近藤史恵

2017年4月 7日 (金)

スティグマータ

2556「スティグマータ」 近藤史恵   新潮社   ★★★★

ヨーロッパでサイクルロードレースの選手として走り続けているチカこと白石誓。華々しいタイトルとは無縁の、アシスト専門のクライマーとしてそこそこ認められているが、来期の契約は決まっていない。今シーズン、ツール・ド・フランスを走ることになったチカのもとに、かつての帝王・メネンコからある依頼が。ドーピングで王者の座を追われ、ブランクを経て復活してきたメネンコの頼みとは。

チカも三十歳ですか・・・。どうしても、まだ少年の面影を残していたチカのイメージのままなのです。あのチカが、ヨーロッパでそれなりに自分の居場所をつくって、レースを続けているのが、とってもいとおしい感じがするのも、そのせい。

さて、今回は、ドーピングで石持て追われた王者・メネンコが登場。チカたちが所属するチームのライバルとなるのですが、なぜかチカに奇妙な依頼をしてくる。いったい、彼の狙いは何なのか?という、ちょっとしたミステリテイストを感じさせつつ、レースが始まります。

いつもながらレースシーンの描写には引き込まれます。ロードレースが好きでも、ここまで臨場感のあるレースを描けるのって、すごい。そして、レースには、それぞれの選手の生き様が反映されているのも。とにかく次の展開が気になって、一気読みしてしまいました。

シリーズ第1作の「サクリファイス」のような衝撃はありませんが(あれは忘れられない)、チカたちレーサーの走る姿に魅せられました。

2016年7月10日 (日)

キアズマ

2449「キアズマ」 近藤史恵   新潮文庫   ★★★★

大学生になったばかりの正樹は、ひょんなことから部員不足の自転車部に1年限定で入部することになってしまう。まったくの初心者だったが、不思議と自転車レースに心惹かれ、やがてエースの櫻井と競うようになっていく。しかし、正樹にはずっと抱えている心の傷があり・・・。

「サクリファイス」シリーズというか、番外編というか。「サクリファイス」のあの人もチラッと登場しますけど。

「サクリファイス」のような、読み終えて全身鳥肌立つような緊迫感はないけれど、正樹という初心者視点で語られるので、自転車レースがより身近に感じられます。素人でもついていける感じ(笑)

もちろん、レース部分の迫力は、今までのシリーズ作品に負けてないです。読み応えあります。

今回は、主人公の正樹と、その先輩でライバルでもある櫻井、それぞれが抱えている傷が物語の重要な部分を担います。特に正樹は・・・。彼は悪くないけれど、その状況で罪悪感を感じないような人間でもなくて、読んでてしんどかったです。

それでも、自分が情熱をささげられるものと出会えた正樹は幸せだと思うのでした。

「スティグマータ」も早く読みたい!

2015年2月26日 (木)

胡蝶殺し

2239「胡蝶殺し」 近藤史恵   小学館   ★★★★

若手女形の蘇芳屋・市川萩太郎は、父を亡くした子役・中村秋司の後見人を任される。自身も若くして父を亡くし苦労した萩太郎は、秋司にできるだけのことをしようと決心する。秋司には、たしかに才能があった。秋司と同い年の息子・俊介とは比べ物にならないくらい・・・。

近藤さんの歌舞伎ものは久しぶりです。

ただ、今ちょうど三津五郎があんなことになったばかりなので、あまりにタイムリーすぎて、ちょっと読むのをためらってしまいましたが・・・途中からはそれも忘れて読みふけってしまいました。

特にも、物語中盤、「重の井子別れ」の初日を迎えるまでのドラマは、すごい緊迫感でした。萩太郎自身も初役の大役。難しい子役に秋司。俊介は簡単な子役で初舞台。秋司の稽古は完璧だったが、その矢先、才能がないかと思われた俊介が意外な能力を発揮。そして、初日の二日前、秋司が・・・。

舞台にとりつかれた人たちの、人として、舞台に関わる者としての、すさまじいまでの思いの交錯が、重厚なドラマをつくっていました。

たしかに、子役というのは、一時の花であり、それだからこそ成立するドラマがあるのですね。

タイトルは恐ろしげですが、意外なほどに後味のいい話でした。

2014年4月13日 (日)

