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2019年5月

2019年5月30日 (木)

今昔百鬼拾遺 河童

2905「今昔百鬼拾遺 河童」 京極夏彦   角川文庫   ★★★

 

薔薇十字探偵社に持ち込まれた奇妙な依頼を持て余した益田は、旧知の雑誌記者・中禅寺敦子に相談する。浮かび上がってきたのは、連続水死事件と覗き魔と河童・・・? 水死体の一つを発見したのは、敦子の年の離れた友人・呉美由紀たち。そうして彼女たちは否応なしに事件の渦中へ。

 

「鬼」に続いてこちらも。いつものことながら、京極作品って癖になるんですよねえ(苦笑)

のっけから美由紀たち女学生による河童談義が延々と続き、次は益田の脱線しまくりの話。さらに、多々良先生も登場して、カオスのようでした(苦笑) 

彼ら引っ掻き回されていただけで、事件そのものは最後にはきちんと全体像が理解できるので大丈夫です。しかし、美由紀はいいキャラです。

本筋には関係ないけれど、敦子が「浅草に、江戸はない。/浅草は、ずっと浅草だ。」という考え方が面白かったです。なるほど。歴史的に見ると、そうなるのか、と。

シリーズ3作目「天狗」は、来月発売だそうです。また敦子と美由紀が登場するのかな。

2019年5月28日 (火)

今昔百鬼拾遺 鬼

2904「今昔百鬼拾遺 鬼」 京極夏彦   講談社タイガ   ★★★★

 

昭和29年3月。「昭和の辻斬り」に殺された女子高生・片倉ハル子の友人・呉美由紀が、雑誌記者・中禅寺敦子のもとを訪ねてきた。かつて巻き込まれた事件で知り合った二人は、ハル子の死に方に釈然としないものを感じる。彼女は生前こう言っていたという。「片倉の女は斬り殺される定め」・・・実際、片倉家では、代々女性が非業の死を遂げていた。

 

百鬼夜行シリーズ最新作は、三ヶ月連続刊行、しかも一作ごとに異なる出版社から文庫で刊行という・・・。

「今昔百鬼拾遺」というタイトルのこれらは、京極堂こと中禅寺秋彦の妹・敦子が探偵役になるようです。京極堂も、探偵も、関口先生も登場しません(名前だけはちょこちょこ出てきます)。

よくわかったのは、「憑き物落とし」とはこういうことであったか、ということ。

本編では、闇の中を漂うような事件の経過と、クライマックスの京極堂の弁舌にただ翻弄されて、なんだかわからないけれど最後の最後には光が見えて、「憑き物が落ちた」感覚をなんとなく味わうのですが。こちらは、もっと明快(そもそも、分量が違う)。

今回は、最後に美由紀が活躍するのですが、彼女の言葉を聞いていると、いろんなモヤモヤガ晴れていくような心地になりました。それぞれの思い込みや蒙を開く、その人たちが落ち込んでいる迷路に光を当て、道を示すような・・・それこそが「憑き物落とし」なのだなあ、と。

京極堂みたいなちょっと特殊な人でなければできないというものでもないのですよねえ。

2019年5月27日 (月)

そこにいるのに

2903「そこにいるのに」 似鳥鶏   河出書房新社   ★★★

 

六年前、自宅で強盗に殺害された少女。その母に取材に行くと、日記が見つかったという。複雑な思いを抱えつつも、いいネタになる、と読み進めていくと・・・。(「六年前の日記」)

 

13のホラー短編集。冒頭の「六年前の日記」はアンソロジー「怪を編む」で読んでいましたが、その他は書き下ろし。長さもまちまちで、ショートショートから短編まで。でも、どれも読み応えがあります。

それはやってはいけない・・・と、どこかで警報が鳴っているのに、何かに引き寄せられるように「そちら」に行ってしまう。ほんの一歩のズレが、異界への入口になってします。そんな怖さ。

なんだかわからないけれど怖かったのは「二股の道にいる」と「視えないのにそこにいる」。それから、ちょっとホッとしたのは「帰り道の子供」。

似鳥さんの発想のおもしろさとストーリーテラーとしての力量を楽しめる一冊です。

2019年5月23日 (木)

志ん生一代

2902「志ん生一代」 結城昌治   小学館文庫   ★★★★

 

不世出の天才落語家・古今亭志ん生。何度も何度も失敗を繰り返しながら、落語を愛し続けた破天荒な一代記。

 

