「は」行の作家

2017年6月23日 (金)

分かれ道ノストラダムス

2593「分かれ道ノストラダムス」 深緑野分   双葉社   ★★★★

中学時代の友人・基の三回忌で、基の日記をもらってしまった日高あさぎは、それ以来、どういう選択をすれば基は死ななかったかを考え始める。あさぎはクラスメイトの八女に、その「もしも」を聞いてもらうことに。しかし、それが思わぬ方向にあさぎたちを導いていく。

「戦場のコックたち」の深緑野分さんの、青春ミステリ。

いやー、これ、好きだわー。

初めて身近な人の死を経験したあさぎ。しかもそれが、仲のいい(実は好きだった)友達で、けんか別れしたまま、彼は突然死んでしまう。あさぎの後悔とか、いろんな感情がぐちゃぐちゃになってしまう感じ、すごくわかります。

話はパラレルワールドから、題名にもあるノストラダムスがらみのカルト集団まで発展して、あさぎと八女くんは、とんでもない事件に巻き込まれてしまうのですが・・・。

子どもから大人になるまでに誰もが経験することを、「頭で考えるよりからだが動いてしまう」あさぎの視点から描いた物語。あさぎの突発的な行動には、「おいおい・・・」と思うのですが、自分もこういう道を歩いてきたなあと、懐かしく、気恥ずかしい思いでいっぱいになりました。

いろんな要素が盛り込まれていますが、物語が破綻することもなく、あさぎが視野を広げて大人になっていく過程が、すごくよくわかります。

題名からもっとSFっぽい話かと思っていましたが、全然違いました(笑) 深緑さんの書く物語、好きだなあ。これからも追いかけようと決めました。

2017年4月19日 (水)

オーブランの少女

2564「オーブランの少女」 深緑野分   東京創元社   ★★★★

美しい庭園オーブラン。そこには、秘められた過去があった。集められた病や障害をもつ少女たち。謎めいた規則。外の世界から完全に隔絶された彼女たちを待っていた運命は・・・。

遅ればせながら、深緑野分デビュー作です。

「オーブランの少女」「仮面」「大雨とトマト」「片想い」「氷の皇国」のミステリ5編。

秀逸なのは、やはり表題作。物語の始まりからいろんな謎がちりばめられていて、それが思いもしない形で解き明かされていきます。その謎解きの方向性の意外さと、描写のすさまじさで、読み終えてしばらくぼうっとしてしまいました。

どの作品も「少女」に焦点があたっているのですが、彼女たちのしたたかさやはかなさ、その年代ゆえの強烈な個性が印象的な作品ばかり。

「戦場のコックたち」を読んで、これはすごい!と唸らされたのですが、デビュー作からじゅうぶんすごかったです。

2017年3月20日 (月)

活版印刷三日月堂 海からの手紙

2551「活版印刷三日月堂 海からの手紙」 ほしおさなえ   ポプラ文庫   ★★★★

ある機会に目にした活版印刷の名刺に心惹かれた昌代は、その印刷所を訪れてみる。祖父のあとを引き継いだという店主の弓子と話しているうち、昌代はかつてやっていた銅版画を再び刷ってみることに・・・。(「海からの手紙」)

シリーズ第2作。「ちょうちょうの朗読会」「あわゆきのあと」「海からの手紙」「我らの西部劇」の4編。

どれも心に響く物語でした。活版印刷という時代に取り残されたようなものとの出会いが、人と人とをつなぎ、世界が広がっていく・・・。どの話もよかったのですが、「あわゆきのあと」には泣かされました。読み終えて、表紙の写真を見たら、もう・・・。

三日月堂に訪れるお客たちだけではなくって、弓子さんも彼らとの出会いで、自分の時計を進めているのですよね。

今回は、素敵な栞がついていました。なくさないようにしなくちゃ。

2017年1月30日 (月)

