佐藤多佳子

2015年3月18日 (水)

三人寄れば、物語のことを

2249「三人寄れば、物語のことを」 上橋菜穂子・荻原規子・佐藤多佳子   青土社   ★★★★

大好きな作家さん3人の鼎談集。買ってしまいました。

上橋さんの「守り人」、荻原さんの「RDG」、佐藤さんの「シロガラス」について、お三方が語り合うという、とっても豪華な一冊。やはり作家ならではの視線があって、すごくおもしろかったです。

各章のタイトルがなかなか素敵で。

 Ⅰ「こちら」と「むこう」が出会うときー物語の生まれる場所(上橋さん)

 Ⅱ物語を紡ぐ女神ー世界の襞へわけいる力(荻原さん)

 Ⅲ乱調が織りなすリアルー子どもたちは<物語>と遊ぶ(佐藤さん)

それぞれの鼎談のテーマと、作家さんの特徴がビシッとまとめられていて、編集者さんのセンスに脱帽しました。

上橋さんはエッセイ集を去年2冊読んだので、なんとなく物語の背景もつかめていましたが、荻原さんや佐藤さんはこういうの初めてだったので、興味津々でした。私がそれぞれの作品のどこにひかれているのか、これを読んでよくわかりました。

佐藤さんの「シロガラス」も読んでみたいし、何より「RDG」は途中でリタイアしているので・・・うーん、やっぱり読みたくなってきました。

2011年12月26日 (月)

第二音楽室

1802「第二音楽室」 佐藤多佳子   文藝春秋   ★★★★

学校の鼓笛隊のオーディションに落ちて、ピアニカ担当になってしまった六人は、放課後、誰も使わない第二音楽室に集まるようになった。もちろん、練習なんてする気もなく、遊んでいたのだけれど・・・。

「School and Music」シリーズ。「第二音楽室」「デュエット」「FOUR」「裸樹」の短編・中編4作が収録されています。

学校と音楽と・・・しばりはそれだけなんですが、これほどいろんなバリエーションが生まれるものなのですねえ。このほかに「聖夜」もあるし、佐藤さんにはあと2つのアイディアがあるとか。うーん、すごい。

私の好みは「FOUR」です。全く何のつながりもなかった四人が、リコーダーのアンサンブルをすることになるという話。まず、リコーダーがこんなに多様で、それだけでアンサンブルができるということに驚いたし(リコーダーやってる方、ごめんなさい)、そこに微妙な恋愛がからんできたりして、かなり好みでした。なんかズレてる西澤くんがお気に入り(笑)

ただ、心に引っ掛かったのは「裸樹」でした。中学でささいなことがきっかけでいじめにあい、不登校になった主人公が、高校で軽音部に入り・・・という話。彼女が、人に嫌われないように、人の役に立とうと、必死になる姿が痛々しくて。でも、この感じ、わかるなあ・・・と。結局は、自分が一番やりたいことをやるのがいいのだけれど。それが難しいという人だっているのですよねえ。

音楽との関わり方は、人それぞれ。でもやっぱり、音楽っていいよね、と思える一冊です。

2011年9月16日 (金)

聖夜

1756「聖夜」 佐藤多佳子   文藝春秋   ★★★

父は牧師。母は元ピアニストのオルガン弾き。離婚して家を出た母と同じようにオルガンを弾き、ミッション系の高校に通う一哉は、父のことも、母のことも、理解できずにいた。オルガン部にコーチがつき、コンサートを行うことになったとき、一哉が選んだ曲は、記憶の中で母が弾いていたものだった。

人間の五感は、記憶と分かちがたく結びついている・・・それはもう、悲しいほどに。懐かしい音楽が流れてきた瞬間、それを聞いていた当時の出来事がよみがえってきて、胸がいっぱいになってしまうことがあります。そんなせつない思いをひたひたと感じながら読みました。

久しぶりの佐藤多佳子さん。佐藤さんが音楽が好きで、その思いをベースに物語を紡いでいるのがよく伝わってくる物語でした。

時代背景は1980年。ということは、一哉たちは私より少しだけ年上なんだ・・・ということに、読み終えてから気づきました。一哉は、すごく屈折しているようでいて、とっても純粋。いわゆる絶対音感をもち、オルガン演奏でも非凡な才能を見せている。けれど、ひっかかっているのは、母のこと。自分と父を捨てて、ほかの男の元へ走った母を、どうしても許せずにいる。自分は愛されていなかったのかという恐れとともに。

