三浦しをん

2015年11月23日 (月)

あの家に暮らす四人の女

2377「あの家に暮らす四人の女」 三浦しをん   中央公論新社   ★★★★

牧田家で暮らす四人の女。母の鶴代、一人娘の佐知、その友人の雪乃とその後輩の多恵美。ひょんなことから始まった四人暮らしだったが、その日常は穏やかでいて波乱含みで・・・。

三浦しをんによる現代版「細雪」というあおりに、「おお!なんだかすごそう!」と心惹かれましたが・・・考えてみれば、本家「細雪」は読んだことないのでした。いや、いつかは読まねばと思っていますが。

さて、牧田家に暮らす四人の日常を淡々と描いたこの物語。それなりにドラマは起こりますが、基本的に四人の生活は平穏に続いていきます。その感じがすごくリアルというか。ああ、こういう感じだよね、日常って・・・と、思わされます。

とはいえ、働かなくても暮らしていけるという生い立ちの鶴代には超然としたところがあって、何やら非現実感が漂うところも。それでいて、佐知との母娘のやりとりは、すごく現実感満載で。それを言ったらみんな浮世離れしたところがあるようでいて、なんだかわかるわ、この感じ・・・ということの連続でした。

いずれ時間が過ぎて、この家もそのままではいられないのでしょうが、でも、こういう時間が永遠に続けばいいなと、思ってしまいました。

2015年5月 6日 (水)

ふむふむ おしえて、お仕事!

2284「ふむふむ おしえて、お仕事!」 三浦しをん   新潮文庫   ★★★

三浦しをんさんが、15の職種の16人の女性に、「お仕事」についてインタビュー。

私自身、ここ何年か、仕事とのかかわり方について悩んでいるので、何か得られるかな、と読んでみました。

16人は職種もまったくバラバラで、個性もそれぞれ(あたりまえですが)。子供のころからの夢をかなえた人もいれば、おもしろそうなことを追求していくうちにそこに至ったという人も。流されるようにして、今の仕事にめぐりあった人もいて、その人独特の物語がそこにはありました。

でも、全員に共通しているのは、仕事の苦しさの中にも喜びをきちんと見出していること。

一番印象に残ったのは、実は、しをんさんの「ふむふむしたい まえがきにかえて」の中のこんなところでした。

「インタビューした十六人は、当然ながら、来歴も仕事の内容もそれぞれちがう。共通するのは、自分の職業に対する熱意と、なんだかちょっと変わっていて愉快なひとだ、ということだろう。(中略) 変人ぞろいだからこそ、世の中には多種多様な職業があり、たとえ同じ職業に就いていても、仕事に対する取り組みかたや考えかたが各人ごとにちがってくる。『個性』とか『自分にしかできない仕事』をあえて追求しなくても、べつに全然大丈夫なんじゃなかろうか。」

ふむふむ(笑) なんというか、すごく納得させられました。

2014年5月 4日 (日)

政と源

2120「政と源」 三浦しをん   集英社   ★★★★

東京下町のY町に住む幼なじみ、有田国政と堀源二郎。ともに73歳。元銀行員の政と、つまみ簪職人の源。性格もまったく対照的な二人ながら、ずっとこの町で一緒に生きてきた。源のもとには若い弟子の徹平が出入りしているが、彼はなかなかのトラブルメーカーで・・・。

ずっと読みたかった本。図書館でようやくゲットしました。そして、もったいないと思いつつ、一気読み。いやあ、おもしろかったです。

しをんさんは男二人のコンビを書くのが上手いですね。いや、変な意味でなくて(笑) まほろシリーズも多田と行天という対照的なコンビが主人公ですが、こちらも堅実な人生を歩んできたのに妻に出て行かれてしまった政と、破天荒な源という、絶妙なコンビです。

もちろん、「まほろ」より年を取った二人なので、そのしみじみ感がなんとも言えない味になっています。

これを読んで、「つまみ簪」というの、初めて知りました。そういう名前で、こんなふうにして作られているのですね。職人さん好きなもので、源の手並みにちょっとうっとりしてしまいました。

それから、政が妻に送り続けたハガキに笑ってしまいました。かわいいなあ、政。

軽やかな物語なんだけど、何かが胸にしみてくる・・・そんな物語でした。しをんさんのこういうテイスト、好きだなあ。

2014年2月 2日 (日)

まほろ駅前狂想曲

2089「まほろ駅前狂想曲」 三浦しをん   文藝春秋   ★★★★

まほろ市の駅前に便利屋の事務所をかまえる多田。彼のもとに転がり込んできた同級生・行天との同居も3年目を迎えた。それぞれに傷を抱えて生きる二人。そんな彼らにもたらされた驚愕の依頼・・・行天の娘を預かってほしい、と! 

