太宰治

2015年1月14日 (水)

晩年

2217「晩年」 太宰治   新潮文庫   ★★★

我ながら単純だと思うのですが、「ビブリア古書堂の事件手帖」を読んだら、どうしても読みたくなってン十年ぶりに読み返しました。ほとんど覚えてなかった・・・。

冒頭の「死のうと思っていた」が有名な「葉」や、大学のゼミで扱った「魚服記」などは記憶鮮明なのですが・・・。「ビブリア~」に出てきた「ロマネスク」も、どんな話だったか思い出せませんでした。これだったのか。

正直、なんだかよくわからないなあ、ぴんとこないなあというものが多かったです。

でも、太宰はこの第一創作集において、その後の著作のもとになるものほとんどを示しているような気がしました。それが具体的に何なのかを説明できるほど太宰を読み込んでいないので、感覚的なものでしかないんですけど。

いずれ、「人間失格」なんかも読み返してみたいものです。

2012年2月24日 (金)

走れメロス

1836「走れメロス」 太宰治   新潮文庫   ★★★

「メロスは激怒した。」・・・自分の身代わりになった友・セリヌンティウスの命を救うために、王城への道をひた走るメロス。しかし、彼の行く手には、数々の困難が待ち受けていて・・・。

「メロス」は教科書に載っているので、毎年嫌でも読むのですが(苦笑) ほかの作品はけっこう未読だったので、あらためて一冊読んでみました。

「ダス・ゲマイネ」「満願」「富嶽百景」「女生徒」「駆込み訴え」「走れメロス」「東京八景」「帰去来」「故郷」の9編を収録。

「富嶽百景」は以前にも読みました。「富士には月見草がよく似合う。」は、あまりにも有名です。

「駆込み訴え」は、高校時代の資料集に冒頭部分が載っていて、すごく印象的でした。が、今回初めて最後まで読み通しました。おそらく、これは書いてて楽しかったのでしょうね。語りの文体ですが、本当に生き生きとしていて、一人芝居か落語を見ているような気分でした。

「女生徒」は、よく太宰の代表作の一つとして挙げられているんですが・・・私はあんまりピンときませんでした。男性が女性の内面(精神的にも、身体的にも)をわかったように書くのは、あまり好きではないからかもしれません。

2011年10月30日 (日)

ヴィヨンの妻

1777「ヴィヨンの妻」 太宰治   新潮文庫   ★★★

華族の次男坊で詩人の夫は、放蕩を繰り返すばかりで、一向に家庭を顧みない。ある日とうとう、呑み屋でツケをためたあげく、その店から金を奪っでしまう。警察沙汰にならぬよう、妻はどうにか算段をつけようとするが・・・。

戦後から太宰の死の直前までの「晩年」に書かれた作品を集めた短編集。表題作のほか、「トカトントン」や「桜桃」などを収録。

ほとんどはどこかで読んだ話ばかりでしたが・・・こうやってまとめて読むと、太宰が一つ所をぐるぐる回っているような印象を受けます。自分を貶めることで物語を編むのはいつものことですが、ものすごく閉鎖的な世界になってしまっていて。それが、太宰にとっての「華族」というものだったのでしょうか。

「人非人でもいいじゃないの。私たちは生きてさえいればいいのよ」

「ヴィヨンの妻」の幕切れのセリフは有名ですが、この言葉は太宰にとって救いだったのか、それとも呪いだったのか・・・そんなことをふと考えてしまいました。

それにしても、虚構の天才であったはずの太宰の作品は、このあたりになるともう虚構ですまなくなってきたというか・・・。なんとなく、背筋がひんやりするような気分を味わいつつ、読みました。

2009年9月24日 (木)

惜別

1411「惜別」太宰治   新潮文庫   ★★★★

中国近代文学の父・魯迅。彼が日本に留学していた当時同級生だった、ある医師の目を通して、文学に目覚める青年の姿が語られる・・・。

魯迅を描いた「惜別」と、「右大臣実朝」の2作品を収録。旦那さんからの課題図書です。「右大臣実朝」がなかなかおもしろそうだったので、読み始めたのですが・・・いやぁ、はかどらないったら(苦笑)なんだかんだ言って、2か月くらいかかりました。

やっぱり、今どきの文章に比べると、手ごたえがあります。サラサラとはとうてい読めない。でも、読んでるとおもしろいんですよね~。細切れに読んでも、ちゃんと物語の世界に入れるし。

私は、太宰はどうしても「人間失格」とか「斜陽」の印象が強く、それがちょっと苦手だったのですが・・・「右大臣実朝」を読んで、ちょっと見方が変わりました。こんなに綿密に調べて、丁寧に、客観的に書けるんですね。なんか、「人間失格」とかは、主人公があまりにも自己主張していて、露悪的で、そういうところが嫌だったのですが。この物語では、悲劇的な人生を送った源実朝を、淡々と静かに描いていて、それがいっそう彼の運命を浮き彫りにしているようで、すごく私好みでした。実朝を暗殺した公暁の描き方が、ちょっと不満でした。そこだけ妙に生々しくて・・・。

「平家ハ、アカルイ。」「明ルサハ、滅ビノ姿デアロウカ」という実朝の言葉が印象に残ります。

今年の夏、鎌倉に行ってきたので、あの街の空気を思い出しながら読みました。

一方、「惜別」は、どうもイマイチ。魯迅のというより、太宰の文学観や人生論になってしまっていて、まぁ、そう思って読めば興味深かったですが。

ただ、どちらも戦時中に書かれたということに驚きました。言論統制がなされていた頃、こんなものを書いたなんて・・・。「惜別」には、ちらちらと戦争とか日本を讃美するような箇所も出てきますが、本当に必要最低限という感じで、むしろ中国のことを良く書いてたりします。

太宰にとって、書くことは生きることだったのだなと、改めて感じました。

2009年8月 1日 (土)

津軽

1404「津軽」太宰治   新潮文庫   ★★★★

昭和19年。津軽風土記の執筆を依頼され、3週間にわたって故郷・津軽を旅行した太宰の目に映った「津軽」とは・・・。

以前から読もう読もうと思っていて、なかなか手が出なかった「津軽」。先日、斜陽館を訪れた時、旦那さまがこの作品の一節をそらんじていて、それがすごく印象的だったので、「これは読まねば!」と。

太宰を読むのは何年ぶりだろう・・・と思いながら、旦那さまから本を借りました。借りた文庫は、昭和56年発行のもの!読んでるうちに本がバラバラになるんじゃないかと、ヒヤヒヤしました(苦笑)

ついこの間行ってきたばかりの土地が描かれているせいか、非常に読みやすかったです。

それに、太宰の自己描写がすごく肩の力が抜けている感じで・・・必要以上に露悪的になることもないし、「太宰治」と「津島修治」がうまくブレンドされている感じで、不思議といやな感じがしなかったです。感傷にひたりすぎることもなく。まあ、全編酒を飲んでばっかりという気がしなくもなかったですけど。

斜陽館の展示には、この「津軽」からの一節が引用されているところが多かったのですが、読みながらそれを見つけるたびに、ひそかに喜んでいました。

さて、うちの旦那がそらんじていたのは、太宰が自分の「育ての母」と思っている、津島家の女中だったたけと再会し、しかし話す言葉もなく二人で座っている場面の一節。

『平和とは、こんな気持の事を言うのであろうか』

津軽旅行の終点での太宰のこの感慨を、旦那さまはどんな気持ちで受け止めたのかしら。

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