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2020年1月

2020年1月31日 (金)

鴨川ホルモー

「鴨川ホルモー」  万城目学      角川文庫      ★★★★

晴れて京大生になった安倍は、「京大青龍会」なる怪しいサークルに勧誘される。活動内容が不明瞭で訝しむ安倍だったが、同じく勧誘された早良京子に一目惚れ。うっかり入会してしまう。それが、「ホルモー」との出会いとも知らず。


「べらぼうくん」を読んだら、矢も盾もたまらず、再読してしまいました。「べらぼうくん」は、小説家になろうと思い立った万城目青年が、無事デビューを果たすまでのべらぼうな日々を綴ったエッセイ。そのデビュー作が、この「鴨川ホルモー」です。

私の初読は2008年。森見登美彦「太陽の塔」が衝撃的に面白かった!と言っていたら、「ホルモー」もぜひ!と複数の方からすすめられた覚えが。で、読んで、笑って、衝撃を受けました。(以来、森見氏と万城目氏は、私の中で同じ箱に入ってます)

レナウン娘の衝撃は忘れてませんでしたが(改めて読むと、とんでもない馬鹿馬鹿しさでした・笑)、それ以外は記憶が薄れてて。こうしてみると、ド直球の青春ものですねえ。清々しいほどの。で、やっぱり面白かったです。

万城目さんはデビュー作は、ほんとに「原点」という印象。ここから始まったんですね。





2020年1月28日 (火)

犬神家の一族

2998「犬神家の一族」  横溝正史      出版芸術社      ★★★★

犬神佐兵衛翁の遺言が、惨劇を引き起こす。金田一耕助への依頼人は、面会の直前に殺され、信州の犬神家を訪れた金田一は想像を絶するような事件に遭遇する。


「横溝正史自選全集」4巻。映画やドラマで何度も見ていますが、改めて読むとけっこう入り組んでいて。でも、映像よりも、こちらの方がわかりやすかったです。

映画等ではあまり感じなかったのですが、佐兵衛の人生もなかなか苛烈で、歪んだ生き方をしたゆえに心まで歪み、それがさらに周りの人々も歪ませていく…というのが、なんともやりきれなかったです。

横溝作品は、今も映像化が続いていますが、気持ちはわかります。実に映えるだろうなと思われる場面が沢山あるので。「犬神家」に関しては、例のスケキヨの場面がインパクトありすぎる訳ですが。

この作品もそうですが、金田一ものには、戦後だから成立したというものが多いです。戦争がなかったら、ここまでひどい事態に陥らなかっただろうに、という。そのことが、重くのし掛かってきます。

2020年1月26日 (日)

名残の花

2997「名残の花」  澤田瞳子      新潮社      ★★★★

天保の改革で辣腕を奮うも、その後長期間幽閉された鳥居耀蔵(胖庵)。明治の世になり、東京と名を変えた江戸の町に戻った胖庵は、町と人のあまりの変貌ぶりに愕然とする。そして、ひょんなことから見習い能役者の豊太郎と知り合う。かつて能を弾圧した胖庵。為政者の庇護を失った能の世界で修行を続ける豊太郎。それぞれの思いが交錯する。


「名残の花」「鳥は古巣に」「しゃが父に似ず」「清経の妻」「うつろ舟」「当世実盛」の六編から成る連作短編集。

歴史上の勝者よりも敗者。権力者より庶民。最近、自分の興味関心の方向性ゆえか、この作品は非常に面白かったです。

かつて「妖怪」と呼ばれた鳥居胖庵は、天保の改革で奢侈を禁じ、能や歌舞伎の世界を苦しめた人間。その後失脚し、幽閉され、解き放たれたのちは、東京に戻り、隠居の身。胖庵と知り合った豊太郎は能役者の卵。幕府の庇護を失い、衰退する一方の能。困窮のあげく能を捨てる役者も多いなか、家業でもある能の世界に生きようとしている。

そんな「新しい世に置き去りにされた」かのような二人が、やはり時代の変化に翻弄される人々の事件に出会う物語。世の中が変わっても、変われない人たち。変えてはいけないもの。様々な形で描かれるそれらは、他人事ではなく。自分ならどう生きるのかを問われているようでした。一番やりきれなかった「うつろ舟」が出色でした。

「芸能とはそもそも、人の心を楽しませ、ひとときの夢を与えるものだ。いかに不謹慎であろうとも、それをお上が統制するなぞ、お門違いも甚だしい話であった。」(「しゃが父に似ず」より)

現代でもありますね、こういうの…。


2020年1月23日 (木)

