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2017年4月

2017年4月29日 (土)

本バスめぐりん。

2570「本バスめぐりん。」 大崎梢   東京創元社   ★★★★

照岡久志は、会社を定年退職後、ひょんなことから移動図書館「めぐりん」の運転手に。相棒は司書の梅園菜緒子。市内のあちこちを回る本バスでは、意外な謎に遭遇することも多くて・・・。

運転手のテルさんと、司書のウメちゃんコンビが、移動図書館が出会う謎を解く、日常の謎系ミステリ。本にまつわるミステリをいっぱい書いてる大崎さんですが、今回は移動図書館が舞台。

いいですねえ、移動図書館。私もお世話になったこと、あります。というか、あれって田舎限定のものだと思っていたんですが、そうじゃなかったのですね。

移動図書館ならではの「謎」が、無理なく設定されていて、しかも気持ちがほっこりするような話ばかりで、癒されました。

2017年4月28日 (金)

シモネッタのどこまでいっても男と女

2569「シモネッタのどこまでいっても男と女」 田丸公美子   講談社文庫   ★★★★

イタリア語通訳の田丸公美子さんが、自分の夫や両親について初めて書いたエッセイ。

故・米原万里さんに、「あなたの使命は両親の話を書くこと」と言われていたそうで、たしかに、読み応えありました。家庭をかえりみない父と、万事におっとりしていながら夫の浮気だけはすごい嗅覚で見破る母。そんな破綻していたような夫婦が行き着いた先は・・・。泣きました。

ほかにも、今まであまり語ってこなかった公美子さんの旦那さまの話とか、本気で求愛してきたイタリア男たちの話とか。

公美子さんの半生を振り返るような、いつもとはちょっと違うテイストの話が多く、いつになくしみじみしてしまいました。

2017年4月26日 (水)

晴れても雪でも

2568「晴れても雪でも」 北大路公子   集英社文庫   ★★★

「石の裏にも三年」の続編エッセイ。

ええっと、ぶれませんね、公子さん。あまりに変わらない日常の安定っぷりに、感動すら覚えました。(どれだけ変わってないか確かめるために、「石の裏にも三年」まで読み返してしまいました)

「さかの途中の家」を読んで、ちょっとうつ状態になったので、低いテンションでも読める本ということでチョイスしましたが、正解でした(笑) ダンゴ虫状態でも生きていけると自信が持てましたよ。

2017年4月24日 (月)

坂の途中の家

2567「坂の途中の家」 角田光代   朝日新聞出版   ★★★★

娘を殺した母親は、私かもしれない・・・。幼児虐待死事件の補充裁判員になってしまった里沙子は、裁判が進むにつれ、子どもを殺した母親と自分を重ねるようになっていく。

読んでいて、息がつまりそうでした。

平凡な主婦の里沙子。夫の陽一郎と一人娘の文香の三人家族。それなりに満ち足りた生活を送っていたが、裁判員裁判の補充裁判員に選ばれたことから、平穏な生活にさざなみが立ち始め・・・。幼い子どもを溺死させた母親・水穂の裁判に関わるうち、彼女と自分を重ね合わせ、そうすることで今まで見えなかった家族の一面が見えてきて・・・。

読んでいると、里沙子の話なのか、水穂の話なのか、わからなくなってきたり、ふと「自分はどうだろう」と考えていたりして、精神的にあまりいいものではなかったです(苦笑)

でも、気づかないだけで、気づこうとしないだけで、こういうことってよくあるのかも・・・と、読むのをやめられませんでした。他人事と片付けられない何かがありました。

裁判も終わり、日常に戻った里沙子は、この後、いったいどうするのでしょう。

2017年4月22日 (土)

ツバキ文具店

2566「ツバキ文具店」 小川糸   幻冬舎   ★★★★

鎌倉にある小さな文具店の店主・雨宮鳩子。先代である祖母から受け継いだのは、文具店と代書屋の仕事。今日も、鳩子のもとには思いを抱えた依頼人がやってくる。

ああ、私のまわりにもこういう代書屋さんがいないかな~・・・などと思いながら読んでいました。書くことは嫌いではないのですが、字が汚いもので・・・。

それはさておき、本屋大賞候補作も納得の、すてきな物語でした。

鎌倉の季節の移り変わりを背景に、一風変わった代書の依頼を通して、人と人との関わりが描かれていきます。主人公の鳩子も先代(祖母)との確執があり、どうしようもない後悔を抱えているのですが、徐々にわだかまりは消えていきます。それは、先代が道をつけてくれた代書屋という生き方が、鳩子を導いてくれたかのようで。