真田信之 父の知略に勝った決断力

2531「真田信之 父の知略に勝った決断力」 平山優   PHP新書   ★★★

「真田丸」時代考証ズのお一人・平山先生による、真田信之の生涯。

「真田丸」ロス中の皆様、お元気ですか。私は、いまだに真田丸の沼にはまっております(笑)で、こんな本を読んだりしています。

最新の研究結果をもとに書かれた、現時点での決定版・・・と言っていいんでしょうか。正直、難しいところもあり、読むのにかなり時間がかかりましたが、信之という人物のおもしろさが伝わってきました。

父・昌幸や弟・信繁みたいな派手さはないものの、武将としても優れ、領国経営にも手腕を発揮し、戦国から江戸にかけての激動期を生き抜いた無双の大名としての生涯は、おもしろくないわけがありません。

もっとも、領国経営は、浅間山の噴火をはじめとする自然災害等々、大変だったみたいですけどね・・・。九度山への仕送りとか・・・(信繁、「また蕎麦か」とか言っちゃダメ!)。領内で起こった事件簿なんかも、大変なんだけど、奔走する兄上の姿を想像しちゃいました(もちろん、映像は大泉洋で)。

いや、ふざけたこと書いてますが、これはすごくまじめに、丁寧に書かれた本ですので、興味がおありの方は、お手にとってみてください。信之の見事な生き様が浮かび上がってきます。

2016年11月19日 (土)

謹訳 平家物語 四

2494「謹訳 平家物語 四」 林望   祥伝社   ★★★★

西へ落ちのびる平家。それを追う源氏。彼らはとうとう決戦の地・壇ノ浦へ。平家一門の行く末は・・・。

読みました。読みきりました。全四巻。

この巻は、巻十から巻十二、さらに灌頂巻で、完結です。

有名な場面が目白押しですが、やはり那須与一の場面に期待してました。あの場面をどんなふうに訳してくれるかな、と。お見事でした。原文に即して訳しているのですが、口語訳ながら文章のリズムを崩すことなく、現代に琵琶法師がいたならかくやと思わせるものになっていました。

もちろん、全文においてそうなのですが、「語り」の文体を口語で表現するのはなかなか難しいと思います。特に、平家物語のように、文語のリズムを極限まで生かした語りの文体を口語にするのは至難の業。でも、この「謹訳」シリーズはそれに果敢に挑み、成功した例だと思います。

それから、この本、「コデックス装」という背表紙のない糸とじ本で、慣れるとすごく読んでいて心地よいのです。いろんな人に手にとってみてほしい本です。

2016年10月12日 (水)

活版印刷三日月堂 星たちの栞

2479「活版印刷三日月堂」 ほしおさなえ   ポプラ文庫   ★★★★

「三日月堂」は昔ながらの活版印刷所。店主の弓子は、客の注文に応じて、活字を組み、印刷する。そこには、いろんな思いを抱えたお客がやってきて・・・。

「世界は森」「八月のコースター」「星たちの栞」「ひとつだけの活字」の4編。

第一話からやられました。女手ひとつで息子を育ててきたハルさん。その息子が大学生になり、家を出る話。それが、弓子さんが「三日月堂」を再稼動させるきっかけになって。いかにも泣かされる設定で、泣くもんかと思っていたのですが、ほろりときました。

どの話も、活版印刷ならではの味のある話で、とっても素敵。特に、「八月のコースター」は、こういう喫茶店に行ってみたいと思いました。うっとり。

ものすごく手間がかかる活版印刷。でも、その味わいってわかる気がします。そうして手間をかけて印刷していたころ、私たちはものをもっと大事にしていたのかもしれませんね。

この文庫、表紙がすごくきれいで、実は表紙買いしました(笑) 当たりでよかった~。

2016年9月 3日 (土)

一〇〇年前の女の子

2466「一〇〇年前の女の子」 船曳由美   文春文庫   ★★★★★

明治四十二年、夏。雷の日に生まれた女の子・寺崎テイは、母と引き離されて育った・・・。著者の母の記憶をたどり、当時の生活風俗なども記録した物語。

あとがきを読んでいて、涙が止まりませんでした。「母恋の物語」としても読めるのですが、当時の村の風習や日常の生活の記録として、実におもしろい物語です。個人的には、ものすごく懐かしい、自分の心のふるさとに帰ったような気持ちになりました。