オルガン部の後輩・天野になんとなく心惹かれ、同じく後輩の青木には思いを寄せられ、それでも恋に発展しない一哉の根っこには、「親に愛されない子供」「両親のかすがいになれなかった子供」というコンプレックスがあるのでしょうか。それでも、音に惹かれ、音楽に惹かれていく一哉が、なんともいとおしかったです。

ただ、これ、感想文コンクールの課題図書なんですよね。私が中学生だったら、これで感想文書けるだろうか、と考えちゃいました。だって、一哉の中で何かの結論が出たわけじゃないし、「物語の途中」な感じの終わり方なんだもの。うちの学校では、これで感想文書いた子はいなかったので・・・ちょっと興味あります。

あとがきを読んでわかりましたが、これはシリーズものの短編になるはずの物語だったのですね。同シリーズの「第二音楽室」もキープしてるので、読むのが楽しみです。

2009年3月20日 (金)

夏から夏へ

1384「夏から夏へ」佐藤多佳子   集英社   ★★★★

世界陸上大阪大会。日本代表の4×100mリレー(4継)の選手たちは、いかに戦ったのか。陸上小説の傑作「一瞬の風になれ」の作者・佐藤多佳子が、初のノンフィクションに挑む。

こういうものを書こうとしている・・・というのを佐藤さんのブログで知って以来、ずっと読みたい読みたいと思っていた作品です。

「一瞬の風になれ」は、傑作です。陸上に関しては素人の佐藤さんが、あそこまで描ききるには、相当の取材が必要だったはずです(実際、4年にわたって、取材したらしい)。そして、見たことをよく理解し、陸上競技に愛情を感じていなければ、あの物語は成立しなかったと思います。そういう人の目を通して語られる世界陸上、そしてスプリンターの素顔をいうものを、ぜひ読んでみたい・・・。やはり、陸上は素人だけれど、その魅力にとりつかれている私がそう思っても、なんの不思議もないと思うのです。

前半は、世界陸上の観戦記。後半は、4継の4人の選手(塚原、末續、高平、朝原)と、補欠の小島への素顔にせまる内容。私はノンフィクションが好きな割に、読むのはいつも苦戦するのですが、これはスイスイ読めてしまいました。やはり、物語書きだなあ・・・と思うのですが、ノンフィクションだけど、なんだかストーリーがあるのです。事実の列記になっていないというか・・・。ガチガチのノンフィクションがお好みの方には合わないかもしれませんが、私にはすごく読みやすかったです。

心地よかったのは、佐藤さんが知ったかぶりをしないで、わからないものは「わからない」と言ってしまうところ。どれだけ取材しても、やっぱり、わからない。あるいは、どうしても突っ込んでインタビューできない。聞くべきだった、でも聞けなかった、という思いは、すごく共感できました。

4人の選手は、みんなアスリートとしてはもちろん、人間としても魅力的です。ただ、それ以上に印象的だったのは、補欠の小島選手でした。なかなかできることではないです。みんながレースに行ってしまったあと、サブトラックを泣きながら走っていた・・・というエピソードにはグッときました。

さて、ここまで読んだら、ぜひ「北京の銅メダル」までも読んでみたい・・・と思うのは、私だけでしょうか。

2007年9月 2日 (日)

黄色い目の魚

1169「黄色い目の魚」佐藤多佳子   新潮文庫   ★★★★★ 

 家族とうまくいかないみのりは、漫画家の叔父の家に入り浸っていた。同級生の木島は、一度だけ会った父親にひかれるように、絵を描いていた。
 美術の時間、木島がみのりのデッサンをして以来、二人の世界が交錯し始めた。友達というには強い、でも、つきあっているわけでもない。名づけようのない思いに、二人の心は揺れる。


