東野圭吾

2019年2月 2日 (土)

沈黙のパレード

2856「沈黙のパレード」 東野圭吾   文藝春秋   ★★★★

歌手を目指していた佐織が、ある日突然行方不明になってから三年。彼女の遺体が、静岡の火災現場で見つかった。容疑者は、二十年以上前にも幼女殺害で検挙されながら、証拠不十分で無罪になった男だった。その男は黙秘権を行使し、今回は起訴すら免れた。佐織を愛していた人々は、男に鉄槌を下そうとするが・・・。

ガリレオが帰ってきました~。

湯川センセイもすっかり人間らしくなっちゃって・・・というのが一番の感想なのですが(笑) 草薙や内海薫といったおなじみのメンバーも健在で、安定のガリレオ・ワールドが展開します。

しかし、今回はなんとも気分悪いというか。佐織を殺したのであろう蓮沼というのが、とんでもなく嫌な犯罪者なのです。佐織の父や恋人だけでなく、ほんとに殺してやりたい!と思ってしまうほど。ただ、周りの憎悪が増幅していくにつれて、こんなやつのためにこの人たちが犯罪をおかすのは嫌だなあという気持ちがふくらんでいって・・・。

ただ、実際に事件が起こってからは、意外な形で二転三転し・・・そのへんは、東野さんの上手さですね。いや、見事に翻弄されました。

湯川と草薙の関係性がいい感じて効いてくるし、ドラマ版から逆輸入された内海の存在も、今では欠かせないものになっているし。何より、冒頭からすうっと物語世界に誘われる感じが、絶妙でした。

宮部みゆきと東野圭吾は、同時期から読み始めた作家さんなのですが、どちらも今も第一線で書き続けていて、その筆が今や「手練れ」というにふさわしい領域に達しているのが、なかなか感慨深いものがあります。

これ、また映像化されたりするんでしょうか。パレードの場面とか、映像栄えしそうですけど。

2018年10月14日 (日)

魔女の胎動

2804「魔女の胎動」 東野圭吾 角川書店 ★★★★

鍼灸師の工藤ナユタは、スキージャンパーの施術に向かった先で、羽原円華という少女と出会う。彼女は気象を読む不思議な力を見せ、ナユタを驚愕させるが…。


「ラプラスの魔女」前日譚。鍼灸師のナユタを主人公にした「あの風に向かって翔べ」「この手で魔球を」「その流れの行方は」「どの道で迷っていようとも」と、「ラプラス~」にダイレクトにつながる「魔女の胎動」を収録。

本編の記憶が定かでなかったのですが、読んでるうちに徐々に思い出しました。

東野さんは、シリーズ化して書き込んでいるうちに、キャラが立ってくるタイプですね。円華もだいぶ輪郭がハッキリしてきた気がします。

読みやすさは相変わらずですが、 ナユタの物語がけっこう意外なところに着地して驚きました…。

2018年3月19日 (月)

マスカレード・ナイト

2723「マスカレード・ナイト」 東野圭吾   集英社   ★★★

殺人事件の犯人が、カウントダウン・パーティに現れる。警視庁に届いた密告状に記されたその会場は、ホテル・コルテシア東京。再び潜入捜査を命じられた新田浩介は、かつてコンビを組んだホテルウーマン・山岸尚美と再会する。大晦日の仮装パーティに、果たして犯人は現れるのか?

「マスカレード」シリーズ最新刊は、年末のホテルが舞台。捜査が難航している殺人事件の犯人がコルテシア東京に現れる(ただし、犯人の手がかりは全くない)という情報のもと、ホテルに潜入経験のある新田たちが駆り出される、という設定です。刑事たちがホテルに張り込みつつ捜査をするのを縦軸にしつつ、コンシェルジュとなった山岸尚美が宿泊客からの難題をどうさばいていくかというのが横軸になり、それが本筋にどう絡んでいくかというあたりが読みどころ。

読者を誘導していく手腕はさすがですが、エンタメとしての華もじゅうぶんに感じさせ、とにかく「おもしろい」と言わせるところが、東野圭吾の真骨頂でしょう。何かアヤシイという種は存分にまいておきながら、先読みさせず、まさかの展開にもっていくところもさすがです。

尚美というキャラは、かなりわかりやすくかっこいい女で類型的でもありますが、新田とのコンビにするといい味が出てきます。新田というキャラ、東野作品ではちょっと珍しいタイプかもしれません。

ホテルを舞台に・・・という設定自体、そうそう何度も使えるものではないのでしょう。今回はちょっと無理があるような気もしましたが、それを補って余りあるおもしろさではありました。