希望という名のアナログ日記

2996「希望という名のアナログ日記」  角田光代      小学館      ★★★★

様々な媒体に発表されたエッセイと、短編小説一作を収録。

初期のころ(?)の作品のイメージは、「閉じている」でした。それが「空中庭園」で、あれ?ちょっと変わった?と感じ、「対岸の彼女」で世界が開いたように感じました。

デビュー当時から編集者に言われていたのが「希望を書きなさい」ということそうです。すごく、腑に落ちました。

角田さんは同い年なので、ずっと気になっている作家さんです。けれど、私とは趣味嗜好がイマイチ合わない感じ(苦笑)  私は海外ひとり旅できないし、マラソンも無理。お酒と猫を愛してるくらいか。

全然違うのに、なぜか心惹かれるのが、角田さん。やりたいことは違うけど、根っこの部分ではなんか共感できるというか。

角田さんのエッセイ集は初めて読みましたが、ほかのも読んでみようかな。

2020年1月20日 (月)

土に贖う

2995「土に贖う」  川﨑秋子      集英社      ★★★★

北海道野幌のレンガ工場で働く佐川吉正は、責任ある立場になって以来、緊張と鬱屈を抱えていた。生産量が増えるにつれ、自分たちは使い捨てられるのではないか。その矢先、配下の工員が亡くなり…。(「土に贖う」)


「蛹の家」「頸、冷える」「翠に蔓延る」「南北海鳥異聞」「うまねむる」「土に贖う」「温む骨」の短編7編。いずれも北海道を舞台にした小説です。

以前、アンソロジーで「頸、冷える」を読んで、「今どき、こんなものを書く人がいるのか!?」と、愕然としたのです。それは、北海道でかつてミンクの養殖に携わっていた青年の話。

「こんなもの」というのは、我々が忘れたことにしてきた、かつての日本人の姿と暮らしです。もはや日本はそんな国ではない、そんな過去はなかったと私たちが思い込もうとしている、何か。

この短編集は同系列の作品を集めたもので、養蚕、ハッカ、レンガ等々、北海道の産業を扱ったものが多いです。開拓地であり、厳しい自然と共存しなければならない北海道だからこそ、そこに生きた人々の思いは痛切です。

「かつてこの地にあった、何者かであり、何者にもなり得なかった諸々の過去」(「骨温む」より)こそが、この作品集であり、私たちが置き去りにしてきたものが、ここにあります。

2020年1月18日 (土)

落花狼藉

2994「落花狼藉」  朝井まかて      双葉社      ★★★

家康亡き後、果たして江戸の町がこれからどうなるのか、誰にもわからない頃。吉原という売色御免の町を造り上げた庄司甚右衛門。「親仁(とと)さん」と皆に慕われる甚右衛門の女房・花仍(かよ)は、甚右衛門に拾われ、西田屋で育った。何かと規格外の花仍だが、町を守るために闘い続ける。


いきなり冒頭の場面で驚かされました。女郎たちと歌舞伎踊りの連中との諍い。そこに割って入った西田屋の女将・花仍が、剣術をつかうのですから。規格外にもほどがある(笑)

吉原が移転したこと、大火に見舞われたことは知っていましたが、こうしてみると大変なことであったのだなあと改めて感じます。江戸物は好きで読んでいますが、中期以降が舞台のものが多くて、この辺りは新鮮でした。

主人公の花仍が一筋縄でいかないというか、なかなか成長しないヒロインで、何度も失敗して、後悔を繰り返すのです。前半はちょっとイライラしましたが、人間ってこんなもんかもしれないなあ…と、徐々に思うようになりました。

幕切れの一行が見事です。

2020年1月14日 (火)

独ソ戦

2993「独ソ戦    絶滅戦争の惨禍」  大木毅      岩波新書      ★★★★

ドイツとソ連の戦争は、なぜあれほど凄惨で、野蛮で、想像を絶する惨禍となったのか。日本ではあまり知られていない 「人類最悪の戦争」の本質とは。


ここ二、三年、第二次世界大戦下の日本以外の戦線に関する本をいくつか読む機会がありました。そして、自分の知識が非常に乏しいことに愕然としました。そんなタイミングで出たこの本。どうしようか迷いましたが、呉座勇一先生の推薦文に背中を押されました。

読んで驚いたのは、戦争に至る過程での、指導者のひどさです。ドイツも、ソ連も。とにかく第一章だけで唖然としました。こんな人たちの号令一下、どれだけの人命が失われたのか…。

彼らがあの戦争を「何のために」遂行したのか。さらに、それぞれの国民が、なぜ戦争をやめる方向に動けなかったのか。…これはもう、他人事とは思えません。日本もかつては…という話でなく。今も、どの国であっても、かつてのドイツやソ連と同じ轍を踏まない保証はない。私たちはそれを自覚すべきです。

