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2020年6月13日 (土)

銀の猫

3051「銀の猫」  朝井まかて       文藝春秋      ★★★★

年寄りの介護を請け負う「介抱人」として働くお咲は、母のおかげで借金を抱えている。口入屋の五郎蔵・お徳夫婦に見守られ、介抱人としては引っ張りだこのお咲だが、奔放な母の言動には頭を悩ませていた。


例えば平均寿命六十才ときくと、昔は大半の人がそれくらいで亡くなったようなイメージをもってしまいますが、そうではなくて。乳幼児の死亡率の高さや、都市と地方の格差等で、数値的には低くなるだけで、長生きする人はそれなりにいたのです。

というわけで、長寿社会の江戸の町の介護事情を題材にしたのがこの物語です。

「銀の猫」「隠居道楽」「福来雀」「春蘭」「半化粧」「菊と秋刀魚」「狸寝入り」「今朝の春」の八話。

お咲もいろいろ訳ありですが、彼女が経験から得た介護スキルや、それをもってしても手強い老人たちの描写が実によいのです。そして、介護に悩む家族の姿も。ほんとに他人事じゃないので。

驚いたのは、当時、介護は一家の当主の役割だったということ。嫁とか娘とか、女性の仕事じゃなかったのですね。武家には今でいう介護休暇もあったというのは本当でしょうか。ただ、それは「孝」という価値観のためであって、当事者への配慮ゆえではないのですよね…。

読んでいてなかなかつらいところもありました。でも、優秀な介抱人のお咲にもままならないことがあったり、しんどい介護に風穴を開けようという試みが描かれたり、温かい気持ちになりました。


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コメント

介護という、時に辛く重い話題を、明るく温かく、ちょっとミステリータッチで描いたところが上手いですよね。
さすが朝井さん。

todo23さん、初めて読んだまかて作品は「恋歌」でした。
あれですっかり魅了されたのですが、シリアス一辺倒もいいけれど、こういう親しみやすい作品もいいですねえ。
介護は現代でも他人事でないので。
文庫化で、もっと読まれるといいなあ。

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