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2018年3月

2018年3月25日 (日)

世界を売った男

2726「世界を売った男」 陳浩基   文藝春秋   ★★★★

香港西区警察の許友一巡査部長は、ある朝目覚めたとき、6年間の記憶を失ってしまったことに気づく。捜査中だった殺人事件はどうなったのか。混乱する許の前に、女性雑誌記者・蘆沁宜が現れ、6年前の事件のことで、許と会う約束をしていたと告げる。彼女とともに被害者の姉のもとを訪ねる許は、事件の意外な結末を知るが、奇妙な違和感を拭い去れずにいた。

第2回島田荘司推理小説賞受賞作。

去年刊行された「13.67」が高評価で気になっているのですが、とりあえずこちらを。香港の小説を読むのは、初めて。

香港にあまりなじみがないので、地名やら人名やら、かなり混乱しましたが、ミステリとしてはすごくおもしろかったです。

許友一が捜査していた事件の真相と、彼がなくした「記憶」と、その両方を解き明かしていくのですが・・・。だいたい、こういうことかな・・・と読み進めるうちに想像しましたが、見事にしてやられました(苦笑) そういうことか。まいった。

というわけで、一気読みでした。やっぱり「13.67」読みたいなあ。

2018年3月24日 (土)

昭和史の10大事件

2725「昭和史の10大事件」 宮部みゆき×半藤一利   文春文庫   ★★★★

小説家・宮部みゆきと、歴史探偵・半藤一利が、昭和を代表する10の事件について、語り合う対談。

取り上げられた「事件」は、以下の通り。

① 昭和金融恐慌  ② 二・二六事件  ③ 大政翼賛会と三国同盟  ④ 東京裁判と戦後改革  ⑤ 憲法第九条  ⑥ 日本初のヌードショー  ⑦ 金閣寺消失とヘルシンキ五輪挑戦  ⑧ 第五福竜丸事件と『ゴジラ』 ⑨ 高度経済成長と事件ー公害問題・安保闘争・新幹線開業  ⑩ 東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(宮崎勤事件)

宮部さんと半藤さん、それぞれが10大事件を選び、その中からピックアップした10件について語り合う形式です。お二人は東京の下町の同窓生で、ただし年齢は30年違う。宮部さんが自分の「知っていること」を語り、実際に「見た」半藤さんが、ご自分の体験を語る、といった感じ。作家である宮部さんと、そうでない半藤さんの視点の違いもおもしろい。

私は宮部さんより年下ですが、「歴史」として知っている内容は、ほぼ同じ。だから、半藤さんの話に「へえ、そうだったんですか」と、宮部さんと同じ銚子でうなずいていました。知っているようで知らないことがたくさん・・・。金融恐慌とか大政翼賛会とか、歴史の教科書にはあったけど、よくわかっていませんでした。

憲法九条については、もう少し語っていただきたい気もしましたが・・・。あの憲法の源がどこにあったのか、これまた知らない話でした。この対談が行われたのは平成26年とのこと。現在だったら、お二人はどう語ったんでしょうね。

2018年3月21日 (水)

女たちの怪談百物語

2724「女たちの怪談百物語」 東雅夫監修   メディアファクトリー   ★★★★

2010年5月3日夜から4日未明にかけて都内某旅館の一室で行われた怪談会の記録。参会者は、加門七海、長島槙子、三輪チサ、立原透耶、伊藤三巳華、神狛しず、岩井志麻子、宍戸レイ、勝山海百合、宇佐美まことの10名。会主・東雅夫、見届け人・京極夏彦。

怖いの苦手なくせに読みたがる・・・といういつもの病がおこったとき、たまたま図書館で見かけたので借りてきました。

百物語の作法にのっとった怪談会で、一話語るとろうそくを消す代わりに、チョコを一個食べるという(笑) 夜中にそんなもん10個も食べたら大変なことに・・・。

それはともかく、それぞれ怪談の「書き手」である女性たちが語る怪談は、かなり怖いものもあり、かなり軽めのものもあり。ただ、こういうのを読んでいると、一話ごとの怖さがどうのというよりも、数を重ねていくことで生まれてくる妙な空気が一番怖いというのを実感させられます。

やる方も読む方も酔狂だなあと思ったりもするのですが、怖さを味わうことって大事なことだと思うのですよ。

2018年3月19日 (月)

マスカレード・ナイト

2723「マスカレード・ナイト」 東野圭吾   集英社   ★★★

殺人事件の犯人が、カウントダウン・パーティに現れる。警視庁に届いた密告状に記されたその会場は、ホテル・コルテシア東京。再び潜入捜査を命じられた新田浩介は、かつてコンビを組んだホテルウーマン・山岸尚美と再会する。大晦日の仮装パーティに、果たして犯人は現れるのか?

