平岩弓枝

2015年10月11日 (日)

蘭陵王の恋 新・御宿かわせみ4

2366「蘭陵王の恋 新・御宿かわせみ4」 平岩弓枝   文春文庫   ★★★★

神林麻太郎の留学時代の友人・清野凜太郎が帰国し、「かわせみ」にやってくる。御所に仕える楽人の凜太郎と、麻太郎の妹・千春は互いに惹かれ合うが・・・。

シリーズ第4弾は、千春の恋が描かれます。腹違いの兄・麻太郎に、そうとは知らずに淡い思いを抱いていた千春も、ほかの殿方に心惹かれるようになったのですねえ。なんだか感慨深いものが。

「イギリスから来た娘」「麻太郎の友人」「姥捨山幻想」「西から来た母娘」「殺人鬼」「松前屋の事件」「蘭陵王の恋」の7編を収録。相変わらず友人の畝源太郎とともにいろんな事件に巻き込まれている麻太郎ですが、麻太郎の実父・東吾と源太郎の父・源三郎の若いころを見ているようで・・・。

明治になり、世の中のいろんなものが変わっていくのですが、それがすごく自然な感じで描かれていて、「明治のかわせみ」にもなじんできました。特に、麻太郎たちの世代の青春ものっぽいテイストが、かなりお気に入りです。

次巻は「千春の婚礼」です。文庫読みしてるので、読めるのは当分先になりそうですが、楽しみです。

2012年12月31日 (月)

花世の立春 新・御宿かわせみ3

1953「花世の立春 新・御宿かわせみ3」 平岩弓枝   文春文庫   ★★★★

七日後の立春に祝言をあげようと、源太郎に提案した花世。互いの思いは周囲も承知のことゆえ誰もが喜んだが、あまりに急な事の運びにるいや、花世の父・宗太郎はとまどう。さらに、花嫁修業もろくにしていない花世の家事は惨憺たるありさまで・・・。

待望の文庫化です。花世と源太郎の祝言を、どれほど楽しみにしていたことか。そして、こんな破天荒な顛末になるとは(笑)

子供時代の麻生花世は、何不自由なく育てられた旗本のお嬢様で、そのわがままぶりが私は好きになれませんでした。畝源太郎は花世が初恋の人。子供のころから、花世のためなら何でもする・・・というのが、青年になった新シリーズでも変わっていなくて(苦笑) 

でも、考えてみたら、花世は父以外の家族を殺され、源太郎も父が非業の死を遂げ、旗本も同心もなくなり・・・そういう激動の時代を共に生き抜いてきたのですね。それでも花世は源太郎を信じ、源太郎は花世のために奔走し・・・。もし、江戸の時代が続いていたら、身分違いの二人が結ばれることはなかったのかもしれないと思うと、これはこれでよかったのかな、と。長助たちじゃないですが、子どもの頃から知っている二人の祝言は、思わず涙ぐむほどうれしいものでした。

そして、花世のいじらしいこと、いじらしいこと。さらに、結婚してからの源太郎の頼もしいこと。いいですね、新婚さんって(笑)

ただ、読んでいてせつないのは、るいの思いです。行方不明の夫・神林東吾に瓜二つの夫の隠し子・麻太郎。目の前にいる彼と、夫の姿がだぶる時のるいの哀切な思いに、ついつい涙が・・・。前作でも痛感しましたが、やはりこの物語は、おるいさんのものなのですね。

さてさて、これにて2012年の感想アップは終了です。最近は同時進行で数冊読んでいて、一冊読み終えるのに時間がかかっています。毎年やっていた「今年のベスト」も、今年は時間的に余裕がなくて、できませんでした。

今年、「読み人の言の葉」においでくださった皆様、ありがとうございました。2013年もほそぼそとではありますが、続けていきたいと思います。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

では、皆様、どうぞよいお年を。

2011年8月10日 (水)

華族夫人の忘れもの  新・御宿かわせみ2

1738「華族夫人の忘れもの 新・御宿かわせみ2」 平岩弓枝   文春文庫   ★★★★

かわせみに投宿した華族の第三夫人は、物腰は優雅だが、気さくな人柄で、かわせみ一同をうっとりさせる。しかし、彼女はなぜだか神林麻太郎に親密な態度を見せ・・・。

「新・御宿かわせみ」シリーズ第2弾。神林麻太郎、畝源太郎、麻生花世、神林千春の「子供世代」が活躍するこのシリーズも、波にのってきた・・・という印象です。

長く続くシリーズものの時間を進めるのは勇気が要ることだと思うのですが、このシリーズは、実にいい形でそれが進行しています。麻太郎たちそれぞれが、その親世代の面影を宿しつつ、新しい時代を生きるはつらつとした空気をまとっていて、彼らを見守る「本家・かわせみ」の面々が、いいところで顔を出してくれる。このへんの呼吸がたまりません。