 
積読してました。職業柄、中学生や高校生が主人公のものは、どうしても読む気になれない時があります。今はふっとスイッチが入った感じで、手に取りました。
 「絵」を媒介にして、互いの存在を強く意識するようになったみのりと木島。もっとも、みのりは叔父の通ちゃんが大好きで。木島にも憧れてる人がいて。最初は恋愛感情なんてなくて。木島にはみのりのとってもキレイなところが見えていて。みのりにも、木島のとってもピュアなところが見えていて。当然、惹かれていくでしょう?と思うのだけど、その過程が、実によいのです。
 木島が、ロクデナシの父親とたった一度会った日を描いた「りんごの顔」。中学時代、すべてにイライラして、いろんなものが大嫌いだったみのりを描いた「黄色い目の魚」。この2編が、高校2年になった二人の物語に、じわじわと効いてくるのです。
 親にサッカークラブに連れて行かれ、テッセイに対抗するように絵を描いていた木島が、自分の意志でサッカーをし、絵を描く道を模索し始める。嫌いなものばっかりだったみのりが、「好き」なものを見つけられるようになる。その変容が、実にゆるやかに、自然に、描かれています。
 みのりが見つけた「好き」の一つが木島。そして、木島も・・・。この恋は、読んでいて、胸がキュウッとなるくらい、せつなかったです。この年になって、こんな思いに共感するとは思わなかった(笑)まっすぐに見つめ合う二人の姿が、とても好きでした。

 木島のサッカーの場面も、かなり好きでした。へたくそなゴールキーパーが悪戦苦闘する姿が。

「マジになるのは恐かった。マジになると結果が出る。自分の限界が見えちまう。マジで勝負をしなければ、なくすものもない。負けてみすぼらしくなることもない。すべて曖昧なままにしておけば、誰に何を言われてもヘラヘラ笑っていられる。」

 みのりは、木島のこういう気持ちを許さない存在なのです。佐藤多佳子さんも、そういう方なのだろうなと思います。私は、佐藤さんのそういうところが好きなのです。

three bells > まゆさん、スイッチはいってよかったですね♪佐藤さんサッカーに詳しいな~とこの頃から感心していました。
純粋、純真、まぶしい小説でした。 (2007/09/02 20:26)
まゆ > three bellsさん、読めてよかったです。こういう物語に感動する気持ちは、いくつになってもなくしたくないなと思いました。 (2007/09/03 20:13)

2006年12月18日 (月)

一瞬の風になれ3 ドン

1059「一瞬の風になれ3 ドン」佐藤多佳子   講談社   ★★★★★

 新二は無事に陸上部に復帰した。3年生になり、いよいよ本格的に南関東大会を、そしてインターハイを狙いはじめた連と新二。一方、春野台高陸上部には、問題児・鍵山が入部してきて、今までのなごやかなムードに暗雲が立ち込める。走るのは速いが、部の雰囲気を乱す鍵山を加えて、果たして4継のレースができるのか?

 最終巻まで、一気に来てしまいました。まるでスプリント並みの読み方(笑) だってもう、がまんできないのですもの。レース前、「早く走りてぇ」と言う新二の気分です。
 さて、「ドン」のサブタイトルにふさわしく、この巻はレースに次ぐレースです。地区・県・南関東。新二と連の100・200と、物語のメインの4継はもちろんのこと、4×400mリレー(マイル)や、中長距離や投擲も・・・。とにかく、ページの許す限り、筆の及ぶ限り、書けるだけのものを書きました!って感じ。
 すごく、その気持ちはわかります。そして、いろんな競技が同時進行して、それぞれでドラマが展開する陸上の大会の、あの独特の雰囲気がリアルに描写されています。
 好きなシーンは、地区大会での谷口若菜の3000m。ゴールした後、新二に抱きついちゃったところ。ある意味、この場面が一番お気に入りかも。その後の新二の動揺ぶりなど、めちゃくちゃよかったです(笑)
 泣いたのは、県のマイル決勝。それから、県で溝井たちが敗退した時のみっちゃんの態度。監督として、あんなふうになかなか言えないです。もう一緒になってうるうるしてしまいました。
 それから、根岸、ここにきてグッと男をあげましたねー。いや、もともといいキャラでしたが。県での4継もよかったけれど、その後の根岸の潔さ、最高でした。
 そして・・・南関東大会。もう、何を言ったらいいのやら。レースのシーンは圧巻です。でも、なんだかここまできたら、とても静かな気持ちで読めました。熱いんだけど、それまでの息が詰まるような感じじゃなくって、落ち着いている。新二だって、連だって、ここまでがんばってきたんだから、大丈夫。行け!って、ただそれだけ。でも、泣きながら読んでるのですけれどね(苦笑)特にも、守屋たちの登場は反則です。私は、ああいうシチュエーションにめちゃめちゃ弱いのです・・・。
 もっともっと書きたいことがあるけれど、まだこれから読まれる方も多いようなので、自粛。3巻は一番厚いですが、その中にこれでもか!ってくらい、いろんなドラマがつまっています。あとでもう一回読み返そう・・・。

