宮部みゆき

2020年6月 8日 (月)

桜ほうさら

「桜ほうさら」  宮部みゆき      PHP研究所      ★★★★

再読です。「きたきた捕物帖」つながりで。

実は、内容をすっかり忘れていて。富勘長屋って何だっけ?状態でした。で、読み返した次第。

父が不正がらみで切腹。しかし、父の無実を信じている笙之介は、いろいろな事情から江戸へ出てくることに。写本の仕事をしながら、父を陥れた人物を探そうとするのですが。

かなり入り組んだ話ですが、するする読めてしまうところは、さすが宮部さん。それにしても、こんなに重くせつない話でしたか…。死んだ人は戻ってこないし、起こったことは取り返しがつかないけれど、それでも生きていく笙之介たちの姿に明るさを感じるところが、また宮部さんらしいです。

宮部さんって、家族の中のどうしようもないすれ違いや、理不尽な目に遭った人たちの心のしこりなんかを、ずっとずっと書いてきたんだなあ。読みながらそんなことを考えました。

2020年6月 6日 (土)

<完本>初ものがたり

<完本>初ものがたり      宮部みゆき      PHP文庫      ★★★★

再読です。「きたきた捕物帖」を読んだらたまらなくなって…。

回向院の茂七を主人公にした捕物帖で、私が捕物帖や時代小説にはまるきっかけになった作品です。「お勢殺し」や「白魚の目」「鰹千両」は何度読み返したか。

茂七や手下の糸吉、権三といった登場人物が魅力的なんですが、それ以上に謎めいた稲荷寿司屋の親父の正体が気になるわけで。そこが明らかにされないままになっていたのですが、「きたきた捕物帖」には親父ゆかりの人物が登場。これから謎が明かされそうです。

このシリーズが書かれたのはずいぶん前ですが、いい意味で変わらず、「きたきた」の世界につながっています。宮部さんも時代物をたくさん書いてきて、まさに自在な筆といった感じ。「初ものがたり」はまだ堅さも見えますが、それはそれで愛おしい気がします。

2020年6月 4日 (木)

きたきた捕物帖

3048「きたきた捕物帖」  宮部みゆき      PHP研究所      ★★★★

深川の岡っ引き・千吉親分が急死して、一番下っ端の手下だった北一は途方にくれてしまった。頼る身内もいない北一は、富勘長屋に住んで、文庫の振売りを続けることに。亡き親分のおかみさんは、何かと北一を気づかってくれるが…。


帯に宮部さんの「私がずっと書きたかった捕物帖です」というコメント。はい、こちらも待ってました!

完結しないままになっている「初ものがたり」に登場する謎の稲荷寿司屋の親父ゆかりの人物が出てきたり。北一が住む長屋は、「桜ほうさら」の主人公・笙之介の住まいだったり。宮部さんの時代物好きにとっては、まさに「きたきた!」てな感じ。

ただし、「きたきた」は、主人公・北一と、彼が偶然知り合った風呂屋の釜焚きの喜多次、二人の「きたさん」が由来のようです。

「ふぐと福笑い」「双六神隠し」「だんまり用心棒」「冥土の花嫁」の四話。

幼い頃、迷子として千吉親分に拾われた北一は、そのまま親分のもとで育てられたものの、親分は呆気なく亡くなってしまう。何の当てもない北一は、文庫売りをしながらその日暮らしをするものの、奇妙な事件に巻き込まれて…というお話。

長屋の差配人の富勘や長屋の住人たち、偶然知り合った青海新兵衛という武士など、いろんな人たちに見守られ、まだひよっこの北一は、よちよち歩きを始めます。何より印象的なのは、千吉親分のおかみさん・松葉。盲目ながら、北一が巻き込まれる難解な事件の筋道を解きほぐしてくれる彼女が、めっぽうかっこいいのです!

とにかく、宮部さんの捕物帖で、 主人公が青年への過渡期にある少年…って、私にとっては、ストライクゾーンど真ん中なわけで。

北一とはタイプが違うけれど、同年輩で訳ありらしい喜多次が背負っているものが何なのかも気になるし…。今回はまだまだ序の口っぽいので、これからが楽しみです。

2019年12月21日 (土)

黒武御神火御殿

2984「黒武御神火御殿」  宮部みゆき      毎日新聞出版      ★★★★

三島屋の変わり百物語の聞き手であったおちかが嫁に行き、三島屋の次男・富次郎が新たな聞き手となった。古参の女中・おしまと、守り役として控えるお勝。三人が迎える「語り手」とは…。