鳩子に書を仕込んだ先代の教育は、とてもとても厳しく、鳩子はそれに反発するのですが、先代は自分にできる精一杯のことをしてくれたんだろうな。口先できれいごとを唱えるのではなく、自分がもっている全てを、孫に受け渡すような。鳩子が生きていけるように。それが本当に鳩子に伝わったとき、鳩子は本当の「自分の字」を書けたんでしょうねえ。

派手さはないけれど、しみじみ、いい話でした。

2017年4月21日 (金)

罪の声

2565「罪の声」 塩田武士   講談社   ★★★★

父の遺品らしき古いカセットテープから流れてきたのは、幼い日の自分の声だった。それは、昭和史に残る「ギン萬事件」の犯人が使用したもの・・・。自分と家族は、あの事件の加害者だったのか? 京都でテーラーを営む曽根俊也は、ありえない現実に驚愕する。

昨年の夏、「文庫X」を仕掛けた盛岡さわや書店さんが、次に読むならこれ!とお勧めしていたので、気になっていました。フィクションですが、あの「グリコ・森永事件」を題材にした社会派ミステリ。極力、実際にあった事件の状況に沿って構成されていて、フィクションとわかっていても、これが真実なのではないかというすさまじい臨場感と迫力で読ませます。

物語は、自分の声が犯罪に利用されたことを知った曽根俊也のサイドと、文化部記者ながら「ギン萬事件」の再検証記事の取材に駆り出された阿久津英士のサイドから語られていきます。

全く別の動機から始まった二人の「過去」の追及は、やがて交差し、影響を与え合い、「現実」から「未来」へと視点を変えていく。この流れが実に見事で、実際の「グリコ・森永事件」も、確実に子どもを巻き込み、その人生に影を落としたのだろうと納得できます。

犯罪をおかして幸せになる人はいないし、犯罪者が裁かれないことはさらなる不幸を生むのだということをあらためて考えさせられました。

本屋大賞の候補にもなったようなので、これを契機にさらに多くの人に読まれることを期待する一冊です。

2017年4月19日 (水)

オーブランの少女

2564「オーブランの少女」 深緑野分   東京創元社   ★★★★

美しい庭園オーブラン。そこには、秘められた過去があった。集められた病や障害をもつ少女たち。謎めいた規則。外の世界から完全に隔絶された彼女たちを待っていた運命は・・・。

遅ればせながら、深緑野分デビュー作です。

「オーブランの少女」「仮面」「大雨とトマト」「片想い」「氷の皇国」のミステリ5編。

秀逸なのは、やはり表題作。物語の始まりからいろんな謎がちりばめられていて、それが思いもしない形で解き明かされていきます。その謎解きの方向性の意外さと、描写のすさまじさで、読み終えてしばらくぼうっとしてしまいました。

どの作品も「少女」に焦点があたっているのですが、彼女たちのしたたかさやはかなさ、その年代ゆえの強烈な個性が印象的な作品ばかり。

「戦場のコックたち」を読んで、これはすごい!と唸らされたのですが、デビュー作からじゅうぶんすごかったです。

2017年4月17日 (月)

アンと青春

2563「アンと青春」 坂木司   光文社   ★★★★

デパートの和菓子店でバイトをしている杏子。周りにも恵まれて、順調に仕事をしているようでいて、バイトという身分に不安を感じることも。そして、今日もまた杏子のもとに、小さな謎が・・・。

「和菓子のアン」の続編。久しぶりの坂木さんです。

「空の春告鳥」「女子の節句」「男子のセック」「甘いお荷物」「秋の道行き」の5編からなる連作短編。

杏子はじりじりとだけど、成長してますねえ。しっかりしてきたなあと思うことがたびたび。いまいち自分に自信はもてないけど、根が素直な彼女には、好感がもてます。そして、彼女に好感を抱いているのは読者だけじゃないようで・・・?