「いだてん」絡みです(笑) とは言え、買ってきたのは夫。落語好きなので。私はネタバレになるのが怖くて、「いだてん」放送終了まで読まないつもりでしたが、先日、森山未来の一人三役(?)の芝居を見て、もう居ても立ってもいられず。

私は落語のことは全然わからず、噺家さんたちのこともほとんどわからず。志ん生の名前は知っていましたが、どんな人かも知らず。この本を借りたとき、夫がニヤッと笑って「ほんとにしょうもない人だよ」

ええ、ほんとにしょうもない人でした(笑)

ドラマでもなかなかひどい男ですが、こちらもすごい(笑) 基本、この本もドラマの元ネタの一つだと思われますが、ドラマの美濃部孝蔵(志ん生の本名)の方が、それなりにかっこうがついています。

とにかく、呑む打つ買うがずっとやめられない。落語に熱心なのは事実だけれど、飲んでしまって高座に穴をあけたり、なけなしの金を博打ですったり。それがずーっと続くのです。普通は、それなりに売れたらいい暮らしをするはずなのですが、全然変わらない。結婚しても、子供ができても変わらない。あげく、変なところで強情だったりして、噺家うちでトラブルになる。何度も。

志ん生という人間のもつ愛嬌や矛盾、意地や滑稽さを、ウエットになりすぎず書いたこの作品は、ベースに志ん生への愛情と尊敬があるので、読んでいてとても心地よかったです。

脳裏では、すっかりドラマのキャストが会話をしていて、これまた楽しかったです。「いだてん」観てなかったら、たぶん一生読まなかった本でした。

 

2019年5月19日 (日)

葵の月

2901「葵の月」 梶よう子   角川書店   ★★★

 

将軍継嗣・家基の不審な死。書院番で家基の覚えもめでたかった坂本蒼馬は、許嫁の志津乃にも何も語らず失踪した。三年が経ち、志津乃には、蒼馬の友だった高階信吾郎との縁談が。複雑な思いで運命を受け入れようとする志津乃だったが・・・。

 

七話から成り、それぞれ視点人物が変わり、徐々に事件の真相が明らかになる・・・という構成。将軍継嗣の暗殺(?)という大事件に関わり、さらに人間関係がもつれにもつれて複雑な絵図面が見えてきますが、実は意外にシンプルな決着をします。

思いもかけない事件に巻き込まれ、人生を狂わされてしまった人たちの姿に、時には胸がふさぐような気持ちになりますが、志津乃や、彼女に仕える平八たちの成長が心強かったです。

ただ、志津乃が最後の最後では、普通の武家の奥方におさまってしまっていたのが、ちょっと物足りなかったです。せっかく伯父の医師・孝安の手伝いをしたり・・・という描写があったのだから、その辺がもう少し生きてくればと思ってしまいました。

2019年5月18日 (土)

魔眼の匣の殺人

2900「魔眼の匣の殺人」 今村昌弘   東京創元社   ★★★★

 

神紅大学ミステリ愛好会会長・葉村譲は、先輩の剣崎比留子と共に、W県の山奥にある施設を訪れる。そこは、かつての事件でその存在を知った「斑目機関」に関わるところだと知ったからだ。葉村たちを含め、九人が訪れたその施設「魔眼の匣」には、未来を予知できる「サキミ」がいた。そして、「あと二日のうちに、この地で四人死ぬ」というお告げが。孤立した里で、葉村たちは生き延びられるのか。

 

「屍人荘の殺人」の続編が出ると聞いたとき、ええっ?と思ったのですが・・・。だって、あのネタはもう使えないし、どうするんだろう?と。いや、こうきましたか。お見事です。

ネタバレ厳禁なので、詳しいことは書きませんが、前作よりも設定は普通・・・と思いきや、なかなかぶっ飛んでます(笑) そして、ものすごく真っ当なミステリです。子供の頃、夢中で「推理小説」を読んでいたころを思い出しました。いつ、誰が、なぜ、どうやって・・・そういう謎解きがふんだんに盛り込まれ、やがて、この事件の根幹を成す「謎」が解き明かされます。そういうことか・・・。もう、参りましたという気分でした。

そして、さらに続編がありそうですね。読者もシリーズを読み進めると、徐々に慣れてくるものですが、どうやらこのシリーズはそこも含めて、こちらを裏切り続けてくれそうで、楽しみです。国産ミステリもいいぞ~!