しかし、コンシェルジュってすごい・・・。ほんとにこんな無茶な要望をされたら、テーブルひっくり返して暴れたくなりますね(笑)

2015年9月28日 (月)

天空の蜂

2360「天空の蜂」 東野圭吾   講談社   ★★★★

大型ヘリが盗まれ、原発の上空へ。犯人の要求は、すべての原発を止めること。しかし、ヘリの中には一人の少年が誤って乗り込んでいた。タイムリミットは、ヘリの燃料がなくなるまで。少年を救出することはできるのか。そして、ヘリの墜落を阻止することはできるのか。

ずっと気になっていたものの、サスペンスは苦手なのと、原発を扱っているというので、スルーしていました。が、映画化を機に、思い切って読んでみました。

月並ですが、これが20年前に書かれていたというのに、あらためて驚きます。全然古くない。というより、今、読むべきです。福島第一原発の事故を経た今だからこそ、この作品の問いかけるものを、私たちは正面から受け止めざるを得ないのだと思います。

もちろん、単なるサスペンスとしてもじゅうぶん楽しめます。これを映像化するなら、どの場面をどんなふうに・・・と想像しながら読んでいました。いろんな説明の部分はちょっと読み流してしまいましたが(苦笑)

それでも、読み終えて残るのは、私たちは考えることはやめてはいけないのだということです。きっと、原発のことだけでなく。自分の頭で考え、何かを選択していくという、基本的なことを忘れてはならないのだ、と・・・あの震災以来感じていることを、よりいっそう強く意識することになりました。

2015年7月12日 (日)

ラプラスの魔女

2323「ラプラスの魔女」 東野圭吾   角川書店   ★★★★

三百キロ離れた温泉地で、硫化水素中毒によって二人が死んだ。硫化水素について専門的見地からの意見を求められた大学教授・青江は、二つの現場で一人の少女と出会う。羽原円華。彼女は、奇跡を起こす「ラプラスの魔女」だった。

こんなに早く図書館でゲットできるなんて驚きでした。どうも東野作品は当たり外れというか、好みに合うものとそうでないものがはっきり分かれてきているので、読もうかどうしようか迷うのですが、これは当たりでした。

物語は、円華が十歳の頃。竜巻により母を亡くしたところから始まります。それから時間が経過し、再び私たちの前に現れる円華は、ちょっと不思議な力をもつ少女になっています。たとえば、微妙な天気を正確に予測したり。彼女にはボディガードもつけられているのですが、それを振り切って失踪してしまう・・・。

円華のもつ力とはいったい何なのか。なぜ失踪した彼女が温泉地に現れたのか。硫化水素による死は事故なのか。・・・関わった人物たちがその謎を追う過程で、甘粕謙人という青年が浮かび上がってくる。彼こそ「ラプラスの悪魔」と呼ばれる、事件のキーマンだった。

「空想科学ミステリ」というコピー通り、ミステリとしては掟破りかもしれませんが、それだからこそ成立する物語という点で、私はおもしろかったです。万人受けするかはわかりませんが。

「魔女」になることを選択した円華の気持ちがせつなかったです。

2015年4月 4日 (土)

虚ろな十字架

2262「虚ろな十字架」 東野圭吾   光文社   ★★★★

中原道正のもとに、別れた妻の小夜子の訃報がもたらされる。何者かに刺殺されたのだという。中原たちは、かつて一人娘を殺されるという事件を経験していた。今度は小夜子が・・・。あまりのことに茫然とする中原だったが、ひょんなことから事件の裏に隠された真実に気づいていく。

読み終えて、何を書いたらいいのか、しばらく悩んでいました。今も、言葉がみつかりません。

人を裁くというのは、いったい何なのでしょう。罪の償いとは、いったい何なのでしょう。作中に出てきた「虚ろな十字架」「死刑は無力です」という言葉が、重かったです。

わかったのは、罪を犯すということは、一生それを背負うのだということ。どれだけ反省しても、償っても、人の命を奪ったという事実は、永遠に消えないのだということです。この物語の中では、重い十字架を背負い続けた史也や沙織の姿が描かれます。それでも、彼らは救われることはないのでしょうね。

一方、中原の娘を殺した蛭川のように、死刑をおのれの運命だと思い、罪を償うとか悔悛するとかいうことを放棄してしまった人物も描かれます。そして、命をもって罪を償うべきだという正論を吐く小夜子にも、何か違和感を感じてしまいました。

もちろん、人ひとり殺しても死刑にならないというのは、私にも違和感があります。かと言って、命をもって償えばそれでいいのかというと、何かが違うと思ってしまいます。では、どうすればいいのか・・・答えは見つかりません。でも、考え続けることが大事なのだろうと思います。