ただ、「甘いお荷物」は、ちょっと読んでて微妙でした。ネタバレになるので、ここでは書きませんが・・・そういう考え方もあるんだろうけどなあ。もっとも、自分に子どもがいないからそう思うだけかもしれませんが。

さらなる続編、楽しみです。(まさか、ここで終りませんよね)。

2017年4月15日 (土)

また、桜の国で

2562「また、桜の国で」 須賀しのぶ   祥伝社   ★★★★

第二次世界大戦直前のポーランドに赴任した外務書記生の棚倉慎は、戦争を回避するため、何より日本とポーランドの友好のために働いていた。しかし、ナチスドイツはポーランド侵攻をはじめ、国土は蹂躙される。友との約束を果たすべく、慎がとった行動は・・・。

直木賞候補作でしたね。読み応えありました。

ポーランドの歴史については、恥ずかしながらほとんど知りませんでした。これだけ周りの国々に裏切られ続け、何度も国土を失った歴史があったなんて。

主人公・棚倉慎は、白系ロシア人を父にもつ日本人。その生い立ちと、幼い頃偶然出会ったポーランド人の少年・カミルとの出会いが、慎の人生を決定付けます。外交の最前線で、後半は戦闘の最前線で、慎は果たして自分の信念を貫くことができるのか・・・。

慎の生き方は見事です。しかし、その結末はやはり悲しい。全編を通して流れる「革命のエチュード」が、印象的でした。

2017年4月13日 (木)

家康、江戸を建てる

2561「家康、江戸を建てる」 門井慶喜   祥伝社   ★★★★

天正十八年。家康は父祖の地を捨て、関八州への国替えを余儀なくされた。しかし、それは家康にとって新たな挑戦の始まりであった。

おもしろい。この物語の構成が、実におもしろいのです。

「流れを変える」「金貨(かね)を延べる」「飲み水を引く」「石垣を積む」「天守を起こす」の5話を通して、治水工事上水道工事、貨幣経済への転換など、江戸が天下の町に変貌していく過程が描かれます。家康も随所に顔を出しますが、主人公になるのは実際に工事等に携わった名もない(あるいは歴史上あまり有名でない)人物。

何もない土地どころか、低湿地が広がる不毛の地だった江戸が、少しずつ都市としての機能を有していき、時代が移り変わっていく様子が、実によくわかるのです。

もちろん、そこに関わった人々の生き様も、生き生きと描かれています。

こういう角度から「江戸」を見るというのは、新鮮な感覚でした。

2017年4月11日 (火)

教場2

2560「教場2」 長岡弘樹   小学館   ★★★★

わずか6ヶ月の訓練で現場に出て行く警察官たち。鬼の教官・風間の教場に編入させられた彼らは、過酷な訓練の中で、警察官としての己の適性に向き合うことになる。果たして、彼らは無事に卒業できるのか。

「教場」の続編。これも文句なしにおもしろかったです。

「創傷」「心眼」「罰則」「敬慕」「机上」「奉職」の6編。

警察官とはいえ、生身の人間であり、試験に受かっても適性があるとは限らない。風間教官に退校届を渡されて1週間がリミット・・・という極限状態におかれたときの心理描写が読ませどころです。

今回は、元医者という変り種の桐沢や、逮捕術で相手に手を上げることがどうしてもできない美浦など、個性的な生徒たちが登場します。そして、それを上回る存在感の風間教官。なんでも見透かしてしまうような教官と、ひよっこたちとの真剣勝負は、スリリングで読み応えあります。

できることなら、さらなる続編をお願いしたいものです。

2017年4月10日 (月)

みんなの怪盗ルパン

2559「みんなの怪盗ルパン」 小林泰三・他   ポプラ社   ★★★

小林泰三「最初の角逐」、近藤史恵「青い猫目石」、藤野恵美「ありし日の少年ルパン」、真山仁「ルパンの正義」、湊かなえ「仏蘭西紳士」の5編を収録した、「怪盗ルパン」オマーシュ・アンソロジー。

小学生の頃、ルパンものを読み漁ったものでした。なつかしい・・・。その記憶がよみがえってくるような5つの作品。

私にとってのルパンのイメージはやはり「怪盗紳士」で、そういった意味では、湊さんの「仏蘭西紳士」が一番好みでした(もっとも、この物語では、ルパンは探偵役ですが)。それから、近藤さんの「青い猫目石」も、ルパンもののテイストが横溢していて、好きでした。

ルパンとホームズどっちが好きかというのは、昔から論争があるようですが、私はかつて断然ルパン派でした。その後、ホームズもののおもしろさにはまりましたが、最近はどちらも読んでいませんねえ。

2017年4月 9日 (日)

