恩田陸

2021年1月 9日 (土)

日曜日は青い蜥蜴

3117「日曜日は青い蜥蜴」 恩田陸   筑摩書房   ★★★

本・舞台・映画・物語などなど。書評や解説など、十年間に発表した文章をまとめた十年ぶりのエッセイ集。

 

恩田さんの興味関心のベクトルが多彩すぎて、圧倒されました。「そんな本まで読んでるの?」というのがたくさん。そして、恩田さんがとりあげた本は例外なくおもしろそうに思えるのが困ったところ。最近、めっきり本を読み続ける集中力が持続しなくなって、読書量ががっつり落ちている私にとっては、読む本を厳選しなければならないという悲しい悩みがあるのに・・・。手当たり次第に好きな本を読めた頃が懐かしい。

愚痴はともかく。恩田ワールドに魅せられてウン十年(笑)、恩田さんの世界を形作る一端に触れたような楽しさを味わいながら、「この本、今度探してみよう」とメモをするワタクシでした。

そして、うれしいことに今年はもう一冊「月曜日は水玉の犬」も刊行される予定だそうです。楽しみ楽しみ。

ただ、こんなご時世で、大きな書店に行けない(車で一時間以内には、大型書店は存在しない)ので、入手するのがひと苦労なんですよね・・・できるだけ、リアル書店で買いたい派なのですが・・・。さらに、今月は別の新刊も出るという情報が・・・。うれしいけど切ないです、恩田さん・・・。

2020年9月22日 (火)

光の帝国

「光の帝国  常野物語」  恩田陸      集英社文庫      ★★★★★

「スキマワラシ」を読んだら、猛烈に読みたくなって再読。私にとってオールタイムベストな一冊ですが、最近はしばらく読み返していませんでした。

久しぶりに読んでびっくり。こんな話だったのか…。

ツル先生の話や、「大きな引き出し」の春田家、裏返す話の印象が強く。逆に、個々のエピソードに引っ張られて、「常野物語」としての構成にあまり気づいていませんでした。

異端視され、身を潜めてきた常野の人々が、何を目指そうと動き始めたのか。未来を託された亜希子はどうするのか。

「光の帝国」単行本の刊行は1997年。20年以上前に書かれた物語ですが、今こそ私たちに響くのかもしれません。

2020年9月21日 (月)

スキマワラシ

3088「スキマワラシ」  恩田陸      集英社      ★★★★

古道具屋を営む兄・太郎と、ちょっと不思議な力をもつ弟・散多(さんた)。二人は古いタイルを探すうちに、解体現場に現れる少女の噂を聞く。それは、兄弟を思わぬ世界に誘って…。


なんか懐かしい感じがするような。読みながら、そんな気がしていました。帯には「ファンタジックミステリー」とあって、なるほど、と。都市伝説という題材も、ちょっとホラー風味なところも、実に恩田さんらしい。

キリキリと縛り上げるような緊張感ではなくて、ゆったりとしていて、はるか遠くに光が見えているような、そんな世界。非常に心地よい。これは何だろう?と思っていたら、終盤近くで、「あれ?」と。これはもしかして、私が愛してやまないあの物語に連なるものではないですか?  違うかな?

これは、太郎と散多という兄弟の視点で描いた、時代が移り変わる「はざま」の時間の物語。それはまさに、今ここにいる私たちの物語でもあります。新聞に連載されたのは2018年から。だから、書いている最中は、まさかこんな時代になるとは予想もできなかったはず。それでも、私たちが漠然と感じていた「変化の予感」を、恩田さんはこういう形で表現したのですね。軸になるのはオリンピックだったのかもしれませんが。

ある意味、「まわりくどい」物語かもしれません。でも、このまわりくどさに身を委ねて、恩田陸が案内してくれる世界を周遊してみると、自分だけではたどり着けない場所に行けるかもしれません。


2020年3月 5日 (木)

ドミノ

「ドミノ」  恩田陸      角川書店      ★★★★

再読です。

「ドミノ  in  上海」と登場人物がかぶってるらしいので(覚えてなかった)、ちょっと確かめようと思ったら、そのまま最後まで読んでしまいました。

東京駅をメインの舞台に展開するドミノ・ストーリーですが…前作から登場してた人、こんなにいるんかい!ってなりました(苦笑)  特に、ダリオ。いましたね、そう言えば。「上海」ではとんでもない目に遭うダリオ。大活躍してました。

ドミノというか、複雑なピースを組み合わせたパズルみたいな物語。どうすればこんなの構成できるんでしょう。楽しみました。


2020年3月 4日 (水)

ドミノ in 上海

3010「ドミノ in 上海」  恩田陸      角川書店      ★★★★

今度の舞台は上海。日本からの観光客やハリウッドの映画監督、地元警察や裏社会の住人たち、総勢25人と3匹の運命が、ドミノ倒しのように連鎖する。


ブラボー!(スタンディング・オベイションしてると思ってください)

恩田さんの久しぶりの長編が、「ドミノ」続編とは思いませんでした。いやあ、楽しかった!

