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2020年7月 2日 (木)

駆け入りの寺

3058「駆け入りの寺」  澤田瞳子      文藝春秋      ★★★★

比叡山の麓にある林丘寺は、比丘尼御所。つまり、出家した皇女が住持をつとめる尼門跡の一つ。現在の住持は二十一歳の元秀(霊元上皇皇女)。先の住持・元瑶は後水尾上皇の皇女で、すでに高齢。赤子の頃に両親を失い、林丘寺に引き取られた静馬は、今は青侍として寺で働いている。元瑶を慕い、育ててもらった恩を返すべく勤めに励む静馬だが、寺には訳ありの人々が逃げ込んできて…。


「駆け入りの寺」「不釣狐」「春告げの筆」「朔日氷」「ひとつ足」「三栗」「五葉の開く」の七話から成る連作。

いきなり御所言葉が飛び出してビビり、さらに「後水尾天皇? 霊元?  いつだっけ…??」となり、あわててその辺を調べたり。いやはや。澤田さん、守備範囲広すぎ(苦笑)

尼門跡って、漠然とした知識しかなかったので、読みながら「そういうものだったのか~」の連続でした。

それはともかく。主人公は、静馬という青年。生い立ちが複雑で、影を背負っているところがあるのですが、寺に関わる人々の人生に触れることで、静馬自身の世界も少しずつ変容していく。そんな物語。

幼い頃に「逃げた」ことを後悔している静馬は、寺に逃げてくる人々に厳しい目を向けます。それでも、生きていくために「逃げる」という手段が時には必要だと、静馬も納得していくのです。

元瑶尼の包容力に救われる思いがしますが、彼女もまた懊悩を抱えて生きてきたとわかる最終話では、思わず涙が…。そして、安易な大団円ではなく、それでも希望を感じさせる幕切れも、とても好きでした。




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コメント

わたしも「後水尾天皇」ネットで検索しました(笑)
最初は難しいかも、と思っていたのですが、いつのまにか物語に引き込まれ・・・読後は良い感じの余韻に包まれました。続編が出るのを期待しています。

劇作家・井上ひさしさんが執筆した時代小説「東慶寺花だより」を映画化した「駆込み女と駆出し男 」の映画を連想しました。
映画も良かったのですが、こちらも面白そう!

ひなたさん、私のアンチョコは「歴代天皇総覧」です。中公新書。
いきなりの御所言葉に腰がひけましたが、設定が理解できて、一話目を読み終わる頃にはすっかり馴染んでいました。
元瑶尼の存在は大きいですが、若い元秀さんにもう少し登場して欲しかったです。

「東慶寺花だより」とは風情が異なりますが、こちらもいいですよ。
尼門跡という特殊な寺院の有り様も興味深かったです。

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