玉依姫

2558「玉依姫」 阿部智里   文藝春秋   ★★★★

かつて、祖母は母を連れて、その村を飛び出したという・・・。山内村を訪れた志帆は、村松祭りの晩、生贄として山神に捧げられるはめに。逃げようとする志帆をとめたのは、奈月彦と名乗る青年だった。奈月彦は、志帆に山神の母となるように諭すのだった。

シリーズ5作目は、エピソード0とも言うべきもの。今まで舞台になってきた異世界ではなく、現代日本がスタート地点です。

主人公は、普通の高校生の志帆。ちょっと度が過ぎるお人よしなところのある彼女は、生贄の儀式に巻き込まれ、そのまま、山神の母として山の禁域で生活することに。そこから物語は二転三転していくわけですが・・・。

金烏としての過去の記憶を失った奈月彦も登場して、過去の金烏と山神や猿との間に何があったのかも徐々に明らかになります。シリーズのスピンアウトのようでいて、中核に触れる大事な物語です。

それにしても、志帆(もしくは玉依姫)のたくましさには参りました。シリーズ第1作の女子たちのたくましさをちょっと思い出しましたよ。

そして、夏には続編が!しかも、「第1部完結編」って! まだまだ続くのですね、このシリーズ。物語を読む楽しみを存分に味わわせてくれるこのシリーズが大好きなので、続くのはうれしいかぎりです。

2017年4月 8日 (土)

錆びた太陽

2557「錆びた太陽」 恩田陸   朝日新聞出版   ★★★★

原発事故で汚染された区域で働くヒューマノイドたち。「ウルトラ・エイト」と呼ばれる彼らのもとを、一人の女が訪れた。彼女の目的はいったい何なのか。

直木賞受賞後、これで三冊目ですよ、恩田さん。うれしい悲鳴とともに、お財布も悲鳴をあげてます(苦笑)

今回は、一応SFもの。原発の老朽化が進み、あちこちで事故が多発。各地に立入制限区域ができてしまっている近未来の日本が舞台。北関東の制限区域にいる「ウルトラ・エイト」と呼ばれる人型ロボットたちのもとに、国税庁の財護徳子という女が現れる。「人間を守らなければならない」という原則に従い行動するロボットの「ボス」たちだったが、事態は思わぬ展開を見せ・・・というお話。

設定はヘヴィですが、恩田さんのサブカルチャー趣味が随所にちりばめられて、クスッとさせられます。それに、汚染区域でのあり得ないような動植物の進化(?)のイメージには圧倒されました。作家の想像力ってすごい・・・。

ただ、これが単に笑える話でないということは、我々にはよくわかります。実際に、日本で起こったことであり、これから起こり得ることであり、もしかしたら起こっていることかもしれない。冗談のような話だけれど、もはや我々はこれを単なる作り話とは言い切れない世界に生きているのだということを、実感させられました。

この本、装丁もおもしろいです。図書館ではどうするんでしょう。帯も絶対捨てられません。が、帯をとらないと見えない部分もあるし。うーん。そして、初版には恩田さんのメッセージカード付き。買うしかないですよね。

2017年4月 7日 (金)

スティグマータ

2556「スティグマータ」 近藤史恵   新潮社   ★★★★

ヨーロッパでサイクルロードレースの選手として走り続けているチカこと白石誓。華々しいタイトルとは無縁の、アシスト専門のクライマーとしてそこそこ認められているが、来期の契約は決まっていない。今シーズン、ツール・ド・フランスを走ることになったチカのもとに、かつての帝王・メネンコからある依頼が。ドーピングで王者の座を追われ、ブランクを経て復活してきたメネンコの頼みとは。

チカも三十歳ですか・・・。どうしても、まだ少年の面影を残していたチカのイメージのままなのです。あのチカが、ヨーロッパでそれなりに自分の居場所をつくって、レースを続けているのが、とってもいとおしい感じがするのも、そのせい。

さて、今回は、ドーピングで石持て追われた王者・メネンコが登場。チカたちが所属するチームのライバルとなるのですが、なぜかチカに奇妙な依頼をしてくる。いったい、彼の狙いは何なのか?という、ちょっとしたミステリテイストを感じさせつつ、レースが始まります。

いつもながらレースシーンの描写には引き込まれます。ロードレースが好きでも、ここまで臨場感のあるレースを描けるのって、すごい。そして、レースには、それぞれの選手の生き様が反映されているのも。とにかく次の展開が気になって、一気読みしてしまいました。

