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2018年4月 7日 (土)

樽とタタン

2732「樽とタタン」 中島京子   新潮社   ★★★★

母親の仕事が終わるまで、小さな喫茶店で時間を過ごしていた子ども時代。その店で、私は「タタン」と呼ばれていた。そこで出会った人々は、それぞれがちょっと変わっていて・・・。

世の中というのは、大人たちの世界。その世界に存在しているけれど、構成員とは認められていなくて、「世界」を片隅からじっと観察している。大人から見た子どもの立ち位置ってそんなものかもしれません。でも、子どもには子どもの視点があって、「世の中の常識」を知らないからこそ、見えてくるものがあって。

「タタン」と呼ばれる女の子は、周囲の環境に順応するのに時間がかかるタイプらしい。いろいろあって、放課後の時間を、母親の迎えを待ちながら小さな喫茶店で過ごすことに。そこにやってくる一風変わった大人たちを通して、タタンは世の中を知っていく。

その喫茶店に集う人たちは(マスターも含めて)、あまり世渡りが上手そうではありません。世間からちょっとだけはみ出してしまっているような。ちょっぴり孤独を抱えているような。そんな人たちが、小さなタタンを邪魔にせず、ちやほやもせず、あるがままのタタンを尊重してくれている空気が、とても気持ちいいのです。

はみ出し者たちに対する、作者の目は決して甘くない。でも、そういう人たちをふんわり抱き取ってくれるような温かさを同時に感じるのです。

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中島京子」カテゴリの記事

コメント

喫茶店にいる大人たちが、タタンを子ども扱いせず自然に接しているのがとても素敵だなぁと思いました。
中島さんの視線はいつも、優しすぎず、厳しすぎず、それがとても温かみがあって好きです。

EKKOさん、>優しすぎず、厳しすぎず…本当にそうですね。
中島京子さん、気になっているけど未読が多いので、ぼちぼち読んでいこうと思います。

まゆさん、こんにちは^^

「あるがままのタタンを尊重してくれている空気が、とても気持ちいい」というまゆさんの言葉、本当にそうだなと思いました。
タタンの居場所がここでよかった♪
私も少しずつ中島京子作品を読んでいきたいです。

はぴさん、こんにちは。
生きづらいこどもだっただろうタタンが世界に軟着陸するためのセーフティネット、だったんでしょうね。
こういう場・こういう人たちって、今は少なくなってるのかも。

 まゆさん、昭和レトロの喫茶店の雰囲気(インベーダーゲームのテーブルとか)が印象的な作品でしたね。はみ出している人々が学校や世界に馴染めない少女を温かく迎え入れている、という感じで。
 でも、どこかでただのハートウォーミングなだけの物語ではない気もします。
 寓話、と言うべきなのか、何か、人生の深い部分を示唆してくれている様な味わさも感じました。

まるさん、お返事遅くなりました。

世間にうまく適応できない人たちのたまり場みたいなところ。
でも、そういうゆとりというか、余白というかが、タタンを救ったんでしょうね。
おっしゃる通り、陽だまりのような場所なのではなくて、
それぞれが抱える苦さのようなものが感じられるところが好きでした。

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