「か」行の作家

2017年3月 8日 (水)

最良の嘘の最後のひと言

2546「最良の嘘の最後のひと言」 河野裕   創元推理文庫   ★★★

巨大IT企業・ハルウィンが、「超能力者」を採用する!? 年収八千万。ただし、採用者は一人。最終試験は3月31日の午後6時から。街中で、採用通知を奪い合う「試験」に臨むのは、7人。超能力者によるコン・ゲームの幕が上がる。

設定がめちゃくちゃおもしろそうだったので、手に取りました。

コン・ゲームって好きなんですよね。騙し騙されの繰り返し。しかも、超能力者たちだから、とんでもないことが起こったり。でも、本当に超能力なの?とか、疑いだせばキリがないのです。

登場人物がみんな嘘つきで、ひと癖もふた癖もあって、めまぐるしく状況が変わるので、頭の中も大混乱です(苦笑) 今回、一気読みできず、細切れに読んだので、余計に混乱・・・。

でも、最後にはお見事な決着を見せました。

テーマ曲(?)の「ジ・エンテーテイナー」、大好きな曲なんですよね。読んでいるあいだ、ずっと頭の中で鳴っていました。

初読みの作家さんなんですが、「サクラダリセット」とかの方なんですね。気になっているんだけど・・・この勢いで読んでしまいそう。

2016年10月21日 (金)

それでも、日本人は「戦争」を選んだ

2480「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」 加藤陽子   新潮文庫   ★★★★

日本人はなぜ、戦争への道を突き進んだのか。明治以降の四つの対外戦争を取り上げることで、見えてくるものとは。中高生への5日間の集中講義の記録。

小林秀雄賞受賞作。

正直言って、難しかったです。知らないことばっかり。私ってこんなにいろんなことを知らないんだなあと思いながら、5日以上かかってようやく読みました(実は、序章で一度ギブアップした)。

日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、太平洋戦争。このうち、多少なりとも知識があるのは太平洋戦争で、それですら第二次世界大戦という枠で見ると、とたんに混乱する始末。日清・日露は「坂の上の雲」で得た知識が大半だし、第一次世界大戦で日本が何をしたのかはほとんど知りませんでした・・・。

東大の教授が中高生に集中講義をしたこの内容、難しかったのですが、力技で読み進めていくうちに、とってもおもしろくなってきたのです。

私たちは歴史を「結果」から眺め、「こういう結果になったのはなぜか」を考えることが多い気がします。そのとき、「こういう結果になったのだから、当然こうだったに違いない」というバイアスがかかっていることが多いのではないでしょうか。そういうものの見方を、根底から覆してくれるような内容が、たくさん出てきます。

また、日本の歴史を考えるときに、日本のみに焦点をあてる癖もあるような気がしますが、他国との関わりは切っても切れないもので、そういう視点で見ていくと、意外な思考の流れが見えてきたりもします。

とにかく、「こういう結果」になるための答えを見つけるような講義ではなく、「そのとき、何が起こっていたのか」「当時の人たちはどう考えていたのか」というのを、史料から読み解き、「それでも」こういう結果にいたったのだ・・・という、歴史の見方というのはかくあるべきだと思わされるものでした。

もし、自分がその当時生きていたらどうしていたのか・・・。そういう視点で物事を見ていくことの大切さを痛感しました。

2016年10月10日 (月)

あの戦争から遠く離れて

2478「あの戦争から遠く離れて」 城戸久枝   文春文庫   ★★★★

父は、日本人戦争孤児だった。国交正常化前に奇跡の帰国を果たした父の人生をたどることで、著者は二つの国の歴史について、考えさせられることになる。

副題「私につながる歴史をたどる旅」。

NHKの「ファミリーヒストリー」という番組がけっこう好きなのですが、スタッフの取材力にいつも驚かされます。これは、いってみれば、著者が自力で「ファミリーヒストリー」をたどり、それをまとめたノンフィクションです。ずっと読みたいと思っていたものを、ようやく読めました。