シリーズ第1作の「サクリファイス」のような衝撃はありませんが(あれは忘れられない)、チカたちレーサーの走る姿に魅せられました。

2017年4月 6日 (木)

羊と鋼の森

2555「羊と鋼の森」 宮下奈都   文藝春秋   ★★★★

高校2年の2学期。たまたま立ち会ったピアノの調律が、僕の生きる道を決めた。ピアノどころか、音楽に何の興味もなかった僕が。調律師となってからも、うまくいかないことの連続だけれど、少しずつ何かが見えてきて・・・。

遅ればせながら読みました。

今やすっかり売れっ子になった宮下さん。その大きなきっかけになったのが、この物語。どちらかといえば、地味で、静かな物語だと思うのに、これを支持した人が多かったというのは、なんともうれしい限りです。

主人公の「僕」こと外村は、北海道の山村で育った少年。これといったこだわりもなく、おとなしい、没個性といってもいいようなタイプ。そんな彼が17歳で偶然出会った調律の世界。彼の学校のピアノを調律に来た板鳥に魅せられて、何もわからないまま、未知の世界に飛び込むのです。

外村は専門学校を卒業し、板鳥が所属する会社に無事就職。しかし、板鳥は想像以上にすごい調律師で、一方の外村はすべてにおいて自信がもてず、とまどうばかり。

そんな外村の成長物語ではあるのですが、ものすごくドラマティックな事件が起こるわけではありません。外村が他の調律師やお客たちと関わる中で、じわじわと潮が満ちてくるような変化をしていく感じ。それが、なんともいとおしく、美しいのです。

思えば、宮下さんの物語は、いつもそうです。人と人との関わり。そこから生じる小さな気づき。きっかけ。そうして広がっていく世界。・・・私はそういうものに魅せられているのかもしれません。

ピアノには苦い思い出しかないのですが(苦笑)、それもまた私にとって無駄なものではないのかなと、ちょっとだけそんなふうに思えました。

2017年4月 5日 (水)

2554「眩」 朝井まかて   新潮社   ★★★★

葛飾北斎の娘にして、絵師の応為ことお栄は、女だてらにと言われつつ、絵筆をとり続けてきた。父であり、師である北斎のもとで、絵師として生きたお栄がたどりついた境地とは。

題名は「眩」と書いて「くらら」と読みます。

お栄の存在を初めて知ったのは、杉浦日向子「百日紅」で、北斎にはなんとおもしろい娘がいたんだろう、と。いつかお栄を主人公にした小説を読みたいものだと思っていたら、朝井さんがやってくれました。

幼い頃から絵を描き始め、女らしいことは一切できないお栄。母が心配して無理やり縁談をまとめたものの、絵師の夫とはうまくいかず、家を飛び出してしまう。その後は、父・北斎のもとで、ひたすら絵を描き続けた人生。その中には、英泉こと善次郎との恋もあり、甥の時太郎との確執もあり、思うにまかせないこともたくさん。それでも、お栄の芯は、絵であり、伸吟しながらも描き続けるのです。

北斎の死後のお栄の生き様のあっぱれなこと。最近では「江戸のレンブラント」の異名をもつそうですが、表紙絵の「吉原格子先之図」を描いたのは、五十もすぎてから。北斎ともまた違う、応為独特の光と影の使い方が印象的な絵は、ひたすら画業に打ち込んだ人生ゆえに到達した一つの境地なのかもしれません。

2017年4月 4日 (火)

中野京子と読み解く 運命の絵

2553「中野京子と読み解く 運命の絵」 中野京子   文藝春秋   ★★★

「名画の謎」に続いて、今度は「運命の絵」がテーマとなった「中野京子と読み解く」シリーズ。

相変わらず、安定のおもしろさです。今回は、けっこう知らない絵が多くて、興味深かったです。(ムンクの「叫び」のような超有名作品もありましたが。)

「運命の絵」ということで一番印象的だったのは、ブローネルの「自画像」にまつわるエピソード。画家の人生を予見してしまったかのような絵画って・・・。

とりあげられる絵画をできるだけ大きい判で見たくて、単行本を購入するのですが、見開き頁の場合、肝心なところが頁の間になってしまってよくわからない!という悲しい現象が。どうにかならないもんでしょうか、出版社さん。

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