小難しいことなんか考える必要は皆無。くだらなくって(褒めてます)、馬鹿馬鹿しい(褒めてます)、恩田陸シアターの開幕です。最近、イライラしたり、不安になったりすることが多いのですが、これ読んで笑ったら、だいぶ上向きました。エンタメ最高!

前作はだいぶ前に読んだので、すっかり忘れてましたが、再登場した人物たちもけっこういます。もちろん、「上海」から読んでも大丈夫。そして、舞台が移ってスケールアップしてます。

私はひたすら巌巌で笑いました。パンダなのに…パンダがそんなことを…。

それにしても、ずっと同じことを言ってますが、恩田さんの頭の中が見てみたい。そして、「蜜蜂と遠雷」から恩田ワールドに入った読者は唖然とするのでは(笑)


2019年12月17日 (火)

歩道橋シネマ

2982「歩道橋シネマ」  恩田陸      新潮社      ★★★★

ノンシリーズの短編集。18編を収録。

既読のものも多かったですが(恩田作品が収録されているアンソロジーはとりあえず読んでしまうため)、やはり恩田作品だけが並ぶと、独特の雰囲気が生まれます。

恩田さんの文章を読むと、いつも「硬質」という言葉が浮かびます。それでいて、人の心の揺らめきを的確に描いて、なおかつ美しい。

表題作は、恩田さんでないと書けない気がします。ウエットになりすぎない絶妙なバランスが好きです。

「悪い春」は、洒落にならないというか…。これがフィクションのままで済みますように。

それにしても、恩田さん、バレエものを準備してるんですか!! チョコレートコスモスの続編はどうなりましたか!!  短編も好きですが、そろそろ恩田さんの長編をガッツリ読みたいです!


2019年10月13日 (日)

祝祭と予感

2956「祝祭と予感」 恩田陸   幻冬舎   ★★★★

「蜜蜂と遠雷」のスピンオフ短編集。

「祝祭と掃苔」「獅子と芍薬」「袈裟と鞦韆(ブランコ)」「竪琴と葦笛」「鈴蘭と階段」「伝説と予感」の6話。

いやもう、映画の公開にあわせて・・・って、それにのせられて買ってしまうあたり、我ながらチョロいなあと思ってしまうのですが。でも、あの物語世界を愛してやまないものとしては、読まずにはいられなかったのですよねえ。

本当に断片的な小品たちではあるのですが、本編では書き得ない世界が、読者にそっと提示されています。

一番印象的だったのは、「袈裟と韆鞦」。コンクールの課題曲「春と修羅」作曲者・菱沼と、教え子の話。岩手が舞台になることだけでなく、なんだか忘れられない一編でした。

どんな登場人物にも、それぞれの物語があり、描かれなくてもそれは存在している。そういう土壌があって、初めて豊潤な物語が生まれてくるのだと、つくづく感じました。

それにしても、そろそろ恩田さんの新作をガッツリ読みたいんですけど、ねえ。

2017年4月 8日 (土)

錆びた太陽

2557「錆びた太陽」 恩田陸   朝日新聞出版   ★★★★

原発事故で汚染された区域で働くヒューマノイドたち。「ウルトラ・エイト」と呼ばれる彼らのもとを、一人の女が訪れた。彼女の目的はいったい何なのか。

直木賞受賞後、これで三冊目ですよ、恩田さん。うれしい悲鳴とともに、お財布も悲鳴をあげてます(苦笑)

今回は、一応SFもの。原発の老朽化が進み、あちこちで事故が多発。各地に立入制限区域ができてしまっている近未来の日本が舞台。北関東の制限区域にいる「ウルトラ・エイト」と呼ばれる人型ロボットたちのもとに、国税庁の財護徳子という女が現れる。「人間を守らなければならない」という原則に従い行動するロボットの「ボス」たちだったが、事態は思わぬ展開を見せ・・・というお話。