しかも、旧シリーズでの事件が、新シリーズにつながっていたりして。今回の表題作も、旧シリーズでなんとも後味のすっきりしなかった事件の後日譚であり、種明かしされたときには思わず「ああ!あの子!!」と(苦笑) 長年のファンならではの楽しみ方ができたり。

今回は、とうとう千春が麻太郎の出生の秘密・・・自分と麻太郎が、血のつながった兄妹だと知ってしまいます。いつかこういう日が来るのを案じていましたが・・・。それでも、不思議なくらい後味が良くて、ホッとしました。

それにしても、東吾さんはやっぱり帰ってこないのでしょうかね・・・。やっぱりちょっと寂しいです。

2010年8月 7日 (土)

新・御宿かわせみ

1537「新・御宿かわせみ」平岩弓枝   文春文庫   ★★★★

幕末の動乱は、「かわせみ」にもいくつかの不幸をもたらした。神林東吾は行方不明、畝源三郎は落命。けれど、「かわせみ」はおるいが守り、今も大川端にある。そして、麻太郎、源太郎、花世たち、若い世代は確実に明治の世を歩き始めていた。

とうとう、新章突入です。

実は、非常に複雑な気分でした。東吾が行方不明になり、畝源三郎も死んでしまう・・・という設定を知った時、かなりショックだったので。それに、主人公が麻太郎に移るというのも。麻太郎は、東吾の兄・神林通之進の養子ですが、実は東吾の隠し子。おるいさんびいきの私としては、麻太郎の存在はすごく微妙なものがあるので・・・。

でも、読んでよかったです。麻生家の人たちが殺されてしまったのはショックでしたが・・・。源三郎が殺されたのも、麻生家の事件を調べていたからで、その真相を最終的に麻太郎・源太郎・花世が明らかにできたというのが、本当によかった。麻太郎と源太郎は、かつての東吾と源三郎のようで・・・。源太郎の武器にはびっくりしましたけど(笑)

おるいはじめ、「かわせみ」ファミリーの面々も、みな元気で登場して、それを読んでいるだけでもうれしかったです。

そして、話の中心は子供たちに移ったものの、要所要所でおるいさんの凛とした姿がみられて、やはり「かわせみ」はおるいさんの物語だ・・・と、しみじみ感じたのでした。

2009年10月10日 (土)

浮かれ黄蝶

1416「浮かれ黄蝶」平岩弓枝   文春文庫   ★★★★

顔見知りの娘がひったくりにあったのを助けてやった麻太郎。しかし、それは思わぬ展開を見せ・・・。

「かわせみ」シリーズ34巻、江戸編の最後になります。なんというか・・・感無量ですね。終わりという感じはなく、淡々と事件が描かれますが、久々に東吾の立ち回りがあったり、子供世代がしっかり大人に近づいているのを実感したりと、しみじみしてしまいます。

今回の白眉は、巻末の「公孫樹の葉の黄ばむ頃」でしょう。これは東吾も子供たちも登場せず、るいが一人で物語をひっぱります。五歳で母を亡くした後、祖母の実家に預けられたるい。しかし、父がすぐに引き取りに来て、そのまま交流が途絶えていたのが、法要の案内が来て・・・という。るいも忘れていた記憶がよみがえり、同心であった亡き父の人柄も感じられ、なんだか胸に迫るものがある話でした。これを読んで、「かわせみ」は、おるさんの物語だったのだなあ・・・と、改めて感じました。

さて、この後は「新・御宿かわせみ」に続くようです。幕末の動乱で、東吾は行方不明、畝源三郎は落命・・・という、なんともやりきれない状況になっているようですが。いよいよ成長した子供たちが活躍するようです。やっぱり気になりますね。

2008年4月13日 (日)

小判商人

1282「小判商人」平岩弓枝   文春文庫   ★★★

 神奈川奉行所に投げ込まれた文の謎の言葉「さむらいの月見、六ツから八ツの間」・・・果たしてこれの意味するところは? 洋銀をめぐる事件に巻き込まれた麻太郎と源太郎を守るために、東吾の銃が火を噴く!

 「御宿かわせみ」シリーズ第33作。表題作の大捕り物「小判商人」をはじめとする7編を収録。

 派手な捕物もいいですが、やっぱり「かわせみ」は人情ものが好きです。最終話の「初卯まいりの日」が一番好きでした。東吾とるいの娘・千春が妙に心ひかれた招き猫の絵馬。それを作った職人と、生き別れた母との物語。それぞれの思いがせつなくて、うるっときました。

 私は文庫読みしてるのですが、単行本ではもう明治に突入したのですね。源さんが死んでしまい、東吾も行方不明・・・と聞いて、胸がつぶれる思いがしました。この先を読み進めるのが怖い気もしますが・・・きっと読んじゃうんだろうな。

2007年4月27日 (金)