モップの魔女は呪文を知ってる

2109「モップの魔女は呪文を知ってる」 近藤史恵   実業之日本社文庫   ★★★★

清掃作業員のキリコちゃんが遭遇した謎を解くシリーズ第3弾。

久しぶりのキリコちゃんシリーズ、久しぶりの近藤史恵さんです。転勤で疲れているので、サクッと読めそうなものをチョイス。2年以上積読してた本です。

近藤さんの書くものは「イタイ」ことが多いのですが、これはなんだか沁みました。キリコちゃんはとってもキュートなんだけど、けっしてスーパーガールじゃないところがいいですね。「第二病棟の魔女」がすごく好きでした。

第4弾も出ているのですが、キリコちゃんはもういいかなあという気がして、手が出ずにいました。が、これを読んだら俄然読みたくなってきました。

2012年6月10日 (日)

寒椿ゆれる

1876「寒椿ゆれる」 近藤史恵   光文社文庫   ★★★

南町奉行所の同心・玉島千蔭の年下の義母・お駒が懐妊した。それを契機に、千蔭のもとに縁談が舞い込む。相手は、奥祐筆組頭の娘・おろく。あまりの身分違いに動転する千蔭だが、おろくは一風変わった女性で・・・。

「猿若町捕物帳」シリーズ第4弾。千蔭は相変わらず、花形役者の巴之丞や、彼に瓜二つの花魁梅が枝、年下の義母お駒たちに振り回されっぱなしです(笑)

つわりで食欲のないお駒を心配して猪鍋屋に連れて行くと、その店に絡む事件が起こったり。新作狂言が始まってまもなく、主役の巴之丞が見知らぬ娘に刺されたり。やがて、奉行所の役人が不正を働いているらしいという事実にゆきあたったり。事件が次々起こります。

いつもなら梅が枝が千蔭に助言してくれるのですが、今回登場した見合い相手のおろくがなかなかのもの。二十八歳独身。決して美人でもなく、愛嬌もない。でも、おろくの観察眼の鋭さと、きよらかな心根には、「なんか、この人、いいかも・・・」と、千蔭ならずとも思わされてしまいます。

しかし、うまくまとまってしまっては、このシリーズ終わってしまうわけで(苦笑) なるほど、これが伏線でしたか・・・という展開が待っています。

なんとなく、シリーズ4冊目にして、ようやく世界になじんでいたというか。登場人物もみな魅力的に見えてきました。「巴之丞鹿の子」の時は、千蔭も、巴之丞も、梅が枝も、なんだかぴんとこなかったのですが。

積読本の山に埋もれていたこの本の存在を思い出したのは、先日読んだ「桜庭一樹読書日記」に記述があったから。へえ、桜庭さんも読んでるんだあ・・・と嬉しく思っていたら、「Mの同心が出てくる」にぶっ飛んでしまいました。そ、そうか、千蔭って、そうなんだ・・・。

2012年2月11日 (土)

ホテル・ピーベリー

1829「ホテル・ピーベリー」 近藤史恵   双葉社   ★★★

教師をやめて、なすこともなく毎日を過ごしていた木崎は、友人からハワイ島への旅行をすすめられる。観光客の多いホノルルではなく、のんびりできるところがたくさんある、と。木崎が心惹かれたのは、日本人夫婦が経営する小さなホテルのことだった。三カ月まで長期滞在ができるが、リピーターはおことわり。興味をもった木崎は、そのホテルを訪れる。しかし、そこで彼を待っていたのは、思いがけない事件だった。

近藤さんのシリーズものでない単発ミステリを久々に読みました。非常に読みやすく、あっという間に読んでしまいました。

私は海外旅行未経験なのですが、南国にはやはり惹かれるものがあります。特に、ハワイは、観光地としてのイメージが強いので、木崎が体験したような寒さとか、ちょっと意外で、逆に興味がわきました。

ある事情で教師をやめた、まだ二十代の木崎。ホテルのオーナーの洋介と和美夫妻。婚約者に何も告げず、ハワイにやってきた桑島七生。先客の佐奇島、蒲生、青柳。それぞれが、なんとなくうさんくさい空気をまとっていて、やがて・・・。

ミステリとしては、なんとなく先が見えてしまいましたが・・・近藤ミステリのテーマは「恋愛」だというのを、再確認させられました。木崎の身勝手さにイライラしましたが、人間そんなものかもしれない、という気がします。結局、誰でも自分のことが一番で、自分に都合のいいことが一番で・・・。でも、そうでなくて、相手の立場で考えてみようとか、一緒に立ち止まってみようとか、そういうことが人が誰かと一緒に生きていくということなのかな、と。そんなことを考えさせられました。