「マスカレード」シリーズ最新刊は、年末のホテルが舞台。捜査が難航している殺人事件の犯人がコルテシア東京に現れる(ただし、犯人の手がかりは全くない)という情報のもと、ホテルに潜入経験のある新田たちが駆り出される、という設定です。刑事たちがホテルに張り込みつつ捜査をするのを縦軸にしつつ、コンシェルジュとなった山岸尚美が宿泊客からの難題をどうさばいていくかというのが横軸になり、それが本筋にどう絡んでいくかというあたりが読みどころ。

読者を誘導していく手腕はさすがですが、エンタメとしての華もじゅうぶんに感じさせ、とにかく「おもしろい」と言わせるところが、東野圭吾の真骨頂でしょう。何かアヤシイという種は存分にまいておきながら、先読みさせず、まさかの展開にもっていくところもさすがです。

尚美というキャラは、かなりわかりやすくかっこいい女で類型的でもありますが、新田とのコンビにするといい味が出てきます。新田というキャラ、東野作品ではちょっと珍しいタイプかもしれません。

ホテルを舞台に・・・という設定自体、そうそう何度も使えるものではないのでしょう。今回はちょっと無理があるような気もしましたが、それを補って余りあるおもしろさではありました。

しかし、コンシェルジュってすごい・・・。ほんとにこんな無茶な要望をされたら、テーブルひっくり返して暴れたくなりますね(笑)

2018年3月16日 (金)

不時着する流星たち

2722「不時着する流星たち」 小川洋子   角川書店   ★★★★

ヘンリー・ダーガー、グレン・グールド、パトリシア・ハイスミス、エリザベス・テイラー・・・異彩を放つ人々をモチーフにした十の短編。

「誘拐の女王」「散歩同盟会長への手紙」「カタツムリの結婚式」「臨時実験補助員」「測量」「手違い」「肉詰めピーマンとマットレス」「若草クラブ」「さあ、いい子だ、おいで」「十三人きょうだい」

こんなふうにして「物語」は生まれるのだなあ・・・と、しみじみ感動しました。ある人物や出来事をモチーフにして生まれてくる物語は、十篇どれ一つ似たものはなく、それでいて紛れもなく「小川洋子の世界」を形作っていました。

第一話の「誘拐の女王」で、すっかり魂を鷲づかみにされました。でも、一気に読んでしまうのはもったいなくて、少しずつ、味わうように読みました(私には珍しい)。

この物語のモチーフは誰?何?というのを考えながら読んでいたはずが、いつのまにか美しく、不穏な物語世界をさまよっている・・・の繰り返しでした。

しかし、パトリシア・ハイスミスってそういう人だったんですね。知りませんでした・・・。それが一番衝撃的だったかも。

2018年3月12日 (月)

現代詩人探偵

2721「現代詩人探偵」 紅玉いづき   東京創元社   ★★★★

ある地方都市で開かれた「現代詩人卵の会」のオフ会。そこに集まった9人は、十年後の再会を約束した。その十年後、集まったのは5人。残りの4人は、亡くなっていた。どうして彼らは死ななければならなかったのか。最年少の「探偵」こと僕は、彼らの事情を知ろうとするが・・・。

初読みの作家さんです。

題名を見たとき、正直、「今どき? 詩人?」と思ってしまいました。ごめんなさい。

でも、読み始めたら、「詩を書いて生きていく」ことに疑問を感じている「僕」の思いに、ぐんぐん引き込まれていきました。志を同じくした仲間たちは、なぜ死んだのか?それは詩人だったからなのか? では、なぜ自分は生きているのか?

