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2020年4月

2020年4月29日 (水)

三幕の殺人

3030「三幕の殺人」  アガサ・クリスティー      ハヤカワ文庫      ★★★

引退した俳優・チャールズのホームパーティーで、牧師が不可解な死を遂げた。さらに、第二の殺人が。チャールズとその友人たちは真相を明らかにしようと奔走するが、事態は難航する。真実の鍵は、エルキュール・ポアロに託される。


地元図書館も閉館しちゃったので、これからは積ん読消化&再読期間です。幸い、本だけは山のようにある…(笑)

というわけで、これは積ん読本。久しぶりのクリスティです。

まあ、犯人はわかっちゃうんですが、こういう芝居がかった構成が、クリスティは上手いですね。実に「読ませる」のです。

俳優のチャールズ、その友人で芸術のパトロンであるサタースウェイト、チャールズに恋する若いエッグという3人がメイン。彼らのやりとりや、それぞれのキャラ設定がなかなかおもしろかったです。



2020年4月27日 (月)

手がかりは「平林」

3029「手がかりは『平林』」  愛川晶      原書房      ★★★

とうとう弟子をとった山桜亭馬伝。妻の亮子は、弟子のお伝を何かと気にかけているが、熱心なわりには高座のウケはイマイチ。さらに、ひょんなことからテレビ出演したお伝に、思わぬトラブルが…。


「神田紅梅亭寄席物帳」第2シリーズその2。前作で弟子入り志願したお伝が前座をつとめ…というお話。

なかなか出来のいい弟子ではあるのですが、噺家としてはそう簡単にはいかないもので。今回はお伝中心の2話。表題作と「カイロウドウケツ」。

「カイロウドウケツ」のミステリ部分は、ちょっと「はあ?」ってなりましたが、作者が「あきれてください」って言ってるくらいだから、いいのでしょう(笑)

それにしても、落語の部分に全く抵抗がなくなったのに、我ながらびっくりです。「いだてん」「昭和元禄落語心中」のおかげです。

2020年4月26日 (日)

残り者

3028「残り者」  朝井まかて      双葉社      ★★★★

江戸城明け渡し。大奥の主・天璋院をはじめ、女たちも皆お城を去った…はずだった。立ち去りそびれた「呉服之間」のりつは、天璋院の愛猫を探す女・「御膳所」のお蛸と出くわす。なりゆきで一緒に猫を追っていると、さらに…。


りつ、お蛸のほかに、「御三之間」ちか、「呉服之間」もみぢ、さらに「御中臈」ふき。それぞれの理由で退去のタイミングを逸した(あるいは、退去しなかった)五人の女たち。

江戸城明け渡しという青天の霹靂に直面した彼女たちのやりとりから、大奥とは何だったのか、彼女たちは何故大奥を生きる場と定めていたのかが、浮かび上がってきます。

さらに、明治維新とは何か、時代の転変に巻き込まれた個人が何を思うのか等々。決して長くない物語にさまざまな要素が凝縮されています。それでいて、堅苦しくなく、物語にすぅっと入っていけるのです。

りつたちの身分・立場や性格の設定が絶妙で、「なぜ、江戸城に残ったのか」を明らかにしていくだけで、時代が見えてくるのです。

もちろん、フィクションに決まっています。でも、フィクションだからこそ伝わってくるものが、確かにあるのです。

江戸城居残りという題材は、浅田次郎「黒書院の六兵衛」を思い出しますが、こちらは女たちの物語ゆえか、のびやかで明るいです。そうそう、よしながふみ「大奥」をお読みの方なら、とっつきやすいかもしれません。



2020年4月25日 (土)

砂漠

「砂漠」  伊坂幸太郎      実業之日本社      ★★★★

無性に読みたくなって、再読。初読は2008年でした。12年近く前だけあって、内容は見事に忘れてました。

私も仙台で学生時代を過ごしたので、この空気感はすごくわかります。さらに、今の大学生にはあり得ないような、このお気楽さ(苦笑)  