前半は、著者の父・城戸幹さん(中国名・孫玉福)が中国で「孤児」となってから、日本に帰国し、日本人として生活するまでの人生を三人称でたどったものです。運よく優しい養母とめぐりあったものの、日本人であることがその人生を大きく狂わせて行くさま、文化大革命の中の危険と隣り合わせの日々など、まるで「大地の子」そのもの・・・と思って読んでいました。が、「大地の子」のドラマを見たお父さんの感想は、「こんなもんじゃなかった・・・」。当時の中国の状況というのは、想像を絶するものだったのですね。

後半は、著者の中国への留学体験と、その後、帰国した残留孤児たちとの関わりなど、著者の物語になっていきます。早期帰国した「残留孤児」を父に持ち、日本で生まれた著者は、徐々に中国に興味をもち、その地へ旅立ちます。そこで、父の「親戚」や友人たちと出会い、また、日本人への偏見とも向き合うことに。そうして彼女は、二つの国にまたがる自分の「縁」について考えざるを得なくなります。

あまりにも壮絶な現実に、なんと感想を書いていいのか、正直言ってよくわかりません。わかるのは、「知らないことが多すぎる」「知ろうとしていないことが多すぎる」ということでした。

中国残留孤児の帰国は、当時、大々的に報道されていたので、よく新聞等で読んでいたのですが、その後の彼らがどうしているのか、私は全然知りませんでした。また、城戸さんのお父さんのように、個人の努力で帰国した人がいたなんてことも、全く知りませんでした。それを知ることができただけでも、読んでよかったと思います。

城戸幹さんの人生は、私たちの世代からは想像を絶するものですが、こんな生き方をした日本人がいるのだということを、私たちは知るべきだと思います。そのもとになったのが、「あの戦争」だということも。

著者は、非常にフラットな立場で、二つの国をとらえています。そのスタンスが、見事だと思いました。

2016年10月 9日 (日)

戦国と宗教

2477「戦国と宗教」 神田千里   岩波新書   ★★★

戦乱のただなかで、戦国大名たちは宗教とどう向き合っていたのか。戦国は、信仰の時代だったのか?

かつては戦国マニアでしたが、実は一向一揆のこととか、キリシタン大名のこととか、よくわかっていなかったので、ちょっとお勉強。

主に、上杉謙信や武田信玄の「戦勝祈願」、一向一揆と信長との関わり、キリスト教に対する信長・秀吉の姿勢とキリシタン大名のことなどが書かれています。

戦国武将たちが神仏を信仰するのは、戦の勝敗が軍事力のみでなく、人間の力を超えた摂理によるものだと考えていたから、というのは、すごく納得できました。だからこそ、戦国と宗教は切っても切れないものなのですね。

信長と宗教のかかわりについても、まだわからないことが多いようですが、一向宗を目の敵にしていたとか、仏教を憎むあまりキリスト教を保護したとか、そういうことではない、と。その辺のことがわかってきたら、また新しい信長像が見えてくるのかも。

キリシタン大名も、家臣の承諾がなければ大名も入信できなかったというのは、なんか意外でした。

2016年9月17日 (土)

星読島に星は流れた

2469「星読島に星は流れた」 久住四季   創元推理文庫   ★★★★

その島には、隕石が降ってくるという。ボストン近郊の町の医師・加藤盤は、その島で行われる天体観測の集まりに参加することになった。絶海の孤島に果たして隕石は降ってくるのか。ところが、三日目に、参加者の一人が遺体で見つかり・・・。

創元推理文庫の新刊です。米澤穂信の推薦文がついていたのと、表紙がきれいだったのとで、迷わず購入。当たりでした。

数年ごとに隕石が、大西洋上の小さな島に必ず降ってくる・・・?これってSFじゃないよねえ・・・?と思いながら、読み進めました。

登場人物がやや類型的な気がするとか、ツッコミどころがないわけではないのですが、ミステリとして、物語として、じゅうぶん美しくできあがっていると思います。何を書いてもネタバレになりそうで、怖くて書けません(笑)

絶海の孤島という、ありがちな設定ですが、それがいつのまにか説得力のある設定になっているのです。お見事。米澤穂信いわく「ミステリを読む楽しみとはこういうものだった」・・・納得です。

2016年4月28日 (木)