シリーズ3作目。長編です。

1作目、2作目で登場したキャラが大集合。とんでもない「狂想曲」を奏でてくれます。

このシリーズのテーマは、多田と行天の「再生」なのだと思うのですが、それぞれに大きなターニングポイントを迎えます。多田は、柏木亜沙子との恋愛。行天は、娘・はるとの生活。二人の姿はときに痛々しくもあるのですが・・・。「それでも、生きたい」という行天の言葉が、沁みました。

ほんのりと希望が見えた感じの前作に比べ、こちらはさらに一歩前に踏み出した二人。そうだからこそ、どうかこのまま幸せになって・・・と祈らずにはいられませんでした。もしこれで、悲しいラストが待っていたら・・・と、ドキドキしましたが、ひと安心。それにしても、行天の行動は、こちらの予想を裏切りますねえ。

これ、続きはあるんでしょうか。ここで終わっても、続いても、どちらでもいけそうなラストでしたが・・・?

それから、このシリーズ、なんといっても装丁が素敵です。だから、買ってしまうんですよねえ。

2013年5月19日 (日)

舟を編む

2000「舟を編む」 三浦しをん   光文社   ★★★★

玄武書房の辞書編集部に異動となった馬締(まじめ)光也。なぜだか周囲から浮いてしまうまじめだが、国語辞典「大渡海」編纂のために欠かせない人材になっていく。しかし、辞書編集は、多額のお金と労力を必要とするため、会社ではあまり辞書編集に関わる人々の思いを凝縮した「大渡海」は、果たして世に出ることができるのか。

2012年本屋大賞。

そもそも、本屋大賞って最初は「いい企画だ!」と思ったのですが、最近は単に売れ筋の本の人気投票になっている感があって、ちょっとひいていたのですが・・・この本は、賞の意図するところにピッタリな物語でした。

言葉にこだわり、辞書を編集する人たち。言葉に敏感な「まじめ」や、辞書に思い入れのある荒木さんや松本先生、佐々木さんだけでなく、全然興味もないのに編集部に配属されていた西岡、その後任として配属になった岸辺みどり、アルバイトの学生たちなど、本当にたくさんの人々の思いをのせて、10年以上の歳月をかけて作られていく辞書。その過程がなんともおもしろかったです。

とはいえ、「ひゃあ~、そんなふうにして作るんだあ」と、驚きの世界もたくさん。紙の質にまでこだわるなんて・・・「ぬめり感」って、初めて知りました。

もちろん、作っている人たちの恋愛なども描かれていて、ふだん何気なく使っている「辞書」も、人間が書いているのだということに気付かされました。

私は今でも紙の辞書派です。電子辞書も便利ですが、辞書の楽しみは、調べようとした言葉以外のものも目に入ってしまうことだと思っているので。その隅々まで編集者の心配りと、限られたページ数に何を入れるかというせめぎあいが詰まっているのかと思うと、ますます辞書がいとおしくなってしまいます。実際、書店で「大渡海」を探したくなってしまいました(笑)

そして、まじめくんたちの言葉へのこだわりは、しをんさんのこだわりでもあるのだろうな、と思うのです。作家として言葉を紡ぐ人だからこそ、その大切さを、人としての「証」を描きたかったのだろうと感じました。

それにしても、この本の装幀は素敵です。「大渡海」、こんな感じなんですね。

さて、「本のプロ」時代から(何のことだかわからない方はごめんなさい)続けてきた読書日記、おかげさまで2000冊に到達しました。今まで本当にたくさんの方にお世話になり、支えられてきました。本当にありがとうございました。

