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2020年2月

2020年2月26日 (水)

大天使はミモザの香り

3008「大天使はミモザの香り」  高野史緒      講談社      ★★★

クラシックに興味のない拓人は、ひょんなことからアマチュアオーケストラに誘われる。そこでコンビを組んだのは、42歳独身彼氏なしの光子。努力の人・光子は、拓人の才能に打ちのめされる。オケの初公演は、ラ・ルーシェ大公アルベールが所有するヴァイオリンの名器「ミモザ」が使われるのだが、そのミモザが消えてしまう。


高野さんは、「カラマーゾフの妹」「翼竜館の宝石商人」の2作しか読んでないので、よくわからないのですが…こういうのも書くんだ…という印象でした。

オーケストラには興味があるので手に取りましたが、設定があまりにも現実離れしていて、序盤はちょっとついていけない感じでした。

まあ、現実離れもある意味突き抜けていて、中盤から徐々におもしろくなってきて、最後まで一気に読んでしまいましたけど(苦笑)

ミステリとしては初心者向けかな。


2020年2月25日 (火)

償いの雪が降る

3007「償いの雪が降る」  アレン・エスケンス      創元推理文庫      ★★★★

大学の授業で身近な年長者の伝記を書かねばならないジョーは、介護施設で元服役囚のカールを紹介される。三十数年前に少女をレイプし殺したという老人は、末期がんにおかされていた。カールの話を聞くうちに、ジョーは事件の真相を知りたいと思うようになるが…。


いろんな意味で予想が覆されました。

物語の重苦しさの質とか、ジョーの抱えているものの重さとか(母のこと、弟のこと、祖父の死のこと)、事件の決着のさせ方とか。こんな感じかなと漠然と予想していたことは、ほぼ外れました。  当たっていたのは、真相くらい(苦笑)  でも、不快ではなく。面白かったのです。

読み終えて感じたのは、非常にアメリカっぽいストーリーだということ。タフな主人公がひどい目に遇いながら事件を解決し、最後には大団円を迎え、笑顔で終わる。どちらかというと苦手なタイプの話なのに、かなり夢中になって読みました。

理由は、訳者・務台夏子さんのあとがきを読んでわかりました。務台さんは、主人公のジョーに惚れ込んでいるようで。生活力のない母と自閉症の弟ジェレミーを抱え、必死でお金を貯めて大学生になった苦労人。言動はイマドキの青年だけど、妙なタフさとしぶとさがあり、ピュアなところもある。たしかに、なんだか応援したくなるのです。それが、この物語の原動力になっているのでした。

去年は海外ミステリをあまり読めなかったので、今年は積ん読本から片付けていこうと思ってます。


2020年2月20日 (木)

活版印刷三日月堂 小さな折り紙

3006「活版印刷三日月堂  小さな折り紙」  ほしおさなえ      ポプラ文庫      ★★★★★

祖父の活版印刷所を復活させた弓子。彼女と三日月堂が関わった人たちの「それから」の物語。


シリーズ6作目は、「未来」の物語。

「マドンナの憂鬱」「南十字星の下で」「二巡目のワンダーランド」「庭の昼食」「水のなかの雲」「小さな折り紙」の六話。

前作に続きスピンオフですが、こちらは後日談。三日月堂に関わった人たちが、その後どうなったのかが描かれます。

何度も泣いてしまいました。

このシリーズはほんわか感動ものなんていう甘いものじゃなくて。誰もが避けて通れない死と向き合い、それでも生きていく姿が描かれています。さらに、誰かに何かを「繋いでいく」ことが、繰り返し繰り返し描かれます。その重さが身にしみるのは、自分も年をとったからでしょうか。

「二巡目のワンダーランド」「庭の昼食」がすごく好きでしたが、最後の「小さな折り紙」が、このシリーズの掉尾を飾るにふさわしい物語でした。

前作とこれには、初版限定で活版印刷で刷られた扉ページがついています。これがすごくいい! 活版印刷の味わいを、実際に確認しながら読めるなんて。

2020年2月19日 (水)

戦国十二刻 始まりのとき

3005「戦国十二刻  始まりのとき」  木下昌輝      光文社     ★★★

足利義政、斎藤道三、毛利元就、竹中半兵衛、島津惟新、長宗我部盛親を中心にした「二十四時間」を描く連作。

六話の短編と、それを繋ぐ「はじまりの刻」で構成されています。応仁の乱から始まって、戦国時代へ。そして、戦国の終わり、さらに先の時代の「始まり」へと思いをはせる作りに。

