坂木司

2017年4月17日 (月)

アンと青春

2563「アンと青春」 坂木司   光文社   ★★★★

デパートの和菓子店でバイトをしている杏子。周りにも恵まれて、順調に仕事をしているようでいて、バイトという身分に不安を感じることも。そして、今日もまた杏子のもとに、小さな謎が・・・。

「和菓子のアン」の続編。久しぶりの坂木さんです。

「空の春告鳥」「女子の節句」「男子のセック」「甘いお荷物」「秋の道行き」の5編からなる連作短編。

杏子はじりじりとだけど、成長してますねえ。しっかりしてきたなあと思うことがたびたび。いまいち自分に自信はもてないけど、根が素直な彼女には、好感がもてます。そして、彼女に好感を抱いているのは読者だけじゃないようで・・・?

ただ、「甘いお荷物」は、ちょっと読んでて微妙でした。ネタバレになるので、ここでは書きませんが・・・そういう考え方もあるんだろうけどなあ。もっとも、自分に子どもがいないからそう思うだけかもしれませんが。

さらなる続編、楽しみです。(まさか、ここで終りませんよね)。

2010年7月30日 (金)

和菓子のアン

1534「和菓子のアン」坂木司   光文社   ★★★★

ちょっと太めの女の子・杏子は、高卒後、デパ地下の和菓子屋「みつ屋」でアルバイトを始めた。椿店長、和菓子職人志望の立花さん、バイト仲間の桜井さん・・・みんないい人だけどひと癖ありそうな面々と、おいしい和菓子に囲まれて、楽しいバイト生活を送る杏子。ところが、なぜか次から次へと不思議な事件に巻き込まれ・・・。

坂木司の日常の謎系ミステリ、今回は和菓子屋さんです。といっても、デパ地下のお店が舞台。老舗のお店とはまた違って、デパ地下ならではの雰囲気が楽しいです。デパ地下って、なぜかテンションあがるんですよね(私だけ?) とにかくおいしそうなものがあちこちにあって、行くとついつい余計なものまで買ってしまいます。

それはさておき。杏子は、バイト先で「アンちゃん」と呼ばれるのですが、その呼び名をつけたのは、見た目はイケメンなんだけど中身「乙女」な立花さん。そして、店長の椿さんは、謎をすらすら解き明かしてしまう不思議な人なんだけど、裏の顔があって・・・。なんとも奇妙な人たちが集まったお店で、奇妙な事件が次々と。

和菓子にはあんまりなじみがないのですが、その名前の付け方とか、デザインとか、実に凝っていて、それをうまくミステリに応用してます。読んでいて、楽しかったです。

坂木さんのミステリは、最初の「引きこもり探偵」シリーズ以降、ずいぶんくだけた雰囲気になりましたね。「引きこもり」の時は、ちょっと自意識過剰気味な感じがして、ううん?と思ったこともありましたが、適度にこなれてきて、いい感じです。

今回は「切れない糸」とのリンクがあって、ニヤリとしちゃいました。

2009年10月27日 (火)

切れない糸

1417「切れない糸」坂木司   創元推理文庫   ★★★★

商店街にあるアライクリーニング店の長男・和也は、「店屋」の子であることをうざったく思いながら成長した。大学生活も終わりが見えてきたある日、父親が突然あの世へ旅立ってしまう。茫然自失しながら、とりあえずクリーニングの仕事を手伝い始めた和也は、さまざまな謎に出会い、自分の生き方を見つめていく・・・。

「日常の謎」系の連作ミステリ。ずっと読みたかった物語です。

主人公・和也と、クリーニング店で働くアイロン職人のシゲさん(彼の素性は全く謎)、そして和也の同級生で商店街の喫茶店でバイトしている沢田の3人が軸になっています。

クリーニングという仕事ならではの「謎」もとても興味深く、読んでて「へぇ~」と思うことがたくさん。そういうのも楽しかったですが、坂木さんらしい青臭いせつなさ感にやられました(苦笑)なんだかんだ言って、こういうの嫌いじゃないんですよね。

突然に父を失った和也が、シゲさんや沢田のことを失うのでは・・・と思ってしまうところなんか、なんだか涙ぐんでしまいました。でも、ラストは心地よい終わり方で、すごく好きでした。

それにしても、商店街ってもう死語になりつつあります。田舎ほど、そうです。郊外型のショッピングセンターがどんどん進出してきて。子供のころ、商店街で買い物するのって、楽しかったなあ。なんてことを思いながら読んでました。

2009年6月22日 (月)

シンデレラ・ティース

1399「シンデレラ・ティース」坂木司   光文社文庫   ★★★★

歯医者が怖くて仕方ない咲子は、母の陰謀で歯科医院の受付のバイトをすることに。咲子はそのクリニックで、かけがえのない経験をする…。

坂木さんのミステリで女の子が主人公って初めてじゃないでしょうか?
最初は咲子の受け身な姿勢が好きになれず、ちょっとイラッとしましたが、だんだん彼女が成長していく過程に好感がもてました。
私も歯医者苦手ですが、こんなにいいクリニックがあったら行きたいです。
実際、自分も今病院通いをしていて、ドクターやスタッフの方の患者への接し方には、いろいろ考えさせられるものがありました。この舞台になっているクリニックは、理想的ですね。
ミステリとしては日常の謎系ですが、それに歯科治療がうまく絡んで、「ほ〜」と思うことが多かったです。

2009年3月 9日 (月)