北村みたいな「鳥瞰型」は確かにいたし、鳥井みたいな気のいい遊び人タイプもいた。西嶋みたいな世界平和とかを熱く語るタイプ(しかも、論理はめちゃくちゃ)は、いなかったなあ…いたら、誰も近寄らなかっただろうなあ…。

初読の感想を読み返してみたら、「西嶋ウザイ」と思ってたらしく(苦笑)  今は、西嶋の熱さが眩しいような、愛しいような。北村も鳥井も、西嶋と出会って変わっていくし、西嶋も変わっていく。その過程が尊いものだなあ、と。

そして、鳥井のことが好きな南と、西嶋のことが好きな東堂と、北村の彼女の鳩麦さん。女性陣がみな賢くて、魅力的で、好きです。

また十年後くらいに読んだら、どう感じるでしょうね。


2020年4月23日 (木)

「茶の湯」の密室

3027「『茶の湯』の密室」  愛川晶      原書房      ★★★

夫が真打ちに昇進して山桜亭馬伝となった亮子は、夫と共に震災後の福島の慰問に向かう。そこの自治体で働いている友人からの依頼だった。仮設住宅暮らしの人たちに馬伝の噺は好評だったが、たった一人、固い表情の少女がいて…。


「神田紅梅亭寄席物帳」第2ステージです。表題作のほか、「横浜の雪」を収録。

主人公の亮子と噺家の夫、馬春師匠、紅梅亭の席亭、みんな元気で何よりです。時間が経過して、亮子夫婦には男の子が。それぞれに変化はあれど、相変わらずの空気が漂い、安心します。

実は、今までは落語の部分を読むのがしんどかったのですが、今回はスラスラいけました。これ、「いだてん」のおかげですね。まさに、「習うより慣れろ」。なんというか、落語の間合いみたいなものがつかめた感じで、違和感なく読めました。

新しい人物が登場しましたが、これからどうなっていきますか。楽しみです。



2020年4月22日 (水)

日輪の賦

3026「日輪の賦」  澤田瞳子      幻冬舎時代小説文庫      ★★★★

京の大舎人になるために紀伊国から出てきた青年・廣手は、盗賊に襲われたところを、男装の美女・忍裳に救われる。忍裳が讃良大王の腹心の部下で、兄・八束の恋人と知った廣手は驚く。八束は不慮の事故で亡くなったのだが、宮城で働き始めた廣手は、兄の死に不審を抱く。


京に出てきた青年・廣手を中心に、讃良大王(持統天皇)による国づくりを描いた壮大な物語。特に、大宝律令成立の過程がメイン。

中央集権国家とは何か、法治国家とは何か、官僚の役割とは何か。讃良や葛野王(壬申の乱で破れた大友皇子の子)、藤原不比等、律令作成に関わった学者たち、それを担っていく廣手たち若い世代…と、複合的に描くことで、どれだけの苦難を経て国の礎ができたのか、現在の世につながる源流がどのように生まれたのかを、伝えています。

印象的なのは、讃良の人物像と、歴史に名を残さぬ人々の存在です。

里中満智子「天上の虹」は、讃良を主人公にした名作ですが、「日輪の賦」ではさらにスケールアップした讃良が登場します。父・天智、夫・天武の目指した国づくりと、それが道半ばに終わった理由を把握し、自分の代で成し遂げようとする讃良。そのために人並みの穏やかな暮らしは擲ってしまう。誰一人として彼女が見ている「新しい国」の姿を理解できない孤独。しかし、讃良はあえて孤独を背負って、新しい世の扉を開こうとします。その凄みにただただ圧倒されました。

一方、廣手をはじめとした歴史に名を残さぬ人々が、実は歴史を手作りしてきたのだ…という事実。彼らがそれぞれの立場で律令と関わり、自らの役割を自覚し、最善を尽くそうとする。その中で、皇族や豪族には理解できない「新しい国」の姿を正確に捉えていく過程は、なんだか感動しました。これこそが、国づくりだ!と。

また、滅亡した百済から逃れてきた高医師の話も忘れられません。国が滅びるとはどういうことか。百済滅亡の情景は、太平洋戦争末期の日本のようでした…。

国とは何か。法とは何か。官僚は何のために存在するのか。今だからこそ、刺さりました。

2020年4月19日 (日)

世界の辺境とハードボイルド室町時代

3025「世界の辺境とハードボイルド室町時代」  高野秀行・清水克行      集英社文庫      ★★★★

世界の辺境を渡り歩くノンフィクションライターと、日本中世史の研究者。全く畑違いの二人の対談から見えてきた、現代アフリカのソマリ人と室町時代の日本人との共通点とは。


おもしろかったー!