「三島屋変調百物語  六之続」でございます。「泣きぼくろ」「姑の墓」「同行二人」「黒武御神火御殿」の四話。

おちかの退場は寂しいけれど、富次郎が聞き手となってどうなるのか、楽しみにしていまして。

おちかは、身に起こったつらく悲しい事件から逃れるように江戸へ出てきて、凍った心のまま、百物語の世界に足を踏み入れたわけで。だから、全体のトーンがどうしても張りつめたような緊張感があったものですが。

のんき者というか、生来穏やかで温かい気性なのであろう富次郎が聞き手におさまり、全体の雰囲気もほわんと緩んだ感じがしました。とはいえ、「語り捨て・聞き捨て」にせねばならないほどの話が、ほんわかしてるはずもなく。「姑の墓」なんか、かなり怖かったし、表題作はホラー映画を見てる気分で、消耗しました。「同行二人」は泣きましたけどね。

おちかは百物語を通して、幸せに生きる勇気を得ましたが、富次郎はこれから何を聞き、何を得ていくのでしょう。彼自身も奉公先で大変な目に遭い、実家に戻ってきた身の上。次男ゆえ三島屋の跡とりにはならないわけで。いろいろ思うところはあるはずですが。

おちかがちゃんと登場してくれたのが嬉しかったです。

2019年12月 1日 (日)

さよならの儀式

2975「さよならの儀式」  宮部みゆき     河出書房新社      ★★★★

長い間一緒に暮らしてきたロボットとの別れの日。なかなか心の整理がつかない彼女のために、「俺」は最後の面会の機会を与えたが…。(「さよならの儀式」)


宮部さんというと、最近はすっかり時代物か社会派ミステリか…という感じになっていたので、新鮮でした。いや、懐かしい感じ。なんとなく、宮部さんの初期の短編のテイストを思い出しました。

「母の法律」「戦闘員」「わたしとワタシ」「さよならの儀式」「星に願いを」「聖痕」「海神の裔」「保安官の明日」の8編から成るSF短編集。

冒頭の「母の法律」がなかなか凄まじくて、夢中になって読みました。「聖痕」もなんとなく先は読めたのですが、いかにも「あり得そう」な話で。

表題作は、ちょっと懐かしい感じのSFもので、妙に心に残りました。

SFは苦手意識があって、積極的に読もうとしないのですが、読まず嫌いは勿体ないですね。 

2018年12月24日 (月)

宮部みゆき全一冊

2838「宮部みゆき全一冊」 宮部みゆき   新潮社   ★★★★

2017年で作家生活30年を迎えた宮部みゆきの集大成。未収録短編やエッセイ、超ロングインタビューなどなど。宮部みゆきによる「負の方程式」朗読CD付き。

ずっと読み続けてきた作家さんで、愛してやまない作家さん。

とは言え、自分自身の変化や、宮部さんの作風の変化などで、いまいち寄り添えなかった時期もあったし、苦手な作品もあります。それでもこれを読んで、やっぱり宮部みゆき、好きだなあと、しみじみ思いました。

読者としては、作者が何を思って書いたのか、それを作者自身が語ってくれるのはとてつもないごほうびなのですが。そういう意味で、とても読み応えがありました。

また、対談がたくさん収録されていて、これまた興味深いものでした。特に、佐藤優さん、津村記久子さんとの対談は、非常におもしろかった!

実は、一時期宮部さんを読むのがつらくなったのですが、それが宮部さん自身もすごく現実を描くことに悩んだ時期だったということもわかり、その葛藤から目を背けずに書き続けてきた方なのだなあ、と。

30年、第一線で書き続けてこられたその重みと凄みを感じつつ、これからも宮部みゆきを読み続けます。

2018年12月17日 (月)

昨日がなければ明日もない

2835「昨日がなければ明日もない」 宮部みゆき   文藝春秋   ★★★★

私立探偵事務所を開設した杉村三郎。決してはやっているとは言えない事務所の10人目の依頼人は、50代半ばの婦人。結婚した娘が、自殺未遂したのちに入院。原因は母との関係にあると言われ、病院でも門前払いをされているという。母親の依頼で調査を始めた杉村だが、娘の夫の態度に不審なものを感じて・・・。

杉村三郎シリーズ第5作。「絶対零度」「華燭」「昨日がなければ明日もない」の三編。

いつもながらこのシリーズは読むと消耗度合いが甚だしいのですが、今回も冒頭の「絶対零度」でがっつりメンタル削られました・・・(泣) とにかく、こうならないでくれと思う方向に話が転がっていくので。「華燭」はそれでもちょっと楽でしたが、最後の表題作でまた・・・。

