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2017年6月

2017年6月30日 (金)

死と砂時計

2597「死と砂時計」 鳥飼否宇   東京創元社   ★★★★

世界中の死刑囚が集められてくるジャリーミスタン監獄。その終末監獄に収監されたアランは、監獄の長老・シュルツと出会う。監獄内で起こる事件を解決するシュルツの助手となったアランは、奇妙な事件の数々に関わることになり・・・。

探偵も被害者も犯人も、すべて監獄の中・・・という、奇想天外な設定の本格ミステリ。アランが5つの事件の謎解きに参加させられ、最後はアラン自身が犯した罪の謎が解かれる・・・という構成。

監獄という特殊な状況下でも成り立つミステリ、その場所だからこそ成り立つミステリ、両方を堪能できます。

謎解きのおもしろさに誘われて、どんどん読んでいくと・・・最後の最後で、うわっ!と。ラストを読んで、それまでのあれこれを思い返してみて、ゾワッと鳥肌が立ちました。

ミステリを読む愉しみを、存分に味わうことのできる一冊。おすすめです。

2017年6月27日 (火)

流されるにもホドがある

2596「流されるにもホドがある」 北大路公子   実業之日本社文庫   ★★★★

あの公子さんが、こともあろうに流行ハンターとして、世の流行モノに挑む!?という、無謀な設定のエッセイ集。

公子さんと流行・・・これだけミスマッチなものがあろうか。編集者が何を思ってこういう企画を通したのかわかりませんが、想像しただけで笑えるという意味においては、成功したのかもしれません。

私もたいがい流行モノには疎いですが、公子さんはその上を行ってます。参りました。こちらの予想の斜め上を行く展開には脱帽です。一番印象に残ったのは、フィギュアスケート観戦の際、公子さんが口走った、

「私、真央ちゃんに生まれなくてよかったわー」

という一言です。そりゃ、私がその場にいたら、振り返って二度見します。それくらい、インパクトがありました。

公子さんのエッセイを読んでると、肩肘張って生きるのが馬鹿らしくなります。いろんなことにこだわっているのが恥ずかしくなります。そして、楽になります。だから、私は公子さんのファンなのです。

2017年6月26日 (月)

どこかでベートーヴェン

2595「どこかでベートーヴェン」 中山七里   宝島社   ★★★★

夏休み中、豪雨と土砂崩れのために校舎に取り残された音楽科の生徒たち。そんな状況下で、クラスの問題児・岩倉が殺された。警察に疑いをかけられた岬洋介は、嫌疑を晴らすために調査を開始する。

岬洋介・最初の事件簿・・・といったところでしょうか。17歳の岬洋介が、クラスメイト殺害事件を解き明かします。

十代の岬洋介がどんなだったのか、わくわくしながら読みました。いやあ、すごい。天才なんですね、やっぱり。こんな同級生、いたら嫌かも(笑)

才能を鼻にかけた嫌なやつではなくて、純粋なんですよね。だから余計に周りを刺激しちゃうんでしょう。一緒にいられる鷹村亮は、ピアノ教師の母という反面教師のもとで育ったぶん、冷静でいられたのかもしれません。

発病してからの岬は痛々しかったし、こういう決断をしてから、大人の岬洋介になるまでに、さらに紆余曲折があったのだなあ・・・と。

ラスト一行で「おっ!」と。そうきましたか~。続編、楽しみです。

2017年6月25日 (日)

明るい夜に出かけて

2594「明るい夜に出かけて」 佐藤多佳子   新潮社   ★★★★

ある出来事がきっかけで、大学にいけなくなってしまった富山一志。休学して、アパートで一人暮らしをし、コンビニでバイトを始める。唯一の楽しみは深夜ラジオを聴くことだったが・・・。

山本周五郎賞受賞、おめでとうございます。いつか読もうと思ってうっかりしてて、受賞のニュースを聞いて、あわてて図書館でゲットしてきました。

ラジオってほとんど聴かないので、ついていけるかなあ・・・という感じでおそるおそる読み始めました。実在する(した)番組や芸人さんたちの固有名詞がバンバン出てきて、うわ!となりましたが、大丈夫、なんとかなりました(笑)

