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2020年7月24日 (金)

ボニン浄土

3069「ボニン浄土」  宇佐美まこと      小学館      ★★★★

1840年。陸奥国を出航した五百石船は嵐に遭い、七人の船員たちはある島へ流れ着く。彼らを助けた島の住人は、青い瞳をしていた。島の名は、「ボニン」。


知らなかった…。

読みながら何度も何度も呟いていました。

「ボニン」とは、現在の小笠原諸島。世界遺産。人気の観光地。ずいぶん前ですが、教え子が小笠原諸島に行くプロジェクトに参加しました。帰ってから、小笠原の海の美しさや、地元とは全く違う気候や自然について、目をキラキラさせて語っていたのを覚えています。

だけど、小笠原の歴史について、私は本当にザックリとしか知らなかった…。

江戸時代の終盤、嵐にあって「ボニン」に漂着した吉之助の物語。それから180年後、自らのルーツが小笠原にあると知り、初めてその地を踏む恒一郎。そして、チェロの音が聞こえなくなってしまった賢人もまた、父に誘われ、小笠原へ。

江戸時代の漁師、現代の中年男と、若きチェリストの少年。全く接点のない三人の物語が、小笠原という地で交差し、その歴史と国や戦争に翻弄された人々の生きざまを浮かび上がらせます。

楽園なんて存在しない。楽園と思えるのは、そこに暮らす人たちが、そういう生き方をしているからなのでしょう。

故郷も知らず、両親のことも知らず、祖父母に育てられた恒一郎が、五十を過ぎて初めて訪れた小笠原で、大叔母・テルに再会した場面が忘れられません。赤ん坊の頃に小笠原を離れた恒一郎はテルを知らず、テルは認知症で恒一郎を認識してるか定かではないのですが。年老いたテルが、赤ん坊をあやす言葉を口にしながら恒一郎の頭をなでる。この場面が、一番好きでした。

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