2015年2月28日 (土)

祈りの幕が下りる時

2240「祈りの幕が下りる時」 東野圭吾   講談社   ★★★★

アパートで殺された女性は、その部屋の住人ではなかった。では、住人はどこへ消えたのか。捜査一課の松宮たちは必死の捜査を続けるが、その事件は奇妙な形で、松宮の従兄・加賀恭一郎に関わってきて・・・。

加賀恭一郎シリーズです。実は、これが加賀シリーズだと知らずにいて、読み逃してました。「卒業」以来の加賀ファンなのに。反省。

「赤い指」から連なる加賀の家族にまつわる話であり(今回は、母親のことがメインです)、「新参者」「麒麟の翼」に続く日本橋もの3作目になります。

加賀がどうして日本橋署にいるのか・・・彼にとって「日本橋」とは何なのかが、初めて明かされます。そして、事件を追う中で、母にまつわる謎も解き明かされていきます。

とても悲しいし、やりきれない事件なのですが、肉親の深い愛情が根底に流れているのが胸を打ちます。

加賀は捜査一課に戻るんでしょうかね。私としては、日本橋でフラフラしている加賀も好きなんですが(笑) まあ、いつまでも所轄にいるタイプではないでしょうね。

そして、非常に気になるのは、金森さんとの仲です。今度こそうまくいくのかな。「ガリレオ」もいいですが、加賀シリーズもぜひ書き続けてほしいものです。

2014年8月30日 (土)

マスカレード・イブ

2169「マスカレード・イブ」 東野圭吾   集英社文庫   ★★★

高級ホテルの有能なフロントクラーク・山岸尚美。大胆な発想で真犯人に迫る新米敏腕刑事・新田浩介。のちにある事件でタッグを組むことになる二人の、「それ以前の」物語。

「マスカレード・ホテル」がとてもおもしろかったので・・・買ってしまいました。こういうのをいきなり文庫で出すのって反則だと思うんですけど。(今、PCは「販促」と変換しました・笑) 続編とはいえ、「前日譚」ときましたか。うまいですねえ。

「それぞれの仮面」「ルーキー登場」「仮面と覆面」「マスカレード・イブ」の4短編。尚美サイドの話と、新田サイドの話が、徐々に近づいていって・・・この段階では二人の出会いはおあずけ、です。

二人の観察力や頭脳の鋭さなどが存分に活かされるミステリで、一つ一つの話が楽しめました。特に尚美サイドの話はホテルの裏側がのぞけるので、おもしろかったです。

さらなる続編はあるんでしょうか?

2013年7月26日 (金)

禁断の魔術

2023「禁断の魔術」 東野圭吾   文藝春秋   ★★★★

引き続き、ガリレオ第8弾。またしてもドラマ原作にもなった短編集。「透視す(みとおす)」「曲球る(まがる)」「年波る(おくる)」「猛射つ(うつ)」の4編。

4編目の「猛射つ」がちょっと長めで、湯川の「教え子」との話になっています。たまたま関わることになった母校の後輩を助けようとする湯川。「真夏の方程式」を思い出しました。

このシリーズ、相変わらずトリックそのものは「???」となってしまう文系の私ですが、やっぱりおもしろいのですよね。まだまだ続けてほしいです。

2013年7月25日 (木)

虚像の道化師

2022「虚像の道化師」 東野圭吾   文藝春秋   ★★★★

ガリレオシリーズ第7弾は短編集。「幻惑す(まどわす)」「心聴る(きこえる)」「偽装う(よそおう)」「演技る(えんじる)」の4編。ほぼ1年前に出版されているので、今さらですが、ようやく図書館でめぐりあえました。

今年のドラマの元ネタでした。ドラマをなんとなく見ていたので、「ああ、あの話・・・」という感じで。しかし、ドラマではどうしても福山に目がいっちゃうので、ストーリーやトリックはよく覚えていなくて、ちょうどよかったです(笑)

シリーズの最初も、こんな短編集だったのですよね。あのころは湯川先生もなんだか人間味がなくて、トリックも難しくて・・・と思っていたのですが、湯川もずいぶん変わったものです。「偽装う」とか。

そうそう、小説では草薙といいコンビなのですが、ドラマに引きずられて内海薫が登場して、「え~」と思っていたのですが、あまりでしゃばり過ぎないキャラが、いい感じになじんできました。でも、ドラマでは内海さん、いなくなっちゃいましたけどね・・・。

一番おもしろかったのは、「演技る」。これ、ドラマでは蒼井優がやってましたね。原作ではもっと年上の女優さんの設定でした。どちらもおもしろかったです。

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