深夜ラジオのヘビーリスナーで、投稿もガンガンしていた富山。採用されることも多くて、それなりに有名な「ハガキ職人」だった彼は、大学生になり、彼女もできて、それなりに充実した日々を送っていた。しかし、ある日それが突然暗転。投稿もやめ、大学にもいけなくなってしまう。

そんな富山が始めた夜のコンビニでのバイト。バイトの先輩の鹿沢。コンビニの客の女子高生・佐古田。富山の昔からの同級生・永川。この4人を中心に、物語は展開します。

自分が何者なのかわからない。何ができるのか、何がしたいのか、どうすればいいのか。やりたいこと。得意なこと。苦手なこと。やりたくないこと。いろんなものがつかみきれなくて、焦ったり、イライラしたり。ものすごく楽しかったり、せつなかったり。・・・誰もが経験したことのあるそんな思いが、ギュッとつまったような物語。

人と出会うことで、自分の扉が開いていく。そんな当たり前のことの大切さを、しみじみと実感させられました。

「明るい夜」という言葉が、とても印象的でした。

2017年6月23日 (金)

分かれ道ノストラダムス

2593「分かれ道ノストラダムス」 深緑野分   双葉社   ★★★★

中学時代の友人・基の三回忌で、基の日記をもらってしまった日高あさぎは、それ以来、どういう選択をすれば基は死ななかったかを考え始める。あさぎはクラスメイトの八女に、その「もしも」を聞いてもらうことに。しかし、それが思わぬ方向にあさぎたちを導いていく。

「戦場のコックたち」の深緑野分さんの、青春ミステリ。

いやー、これ、好きだわー。

初めて身近な人の死を経験したあさぎ。しかもそれが、仲のいい(実は好きだった)友達で、けんか別れしたまま、彼は突然死んでしまう。あさぎの後悔とか、いろんな感情がぐちゃぐちゃになってしまう感じ、すごくわかります。

話はパラレルワールドから、題名にもあるノストラダムスがらみのカルト集団まで発展して、あさぎと八女くんは、とんでもない事件に巻き込まれてしまうのですが・・・。

子どもから大人になるまでに誰もが経験することを、「頭で考えるよりからだが動いてしまう」あさぎの視点から描いた物語。あさぎの突発的な行動には、「おいおい・・・」と思うのですが、自分もこういう道を歩いてきたなあと、懐かしく、気恥ずかしい思いでいっぱいになりました。

いろんな要素が盛り込まれていますが、物語が破綻することもなく、あさぎが視野を広げて大人になっていく過程が、すごくよくわかります。

題名からもっとSFっぽい話かと思っていましたが、全然違いました(笑) 深緑さんの書く物語、好きだなあ。これからも追いかけようと決めました。

2017年6月18日 (日)

スタフ

2592「スタフ」 道尾秀介   文藝春秋   ★★★★

別れた夫の発案だった移動デリで昼食を売る夏都は、ひょんなことから芸能界を揺るがすスキャンダルを知ってしまう。スキャンダルをもみ消そうとするアイドルに協力することにした夏都と甥の智弥、それに塾講師の菅沼は、事件の渦中に飛び込むが・・・。

初・道尾秀介です。前から興味はあったのですが、どこから読めばいいのかわからなくて、(苦笑) とりあえず、これはおもしろそうだなとチェックしていたので。

前半・中盤・後半と、物語の流れ方が違っていて、流れにのるまでちょっと苦労しました。夏都と智弥のやりとりにやっと慣れたら、カグヤたちが登場してジェットコースター的な展開になって、それが解決したと思ったらどんでん返し、みたいな。

夏都のキャラがなんとも痛くて・・・。私にもこういうとこあるなあと思いながら読んでました。

なんとなく、伊坂幸太郎作品に似た雰囲気だと感じたのは私だけでしょうか。

2017年6月14日 (水)

図書室のキリギリス

2591「図書室のキリギリス」 竹内真   双葉社   ★★★

ある日突然失踪した夫との離婚を機に、学校図書館の司書として就職した詩織。資格のない「なんちゃって司書」だが、詩織のもとには、いろんな本と生徒、そしていろんな謎がやってきて・・・。

