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2018年6月21日 (木)

未来

2760「未来」 湊かなえ   文藝春秋   ★★★★

父を亡くしたばかりの章子に届いた一通の手紙。それは、20年後の未来の自分が、10歳の章子に向けて書いた手紙だった。精神的に不安定な母との二人暮らし。学校でのいじめ。章子は苦しみもがきながら、未来の自分への返信を書き続ける。きっと幸せになると信じて。

読んでいる間、何度か「うわーっ」と大声で叫びたい気持ちになりました。父の死によって、章子が不安定な生活を強いられるのがつらくて。あまりにもえげつないいじめの描写に耐えられなくて。章子や同級生の亜里沙が置かれた状況がやりきれなくて。なんで、この子達がこんな目に遭わなきゃならないの、と。

いったいあの「手紙」は何なのか。本当に未来から手紙が届くわけもなく、いたずらにしてはずいぶん手の込んだやり方で。・・・物語の後半、章子が知らない三つの「エピソード」によって、全ての謎は明かされます。亜里沙に何があったのか。手紙は誰が何のために書いたのか。そして、章子の両親はなぜふるさとを捨てたのか。どれも胸がつぶれるような思いがするエピソードでした。

そうして、ボロボロになった章子と亜里沙が迎えたラストシーン。思わず涙がこぼれました。おそらく、そうすることは決して楽なことではないのだろうに。もっとつらい思いをするかもしれないのに。でも、「未来」を信じる章子たちの声が、きちんと大人たちに届きますようにと願わずにはいられませんでした。

おそらく、現実に存在するたくさんの章子や亜里沙たち。私も大人として、その声を受け止めるべき存在なのだと、自分に言い聞かせつつ。

書店で見たときは、表紙のデザインがずいぶん地味だなあと思ったのですが、これ、卒業アルバムの表紙ですよね。それに気づいたとき、胸がいっぱいになりました。

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コメント

とりあえず予防線を張って読みましたが、やはりラストはずしりと重かった。
三つのエピソードは物語のカオスをはっきり見せつけられました。
本当にこの子達の未来は大丈夫なの?
>大人として、その声を受け止めるべき存在
まゆさんの感想に激しくうなづきました(*^_^*)

ひなたさん、お返事遅くなりました。ごめんなさい。

警戒して読んでいても、振り回されるんですよねえ、湊作品(苦笑)
しんどかったです、これも。
でも、これってただのフィクションとは言えないくらい、今の世の中はおかしくなっていて。
実際に苦しんでいる子たちの声をキャッチできるようになりたいです。

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