独身時代のように本ばかり読んでいる生活はできなくなりましたが、ぼちぼちと読んで、書いていきたいと思っています。これからもどうぞ「読み人の言の葉」と、私・まゆをよろしくお願いいたしますm(__)m

2013年3月 9日 (土)

神去なあなあ夜話

1977「神去なあなあ夜話」 三浦しをん   徳間書店   ★★★★

ひょんなことから三重県の山奥・神去村で林業に就いた平野勇気、二十歳。先輩たちに助けられ、仕事のおもしろさもわかってきた今、少しずつ村の生活にもなじみ、恋にも進展が・・・?

油断してたら、泣かされました(苦笑)

ゆる~い、「お仕事小説」というノリにだまされました・・・。いや、基本的にそうなんですが。自然の中で生かされていて、人間がどうあがいても手の届かないこともあって。だからこそ、自然を敬い、感謝する・・・その意味が、身に染みて感じられるようになったからかもしれません。まだ小学校五年生だったヨキや、高校生だった清一さんが経験したことが、奇妙な実感を伴って感じられてしまったのも・・・。

もっとも、基本的にはの~んびりした、「なあなあ」な神去村のお話、です。神去村の起源とか、失せ物探しとか、ヨキ夫婦のなれそめ(?)とか、勇気が遭難しかけたり、勇気と直紀の恋が進展したり・・・。

しかし、自分の恋愛事情が周囲に筒抜けだったら、とっても嫌かも(苦笑)

ところで、この話は、勇気がパソコンに一人で文章をつづるという形で書かれていますが、あのテンションは、エッセイでのしをんさんですねえ(笑)

2012年12月15日 (土)

お友だちからお願いします

1949「お友だちからお願いします」 三浦しをん   大和書房   ★★★

三浦しをん最新エッセイ集!ということですが、しばらくしをんエッセイは読んでいませんでした。発表する媒体が新聞ということもあって、おとなしめ(当社比)のものが多かったですけど・・・でも、「これを読売とか日経とかに載せたの・・・?」と、他人事ながら心配になるものも。もっとも、初期のころの妄想全開モードのとは違いますが。

しかし、「しをんエッセイを人前で読んではいけない」という経験則は、今回、生かされました! テスト監督をしながら読もうかなと思っていたのですが、いや、待てよ、と。危なかったです。確実に、一人で笑い出して、生徒たちに白い眼で見られるところでした。

個人的に印象に残ったのは、青森の「キリストの墓」を訪れた話。その情景がリアルに想像できるのと、菅野彰さんが「海馬が耳から駆けてゆく」でも取り上げていて、二人の感想がけっこう違ったもので。

しをんさんといえば、「舟を編む」、積読中です。冬休み中には読みたいなあ。

2011年4月 2日 (土)

神去なあなあ日常

1678「神去なあなあ日常」三浦しをん   徳間書店   ★★★★

高校を卒業したら、適当にフリーターでいこう・・・そう思っていた勇気は、担任に無理やり就職先を決められた。行先は、ものすごい山の中の神去村。仕事は、なんと林業! チェーンソーの使い方から教えられ、わけがわからないまま山の仕事をさせられるはめに。いつか逃げ出してやると思っていた勇気だったが、いつのまにか山に魅せられてしまい・・・。

図書館でもずっと貸し出し中で、ようやくゲットしました!ずっと読みたかったのです。

今、震災で大変なことになっている岩手ですが、県北は、実は大晦日から正月にかけて大雪が降り、大停電しました。その雪は、ものすごく湿って重く、山の木々がバキバキ折れてしまいました。実家は周りが山なのですが、夜中、木が折れて倒れる凄まじい音があちこちから響いて、生きた心地がしなかった・・・と、母が言っていました。

そんなふうに木が折れてしまうのは、今、山の手入れをしなくなっているからなのだそうです。きちんと間伐をして、手入れをして、太い木にしていれば折れないのだ、と。細い木ばかりになっているから、簡単に折れてしまうのだというのです。さらに、今は山の管理ができず、木を伐採して売ってしまう人が増えています。そういう状況を見ていたので、この話には興味があったのです。

