子」 北森鴻   創元推理文庫   ★★★

江戸から明治への過渡期に花咲いた名女形・澤村田之助。病で四肢を失いながらも舞台に立とうとする彼の周りで起こる血なまぐさい事件とは。

「狂乱廿四孝(きょうらんにじゅうしこう」は、以前に文庫化されたときに読みました。これで田之助のことを初めて知ったのでした。久しぶりの再読でしたが、全く覚えてませんでした(苦笑)

「双蝶闇草子(ふたつちょうやみぞうし)」は、「狂乱廿四孝」のその後の物語で、連載中に作者が急死したため、未完です。未完のミステリをよくぞまあ文庫に・・・と思いましたが。これからおもしろくなりそう!というところで終ってしまっているのが残念です。

これらは、絵師・河鍋暁斎をキーパーソンにした三部作になる予定だったとのこと。つくづく、それを読みたかったです。

2017年3月 8日 (水)

最良の嘘の最後のひと言

2546「最良の嘘の最後のひと言」 河野裕   創元推理文庫   ★★★

巨大IT企業・ハルウィンが、「超能力者」を採用する!? 年収八千万。ただし、採用者は一人。最終試験は3月31日の午後6時から。街中で、採用通知を奪い合う「試験」に臨むのは、7人。超能力者によるコン・ゲームの幕が上がる。

設定がめちゃくちゃおもしろそうだったので、手に取りました。

コン・ゲームって好きなんですよね。騙し騙されの繰り返し。しかも、超能力者たちだから、とんでもないことが起こったり。でも、本当に超能力なの?とか、疑いだせばキリがないのです。

登場人物がみんな嘘つきで、ひと癖もふた癖もあって、めまぐるしく状況が変わるので、頭の中も大混乱です(苦笑) 今回、一気読みできず、細切れに読んだので、余計に混乱・・・。

でも、最後にはお見事な決着を見せました。

テーマ曲(?)の「ジ・エンテーテイナー」、大好きな曲なんですよね。読んでいるあいだ、ずっと頭の中で鳴っていました。

初読みの作家さんなんですが、「サクラダリセット」とかの方なんですね。気になっているんだけど・・・この勢いで読んでしまいそう。

2017年3月 5日 (日)

ビブリア古書堂の事件手帖7

2545「ビブリア古書堂の事件手帖7」 三上延   メディアワークス文庫   ★★★★

栞子が奇妙な縁で関わることになったシェイクスピアの古書。栞子の家系にまつわる秘密を知ってしまった大輔は、栞子を必死に守ろうとするが・・・。

副題「栞子さんと果てない舞台」。シリーズ最終巻です。

前作で栞子の母の出生の秘密(?)が明らかになり、栞子と大輔の不思議な縁も明らかになり、いよいよ・・・という感じのクライマックス。今回は、シェイクスピア。しかも、栞子の祖父である亡き久我山尚大がからんでいる古書。そして、かつて久我山のもとで働いていた、怪しげな古物商・吉原が登場して・・・。

栞子と母・智恵子の真っ向勝負もあり、シリーズの今までの伏線がきれいに回収されていきます。

何がいいって、シリーズものとして長く続けられそうな題材なのに、きちんと終らせてくれたことです。そして、「古書にまつわるミステリ」というコンセプトを、最後まで守り通してくれたこと。

そして、ラストシーンは、やっぱり・・・そうですよね。こうでなきゃ。

というわけで、満足して読み終えました。作者にはスピンアウトの構想もあるようで・・・。それはそれで楽しみです。

2017年3月 3日 (金)

ひとり吹奏楽部

2544「ひとり吹奏楽部」 初野晴   角川文庫   ★★★★

清水南高校吹奏楽部の面々は、いずれも曲者ぞろい。ふだんはチカとハルタに振り回されている、彼らの素顔は・・・。「ハルチカ」シリーズ番外篇!

カイユと1年生の後藤朱里の「ポチ犯科帳」、芹澤と前部長・片桐の「風変わりな再会の集い」、マレンと演劇部部長・名越の「巡るピクトグラム」、成島の「ひとり吹奏楽部」に、掌編「穂村千夏は戯曲の没ネタを回収する」の計5編。

普段は脇に回っているキャラが活躍するのが、スピンアウトの醍醐味ですが、シリーズ読者なら、これは読まずにいられないでしょう。どいつもこいつも、おもしろいったら。特に、芹澤×片桐はいい取り合わせ。

読まなくても本編には影響しませんが、シリーズファンにはやっぱり読むことをおすすめしたいです。

さくさく読み進めていて、最後の「ひとり吹奏楽部」にやられました。思わずうるっと。そうなんです。このシリーズ、そういうとこ、あるんですよね。そこが好きなんですけど。

どうやら新年度は頼もしい後輩が入ってきそうな気配だし(しかし、ひと騒動あるんだろうな)。シリーズの今後がますます楽しみになってきました。

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