ワーキング・ホリデー

1380「ワーキング・ホリデー」坂木司    文藝春秋    ★★★★

ホストのヤマトのもとにやってきた一人の少年。「初めまして、お父さん」…ホストから宅配便のお兄さんになった大和は、「息子」の進と、夏休み限定で暮らし始めるが…。

「ひきこもり探偵」シリーズの坂木さん。あのシリーズよりだいぶ軽いノリでしたが、テンポよく読めて、私は好きでした。ちょっとセンチメンタルな感じも嫌味がなくて。
宅配便のお兄さんになってリヤカー引いてる大和は、憎めないキャラだし、小姑・進もありがちな設定だけど、かわいかったし。
ちょっとウルッときそうになった場面もあったりして、単純だけど好きな話でした。

2006年11月19日 (日)

動物園の鳥

1045「動物園の鳥」坂木司   創元推理文庫   ★★★★

 ひきこもり気味の友人・鳥井真一のもとに、二人の老人がやってきた。動物園で野良猫が虐待されているという。いったい何が起きているのか確かめてほしいという依頼を不承不承引き受けた鳥井。彼を気遣う坂木司は、一緒に動物園に向かう。そこで、思いがけない人物と再会し・・・。

 ひきもこり探偵シリーズ完結編は、初の長編です。
 今までの登場人物に加えて、さらに新しい出会いが鳥井と坂木を待っています。ところが、それはあまり愉快ではないもの。二人の「傷」に触れるものなのです。
 正直言って。このシリーズを読んでいると、坂木という語り手にイライラすることもあったのです。善なるものを信じたいという思いが強すぎる彼のことが、うっとうしく感じられたこともあります。でも、この最終巻で、鳥井だけでなく坂木もまた傷ついていたのだと、ようやくわかるのです。
 自分の足で立って、生きるということ。当たり前のことだけど、それが難しくて悪戦苦闘している人もいるのだということ。私自身、その一人です。でも、自分で考えて、自分で判断して、きちんと生きなければ・・・と思っている矢先に、出会ったのがこのシリーズでした。その最終巻でこういう決着がついたことが、とてもうれしかったです。坂木の決意に、思わずほろりときました。
 読んでいて痛い部分もたくさんあったけど、今の私が出会うべき一冊だったのかなという気がします。
 
 余談ですが。物語の中で、動物園のパンダが、繁殖のためにメキシコに出張中というくだりがあります。私、まさにその時期に上野動物園に行ってます。パンダを楽しみに行ったら「メキシコ出張中です」の表示に、ものすごく落胆したのでした。
 単行本で読んだみなさん、文庫にはボーナストラックがありますよ~。

2006年8月 3日 (木)

仔羊の巣

1005「仔羊の巣」坂木司   創元推理文庫   ★★★

 ひきこもりの友人、鳥井真一が風邪をひいた。病院に連れて行ったり看病をしたりで忙しい僕・坂木司は、ある相談をもちかけられる。同僚の女性の様子がおかしいというのだ。頼りになる「名探偵」鳥井は寝込んでいる。僕は自力で謎を解こうとするが・・・。

 ひきこもり探偵シリーズ第2作。今回も「迷える仔羊たちの物語」3編を収録。
 ミステリとしては「日常の謎」系なので、小さな小さな事件の謎を解いていくパターン。ひきこもりの鳥井が坂木から話を聞いて推理し、いやいやながら外へ出て行って謎を解き明かしてくれます。
 これは、謎解きもさることながら、その過程で鳥井や語り手の坂木の関係や、彼らを取り巻く人々の思いの変化が読ませどころ。相変わらずバカみたいに人のいい坂木はよく泣くし、傍若無人なくせに鳥井も泣く。この二人、いいヤツなんだか嫌なヤツなんだか、よくわかりません(苦笑)共感は・・・できない。けれど、読んでいるとなんだか胸が痛くなります。
 有栖川有栖の解説が秀逸です。このシリーズの特性は、ここに語りつくされてる感があります。

2006年7月 1日 (土)

青空の卵

989「青空の卵」坂木司   創元推理文庫   ★★★★

 僕、坂木司の親友は自称「ひきこもり」の鳥井真一。その生い立ちゆえに人と関わることが苦手な彼を、なんとか外へ連れ出そうとするうち、さまざまな事件に関わってしまう。鳥井が導き出す真相とは・・・。

 著者のデビュー作にしてシリーズ第1作。「日常の謎」系の連作ミステリ。
 正直言って「ひきこもり探偵」というのを聞いたときには、「ああ、また今風の設定で・・・」と思いました。が、いい感じに裏切られました。
 鳥井と坂木の依存し合っているようにも見える関係。時に悲しくて、時にうれしくて、泣き出してしまう坂木。それを見ると、動揺して一緒に泣いてしまう鳥井。大人であるはずの彼らのそういう姿に最初は驚きました。でも、二人とも、私たちが目を背けたいものをきちんと見ようとしている。だから傷つきやすくても、二人でなんとか歩いていこうと頑張っているのです。
 特に、「親子」の関係に焦点が当てられた「春の子供」では、読んでいてせつなくて、泣きそうになりました。子供の側から、親の側から、それぞれの思いが物語からあふれてきました。
 ミステリとしても、じゅうぶんおもしろかったです。「冬の贈りもの」の謎解きが印象的。歌舞伎役者のところに次々届けられる高価そうだけどなんだか変な贈りもの。いったい誰が?何のために?という・・・。
 続編の文庫化が楽しみです。

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