1877「無菌病棟より愛をこめて」 加納朋子 文藝春秋 ★★★★★
2010年6月、急性骨髄性白血病だと告知された筆者。「なるべく死なないように頑張ろう」・・・化学療法から骨髄移植。およそ8カ月におよぶ闘病記。
この本の存在に初めて気づいたのは、春休みの終わりごろ。盛岡の大型書店をふらりと流していた時に、ふと目に留まったのです。加納さんは大好きな作家さんなので、「あれ、新刊?」と手に取ってギョッとしました。加納さんご自身の闘病記?え?白血病って?いつのまにそんなことに?新作じゃないの?・・・気づくとそこは、「ノンフィクション」の棚でした。
なんだかものすごくショックで、読む勇気が持てず、本を戻して立ち去りました。後ろ髪をひかれつつ。
それから・・・どのくらいたってからだったでしょう。朝日新聞に、笑顔の加納さんの写真が載っていました。かつての「著者近影」に比べると、ものすごく痩せていて。泣きたいような気持になりましたが、加納さんはすがすがしく笑ってらっしゃいました。もし、あの写真を見ていなかったら、この本はずっと読めなかったかもしれません。
さて、この本は、加納さんの闘病記です。白血病と診断されるまでと、その後の化学療法。さらに骨髄移植。さらに骨髄のドナーとなった弟さんの日記も。
この経過を拝見すると、加納さんはかなり幸運な部類の患者だったのだと思えます。もちろん、薬の副作用等々、すさまじい苦痛に襲われていますが、看護師さんやほかの患者さんたちがビックリするほど元気。それは、弟さんがドナーという恵まれた状態での移植が可能だったこともありますが、実は加納さんの努力による部分も大きかったようです。
たとえば、体力を落とさないように、本格的な治療が始まる前には運動する。ストレッチをする。また、移植前には口腔ケアをしてもらい、その後も自分でのケアを怠らなかったためか、ひどい口内炎を経験せず、口から食物をとり続けることが可能だったこと。これらが、加納さんの基礎体力を支えていたような気がします。
とにかく、前向きなのです。そんなにがんばらなくてもいいのに・・・と思うほどに。でも、やっぱり、かなり無理をしていたところもあったようで、一度、日記がぷっつり途絶えてしまいます。その前後は痛々しいほど・・・。
それにしても、すさまじいです。化学療法であれだけ苦しんだのに、骨髄移植ではまたさらに・・・。こんなに苦しまなきゃいけないものなのか、と、何度も涙目になりながら読みました。それでも、加納さんはきっちり向き合います。自分でもネット等で病気について調べて、きちんと理解したうえで病気に向かっていこうとする。その心の強さにはただただ頭が下がる思いでした。
支離滅裂な感想になってきましたが・・・印象的だったのは、旦那様の存在です。このご夫婦、ラブラブですね。旦那さんが病院に来てくれた時は、加納さん、ひときわ嬉しそうでした。骨髄移植のために入院する時、病院へと向かう車の中で旦那様が言ったこと。
「やっぱり君がいる方が毎日が楽しいから、早く帰っておいで」
思わず、こちらがボロボロ泣いてしまいました。
昨日、前半部分を読んでいる時、夫が隣にいまして。なんだかやたら話しかけてくるのです。いつも、お互いに本を読んでいる時には邪魔しない・・・というのが不文律なのに、珍しいな、と思ったのですが。今、心身ともにへたっている私が、眉間にしわを寄せて、泣きそうな顔をして読んでいるので、心配だったみたいです。・・・ごめんなさい。
私も、このコンディションで読むのはどうよ、と思ったのですが・・・。でも、読んでよかった。これは、自己満足のための日記ではなく、この病気のことについて知ってほしいという強い願いのもとに世に出たものです。ぜひ、多くの人に読んでほしいと思います。
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