自意識過剰と笑わば笑え。「僕」をはじめとする詩人の卵たちは、「詩を書く」ことに自覚的であり、それゆえにありえない深みにはまっていきます。「僕」が彼らの死にまつわる事情を知りたがるのは、彼らのためではなく、自分自身のため。なぜ「僕」がそうせずにいられなかったのかがわかったくだりでは、涙が出そうでした。

暗い暗いトンネルの中で、一筋の光明を見つけたようなラストは、感動的ですらありました。ずっと息をつめるようにして読んでいたのだと、そのとき気づきました。

2018年3月 9日 (金)

アリス殺人事件

2720「アリス殺人事件」 有栖川有栖 宮部みゆき・他   河出文庫   ★★★

「不思議の国のアリス」の世界を下敷きにしたミステリー・アンソロジー。

有栖川有栖「ジャバウォッキー」、宮部みゆき「白い騎士は歌う」、篠田真由美「DYING MESSAGE《Y》」、柄刀一「言語と密室のコンポジション」、山口雅也「不在のお茶会」、北原尚彦「鏡迷宮」の6作品を収録。

「アリス」は未読なのですが、ミステリとの親和性が高い題材のせいか、よくネタになっているので、読んでいなくても内容を知っているというパターン。

今回のアンソロジーでは、有栖川さんと宮部さんのが既読でした。有栖川さんのは作家アリスもので、火村英生が探偵役。去年読んだアンソロジーの一編でした。初めて読んだときには、それほどおもしろいと思わなかったのですが、これだけ取り出してみると、なかなか。「言葉」のみを頼りに謎を解いていく推理の過程がおもしろかったです。

宮部さんのは、「マサ」シリーズでした。なつかしい!というか、全然覚えていませんでした。探偵事務所の飼い犬・マサを語り手にした短編は、もっとほんわかしたイメージでしたが、どうも記憶違いのようで。宮部さんって、けっこう昔からこういうやりきれなさに向き合ってきたのだなあと再確認しました。

2018年3月 5日 (月)

物語と歩いてきた道

2719「物語と歩いてきた道」 上橋菜穂子   偕成社   ★★★★

国際アンデルセン賞受賞の際のスピーチをはじめ、単行本初収録のインタビュー、スピーチ、エッセイをまとめた一冊。

去年の10月、仙台文学館で「精霊の守り人展」を見てきました。想像していたより充実した展示で、上橋さんの自筆の手紙や自作イラストなど、珍しいものもたくさん。この本には、そのイラストなども一部ですが収録されています(タンダのイメージ画など)。

上橋さんの物語も、エッセイも、いろいろ読んできましたが、生きることに前向きな姿勢にいつも圧倒されます。それでいて、決して「上から目線」ではないのです。だから、読み終えても、時間が経っても、何かのおりにふと思い出して、なんとなく勇気をもらったような気になったりするのです。

今回特に印象に残ったのは、アンデルセン賞受賞スピーチ等をまとめた「文化の差異を越えて」という章でした。世界の「分断」が大きな問題となっている今だからこそ、上橋さんのおっしゃることは身にしみましたし、この視点を忘れてはならないのだと肝に銘じました。

NHKの「精霊の守り人」は、3年にわたる放送が無事終了しました。ファンタジーを実写化するだけでなく、原作で描かれていた「異なる人との交流」「人と人とがわかりあうこと」というテーマに、逃げずに向き合った作品でもありました。きっかけは、ドラマでも、コミックスでも、なんでもいいのです。上橋さんのこの視点・・・彼我の違いを認めて、なおかつ手を伸べる姿勢に、少しでも多くの人にふれてほしいと思います。

この本には、ジュンク堂書店池袋本店で2016年から2017年にかけて企画された「上橋菜穂子書店」で紹介されたブックリストが載っています。これが楽しい!

こんな本を読んでるのか。これ、私も持ってる! やはりこの本は一度は読まねば・・・などなど。膨大なリストですが、多岐にわたるジャンルの約700冊。要チェックです。

2018年3月 3日 (土)

探してるものはそう遠くはないのかもしれない

2718「探してるものはそう遠くはないのかもしれない」 新井見枝香   秀和システム  ★★

おすすめの本は必ずヒットするという伝説をもつ、カリスマ書店員の新井さんの日常をつづったエッセイ。

うーん・・・。

理由はわからないのですが、私には合わなかったようです・・・。読んでいる最中も、読み終えてからも、なぜ?と考え続けているのですが。私の体調が悪かったせい?

なかなか個性的な方なのはよくわかりましたし、書かれたエピソードもおもしろくないわけではないのですが。

何かが、合わない。としか、言いようがありません。残念。

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