私の母は昭和の生まれですが、田舎の山奥育ちで、テイさんが経験したのと似たような育ちをしたと思われます。私もそれを聞かされて育ちました。年中行事のあれこれや、日々の生活の大変だったこと、楽しかったこと。自然の中で、自然と共存していた日々のこと。その記憶は私の中でも鮮明に息づいており、著者がこの本を書きたいと強く思った気持ちが、わかるような気がしたのです。

なんともいえず、懐かしい気持ちになり、気がつくと、涙がポロポロこぼれていました。

もちろん、私のような感傷的な気持ちになるのでなく、100年前の日本の風景のひとつとして読めば、それはそれでじゅうぶんおもしろいと思います。

この本、出版当時から気になっていて、文庫になってから買ったのですが、ずっと手元においておきたい一冊になりました。買ってよかったです。

2016年5月28日 (土)

謹訳 平家物語 三

2434「謹訳 平家物語 三」 林望   祥伝社   ★★★★

二巻をしばらく積読してやっと読破・・・と思ったら、もう三巻が出ていました。慌てて購入。

今回は、巻第七「清水冠者」から巻第九「小宰相身投」まで。平家一門の都落ちから、「宇治川先陣」、「木曾最期」「敦盛最期」など、有名な場面がてんこ盛りです。

こうして読んでみて思うのは、やはり「平家」の物語なんですね。ドラマ等の影響で、どうしても源氏方からの視点でとらえてしまったり、合戦の場面ばかり印象に残っていたりするのですが、実際には平家がどのように滅んでいくのかを丁寧に描いている。原文で読んだときには、口語訳するのにいっぱいいっぱいで、そういう基本的なところに気づきませんでした。

さて、次巻はいよいよ那須与一や壇ノ浦ですねえ。楽しみです。

2016年4月24日 (日)

謹訳 平家物語 二

2424「謹訳  平家物語  二」  林望                祥伝社                ★★★

巻第四「厳島御幸」から巻第六「横田河原合戦」まで。

安徳天皇即位、福原遷都と、平家の栄華は極まった感がありますが、あまりの専横ぶりに高倉宮が決起。さらに、東国の源氏が起ち、その中で、清盛は世を去ります。

平家の横暴ぶりが強調されるエピソードがてんこ盛りでした。一番は、南都焼き討ちでしょうか。ここまでやったら、地獄に落ちてもしょうがないという感じでした。

次巻は、源平合戦の場面が増えますかね。

2016年2月14日 (日)

戦場のコックたち

2413「戦場のコックたち」    深緑野分           東京創元社           ★★★★

なぜ、やつは予備のパラシュートを集めているのか?  「キッド」ことティモシーと、「メガネ」ことエドワードは、戦場の謎に取り組む。戦争の進行とともに見えてきたのは、信じられない事実だった。

直木賞候補にして、本屋大賞ノミネート作品。そのどちらも納得です。

第二次世界大戦下のヨーロッパ戦線。合衆国の空挺団の兵士兼コックとなったキッドが出会う小さな謎たち。同僚のエドが鮮やかに謎解きをして…という、日常の謎系ミステリ。

戦場という究極の「非日常」において、「日常の謎」とは?と、読む前は思っていたのですが、これが見事に成立しています。まず、その着想に敬服します。

そして、戦場の描写。ヨーロッパ戦線には詳しくないのですが、やはり戦争は人間にとって耐え難い苦しみを生むのだと、改めて感じました。

ミステリとしても、戦争ものとしても、キッドたちの青春ものとしても、読みごたえのある一冊でした。

初めはなかなか世界に入り込めなかったのですが、途中から夢中になって読みました。早くも今年のベストにランクインしそうな作品に巡りあいました。

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