設定はヘヴィですが、恩田さんのサブカルチャー趣味が随所にちりばめられて、クスッとさせられます。それに、汚染区域でのあり得ないような動植物の進化(?)のイメージには圧倒されました。作家の想像力ってすごい・・・。

ただ、これが単に笑える話でないということは、我々にはよくわかります。実際に、日本で起こったことであり、これから起こり得ることであり、もしかしたら起こっていることかもしれない。冗談のような話だけれど、もはや我々はこれを単なる作り話とは言い切れない世界に生きているのだということを、実感させられました。

この本、装丁もおもしろいです。図書館ではどうするんでしょう。帯も絶対捨てられません。が、帯をとらないと見えない部分もあるし。うーん。そして、初版には恩田さんのメッセージカード付き。買うしかないですよね。

2017年2月24日 (金)

終りなき夜に生れつく

2541「終りなき夜に生れつく」 恩田陸   文藝春秋   ★★★★

「山」で育てられ、そこで生きのびた三人の少年。強力な「在色者」である彼らは、山を降り、それぞれの人生を歩んだ。一人は傭兵となって。一人は途鎖国の入国管理官となって。そしてもう一人は、犯罪者となって。

恩田さんの本が次々出るので、うれしくてしょうがないのです。この本の帯にも「祝・直木賞」の文字が。

「夜の底は柔らかな幻」のスピンアウト短編集。青柳淳一が傭兵をしていた頃の「砂の夜」。葛城晃の学生時代の「夜のふたつの貌」。同じく葛城が入国管理官になるきっかけを描いた「夜間飛行」。そして、神山倖秀が稀代の犯罪者になる直前の物語「終りなき夜に生れつく」。

本編がやたら怖かった記憶しかなかったので、慌てて読み返しました(斜め読みだけど)。で、途鎖国とか、在色者とか、イロとか、いろんな設定と登場人物の復習をして、読み始めました。

いずれも「夜の底は~」の前の話。本編では、それぞれ名を成している(悪い意味で)三人が、そこにいたるまでの断片が描かれています。本編にも登場した軍(いくさ)勇司が登場して、なかなかいい味出しています。

葛城たちの行き着く先が先なので、決して愉快な話にはならないのですが、まだ若い彼らの姿を見られるのがおもしろかったです。やはり、一番書き込まれているのは葛城ですね。神山はやはり得体が知れないというか。稀代の犯罪者という設定ながら、とらえどころがない人物です。

イロという特殊能力をもって生れたために、殺人者となっていった三人。もう少し彼らの物語が読みたい気がします。

2017年2月20日 (月)

失われた地図

2539「失われた地図」 恩田陸   角川書店   ★★★★

旧軍都で現れる「裂け目」と、そこから出てくる「グンカ」たち。それを封じ込める役割を担う一族の遼平、浩平、そして鮎観(あゆみ)。彼らは命じられるままに、「裂け目」を閉じに各地を飛び回るのだが、やがて奇妙な現象が・・・。

「錦糸町コマンド」「川崎コンフィデンシャル」「上野ブラッディ」「大坂アンタッチャブル」「呉スクランブル」「六本木クライシス」の6話。

直木賞受賞後すぐの出版で驚きましたが、前に連載されていたものだったのですね。しかも、連載誌は「怪」。どうりで、SFというか、ホラーというか、不気味な物語になっています。「蜜蜂と遠雷」から読んだ人が、次にこれ読んだらビックリしますよ(笑)

「グンカ」はもちろん「軍靴」なのですが、本当にこんなものが現れてもおかしくない世の中になってしまいましたね。恩田さんの描く不穏な空気が、とってもリアルに感じられることが怖かったです。

怖かったといえば、一番ホラーっぽかった「上野ブラッディ」が一番怖かったのですが、その後の2話「大坂」と「呉」は、鮎観が登場せず、かわりにカオルという個性の強いキャラが登場。彼にひっぱられるように、ちょっとコメディっぽくなったりもして、あれ?路線変更?と思うと、最後の「六本木」でしてやられます。

かつて夫婦だった遼平と鮎観。二人がどうして一緒にいられなくなったのか・・・。力を増していく「グンカ」たち。そして、希望となるのは・・・。

どうか、本当にナショナリズムの祭典ではなく、スポーツと平和の祭典になりますように。「ダイジョウブ」という彼の言葉を信じたいものです。

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