宮部さんのインタビューによると、杉村三郎は大きな悪と関わるタイプの探偵でなく、「悪意」と関わるのだ、と。・・・考えてみれば、シリーズ1作目からそれはずっと貫かれているのですが、その「悪意」がなかなかしんどいんですけど(苦笑) そして、杉村三郎が探偵になることは規定路線だったのですね!びっくりしました。

それでも、探偵稼業が板についてきた杉村三郎を見てると、やはりお婿さん時代は無理をしていた部分はあったんだなあと、しみじみ。もちろん、本人が納得していた「無理」ではあるんですけどね。

最後の最後で、やっぱりまた傷ついてしまったふうの杉村がなんとも気の毒というか、心配というか。次作が待ち遠しいです。

2018年7月31日 (火)

宮部みゆきの江戸怪談散歩

2778「宮部みゆきの江戸怪談散歩」 宮部みゆき・責任編集 角川文庫 ★★★

「三島屋変調百物語」にまつわる話を中心に、北村薫との対談、宮部みゆき推薦の怪談など、「宮部怪談」公式読本。


「三島屋変調百物語」シリーズは大好きです。「あやかし草紙」で第一部完となったのですが、けっこう意外な展開…と思っていたら、宮部さんには規定路線だったようで。それというのも、百物語だから99話書くつもりだと。それならば、おちかがずっと聞き手をつとめるのは無理ですね。なるほど。

北村さんとの対談も面白かったです。驚いたのは、宮部さんの怪談は、元ネタなしのオリジナルだということ。すごいなあ。ストーリーテラーって、まさにこういう人なんだろうなあ。

再録の「曼珠沙華」(「おそろし」より)と「だるま猫」(「幻色江戸ごよみ」より)も懐かしく読み返しましたし、岡本綺堂「指輪一つ」、福澤徹三「怪の再生」も面白かった! やはり夏は怪談ですねぇ。

2018年6月 5日 (火)

あやかし草紙

2754「あやかし草紙」 宮部みゆき   角川書店   ★★★★★

三島屋の姪・おちかが、客人の話を聞き、「語って語り捨て、聞いて聞き捨て」にする風変わりな百物語を続けて三年。最近では三島屋の次男・富次郎も聞き手に加わるようになった。おちかの心の傷は確実に癒え、そして新しい道が・・・。

「三島屋変調百物語 伍之続」は、「開けずの間」「だんまり姫」「面の家」「あやかし草紙」「金目の猫」の5話。そして、シリーズ第1期完結篇!

第1話の「開けずの間」がとにかく怖くて。人ならば誰もが抱く望み。願い。その思いの強さと、人の心の弱みにつけこむ「神」の恐ろしさ。誰も幸せにならないその顛末に恐怖を感じるのは、誰しもその「魔」に魅入られてしまう可能性を、自分の中に感じるからでしょう。

第2話「だんまり姫」は、亡者を呼ぶ「もんも声」をもって生まれたために、故郷の村にいられなくなったおせいの話。さまざまなゆくたてがあって、お城のお姫様にお仕えすることになったおせいが出会った、子どもの亡者。その子がなぜお城にとらわれているのか、なぜ死なねばならなかったのか。

終盤は、とにかく泣けてしかたなかったです。その子が死んだのは、あまりにも理不尽な理由からでしたし、幼いながらにそれを受け入れるしかなかったのはあまりにも哀れでした。そして、おせいの活躍で、ようやく広い世界に解き放たれたその子が望んだことは・・・。こんなにつらい目に遭っても、誰かのためになろうとする。なんとけなげなことか。

さて、つらい事件に心を凍らせて、江戸の三島屋で暮らすことになったおちかですが、あれから三年。変わり百物語を通して、少しずつ、少しずつ、心を覆っていた氷も解け、自分の人生を生きることを考えてもいいような心持ちになってきました。おちかが巻き込まれた事件は消えてなくなりはしないし、おちかが故郷に帰ることはできないだろう。それでも、おちかも歩き出してもいいのだ、と。

おちかを受け止め、守ってきた三島屋の面々。おちかを案じながら、周囲の冷たい視線に耐え、故郷の宿場町での商いを続けてきた両親と兄。皆々の愛情に背を押され、おちかはとうとう新しい人生へと踏み出します。

そうなるか!と、ちょっと驚きましたが、おちかたちの幸せな様子は、こちらまで涙が・・・。ここまでおちかが経験したすべてのことが、一つ一つ血肉となって、おちかを大人にしてきたんだなあ、と感無量でした。なるほど、第一期、見事な幕引きでございました。

さてさて、第二期はどうなるのか? おちかから百物語を引き継いだあの方が、聞き手となるのでしょうが・・・。おちかの再登場はあるのかな。今後が楽しみです。

2018年3月24日 (土)