2019年5月17日 (金)

ブロードキャスト

2899「ブロードキャスト」 湊かなえ   角川書店   ★★★

 

中学時代、駅伝選手として全国大会を目指していた町田圭祐は、最後の大会で全国への切符を逃した。私立の陸上強豪校に進学するも、思わぬ出来事で陸上の道を断たれた圭祐は、なりゆきで放送部へ。全く興味のない世界だったが、なぜかラジオドラマに出演することになってしまい・・・。

 

いろんな意味で、湊さんっぽくない物語でした。挫折した主人公。新しい道を開いてくれる友人との出会い。新しいことへの挑戦。流されるままにやってきたけれど、それは本当に自分のやりたいことなのか。そして、主人公の出す結論は・・・という、青春小説の王道のような話。ちょっと異色なのは、放送部が舞台で、ラジオドラマを作るという、あまりなじみのない題材だということでしょうか。

圭祐の葛藤はわかる気がするし、放送コンテストやラジオドラマ作りの過程などは興味深かったです。放送部の三年生たちのダメダメっぷりにも呆れつつ笑ってしまったし。彼女たちの変わりそうで変われないところがリアルでした(苦笑)

ただ、声優志望(?)の久米さんの存在感がイマイチだったかな、と。キーパーソンなはずなのに、意外と印象薄いというか・・・ストーリーのために必要だからいるって感じで、正也ほどの存在感がないような気がしたので。

毒のある湊さんもいいですが、これはこれで嫌いじゃないです。でも、最後まで「何か裏があるんじゃないか」と思ってしまいました(苦笑)

2019年5月15日 (水)

f植物園の巣穴

2898「f植物園の巣穴」 梨木香歩   朝日文庫   ★★★★

 

f郷の植物園に赴任した佐田豊彦は、奇妙な現象に次々遭遇する。頭が雌鳥に見える大家。前世は犬だったという歯科医の家内。ナマズのような神主。そうして佐田は、椋の木の巣穴に落ち、さらなる異界に足を踏み入れる。

 

ずっと気になっていtけれど、なぜか手に取らずにいた一冊。

梨木さんの物語の主人公は、「喪失」を抱えている人が多いことを再認識しました。主人公の佐田は、妻を失ってこの地にやってきました。妻が亡くなってから、彼女が身ごもっていたことを知り、そのことをうまく消化できないままふわふわ漂っている感のある佐田。なんとも奇妙なf郷で暮らすうちに、妻の千代と、幼いころ「ねえや」として仕えていた千代という女性とが混ざり合い、佐田は忘れていたあれこれを思い出していきます。

喪失の記憶はつらく、佐田は生きていくために心を固く閉じてしまっているような男です。感情が滞ってしまっていて、自分でもそれを流すことができない。だから、いつまでもつらい時間が停滞している。いっそ感情を爆発させてしまえば楽になるのに、それができない不器用さ。

さまざまなモチーフが折り重なり、佐田の心を溶かしていくのですが・・・特にも印象的だったのは、「水」と「乳歯」。それらに託された重層的なイメージが、徐々に形を成し、佐田を喪失から立ち直らせていく過程は、しみじみと胸に沁みました。特にも、「道彦」命名のくだりは・・・。

不思議なもので、本は出会うべきときに出会うものだと痛感する時があります。私にとっては、この本がまさにそうでした。刊行が2009年、文庫化は2012年のようですが、その当時の私には、たぶんこれはあまり受け入れられなかった気がします。今だからこそ、佐田の喪失感にも、再生にも、それぞれ感じるものがあり、物語のもつ力を信じることができました。

2019年5月13日 (月)

ひとんち

2897「ひとんち」 澤村伊智   光文社   ★★★

 

学生時代のバイトで知り合った友人たちとの十五年ぶりの再会。しかし、話は奇妙な方向に転がり始める。それぞれの家庭独特の風習や習慣は、どこにでもある。しかし・・・。

 

ホラー小説を発表し続けている澤村伊智の短編集。「ひとんち」「夢の行き先」「闇の花園」「ありふれた映像」「宮本くんの手」「シュマシラ」「死神」「じぶんち」の8編。

個人的にはホラーというか、怪談と呼ばれる類のもの、さらに言えば短編の方が好きなのです。長編になると、話を展開させるために二重三重の仕掛けや、ホラー以外の要素で話を引っ張る必要が生じたりして、ちょっとダレる気がするもので。