2011年10月25日 (火)

サヴァイヴ

1774「サヴァイヴ」 近藤史恵   新潮社   ★★★★

自転車ロードレース。日本ではマイナーなこの競技に命がけで挑む男たち。日本で、本場ヨーロッパで。サイクルレースならではの独特な勝負の世界で、彼らは走り続ける・・・。

「サクリファイス」「エデン」のスピンオフ短編集。

「老ビプネンの腹の中」「スピードの果て」「プロトンの中の孤独」「レミング」「ゴールよりももっと遠く」「トウラーダ」の6編。チカや石尾、赤城、伊庭・・・チーム・オッジの面々が、日本で、世界で走っています。

「プロトン~」と「レミング」は、ほかのアンソロジーで読んでいましたが、あらためて石尾というキャラの魅力を再確認。彼なくしてこのシリーズは成立しませんね。

さらに、チカも微妙に変化してきているような。「老ビプネン~」で描かれるレースの過酷さにはゾッとしましたが、それに耐えうるチカはかっこよかった! さらに、「トウラーダ」を読むと、なんとなく「エデン」の続編はまだあるのかなあという気がしたり。

いずれも、まさに「サヴァイヴ」のために走る男たちの生き様に圧倒されました。

2011年6月21日 (火)

モップの精は深夜に現れる

1718「モップの精は深夜に現れる」 近藤史恵   文春文庫   ★★★★

オフィスが無人になる深夜や早朝、そこに現れる掃除人・キリコ。掃除が好きだから、この仕事のプロとしてやっていく。そんなキリコが遭遇する数々の事件は・・・。

待ってました! キリコちゃんシリーズ続編、文庫落ちしました。

今回は、結婚してから派遣社員として仕事を始めたキリコが遭遇する事件、3つ。さらに、夫の大介が探偵役になる「きみに会いたいと思うこと」の計4編を収録。

オフィスのどこにでもフリーパスで入れるけれど、誰もその存在を意識しない掃除人。それを探偵役にするミステリというのは、おもしろい発想だなあと思うのですが、何より、キリコというキャラクターが魅力的なのです。掃除が好きで、それを仕事としてやることに誇りをもっていて、女の子としてもチャーミング。結婚してからも、彼女の魅力は健在です。

最終話は、ちょっと身につまされました。たしかに、女性が社会に出ていくことによって、その権利が保証されると同時に、選択したり決断したりすることも増えました。いろんなことができる、いろんなことがやりたい・・・でも、全部を手に入れることは不可能。では、どうするのか。多くの女性が、キリコと似たような悩みを感じたことがあるのでは。

でも、ちょっと頼りない大介に支えられて、キリコは彼女らしい場所に着地しました。思わず、こちらも気持ちがほっこり。素敵なミステリでした。

2010年10月 7日 (木)

ヴァン・ショーをあなたに

1585「ヴァン・ショーをあなたに」近藤史恵   東京創元社   ★★★★

小さなビストロ「マ・パル」のシェフ三舟は、料理の腕も一級品だが、小さな謎を解き明かす名探偵。さて、マ・パルにやってきた黒猫が持ち込んできた謎とは・・・。

「タルト・タタンの夢」の続編。相変わらずおいしそうな料理がでてきますね。ブイヤベースとか、本気で食べたくなって困りました(笑)

今回は、いつも通りビストロにやってくるお客絡みの謎を解く5編と、シェフのフランス修行時代の2編。無愛想な三舟の優しさとおいしそうな料理にグッときます。

印象的だったのは、「マドモアゼル・ブイヤベースにご用心」と「氷姫」。どちらも恋愛ネタですが、読後にヒリッとした痛さが残ります。「氷姫」はせつなかったです。

好きなのは、表題作。シェフのヴァン・ショーのもとはここにあったのですね。気持ちがあったかくなるような話で、心地よく本を閉じることができました。

このシリーズ、また続きでないですかね。すごく気に入っちゃったんですけど・・・。

2010年9月23日 (木)

タルト・タタンの夢

1571「タルト・タタンの夢」近藤史恵   東京創元社   ★★★

カウンター7席、テーブル5席の小さなビストロ・パ・マル。従業員はたったの4人。シェフの三舟は長い髪を後ろで束ね、無精ひげを生やした風体だが、その料理は食べる人の心をとろかしてしまう。そして、愛想なしの無口なシェフは、不思議な事件の謎を、たちどころに解き明かしてしまうのだった。