昭和史の10大事件

2725「昭和史の10大事件」 宮部みゆき×半藤一利   文春文庫   ★★★★

小説家・宮部みゆきと、歴史探偵・半藤一利が、昭和を代表する10の事件について、語り合う対談。

取り上げられた「事件」は、以下の通り。

① 昭和金融恐慌  ② 二・二六事件  ③ 大政翼賛会と三国同盟  ④ 東京裁判と戦後改革  ⑤ 憲法第九条  ⑥ 日本初のヌードショー  ⑦ 金閣寺消失とヘルシンキ五輪挑戦  ⑧ 第五福竜丸事件と『ゴジラ』 ⑨ 高度経済成長と事件ー公害問題・安保闘争・新幹線開業  ⑩ 東京・埼玉連続幼女誘拐殺人事件(宮崎勤事件)

宮部さんと半藤さん、それぞれが10大事件を選び、その中からピックアップした10件について語り合う形式です。お二人は東京の下町の同窓生で、ただし年齢は30年違う。宮部さんが自分の「知っていること」を語り、実際に「見た」半藤さんが、ご自分の体験を語る、といった感じ。作家である宮部さんと、そうでない半藤さんの視点の違いもおもしろい。

私は宮部さんより年下ですが、「歴史」として知っている内容は、ほぼ同じ。だから、半藤さんの話に「へえ、そうだったんですか」と、宮部さんと同じ銚子でうなずいていました。知っているようで知らないことがたくさん・・・。金融恐慌とか大政翼賛会とか、歴史の教科書にはあったけど、よくわかっていませんでした。

憲法九条については、もう少し語っていただきたい気もしましたが・・・。あの憲法の源がどこにあったのか、これまた知らない話でした。この対談が行われたのは平成26年とのこと。現在だったら、お二人はどう語ったんでしょうね。

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

「あ」行の作家 「か」行の作家 「さ」行の作家 「た」行の作家 「な」行の作家 「は」行の作家 「ま」行の作家 「や」行の作家 「ら」行の作家 「わ」行の作家 あさのあつこ いしいしんじ こうの史代 さだまさし その他 たつみや章 ほしおさなえ よしもとばなな アンソロジー 万城目学 三上亜希子 三上延 三島由紀夫 三木笙子 三浦しをん 三浦哲郎 三谷幸喜 上橋菜穂子 中山七里 中島京子 中田永一 中野京子 乃南アサ 乙一 井上ひさし 京極夏彦 伊坂幸太郎 伊藤計劃 伊集院静 佐藤多佳子 佐藤賢一 俵万智 倉知淳 光原百合 冲方丁 初野晴 加納朋子 加門七海 北大路公子 北山猛邦 北村薫 北杜夫 北森鴻 原田マハ 司馬遼太郎 吉村昭 吉田修一 向田邦子 坂木司 夏川草介 夏目漱石 大倉崇裕 大崎梢 太宰治 奥泉光 宇江佐真理 宮下奈都 宮尾登美子 宮部みゆき 小川洋子 小川糸 小路幸也 小野不由美 山崎豊子 山本周五郎 山白朝子 岡本綺堂 島本理生 川上弘美 平岩弓枝 彩瀬まる 恩田陸 愛川晶 戸板康二 日明恩 日記・コラム・つぶやき 有川浩 朝井まかて 朝井リョウ 木下昌輝 木内昇 朱川湊人 杉浦日向子 村山由佳 東川篤哉 東野圭吾 松本清張 柏葉幸子 柚木麻子 柳広司 柴田よしき 栗田有起 桜庭一樹 梨木香歩 梯久美子 森博嗣 森絵都 森見登美彦 森谷明子 横山秀夫 橋本治 氷室冴子 永井路子 永田和宏 江國香織 池波正太郎 津原泰水 津村記久子 浅田次郎 海堂尊 海外の作家 深緑野分 湊かなえ 漫画 澤村伊智 澤田瞳子 瀬尾まいこ 田中啓文 田丸公美子 畠中恵 石田衣良 磯田道史 福井晴敏 笹尾陽子 米原万里 米澤穂信 芥川龍之介 若竹七海 茅田砂胡 茨木のり子 荻原規子 菅野彰 菅野雪虫 藤沢周平 藤谷治 西條奈加 西澤保彦 角田光代 誉田哲也 辺見庸 辻村深月 近藤史恵 酒井順子 重松清 金城一紀 門井慶喜 阿部智里 青崎有吾 須賀しのぶ 額賀澪 高城高 高橋克彦 髙田郁 鷺沢萠

2020年8月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          

カテゴリー