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2017年9月 9日 (土)

ある奴隷少女に起こった出来事

2632「ある奴隷少女に起こった出来事」 ハリエット・アン・ジェイコブズ   新潮文庫   ★★★★

アメリカの南部の町に奴隷の娘として生れたリンダは、フリント医師の家で働かされる。やがて年頃になったリンダに、フリントは卑猥な言葉を浴びせるように。自分の身を守るため、自由を得るため、リンダがした決断とは・・・。

奴隷だったハリエット・アン・ジェイコブズが発表した実話。フィクションと思われ忘れ去られていたこの文章は、発表から100年以上経って、実話であると証明され、アメリカでベストセラーに。

なんというか・・・想像を絶する世界でした。

奴隷制というのが、ここまで人間を堕落させ、残虐にさせるものだということに、愕然としました。リンダにつきまとったフリント医師はきわめて卑劣で陰湿な男ですが、彼だけでなく、いわゆる白人の人々の奴隷に対する態度がもう・・・。相手を人間として認めない。そのことに何の違和感も覚えないという社会が信じられませんでした。差別は、人間にとって決して良いことではないというのが、これを読むとよくわかります。

リンダは最終的には、二人の子どもと共に自由を得るのですが・・・そこに至るまでの過程は、本当にこれが事実なのか?と疑いたくなるようなことの連続です(それもまた、これが実話とみなされなかった理由の一つでもあるようです)。人が人として生きるという、当たり前のことを得るために、彼女はそれだけの苦難を乗り越えなければならなかった。その事実が、何より重いです。

思ったのは、これは果たして「過去の物語」なのだろうか?ということ。「分断」という言葉を、「差別」という言葉を、私たちは今、この耳で聞いているではないか。人として決してしてはならないことを、私たちは繰り返してしまっているのではないか。

また、「訳者あとがき」では、堀越ゆきさんが、なぜこの本を訳そうと思ったのか、その動機が記されています。今、日本で生きる少女たちが置かれている閉塞的な現状。それもまた、私たちが自覚せねばならないことなのだと思うのです。

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