また、怖いのは、この戦争の真実は、戦後ソ連では情報公開されず、ドイツでは歴史修正主義者たちによりねじ曲げられて伝わってきたということです。

過去のあやまちを正確に知ることは、同じあやまちを繰り返さないために、絶対必要なことです。


2020年1月12日 (日)

残酷な王と悲しみの王妃2

2992「残酷な王と悲しみの王妃2」  中野京子      集英社文庫      ★★★

ルートヴィヒ2世(ドイツ)、アレクサンドル3世妃マリア(ロシア)、カルロス4世(スペイン)、カロリーネ・マティルデ(デンマーク)の4人をめぐる歴史物語。


ああ、そういうことだったのか…というのがいっぱいあるのです、中野さんの著書は。西洋史に詳しい方には常識かもしれませんが、私なんかはよくわからない…というポイントを、実に的確に、丁寧に説明してくれるので。

そもそもかつての「国」や「王」に関する感覚が、現代とは(あるいは日本人とは)違う…というのも、中野さんの著書で認識したので。(イングランドの王はドイツ系と聞くと、なんで?って思うじゃないですか)

今回は、ルートヴィヒ2世の話が面白かったです。かのエリザベートとの相似とか。ミュージカルのおかげで世界中でヒロインになったシシィを「変人」と断じているのに吹き出してしまった…。

それから、ロマノフ王朝最後の皇帝の母・マリアの話。こういう生い立ちだったのですね。

2020年1月10日 (金)

活版印刷三日月堂 空色の冊子

2991「活版印刷三日月堂  空色の冊子」  ほしおさなえ      ポプラ文庫      ★★★★

「三日月堂」に弓子が帰ってくるまで、あの小さな印刷所でどんな時間が流れていたのか。本編では描かれなかった過去を紡ぐ番外編。


4巻で完結じゃなかったのっ?

…書店でこの本を見つけたとき、思わず叫びそうになりました(苦笑)  もちろん、嬉しくて。というわけで、シリーズ5冊目は、スピンオフ短編集。

「ヒーローたちの記念写真」「星と暗闇」「届かない手紙」「ひこうき雲」「最後のカレンダー」「空色の冊子」「引っ越しの日」の7編。弓子の父、祖父母、三日月堂に関わる人はたちそれぞるを主人公に、本編に至るまでの道のりを語ってくれます。

弓子の父が主人公の「星と暗闇」、祖母が語る「届かない手紙」は、号泣しました。自分にとって大事な人が亡くなることの重さが、わかりすぎて。本編は、肉親を失い、ひとりぼっちになった弓子の再生の物語。彼女が抱えた孤独の深さに、私は今更ながら気づいたのでした。

弓子は芯の強い女性です。その強さのもとには、祖父の姿があるのかもしれないと、「空色の冊子」から感じました。やけにならず、あきらめず、毎日を暮らしていく。その大切さ。

ところで、これで終わりかと思ったら、さらにもう一冊! 今度は三日月堂の「未来」だそうです。



2020年1月 8日 (水)

タスキメシ 箱根

2990「タスキメシ  箱根」  額賀澪      小学館     ★★★★

紫峰大学駅伝部の主将・千早はとまどっていた。「栄養管理兼コーチアシスタント」としていきなり現れた眞家早馬なる人物が、どうにも苦手だったからだ。かつては日農大駅伝部員で、弟はオリンピックを目指すマラソンランナーだという早馬は、妙に見透かすようなこと言動で千早を苛立たせる。箱根を目指す最後の年なのに…。


「いだてん」にはまった後の箱根駅伝は、感慨深いものがありました。筑波大がテレビに映るたびに「東京高師!」と叫び、金栗四三さんの娘さんたちの言葉に涙し…。という経過ののちの「タスキメシ  箱根」。

前作「タスキメシ」の早馬が、ちょっと大人になって登場します。箱根を給水係として走った早馬は、箱根出場を目指す紫峰大のコーチに。まあ、メインは栄養管理というか、食事作りですが。そんな早馬と、何かと早馬につっかかる主将の千早、双方の視点で物語は進みます。

「努力は人を裏切る

この物語のテーマ(?)は、これです。どれだけ気をつけても、人間は病気や怪我をする。どれだけ練習しても、勝てないこともある。「できないのは努力が足りないからだ」なんて言葉が通用しないことなんて、珍しくない。不条理なことなんて、歳を経るごとにいくらでも経験します。

では、裏切られたら、人はどうするのか?