呉座勇一先生の本で紹介されていた一冊。守備範囲の異なる二人が、それぞれの知識や経験をもとに、トークを繰り広げるのですが…。次から次へと、「へぇ~、そうなんだ」「知らなかった」ということが出てきて、飽きません。全然堅苦しくないので、読みやすいし。

日本人の特殊性について日本人はよく語るわけですが、これを読むと「どこが」「何が」特殊なのか、「なぜ」そうなったのか、今までと全く違う世界が見えてきます。やはり、日本だけで日本を論じるのは危ういのだなあ、と。

高野さんの「謎の独立国家ソマリランド」は気になってました。これを機に読んでみようかな。それから、清水先生の著作も気になる! 今まで室町時代はスルーしてきたのですが、今の日本人の元になってるのが室町ときいて、俄然興味がわいてきました。

2020年4月14日 (火)

鐘を鳴らす子供たち

3024「鐘を鳴らす子供たち」  古内一絵      小峰書店      ★★★★

戦後の混乱が続く昭和22年。良仁たちの小学校にラジオドラマ出演の話が舞い込み、良仁にも声がかかる。突然のことにとまどう良仁だったが、親友の祐介が参加するのにつられて、ドラマ出演することに。そうして、「鐘の鳴る丘」は始まった。


母がよく口ずさむ歌のひとつが

♪緑の丘の赤い屋根  とんがり帽子の時計台

で始まる歌で(おかげで私も覚えてしまった)。その歌に導かれるように、伯父(母の兄)と子供の頃のことを語り始める母に、幼かった私は不思議な気持ちになったものです。母もかつては子供だったということが、実感できなかったのですね。

親世代にとって何か大事なもの、という認識はあったものの、「鐘の鳴る丘」がいったいどんなものなのか、今までまるで知りませんでした。

これは、そのドラマの製作過程を描いたフィクション。主人公は、ドラマに出演した小学生です。なぜ、こんなドラマが企画され、素人の小学生たちに声がかかったのか。製作過程でどんな困難があったのか。大人たちの事情と、子供たちの思いと。「敗戦国」日本で、彼らが直面した現実と、それ故にこのドラマに込めた祈りとが、胸に迫ります。

フィクションは、「嘘」です。事実ではありません。それでも、人はなぜフィクションを欲するのか。

「放送劇は、物語は、きっと祈りなのだ。昨日よりも、今日よりも、明日はきっと幸せに」

主人公・良仁の言葉が、一つの答えかもしれません。



2020年4月10日 (金)

稚児桜

3023「稚児桜」  澤田瞳子      淡交社      ★★★

能からインスパイアされた8編の物語。

「やま巡り(山姥)」「小狐の剣(小鍛冶)」「稚児桜(花月)」「鮎(国栖)」「猟師とその妻(善知鳥)」「大臣の娘(雲雀山)」「秋の扇(班女)」「照日の鏡(葵上)」

能には疎いので、あれをこんなふうに…というのはわからず。単純に物語として面白かったのは、「小狐の剣」「稚児桜」です。

それから、大海人皇子一行の吉野脱出を描いた「鮎」や、源氏物語の世界の「照日の鏡」も私の好みでした。



2020年4月 7日 (火)

有楽斎の戦

3022「有楽斎の戦」  天野純希      講談社文庫      ★★★

織田信長の弟だが武勇には縁遠い源五郎は、千利休と出会い、茶人として生きたいと思うようになる。のちに有楽斎を名乗り、茶人武将として戦国を生き延びた男は、何を思っていたのか。