ということで、澤村さんの短編集。やはり切れ味鋭い短編ホラーはいいですねえ。

読みながら考えていたのは、ミステリとホラーの親和性。「謎」が提示されて、その謎を解きたくなるという点において、ミステリとホラーは近いものがあるよなあ、と。例えば「ひとんち」では、その習慣はいったい何なのだ?という謎が提示され、その上で「怪を背負っているのは、本当は誰だ?」という謎も提示されます。ミステリの骨格としてもいける感じ。

しかし、決定的に違うのは、ホラーは謎解きを必要としないという点。「闇の花園」や「じぶんち」などでも、それは結局なんなんだ?というのはわからないまま。その「わからない」ところに「怪異」が生じるのですね。

澤村さんの作品を読んでいると、いつも「すぐ隣にある怪異」を感じます。フィクションなのに、自分もいつかこういう経験をしてしまうのではないか・・・と思わされる怖さ。すぐそこに異界が口を開けている実感があるのです。

2019年5月10日 (金)

宝島

2896「宝島」 真藤順丈   講談社   ★★★★

 

米軍の物資を盗み、人々に分配する「戦果アギヤー」の英雄・オンちゃん。その親友グスク、弟レイ、恋人ヤマコ。戦後の沖縄で生きる彼らが混沌に飲み込まれたのは、嘉手納基地襲撃が失敗に終わった日からだった。消えたオンちゃん。囚われたレイ。逃げおおせたグスク。襲撃に参加させてもらえなかったヤマコ。そこから、彼らの歩む道は別れ・・・。

 

第160回直木賞受賞作。

エンタテイメントの底力というか、「物語」という枠をもっているからこそできることというか、その凄まじさを感じさせてくれる作品でした。知識として頭の中にあった事実が、血肉をもって目の前に立ち上がってくるような。それがどこからくるかというと、「語り」の文体なのです。

初めはよくわからずとまどいましたが、「語り部(ユンター)」たちによって語られるからこそ、個々の登場人物だけでは補えない部分を読者に提示して、物語が展開します。グスク視点かと思うと語り部が引き取り、レイの怒りにシンクロしそうになると語り部が引き取り、ヤマコの慟哭にこちらも涙すると語り部が・・・という具合で、一人の感情に没入するよりも、彼らの生き様を通して沖縄の生き様を眼前に広げられるような物語でした。

ものすごい力に引きずられるように読んでいたけれど、しんどかったです。レイたちが「日本」に向ける刃は、私自身にも向けられていると感じたから。

私は、沖縄の本土復帰をぼんやりと覚えています。でも、そこに至るまでの沖縄の状況はわかっていませんでした。基地問題も、実際に沖縄の地に立って、あの広大な敷地に唖然とするまで、実感はありませんでした。そういう無関心、他人事(自分が害を被るわけじゃないから)という意識が、レイたちを苦しめてきたんだと・・・今も苦しめているんだと、何度も何度も思いました。・・・でも、だからこそ、読んでよかったのだと思います。

もちろん、グスクも、レイも、ヤマコも、オンちゃんも、とっても魅力的で、青春ものとしてもじゅうぶん読めるし、オンちゃんがどこへ行ってしまったのか、その安否は?というミステリとしても読めます。冒険小説でもあり、バイオレンスものでもあるのかも。ただ、沖縄の歴史のことを考えざるを得ないのは、沖縄で生きることと、それが切り離せないものだからなのでしょう。

この作品と同時に直木賞候補になった「ベルリンは晴れているか」の作者深緑野分さんが、これを激押ししていたのが読むきっかけでした。あちらは終戦直後のベルリン、こちらは1952年から20年間の沖縄という違いはあれど、どこか似ています。理不尽な状況に翻弄される中で、生きようともがく人々。それは、決して「どこか」の「過去」の物語ではないということ。だからこそ、いろんな人に「読んでみて」とすすめたい物語なのです。

2019年5月 8日 (水)

マジカルグランマ

2895「マジカルグランマ」 柚木麻子   朝日新聞出版   ★★★

 

元女優の正子、75歳。シニア俳優として再デビューを果たし、CMで人気を博すも、夫の死に際してのコメントで大バッシング。仕事を失い、生活にも余裕がない正子は、どうにかして収入を得ようと奮闘する。