なんらかの事情

2426「なんらかの事情」 岸本佐知子   ちくま文庫   ★★★★

エッセイ?ショート・ショート?短編小説?それとも・・・。なんとも不思議きわまりない岸本ワールドへようこそ。

以前、友人に勧められて読んだ岸本さん。たしか、あれは「気になる部分」だったか・・・。それ以来、久しぶりの岸本さんです。

一気に読むのはもったいなくて、細切れに読みましたが、いやあ、おもしろかった。

父の検査が終わるのを待つ間、病院で読んでいた時が一番危険でした。人前で読むもんじゃありませんね。笑いをこらえている私は、きっと怪しい人だったことでしょう。

この現実か妄想かよくわからない感じは、北大路公子さんとも似ているのですが、岸本さんの方が生活感が希薄というか(北大路さんが生活感ありすぎというか)。なんとも独特なテイストですが、おすすめです。

2016年2月 6日 (土)

ヨイ豊

2411「ヨイ豊」  梶よう子           講談社           ★★★★

広重が亡くなり、国芳が亡くなり、歌川一門の大黒柱・三代豊国も逝ってしまった。三代の娘婿で、二代国貞を名乗る清太郎は、四代の襲名をかたくなに拒み続ける。己の力量では、とうてい一門を背負えない。時は幕末。激動の時代に、浮世絵師たちも翻弄される。

清太郎がもっと無責任な男であったなら。彼はここまで苦しまなかっただろうに。

歌川の絵に魅せられて、そのまじめな性分ゆえに師匠にも信頼された清太郎。しかし、浮世絵の腕は、師匠には及ばない。それどころか、弟弟子の八十八の才能にはかなわないと自覚している。それゆえの彼の苦悩と葛藤が、痛々しくも胸に迫ります。

紆余曲折の末に襲名を決意した清太郎を襲った不幸。あまりに過酷な運命に、言葉を失いましたが…。

それでも、清太郎の人生は見事だったと思うのです。

2016年1月23日 (土)

お姫様は「幕末・明治」をどう生きたのか

2405「お姫様は「幕末・明治」をどう生きたのか」 河合敦   洋泉社   ★★

激動の時代を大名の夫人や娘たちはどう生きたのか・・・というテーマの新書。個人的にとっても興味があるので、飛びついて買ったのですが・・・微妙でした。

まず、取り上げている女性が少ない(10人。コラムは除く)。そのうち、将軍家・御三家に全体のページの半分以上を割いているのですが、篤姫とか和宮とか、慶喜の正室と側室たちとか・・・定番すぎます。新説もないし。

大名家の方は、会津藩の照姫以外は知らなかったので、興味深く読みましたが、けっこうあっさりした感じの記述でした。むしろ、それぞれの大名家の姫たちがどんな人生を歩んだかに興味があったので・・・私の興味の対象とはちょっとずれた本だったということでしょう。

コラムで紹介されている女性たちの方がおもしろそうでした。

2015年11月13日 (金)

宇喜多の捨て嫁

2374「宇喜多の捨て嫁」 木下昌輝         文藝春秋         ★★★★

果たして乱世の梟雄か、それとも英傑か。その知謀をもって名を馳せた宇喜多直家とは、いかような人物だったのか。

ずっと気になっていた本ですが、同時に読むのをためらってもいました。なんだかおどろおどろしい気がして。

そして、予想通り、戦国の世の暗部を描いたような物語でした。でも、おもしろかったのです。

「宇喜多の捨て嫁」「無想の抜刀術」「貝あわせ」「ぐひんの鼻」「松之丞の一太刀」「五逆の鼓」の6編の連作。

それぞれ視点人物を変えて、宇喜多直家という稀有な人物を描き出します。表題作を読んでいるときには、直家を許せない気持ちになったのですが、事はそう単純ではなく。読み進むにつれて、なんともやりきれないような気持ちになるのでした。

人は善悪のどちらかだけで成り立つわけはなく、その両方をあわせ持つとわかっていても…。

宇喜多家は今まであまり興味がなかったのですが、ちょっと気になる存在になってきました。   

2015年9月13日 (日)

東京帝大叡古教授

2354「東京帝大叡古教授」 門井慶喜   小学館   ★★★★

明治の世。大学教授をねらった連続殺人が起こる。その容疑者は夏目漱石!? 東京帝大の宇野辺叡古(うのべ・えーこ)と、熊本五高からやってきた阿蘇藤太が、事件の謎に挑む。

