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2017年9月 7日 (木)

最悪の将軍

2631「最悪の将軍」 朝井まかて   集英社   ★★★★

「犬公方」と呼ばれた将軍・徳川綱吉。その在位は大地震や富士山噴火といった天災に見舞われ、赤穂浪士の討ち入りが起こった元禄の世。果たして、綱吉は暗愚であったのか、それとも名君か。

先日、NHKの「歴史秘話ヒストリア」で富士山噴火を扱っていて、その時の将軍が綱吉だった、と。その二つを結びつけてみたことがなかったので、ちょっと意外な気がしたのでした。だいたい、綱吉について知っていることといえば、「生類憐れみの令」くらい。これはいかんなと思い、とりあえずこれを読むことに。

綱吉が館林藩主から将軍になろうとする時から物語りは始まり、綱吉とその正室・信子の視点で交互に話は展開し、綱吉の死で幕を下ろします。

戦国の世から文治政治への移り変わりの時期に将軍になった綱吉は、その変化に自覚的であり、意図的に「武」から「文」への移行を進めようとします。しかし、綱吉はあまりにも潔癖であり、それゆえに人に憎まれもします。

綱吉の目指したものは正しいのだけれど、それを人の心に届けるのがいかに難しいか・・・なんともやりきれない気持ちになりました。自分の意思をなんとか民に届けようとして、かえって溝を深くしていく綱吉の絶望たるや。このようにしか生きられない人間が、それでも必死に己の役目を全うしようとする生き方は、見事ではありましたが、痛々しいものでもありました。

これはあくまでフィクションなので、実際の綱吉がどんな人物だったのかはわからないのですが・・・。私たちは歴史で「誰が、何をしたか」は学びますが、「なぜそのようなことをしたのか」は、あまり考えてこなかったのだなあと、つくづく思いました。そういう視点で歴史を見れば、もっと違うものが見えてくるのかもしれません。

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コメント

 まゆさん、昔は災害が起こるのは、君主の不徳からだという思想があった様ですね。
 噴火だの地震などは今は自然災害と判っていますが・・・。庶民の怒りの矛先が支配者側に向くのも仕方ないかな。

 綱吉に関しては、「ヒストリア」もそうですが、BS日テレの「解明!歴史捜査」でも以前取り上げていました。犬を保護した事は、実は社会保障の一環であったとか。
 歴史と言うのはその時代の記録しか、拠り所がないので、それが偏っている時、実際の事が歪められて伝えられる事もあるかもしれません。史料至上主義ではなく、その時代の地形、環境、社会状況などを総合的に科学する事も大切かもしれませんね。

まるさん、社会保障ですか~。それは意外。
最近思うのは、歴史っていろんな要素が複雑に絡み合ってつくられていくのだなあ、と。
当たり前のことですが、政治だけじゃないし、経済だけじゃないし、文化だけでもない。
自然災害のこととか、「○○の大地震」くらいは出てきますけど、それもすごく限定的で。
そういうのを総合的に見ていくと、今までとは違ったものが見えてくるのではないかという気がしています。
今までの「通説」が覆されていくのもまた楽しみです。

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