 

やられたなあ、という感じです。

「おばあちゃん」が主人公の小説というので、なんとなく手にした本。漠然と「こういう感じだろう」という思い込みを、見事に粉砕されました。

とにかく、主人公の正子が、どうにもしっくりこないのです。なんだろう?と思っていたのですが、途中のこの言葉で納得。

「自分が一番で、自分だけが特別で、自分が一番目立ちたいのが、正子さんなんだから。」

そうなのです。正子は、わがままで、自己中心的。とにかく自分が大事。それが、いわゆる「お年寄りのあるべき姿」と一致しないから、気持ち悪かったのです。でも、年を取ったからといって、一歩ひいて、若い世代に道を譲るべき、次の世代を温かく見守るだけ・・・なんて、誰が決めたんでしょうね?

この物語は、徹底的にそういう「あるべき姿」「理想像」みたいなものを粉砕していきます。「おばあちゃんが主人公の話だから、きっとこんな感じだろう」という私の思い込みが粉砕されたのもむべなるかな。

パブリックイメージのために生きて、みんなに認められようという生き方の虚しさ。そもそも「理想の姿」なんて、誰が決めたというのでしょう。今の世の中が息苦しく、生きづらいものになっているのは、そういう「あるべき姿」に囚われ、「いい子」になっている人が多いからかもしれません。

「アッコちゃん」シリーズを彷彿とさせるようなコメディタッチですが、なかなか鋭くえぐってきます。さすが、柚木さん。

2019年5月 6日 (月)

美女と竹林のアンソロジー

2894「美女と竹林のアンソロジー」 森見登美彦・他   光文社   ★★★★

 

森見登美彦リクエストによるアンソロジー。

阿川せんり「来たりて取れ」、伊坂幸太郎「竹やぶバーニング」、北野勇作「細長い竹林」、恩田陸「美女れ竹林」、飴村行「東京猫大学」、森見登美彦「永日商品」、有栖川有栖「竹迷宮」、京極夏彦「竹取り」、佐藤哲也「竹林の奥」、矢部嵩「美女と竹林」

私にとって「定番」の作家さんたちが5人、初めましての方が5人。アンソロジーならではの楽しい読書でした。ただやっぱり、慣れている作家さんたちのが読みやすかったかな。

伊坂さんは設定からぶっ飛んでいて笑ってしまったし。恩田さんはタイトルから「は?」となりましたが、やっぱり恩田さんの世界に連れて行かれました。世間話みたいな導入から、気づくと異世界に・・・というパターン。落語みたいです。森見さんの物語のうす明るいような、ひんやりした感じとほっこりする感じが同居する不思議な世界が健在。有栖川さんと京極さんも、実に「らしい」世界が展開します。

初めての作家さんでは、冒頭の阿川せんり「来たりて取れ」のインパクトにやられました。突拍子もないようでいて、いつのまにか心地よくなっている、独特の感覚でした。

本家「美女と竹林」を読んだとき、正直言って「なんじゃ、これ(笑)」だったのですが、このテーマで物語を書くとこんなになっちゃうんですねえ。ちなみに、私は竹林、怖いです。嵯峨野に行ったとき、ちょっと具合悪くなりました(苦笑)

2019年5月 2日 (木)

方壺園

2893「方壺園」 陳舜臣/日下三蔵 編   ちくま文庫   ★★★

 

晩唐の長安。塩商・崔朝宏の邸内の建物・方壺園で、詩人の高佐庭が殺された。その現場は密室で、犯人はわからずじまい。しかし、その翌年、方壺園で書生が自殺したことから、真実が明らかに・・・。

 

朝日新聞の書評欄に載っていたので、手に取りました。陳舜臣を読むのは初めて。

「方壺園」「大南宮」「九雷渓」「梨の花」「アルバムより」「獣心図」「スマトラに沈む」「鉛色の顔」「紅蓮亭の狂女」の9編。

密室ものから、フーダニット、ハウダニットなどなど、古き良き時代のミステリという感じで、楽しみました。動機にあるのは、憎しみや妬みなど、人の心のどうしようもない暗部であることが多いのですが、その辺の心理描写とトリックが違和感なく融合しています。

「九雷渓」と「アルバムより」が私の好みでした。インドを舞台にした「獣心図」は、趣が異なってインパクトありました。

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