木下さんはこういうアイディア勝負の作品が多いのでしょうかね。「さいごの刻(文庫は「おわりの刻」)」と対になる作品。ただ、今回は信長も秀吉も家康も登場しません。

歴史的にはバイプレーヤー的な人たちの視点を通して時代を描く手法は嫌いじゃないです。ちゃんと全話を貫く仕掛けもあります。

「乱世の庭」では伊勢新九郎が登場して、おおっ!となりました。

2020年2月18日 (火)

皇帝と拳銃と

3004「皇帝と拳銃と」  倉知淳      創元推理文庫      ★★★★

「皇帝」と呼ばれる文学部主任教授による完全犯罪は達成されたかに見えた。しかし、死神のような警部が現れ…。


倉知さん初の倒叙ミステリ・シリーズ。「運命の銀輪」「皇帝と拳銃と」「恋人たちの汀」「吊られた男と語らぬ女」の四編。

倒叙ミステリの王道!という感じの作品です。賢く、プライドの高い犯人による犯罪。それを暴く変わり者の刑事とのやりとり。じわじわと犯人を追いつめ、最後は犯人を屈服させる…。

今回の「変わり者」は、警視庁捜査一課の乙姫警部。可愛らしい名前とはうらはらな容貌と言動で、犯人を不安にさせます(笑) 相棒は「無闇にイケメン」な鈴木刑事。回を重ねるにつれて、この二人、どんどんキャラが立ってきます。

最近の倒叙ミステリでは、大倉崇裕さんの福家警部補シリーズがお気に入りですが、これも面白い。続編を期待します。

2020年2月15日 (土)

それ以上でも、それ以下でもない

3003「それ以上でも、それ以下でもない」  折輝真透      早川書房       ★★★

1944年、ナチス支配下のフランス。中南部の小村サン=トルワンのステファン神父は困惑していた。匿っていたレジスタンスのモーリスが、殺害されたのだ。村の平穏を守るため、事件の隠蔽を決意した神父。しかし、ナチスのSSたちが現れ、村の空気は一変する。


第9回アガサ・クリスティー賞受賞作。戦時下のフランスを舞台にしたミステリ。

ナチス寄りのヴィシー政権下の村。戦争に取り残されたように穏やかな暮らし。しかし、他国からの避難民たちが流れ込んでいたり、戦死した若者がいたり、配給が必要だったり…と、戦争と無関係ではないわけで。

それでも、一見穏やかな日常が、レジスタンス殺害をきっかけにしたように、一気に崩れ去る展開は、息が詰まるような感じでした。

こういう題材を日本のミステリで書くということがなかなか感慨深かったのですが、ミステリとしてはちょっと肩透かしという印象でした。それに、いくつかわからないままになったことがあって。私が読み飛ばしただけかな。

2020年2月11日 (火)

後宮の烏3

3002「後宮の烏3」  白川朝子      集英社オレンジ文庫      ★★★

孤独であることを義務づけられた烏妃たる寿雪。しかし、寿雪の友を自認する皇帝・高峻を始め、彼女のまわりには人々が集まるようになり、寿雪自身がそれを手放せなくなっていた。そんなおり、鶴妃・晩霞に仕える侍女が、幽鬼に怯えて寿雪のもとへやってくる。


どんどん世界が広がっていきますね。どこまで広がるんだろう?と、読みながら不安になってきたのも事実。要するに、3巻で終わりませんね?と(苦笑)

寿雪の護衛に淡海がつき、之季という切れ者が高峻に仕えるようになってきたあたりで、寿雪が人間らしい感情の動きを見せるようになってきました。

そして、「他者の命を犠牲にして生き延びた者の苦悩」が、繰り返し描かれているのだということも、鮮明に浮かび上がってきました。

その辺りで、この物語はまだまだ完結できない、と理解できました。

ということで、まだまだ先は長そうです。




2020年2月 8日 (土)

Iの悲劇

3001「Iの悲劇」  米澤穂信      文藝春秋      ★★★★

無人になった集落に移住者を募集し、定住を支援する「甦り課」に配属された万願寺邦和。やる気のない課長・西野秀嗣と、人当たりはいいが公務員らしくない新人の観山遊香の三人でトラブル解決に奔走するものの…。