直木賞候補作でした。候補になるのも納得の読み応えでした。

明治を舞台にした歴史ミステリといってもいいのかもしれません。連続殺人そのものの犯人はあっけなくわかるのですが、その事件そのものに黒幕がいて・・・という設定。7話から構成されていて、話はどんどん大きく深く広がっていきます。

政治学者である叡古教授が、事件の謎解きをしていくのですが、7話それぞれに工夫がされていて、読者をあきさせないようになっています。夏目先生も登場するし。

印象的だったのは、第四話「字が書けるということ」。字が書けるというのが何を意味するのか、当時の日本という時代、そこでの人々の生活といったものを考えさせられます。

最大の謎は、学生・「阿蘇藤太」の正体です。叡古教授が勝手につけた名前ですが、本当の名前は・・・。それは、読んでのお楽しみです。

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

「あ」行の作家 | 「か」行の作家 | 「さ」行の作家 | 「た」行の作家 | 「な」行の作家 | 「は」行の作家 | 「ま」行の作家 | 「や」行の作家 | 「ら」行の作家 | 「わ」行の作家 | あさのあつこ | いしいしんじ | こうの史代 | さだまさし | その他 | たつみや章 | よしもとばなな | アンソロジー | 万城目学 | 三上亜希子 | 三上延 | 三島由紀夫 | 三木笙子 | 三浦しをん | 三浦哲郎 | 三谷幸喜 | 上橋菜穂子 | 中山七里 | 中島京子 | 中田永一 | 中野京子 | 乃南アサ | 乙一 | 井上ひさし | 京極夏彦 | 伊坂幸太郎 | 伊藤計劃 | 伊集院静 | 佐藤多佳子 | 佐藤賢一 | 俵万智 | 倉知淳 | 光原百合 | 冲方丁 | 初野晴 | 加納朋子 | 加門七海 | 北大路公子 | 北山猛邦 | 北村薫 | 北森鴻 | 原田マハ | 司馬遼太郎 | 吉村昭 | 吉田修一 | 向田邦子 | 坂木司 | 夏川草介 | 夏目漱石 | 大倉崇裕 | 大崎梢 | 太宰治 | 奥泉光 | 宇江佐真理 | 宮下奈都 | 宮尾登美子 | 宮部みゆき | 小川洋子 | 小路幸也 | 小野不由美 | 山崎豊子 | 山本周五郎 | 山白朝子 | 岡本綺堂 | 島本理生 | 川上弘美 | 平岩弓枝 | 彩瀬まる | 恩田陸 | 愛川晶 | 戸板康二 | 日明恩 | 日記・コラム・つぶやき | 有川浩 | 朝井まかて | 朝井リョウ | 木内昇 | 朱川湊人 | 杉浦日向子 | 村山由佳 | 東川篤哉 | 東野圭吾 | 松本清張 | 柏葉幸子 | 柳広司 | 柴田よしき | 栗田有起 | 桜庭一樹 | 梨木香歩 | 梯久美子 | 森博嗣 | 森絵都 | 森見登美彦 | 森谷明子 | 横山秀夫 | 橋本治 | 氷室冴子 | 永井路子 | 永田和宏 | 江國香織 | 池波正太郎 | 津原泰水 | 浅田次郎 | 海堂尊 | 海外の作家 | 湊かなえ | 漫画 | 瀬尾まいこ | 田中啓文 | 田丸公美子 | 畠中恵 | 石田衣良 | 福井晴敏 | 笹尾陽子 | 米原万里 | 米澤穂信 | 芥川龍之介 | 若竹七海 | 茅田砂胡 | 茨木のり子 | 荻原規子 | 菅野彰 | 菅野雪虫 | 藤沢周平 | 藤谷治 | 西條奈加 | 西澤保彦 | 角田光代 | 誉田哲也 | 辺見庸 | 辻村深月 | 近藤史恵 | 酒井順子 | 重松清 | 金城一紀 | 須賀しのぶ | 高城高 | 高橋克彦 | 髙田郁 | 鷺沢萠

2017年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

カテゴリー