…努力に裏切られた経験をもつ早馬が、さらに若くてまだ「努力に裏切られた」ことのない千早たちにどう向き合うのか…その過程を通して、作者なりの答えが示されます。

私は長距離走なんてやったことがありませんが、早馬や千早たちが駅伝を通して感じていることは、わかる気がします。だから、せめて千早たちには傷ついてほしくないと思い、彼らが涙したときには一緒に涙してしまいました。

努力に裏切られた自分を愛せるか。

「愛」という言葉は抽象的だけれど、突き詰めればそういう表現に帰結するのかもしれません。

2020年1月 7日 (火)

べらぼうくん

2989「べらぼうくん」  万城目学      文藝春秋      ★★★★

 一浪のすえ、京都大学法学部に合格。在学中に小説を書きたいと思いはじめ、就職氷河期に採用された会社を三年で退社。無職となって執筆に専念するも、新人賞では落選続き…。「鴨川ホルモー」でデビューするまでの日々を綴ったエッセイ。


私の中で、万城目学と森見登美彦は同じ箱に入ってまして。関西が舞台になっている作品が多いのと、ファンタジーなんだかよくわからない奇妙な作風であることと、ご本人もなんだか得体の知れない方だというイメージがあることが共通項(笑)

森見さんはエッセイを読んで、「そういうことを考えてるのか~」と妙に納得したのですが、では万城目さんは? 「バベル九朔」の、テナントビルの管理人という設定が、ご本人の実体験と知ってから、俄然興味が湧いていたのです。

なんというか、面白かったです。私自身、現在無職なので(専業主婦という言い訳はできますが)、無職に至る過程や無職になってからの部分は身につまされました。でも、やっぱりやり続ける力というか…万城目さんだからこそ出来たんだよなあ、と。

万城目さんはご自分をすごく客観視して分析しています。それも、作家の資質なんでしょうね。

「鴨川ホルモー」、久々に読みたくなってきました。

2020年1月 5日 (日)

信長、天を堕とす

2988「信長、天を堕とす」  木下昌輝      幻冬舎      ★★★

己は強いのか。信長は強さを証明するために、今川との戦を決断する。しかし、今川義元を倒した信長は、複雑な思いにかられていた。


今年の大河ドラマ「麒麟がくる」は明智光秀が主人公だし、久しぶりに信長もいいかなあ、と手にとりました。

かつて、私にとってのヒーローは織田信長だったので(その前は源義経、信長の後は土方歳三)、信長には煩いんです(笑)

さて、桶狭間や姉川の戦い、大坂本願寺との戦いや長篠の戦いなど、生涯における大きな節目の戦をポイントにして、信長の人物像に迫る物語なんですが。う~ん、迫った…かな? 私にはいまいちピンときませんでした。

森乱(いわゆる蘭丸ですね)や、お市の方、茶々、勿論光秀も重要人物として登場するのですが、みんな何かしっくり来ないというか。茶々のくだりは、無理があるよなあ…と思ってしまったので。そして、最後に行き着く先がそこかぁ、と。

ちょっと期待し過ぎたかもしれません。エピソードも細切れに感じてしまって、私にはもの足りなかったです。


2020年1月 3日 (金)

なめくじ艦隊

2987「なめくじ艦隊   志ん生半生記」  古今亭志ん生      ちくま文庫      ★★★

大名人古今亭志ん生が、自らの生い立ちや芸について語った半生記。


個人的に2019年は「いだてん」にはまりまくった年でした。1月6日、初回放送のトークショー(中村勘九郎さん・橋本愛ちゃん・訓覇プロデューサー)&パブリックビューイングに参加してから、ずっと「いだてん」漬け。日曜日は18時からBSで見て、20時は地上波、さらに翌日以降は録画視聴、土曜日の再放送も可能な限り見てました。

そんな「いだてん」の中で私の一番の弱点が、落語でした。志ん生も名前は知ってたけど、噺を聞いたことないし。落語にそこそこ詳しい夫のレクチャー受けながら見てました(のちに落語パートにあれほど泣かされることになるとは…)

その流れで、これも夫から借りました。志ん生という人は、自分のことを語るにもけっこうテキトーで話が食い違ったりする…とは聞いてましたが、意外と真っ当なことを語ってて(笑)  若い頃なんかひどい生活してるんですが、いろいろ経てきて、自分なりに筋が通ってるんですね。で、若い頃の駄目な自分を変に美化しない。その辺がかっこいいなあと。

「いだてん」のおかげで落語に興味が出てきたので、いずれ寄席に行ってみたいですねえ。

というわけで、2020年読み初めです。今年もよろしくお願いいたします。

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