結果として、すごくおもしろかったです。林業とはどんなことをするものなのか、その過酷さとカッコよさがよくわかったし。こう言うとありきたりですが・・・自然と調和して生きるということは、時にものすごい理不尽にも耐えなければいけないのですね。だからこそ、神去の人たちの「なあなあ」という気質が生まれるわけで。

どうしても、今、震災と結び付けて読んでしまうのですが。今回の震災の被害は、仕方ないとあきらめるにはあまりにもひどい状態です。それでも、私たちはやっぱり自然と切り離されて生きていくことはできないわけで。海のもの、山のものに生かされている・・・という感謝の思いを、なくしてはいけないと、痛切に思いました。

イマドキの男の子の勇気が、いやだいやだと言いながら、わりとすんなり山の生活になじんでいくところはちょっと出来すぎな気もしましたが、根っからの木こりであるヨキや、広大な山を管理する清一さん、巌さんや三郎じいさん、みんな自分の仕事に誇りをもっている「山のプロ」であるところが、本当にかっこよかった(笑) 山火事のシーンと、祭りで山に登っていくシーンは、最高でした。

2010年12月16日 (木)

木暮荘物語

1631「木暮荘物語」三浦しをん   祥伝社   ★★★

小田急線世田谷代田駅から徒歩5分。築ウン十年のおんぼろアパート木暮荘。ほかの部屋の物音が筒抜けという環境で地味に生きてる住人達の日々は、それなりに波乱万丈で・・・。

ほんわか系の物語を想像していて、読んでビックリしました(苦笑) いや、ある意味あったかい物語ではあるのですが・・・。

第一話の「シンプリーヘブン」は、繭が半年前に合コンで知り合ってつきあいだした彼といるところへ、元彼の並木が3年ぶりにやってくる・・・という話。三角関係なんだけどドロドロしてなくて、なかなかさわやかな終わり方でいいじゃない・・・なんて思ってたら、甘かったです。

その後、住人達の話がリンクしながら進んでいくのですが、セックスのこととかかなり露骨に書かれていて、ちょっと人前で本を開くのをためらってしまいました。もちろん、全然エロくないのですが、話によってはちょっと引いてしまったのも事実。ほかの部屋の住人の生活を覗き見するとか・・・。

印象的だったのは、子どもが産めないと言われた光子の話「ピース」。これは、ちょっと泣きそうになってしまいました。

最終話にまた並木が登場して、リンクしてきた物語の輪が緩やかに閉じる構成は素敵でした。

全然関係ないけど、この前に読んだ「バイバイ、ブラックバード」で『繭美』という強烈なキャラが登場するので、第一話の『繭』が最初イメージかぶってしまって、ちょっとつらかったです。本を読む順番って難しい・・・。

2010年10月25日 (月)

天国旅行

1598「天国旅行」三浦しをん   新潮社   ★★★★

死んでしまおう・・・そう思って青木ヶ原の樹海に入った明男は、自殺に失敗する。明男の前に現れた青年に導かれて、樹海のさらに奥に「死に場所」を求めて入り込んでいくが・・・。(「森の奥」)

「心中」をテーマにした連作短編集。「森の奥」「遺言」「初盆の客」「君は夜」「炎」「星くずドライブ」「SINK」の7編。

心中と一言でいっても、描かれている死の情景はさまざま。前半の3編は、なんとなくハッピーエンドというか、どことなく明るいテイストが感じられます。特に、「初盆の客」は奇妙な話なのに後味がよくて、読み終えてほっとします。

ところが、「君は夜」で、世界が一気に暗転します。これはなんとも救いのない話で(主人公は幸せを感じているかもしれませんが)、続く「炎」も、何が真実だったのかはわからないまま。そして、「星くずドライブ」では、どうしようもないせつなさを残したまま話が終わってしまい・・・。

最後の「SINK」には、やられました。キリキリとせつなくて、どこかしらあったかくて、人を寄せ付けないようでいて、どうしようもなく人を引き付ける・・・そんな三浦しをんワールド全開です。

これを読んで、やっぱりしをんさんの小説って好きだなあ・・・と、しみじみ感じました。

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