「巴里マカロン」に続いてこれ。米澤穂信祭り状態になっています(苦笑)

「Iの悲劇」の「I」は、Iターンのことらしいです。主人公は地方公務員の万願寺。仕事にやる気はあるものの、甦り課への異動で出世コースから外れたのでは?と焦る万願寺。市長肝いりの事業だということに一縷の希望を見いだし、移住者たちのために奔走します。

万願寺の言動からは、公務員という仕事の息苦しさを感じてせつないけれど、彼なりに使命感をもって仕事に取り組んでいるようで。しかし、彼の努力を嘲笑うかのように、トラブルが次々に。

米澤さんらしい日常の謎ミステリの連作。ただ、読んでいるとなんとなく違和感が。主人公の万願寺が米澤作品には珍しく自分の立ち位置に迷っていないせいかしら?なんて思ってましたが。その理由は、最後にわかります。うわあ…米澤さん、怖い…。

雑誌に掲載された4編に2編足して、序章と終章を加えたもの。加えられた部分を改めて読むと、作者が描きたかったものが浮かび上がってきます。田舎の人間としては笑えません…。



2020年2月 5日 (水)

巴里マカロンの謎

3000「巴里マカロンの謎」  米澤穂信      創元推理文庫  ★★★★

小市民たることを目指す小鳩君と小佐内さん。しかし、何故か奇妙な謎に遭遇し、それを解き明かすという小市民らしくないことに。今回は、「新しくオープンした店に行って、マカロンを食べる」という小作内さんの提案が発端だった。


待望の!シリーズ最新作!!  小鳩君、小佐内さん、会いたかった!…けど、相変わらず小佐内さんは不穏だし、小鳩君はめんどくさい(笑)  いや、二人とも愛おしいキャラなんですが。

「巴里マカロンの謎」「紐育チーズケーキの謎」「伯林あげぱんの謎」「花府シュークリームの謎」の四話。クイーンの国名シリーズみたい。

高校一年の冬に二人が遭遇した謎の数々は、やはりちょっと苦さを伴うものでした。いや、登場するスイーツは甘いんですが。事件の大元にある苦さを描くのが、米澤さんはすごく上手い。これは日常の謎なので、殺人なんかは起こりませんが(今のところは)、それでも笑い事にできないひんやりした何かが、ずっと心に残ったりします。それは、「古典部」シリーズも同じ。

なお、「伯林あげぱん」は小佐内さんはちょっとしか登場せず、ほとんど小鳩君一人が謎を解きます。っていうか、途中でわかったけど、その時の状況を想像すると、すごく笑えるんですけど…!

それにしても、11年ぶり!  お願いだから次は、もう少し早いペースで書いてください。


さて、3000冊到達しました。続くもんですねえ。本を読むのはともかく、記録し続けたことに、我ながら驚いています。三日坊主なのに。拙い感想を読んでくださる&コメントくださる皆さんのおかげです。いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします。



2020年2月 2日 (日)

天子蒙塵 第四巻

2999「天子蒙塵  第四巻」  浅田次郎      講談社      ★★★

張作霖の息子・張学良は帰国し、蒋介石のもとへ向かう。一方、満州国皇帝の即位式を間近に控えた溥儀は、妻・婉容から驚くべき事実を告げられる。


愛親覚羅溥儀と張学良。この二人を核として展開してきた「蒼穹の昴」シリーズ第五部、最終巻です。

もっとも、二人以外にもさまざまな人物によるストーリーが交錯して(満州、中国、日本それぞれ)、もう何がなんだか(苦笑)  これ、ちゃんと収拾つくのか?と思っていたら、何も収束せず第五部は終わってしまいました。マジか…まだ続くんですね、このシリーズ…。

「蒼穹の昴」以来、ずっと読み続けています。歴史的にどこにたどり着くのかはわかっていますが、それを通して何を描くのか知りたくて。だから、意地でも読もうと決めていますが…終わりますよね、いつか(ちょっと不安になってきた)。

このシリーズは、「雷」「雲」「玲」のきょうだいたちの物語でもあります。「没法子(メイファーヅ)=どうしようもない」に逆らって生きてきた彼らは、どこに行き着くのでしょうか。


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