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2017年10月12日 (木)

かがみの孤城

2649「かがみの孤城」 辻村深月   ポプラ社   ★★★★★

中学生になって、同級生からのいじめにあい、学校に行けなくなってしまった安西こころ。ある日、自分の部屋の鏡が光り出し・・・。その鏡はお城の部屋に続いていた。鏡を通り抜け、城に集まったのは、こころたち7人の中学生。案内人の「オオカミさま」は、「鍵」を見つけた者の願いを一つだけ叶える、と言う。期限は三月三十日まで。城が開くのは、日本時間の朝九時から夕方五時まで。信じられないような出来事にとまどうこころたちだったが、徐々に親しくなっていくうちに、意外な事実を知り・・・。

読み始めて、「ああ、苦手なタイプの話だ・・・」と思ったのです。いじめとか、不登校とか、こっちが苦しくなってくるので。それに、SFというか、ファンタジーというか、基本的に得意ではないのです。

でも、いつのまにか夢中で読んでいました。

こころが抱えてしまった苦しさは、私にも覚えがあります。というか、すごく共感してしまいました。そして、彼女が「ワケあり」らしいほかの子たちと親しくなっていくのには、本当にホッとしました。それだけに、「期間限定」の城であることが、とてもせつなかったのですが・・・。

物語は五月からスタートして、三月まで。「様子見の一学期」「気づきの二学期」「おわかれの三学期」と分けられています。この「気づき」の部分が、とてもよかったです。こころ以外の六人、アキ、フウカ、スバル、マサムネ、ウレシノ、リオンとの距離が縮まっていって、みんなが自分たちの「共通点」に気づく。それが、次のステップにつながっていって・・・。

こころたちにとって「助け合える」という言葉が、どれほど重いものか。つらくても、「仲間のために」と闘ったこころたち。でも、それはなぜかうまくいかなくて・・・。そして、「おわかれ」の時間がやってきます。

ここからは怒濤の展開で、ひたすら頁を繰っていました。もう、ボロボロ泣きながら。今までの伏線が回収されていって、ああ、そうだったのか・・・と、深く納得して、本を閉じました。

こういう設定でなければ、描ききれなかったものが確かにありました。現実はあまりに過酷で、「がんばれ」「大丈夫」なんて言葉では救えないときがあります。それでも、と手をのばす作者の意思を、確かに感じました。あなたに手をのばしている人が、どこかにいるよ、と。その手を取って、と。

この本、たくさんの人に読んでほしいと、心の底から思います。今苦しんでいる人も、若い人も、大人も、たぶん何かしら感じることはあると思うから。

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辻村深月」カテゴリの記事

コメント

 まゆさん、丁度、昨日この本を読み終わったばかりです。
 私も、いじめとか不登校の話は得意じゃないし、ファンタジー系の話は苦手です。
 でも、不思議なんですが、辻村さんの「ファンタジー」にはリアル感があって、違和感なく、溶け込めます。 「ツナグ」は活字、映画両方で強い感銘を受けました。それと同じ位、インパクトが強かったですね。

 こころは、一番何に傷付いていたのだろう、と考えました。同級生の女の子たちの苛めが原因ですが、母親や担任への強い不信感が後押しした様に思えます。
 城の中で、手探りで人間関係を構築して行く内に、こころが少しずつ前向きに成長していく様子が見て取れました。不器用なこころの中にはしっかりした自我とプライドがある。その強さが、彼女を城から無事に出したきっかけとなったのでしょう。

 ミステリ的な仕掛けや細かい伏線が上手に張ってあります。事細かな日常の描写がそれに繋がる所は凄いです。一気読みさせるだけの筆力も。描写が映像的なのも、素晴らしいですね。
 辻村さんのエッセイでは、映画のはしごをしたり(一日に何本も観る)いろんな文化に幅広く興味を持っていらっしゃるのが見て取れました。それが作品を彩っているのだろうと思います。 

まるさん、確かに辻村さんのファンタジー設定は、必然性があるのですよね。
安易に使われるのではなく、これを伝えるためには、この設定というのが、すごく納得できます。
こころの状況はとてもつらくて、読んでてしんどかったのですが、それ以上にアキのことが…。
そんなアキが生きていく力を得るためには、この設定が必要だったし、それがまたこころたちの未来につながっていく。
なんかもう、胸がいっぱいになって、泣きながら読みました。
手をのべている人はきっといる。
今、苦しんでいる人たちに、伝わりますように。

 まゆさん、アキの事、私も心をかきむしられる思いでした。
 彼女の存在は、この作品の重要な部分なんですよね。余り触れない方がいいかと
 思ったのですが・・・。
 彼女は本当に強い女性ですが、その真の強さを引き出したのはこころだったと思います。それが、その後の彼女の生き方を決めるし、泣かせるし。
 こういう思いをしている女の子沢山いるのかと思うと、心がざわつきます。

まるさん、アキに関することはネタバレ注意!なので、書きづらいですよね。
ただ、こころがアキに手を差しのべたことが、やがて・・・という設定が、とっても好きで。
いろんな人たちの思いが輪のように連なっていくこの構成にすっかりやられました。
お城は現実には存在しないけれど、苦しんでいる子たちに作者がこめた思いが伝わってほしい、と思います。

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