十三歳の仲人

1106「十三歳の仲人」平岩弓枝   文春文庫   ★★★★

 「かわせみ」の女中お石に、玉の輿とも言える縁談が舞い込んだ。今やお吉の片腕として、るいの名代もつとめるほどに信頼のあついお石のこととあって、「かわせみ」一同も色めきたったが・・・。

 「御宿かわせみ」32巻です。
 今回は、お石の縁談がまとまるまでの話が連作のようになっていて、それがとても気に入りました。
 田舎から出てきたお石は、当初は山猿のような娘でしたが、今では「かわせみ」になくてはならぬ存在に。東吾とるいの一人娘・千春も、お石にはとてもなついています。そんなお石に舞い込んだ縁談。大店の嫁にという話は願ってもない良縁と思われたものの、事態は意外な方向に。
 お石が直面した過酷な現実と、そこで見せた彼女の芯の強さに感動し、どうか本当に幸せになってほしいと思う人は多いはず。もちろん、私もそう思いました。
 そして、最終話「十三歳の仲人」での大団円。ああ、よかったな・・・と、素直に思えました。千春と麻太郎の活躍も微笑ましかったです。子どもの素直な思いって、貴重ですね。 

2006年4月24日 (月)

江戸の精霊流し

968「江戸の精霊流し」平岩弓枝   文春文庫   ★★★

 人手が足りなくなった「かわせみ」が急遽雇い入れた女中のおつまは、かげひなたなくよく働き、るいもお吉もすっかり気に入っていた。そんなおつまに後添えの口が。願ってもない話にるいたちも大乗り気だったが、肝心のおつまがはっきりしなくて・・・。

 御宿かわせみシリーズも31巻が文庫化されました。私が読み始めてからでも7~8年たちます。本当に長い時間、クオリティを保っているのがすごいですね。
 今回も8つの短編を収録。いつもの「かわせみ」メンバーたちがそれぞれに活躍しています。最近は子供世代の話が楽しいです。今回、「北前船から来た男」で畝源太郎と神林麻太郎(実は東吾の隠し子)が、それぞれの父親顔負けの探索をしてくれて、なかなか楽しめました。
 印象的だった話は「野老沢の肝っ玉おっ母ぁ」です。「かわせみ」の女中お石の家族の話ですが、ラストで登場するお石母が、なんとも言えずいいのです。思わずほろりとさせられます。
 それにしてもちょっと残念なのは、東吾と結婚してからのおるいさんが、すっかり家の奥におさまってしまったこと。凛としたおるいさんの活躍がもう一度読みたいです。

2005年8月26日 (金)

鬼女の花摘み

847「鬼女の花摘み」平岩弓枝   文春文庫   ★★★

 花火見物にやってきた麻太郎と源太郎は、おなかをすかせた幼い姉弟を見かね、食べ物を分け与えた。やがて、その子らが虐待されているのではないかと気づき、心痛める。東吾たちも、なんとか姉弟を救おうとするのだが・・・。

 最近、疲れがたまっているのか、本を読んでもすぐ寝てしまい・・・。ようやく一冊読み終えました。
 「御宿かわせみ」文庫版も30巻目。「かわせみ」第二世代の子供たちもすっかり大きくなって、大活躍です。でも、やっぱり東吾やるいの活躍が減るのは悲しい・・・。特にもおるいさんは、千春を産んでからすっかりおとなしくなっちゃって寂しいです。
 と思っていたら、今回「白鷺城の月」で、東吾さんの身を案じて姫路まで駆けつけるという行動力を発揮。そうこなくっちゃ。
 表題作はじめ、現代にも通じる、気が滅入るような事件が多かったですが、「初春夢づくし」のようなほんわかした話が入っていて、だいぶ救われました。津軽から出てきた、るいの親戚の娘が、役者に入れ揚げて・・・という話。東吾たちの作戦も(大失敗するけれど)、話の結末も、あったかくてすごくよかったです。

2004年10月15日 (金)

初春弁才船

636「初春弁才船」平岩弓枝   文春文庫   ★★★

 東吾のもとに船頭の息子が西洋の航海術を学びにやってきた。父親は上方から江戸への航海の途中、行方不明になっている。熱心に学ぶ若者に、東吾たち「かわせみ」一同も心を通わせる。やがて、父親が生還し、親子は再び海に挑むが・・・。


 かわせみシリーズも文庫で29作目。これを全部読んでいる自分にびっくりです。
 7つの短編が収録されていますが、いちばん好きだったのは表題作「初春弁才船」。かわせみ一同の面倒見のよさと優しさ、そしてラストの大団円がなんとも心地よく・・・。
 ほかには「メキシコ銀貨」で活躍する麻太郎と源太郎の少年コンビが、少年時代の東吾と源さんをほうふつとさせてよかったのですが、事件そのものが「つづく」なので、ちょっと残念。
 ほんわかしてる印象のあるシリーズですが、起こる事件はけっこうやりきれないものが多いんですよね。でも、新刊が出ると読んじゃうんですが。

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