「司書室のキリギリス」「本の町のティンカー・ベル」「小さな本のリタ・ヘイワース」「読書会のブックマーカー」「図書室のバトンリレー」の5話。

高校の図書室を舞台にした、日常の謎系ミステリ。本が好きな人、図書館が好きな人なら文句なしに楽しめます。

実際、司書の仕事って、ほんと奥が深いですよね・・・。私は司書の資格は持っていませんが、真似事はしたことがあるので、当時を思い出して、思わずため息。本が好きで、人に興味がないとできない仕事だとつくづく思います。

気になったのは、詩織の「人には言えない秘密」というやつ。彼女が持っている不思議な能力なのですが・・・これって必要だったかな? なくても成立したんじゃないか、と。

続編も出ているようなので、読んでみようと思います。

2017年6月12日 (月)

おおあたり

2590「おおあたり」 畠中恵   新潮社   ★★★

相変わらず病弱な若だんなだけれど、相変わらずもめごとには巻き込まれて・・・。シリーズ第15作。

「おおあたり」「長崎屋の怪談」「はてはて」「あいしょう」「暁を覚えず」の5話。今回は、いろんな「大当たり」が描かれます。

大妖おぎんの命によって、一太郎のもとにつかわされた若き日(?)の佐助と仁吉の話「あいしょう」と、若だんながなんとか仕事に行こうとする「暁を覚えず」がよかったです。

しかし、若だんなの幼なじみ・栄吉の作るあんこって、いったいどんな味がするんでしょうねえ。妖たちが気絶するって(笑)

2017年6月10日 (土)

さよならクリームソーダ

2589「さよならクリームソーダ」 額賀澪   文藝春秋   ★★★

美大に合格した寺脇友親は、仕送りを断って、自活していた・・・はずだったが、バイト料の払い込みが遅く、すきっ腹を抱えていたところを、同じアパートに住む先輩・柚木若菜に救われる。四回生で、ずば抜けた才能をもつ若菜は、人当たりもいいが、どこか人に心を許さないような雰囲気をもっていた。一方、友親も、人には言えない悩みを抱えていて・・・。

美大を舞台にした青春もの。いろんな場面で「色」のイメージがあふれています。それから、尾崎豊。私が尾崎をよく聴いていたのは、高校から大学にかけてだったので(年がバレる)、懐かしい気分で読みました。

親の再婚、新しい家族、という状況で、いい子で居続けようとした友親と、いい子でいることをやめた若菜。単純に言えばそういう構図なんですが、それぞれにいろんな人間関係が絡んできて、二人とも苦しんでいます。さらに、若菜の方は大きな喪失感を抱えていて・・・。

若い頃の不器用さとか、みっともなさとか、イタイんだけど、その当時しか感じられないようなまっすぐさとか・・・まぶしい世界でした。

2017年6月 6日 (火)

バッタを倒しにアフリカへ

2589「バッタを倒しにアフリカへ」 前野ウルド浩太郎   光文社新書   ★★★★

アフリカでのバッタ被害を食い止めるために、バッタ博士はモーリタニアへ向かった。それは、「修羅への道」の始まりだった。バッタ博士による「科学冒険就職ノンフィクション」。

いやあ、本来なら手に取らないタイプの本です。昆虫、そんなに興味ないし(どちらかというと苦手)。科学系の話には頭がついていかないし。だいたい、表紙と題名のインパクトがすごすぎるし。

でも、「おもしろい!」と評判なので(なかには「泣ける!」という感想もちらほら・・・)、じゃあ読んでみようかと買ってきました。

いきなり「まえがき」から笑ってしまいました。バッタの研究しすぎて、バッタアレルギーになったバッタ博士って・・・。そして、夢が「バッタに食べられたい」って!

