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2017年10月20日 (金)

与楽の飯

2652「与楽の飯」 澤田瞳子   光文社   ★★★★

仕丁(役夫)として徴発された真楯は、東大寺の造仏所に配属され、大仏建立の作業に携わることになる。重労働に耐える真楯たちを支えたのは、信仰ではなく、炊屋を営む宮麻呂の作る飯だった。

副題「東大寺造仏所炊屋私記」。

「山を削りて」「与楽の飯」「みちの奥」「媼の柿」「巨仏の涙」「一字一仏」「鬼哭の花」の7編の連作短編集。

主人公は近江国から東大寺に連れてこられた真楯。三年の任期の仕丁だが、造仏は想像以上の重労働で、生きて帰れる保証すらない。ともすれば荒みそうになる真楯たちを支えるのは、宮麻呂の作る飯。宮麻呂は口は悪いが、肉体労働をする仕丁たちのために、精一杯のうまいものをこしらえてくれる。そんな宮麻呂の過去に触れてしまった真楯は・・・。

東大寺に参詣するたびに思うのは、聖武天皇の思いもさることながら、この大仏建立に関わった「普通の人たち」は、いったい何を思っていたのだろうということです。どんな人たちが、どんな思いで、この大事業に関わったのだろう、と。純粋に信仰のみで働いた人はごく一部で、そうではない人が多かったでしょう。では、その人たちは、どんな思いで、と。

この物語は、そんな「心ならずも」造仏に関わった名もない人々の物語でした。決して望んでやっているわけではない。それでも、そこに残る「思い」。そして、人の生きる意味。読んでいて、胸が熱くなりました。

歴史は、名もない人たちの営みが無限に連なってできていくもの。今、生きている私たちもまた歴史の一部であり、そうであれば私たちはどんな「歴史」をつくっていくのでしょう。

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