おいしいものが出てくる小説って、読んでるだけで幸せな気分になります。これは、フレンチ・レストランというほど気取った店ではなく、でもとってもおいしいフレンチが食べられるビストロを舞台にした、日常の謎系ミステリ。おいしいもの大好きな近藤さんらしいミステリです。

フレンチは全然わからないので(私の知識と言ったら、漫画「おいしい関係」で得たものくらい)、味の想像はつきません。でも、胃の調子がよくない今日、これを読んで「おいしそうだなあ」と思うのだから、たいしたものです。

探偵役の三舟シェフをはじめ、従業員の面々も地味にいい味出してるし、事件(というほどのことは起こらないけど)の謎解きも、軽いミステリとしてじゅうぶん楽しめました。

「ぬけがらのカスレ」と、「割り切れないチョコレート」が好きでした。どうしてチョコの詰め合わせが、半端な数のものばかりなのか・・・意外な展開でした。

続編もあるので、今度借りてこようっと。

その他のカテゴリー

「あ」行の作家 | 「か」行の作家 | 「さ」行の作家 | 「た」行の作家 | 「な」行の作家 | 「は」行の作家 | 「ま」行の作家 | 「や」行の作家 | 「ら」行の作家 | 「わ」行の作家 | あさのあつこ | いしいしんじ | こうの史代 | さだまさし | その他 | たつみや章 | よしもとばなな | アンソロジー | 万城目学 | 三上亜希子 | 三上延 | 三島由紀夫 | 三木笙子 | 三浦しをん | 三浦哲郎 | 三谷幸喜 | 上橋菜穂子 | 中山七里 | 中島京子 | 中田永一 | 中野京子 | 乃南アサ | 乙一 | 井上ひさし | 京極夏彦 | 伊坂幸太郎 | 伊藤計劃 | 伊集院静 | 佐藤多佳子 | 佐藤賢一 | 俵万智 | 倉知淳 | 光原百合 | 冲方丁 | 初野晴 | 加納朋子 | 加門七海 | 北大路公子 | 北山猛邦 | 北村薫 | 北森鴻 | 原田マハ | 司馬遼太郎 | 吉村昭 | 吉田修一 | 向田邦子 | 坂木司 | 夏川草介 | 夏目漱石 | 大倉崇裕 | 大崎梢 | 太宰治 | 奥泉光 | 宇江佐真理 | 宮下奈都 | 宮尾登美子 | 宮部みゆき | 小川洋子 | 小路幸也 | 小野不由美 | 山崎豊子 | 山本周五郎 | 山白朝子 | 岡本綺堂 | 島本理生 | 川上弘美 | 平岩弓枝 | 彩瀬まる | 恩田陸 | 愛川晶 | 戸板康二 | 日明恩 | 日記・コラム・つぶやき | 有川浩 | 朝井まかて | 朝井リョウ | 木内昇 | 朱川湊人 | 杉浦日向子 | 村山由佳 | 東川篤哉 | 東野圭吾 | 松本清張 | 柏葉幸子 | 柳広司 | 柴田よしき | 栗田有起 | 桜庭一樹 | 梨木香歩 | 梯久美子 | 森博嗣 | 森絵都 | 森見登美彦 | 森谷明子 | 横山秀夫 | 橋本治 | 氷室冴子 | 永井路子 | 永田和宏 | 江國香織 | 池波正太郎 | 津原泰水 | 浅田次郎 | 海堂尊 | 海外の作家 | 湊かなえ | 漫画 | 瀬尾まいこ | 田中啓文 | 田丸公美子 | 畠中恵 | 石田衣良 | 福井晴敏 | 笹尾陽子 | 米原万里 | 米澤穂信 | 芥川龍之介 | 若竹七海 | 茅田砂胡 | 茨木のり子 | 荻原規子 | 菅野彰 | 菅野雪虫 | 藤沢周平 | 藤谷治 | 西條奈加 | 西澤保彦 | 角田光代 | 誉田哲也 | 辺見庸 | 辻村深月 | 近藤史恵 | 酒井順子 | 重松清 | 金城一紀 | 須賀しのぶ | 高城高 | 高橋克彦 | 髙田郁 | 鷺沢萠

2017年4月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30            

カテゴリー