ポスドク(ポスト・ドクター)という不安定な立場で、単身モーリタニアに渡り、サバクトビバッタのフィールド研究をしようと決意した筆者。勝手がわからぬアフリカの地で、現地の研究所のババ所長や、ドライバーである相棒ティジャニたちに助けられながら、砂漠へと飛び込んでいく。

自然のままならなさ。現地の人たちとの交流。そして、何よりバッタとの邂逅。昆虫学者という専門家ながら、平易かつユーモラスな文章で語られるそれらに、すっかり魅了されました。(なぜ、そんな文章を書くようになったのかは、後半を読めばわかります)

そして、すさまじい就職活動。京都大学白眉プロジェクトの面接でのエピソードには笑ってしまったり、思わず涙したり。

とにかく、好きなことをひたすら突き詰めて、まっすぐに突っ走ってきたその生き方に、賞賛の拍手を送りたくなります。

ほんと、これ、いろんな人に読んでほしい! ただ、昆虫が苦手な人(特にバッタ)は、写真けっこうあるので、注意して下さいませ。

2017年6月 4日 (日)

雨利終活写真館

2588「雨利終活写真館」 芦沢央   小学館   ★★★

祖母の遺言状をめぐり、生前に遺影を撮影した写真館を訪れたハナ。そこには、一風変わった人たちがいて・・・。

「今だけのあの子」がとってもよかったので、図書館で借りてきました。が・・・期待値が高すぎたかな。

4つのエピソードから成る物語。巣鴨にある、生前遺影の撮影をする雨利写真館。祖母の遺言状の謎を解くきっかけをもらったハナは、そこで働くことに。奇妙な依頼の謎を一つ一つ解き明かしていく過程で、傷ついていたハナの心も前を向き始め・・・という物語。

それぞれ、日常の謎ミステリとしておもしろかったのですが、キーマンであるべきカメラマンの雨利の影が薄かったのが残念でした。それに、なぜかハナにいまいち共感できなかったのも痛かったです。

2017年6月 3日 (土)

夜行

2587「夜行」 森見登美彦   小学館   ★★★★

10年前の夜、英会話スクールの仲間6人で、「鞍馬の火祭」に出かけた大橋たち。そこで、仲間の一人、長谷川さんは消えてしまった。10年後、5人で再び火祭を訪れた大橋たちは・・・。

久しぶりの森見さんは、今までとは違った幻想世界へ誘ってくれました。

忽然と消えてしまった長谷川さん。10年ぶりに集まった仲間が語る物語。そこに現れる岸田道生という画家の連作「夜行」。奇妙なその銅版画に導かれるように、大橋たちはこの世ならぬ世界を旅する。

今までの森美作品の多くは、主人公の(あるいは作者の)脳内の妄想が爆発するような世界が多く、その熱量もすさまじいものがありました(←ほめてる)。

でも、この作品は、静謐でもの悲しく、ノスタルジーも感じさせる。今までの爆発的な熱を水面下に潜め、淡々と物語が進みます。しかし、はらんだ狂気は少しずつ読者をとらえていき、いつのまにか、自分も「夜行」の世界に囚われたような気分にさせられるのです。

森見さんの新しい一面を見たような気がする物語でした。

2017年6月 1日 (木)

ヒア・カムズ・ザ・サン 東京バンドワゴン

2586「ヒア・カムズ・ザ・サン 東京バンドワゴン」 小路幸也   集英社文庫   ★★★★

堀田家の面々は相も変わらず元気いっぱい。奇妙な事件が持ち込まれるのも相変わらず。そして、研人の高校受験もせまってきて・・・。

シリーズ10作目です。

登場人物がどんどん増えていって、覚えるのも大変になってきました(笑) でも、その辺のおさらいもうまくやってくれるので、安心して読めます。

何かしら事件が起こり、すったもんだしたあげく、最後はなんとかおさまるとこにおさまって・・・というパターンだとわかっているのですが、いいんですよね、これが。何が起こっても、堀田家の面々が大事にしているのは、「人の心」。手助けをしたり、忠告をしたりはするけれど、相手の心を力づくで動かそうなんてしない。その辺が、すごく好きです。「LOVEだねえ」という我南人のきめ台詞が、最近腑に落ちるようになってきました。

このシリーズを読み始めたのは、私の人生で1、2を争うつらいことがあったときで、今でも読んでいるとそのときのことを思い出して、ちょっとつらくなることもあります。でも、堀田家の人たちに、励まされてるような気になるのも事実。生きていれば思うに任せないことは当然あるけれど、生きていればいいこともあるさと思えるのです。

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