有楽斎の名を初めて知ったのは、高校生のころ。井上靖の「淀どの日記」「本覚坊遺文」あたりからだったと思います。信長とは真逆な人物像に、面白い!と思ったものです。

これは、有楽斎の人生の大きな節目となった本能寺の変・関ヶ原の戦い・大坂の陣を題材に、有楽斎視点の「源五郎の道」「有楽斎の城」「有楽斎の戦」の三編と、有楽斎以外の人物の物語「宗室の器」「秀秋の戯」「忠直の檻」三編を組み合わせて構成されています。

ちょっと不思議なつくりですが、この配置が絶妙です。有楽斎という、戦国武将の中でも特異な生き方をした人物と、島井宗室、小早川秀秋、松平忠直を並べてみることで、戦国とは、戦とは、人は何を求めて生きるのかといったものが浮き彫りになってきます。

有楽斎は、決してかっこいいヒーローではなく、むしろ情けない、自分の欲望に忠実な人物として描かれます。私はそこが気に入りました(笑)

2020年4月 3日 (金)

ときどき旅に出るカフェ

3021「ときどき旅に出るカフェ」  近藤史恵      双葉社      ★★★★

三十七歳、独身、一人住まい、子供もいないし、恋人もいない瑛子。他人からは寂しい生き方と思われそうだが、瑛子なりに落ち着いた暮らしをしている。しかし、大きな変化もない日々は、時に不安と憂鬱を運んでくる。そんな瑛子が自宅の近所に見つけた小さなカフェ。試しに入ってみると、店主はかつての同僚・円で…。


なんとも不思議なタイトルの、日常の謎系ミステリの連作短編。

冒頭2ページで描かれる主人公・瑛子の設定に共感しすぎて(笑)  結婚する前の私が、まさにこんな感じでした。マンションは買えなかったけど(笑)  一人でいることは心地よい。ただ、大きな変化もないまま時間が過ぎていくことへの味気なさとか、この先に対する不安感とかがあって。

そんな日々の中で、瑛子は「カフェ・ルーズ」に出会います。小さなカフェを営んでいるのは、元同僚の円。とは言え、半年しか一緒に働いていないので、円のことはよく知らないのですが。

このカフェのコンセプトが、とっても素敵。(こんな店が近所にあったら常連になります。)  瑛子が遭遇する「謎」を解き明かすわけですが、日常の謎とはいえ、なかなか苦いものがあり…近藤さんらしいな、と。

10話構成で、一話が短いのでサクサク読めます。そして、一話ごとに美味しそうな食べ物が…!  いろんな意味で、読みごたえあります。

2020年4月 2日 (木)

向田邦子の本棚

3020「向田邦子の本棚」  向田邦子      河出書房新社      ★★★

向田邦子の本棚には、いったいどんな本があったのか。著作の糧になった本、興味関心の赴くままに手にとった本。本にまつわるエッセイや単行本未収録エッセイ・対談も収録。


邦子さんが猫ちゃんたちを抱っこしてる背後には、本棚。そこには、原稿や資料本と思われるものが大量に、雑然と平積みされている。…それが、表紙の写真。

他人の蔵書が気になるのは、本好きの性でしょう。ましてや、それが好きな作家であれば、なおさら。

「おお!」と思ったのは、私が敬愛してやまない三浦哲郎の本があったこと。「木馬の騎手」「拳銃と十五の短篇」「娘たちの夜なべ」の三冊。同世代の作家なので読んでいても何の不思議もないのですが、立ち位置はまるで違うので。

エッセイや対談も面白く読みましたが、邦子さんが、「性」の描きかたに拘っていたというのが意外でした。言われてみれば、小説や脚本はそういう側面があるものが多いかも。意外に感じるのは、「父の詫び状」など、父親を題材にした随筆の印象が強いからですね(中学校国語の教科書にも載ってるし)。

そして、いつも思うのは。邦子さんが生きていらしたら、今はどんなものを書いていらしたかなあ、ということ。もっともご存命なら90歳なんですけどね。

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