 たかが走ること。ただ走ること。
 その中で、新二も連も、自分の生き方を見つけていくのです。一人であるということ。一人で頑張らなければいけないということ。それでも、みんながつながっているということ。バトンでリレーメンバーがつながるように。
 この物語がどうしようもなく心を打つのは、そのことをまっすぐに描ききったからだと思うのです。新二が自分の走る道を・・・光る走路を見出したように、この物語を読むと、私たちの前にも、自分自身の走路がまっすぐに伸びているのが見えるような気がします。 

トントン > まゆさん、こんにちは♪一気読みですね!走るのは苦手だけど(笑)私もこれすごく気になってるんです。まゆさんの高評価にますます読みたいと思いました。 (2006/12/19 15:32)
イギー > 今本当に話題になっていますよね。すごく気になっていますが、図書館で100人ほど待ちがあったので、購入するか否か悩んでいます・・・。 (2006/12/19 23:59)
まゆ > トントンさん、走るの苦手な人は(私も)、一緒に走ってるような感覚を味わえますよ~。自分では絶対わからない、100m10秒台の世界。ぜひ、堪能してください。 (2006/12/20 22:57)
まゆ > イギーさん、100人待ちですか~。すごいことになってますね。私は自分へのクリスマスプレゼントと思って、買ってしまいました。 (2006/12/20 22:58)
流歌 > 久々に本プロに来たら、この本をアップしてる人がとても多くてびっくりしました。
スポーツの中で一番好きなのが陸上なので、学生時代陸上部だった私としてはすごーく嬉しいです。陸上小説って、意外とあまりない気がするので。
川島誠の『800』とか、最近出た三浦しをんの『風が強く吹いている』位ですかね?これも読みたいなーと思っていたので、比べながら読みたいなあと思います。 (2006/12/21 02:11)
three bells > ずっとパソコン触れず、久しぶりに来れました。まゆさんも☆5!まゆさんの日記見てまたじわじわと感動が甦ってきました。運動苦手の私が陸上に感動できるのかな…と思っていましたがすべてに通ずるものありです。 (2006/12/21 09:46)
すもも > 図書館に予約しているのですが、まだ当分かかりそうです。走るのは大の苦手ですが、走っている人を見るのは好きです。『風が強く吹いている』三浦しをんさんの本もあわせて予約しているので、来年が楽しみです。 (2006/12/22 09:51)
まゆ > 流歌さん、おひさしぶりです。新聞の書評で取り上げられ、テレビでも紹介され、一気に火がついたみたいですね。私もようやく読めました。「800」も「風が~」も読んでます。流歌さんは陸上部でしたか。かっこいい!私は走れないけど、陸上競技、見るのは大好きです。 (2006/12/22 19:38)
まゆ > three bellsさん、お久しぶりです。「すべてに通ずるものあり」・・・そうそう、そうなんですよ!陸上のことだけじゃないのですよね。何かに打ち込んだ経験のある人なら、きっと共感できるはずです。

(2006/12/22 19:39)
まゆ > すももさん、私は図書館待ちきれなくて、買ってしまいました。「風が~」もめちゃくちゃよいですよ~。すももさんの感想、楽しみにしてます。 (2006/12/22 19:40)

2006年12月17日 (日)

一瞬の風になれ2 ヨウイ

1058「一瞬の風になれ2 ヨウイ」佐藤多佳子   講談社   ★★★★★

「俺さ、おまえとかけっこしたくて、この部に入ったんだよ」

 2年生になった新二と連。レースを経験するたびに、少しずつ結果を出してきたが、連に故障が発生してしまう。
 3年生が引退し、部長になった新二。練習を重ねるうちに、連をただの憧れではなく、ライバルとして「認めさせたい」と思うようになる。そんな矢先、新二の兄でJリーガーの健一に思わぬトラブルが・・・!

 まだもう一冊あるのに、☆5つつけていいのか?と思いつつ。でも、泣かされてしまったのです。
 スプリンターというのは、基本的に「一人」だと思っていたのです、私は。でも、4継(4×100mリレー)の時に、不思議なほどのポテンシャルを発揮する新二と連。彼らの4継のレースは、読んでいてドキドキします(ドキドキしてる新二にシンクロしてるのかも)。全力疾走でバトンを渡す。加速しながらバトンを受ける。なんてリスキーな競技。でも、4人だから起こせる奇跡もある・・・。
 マイペースな連が、ケガをおしてレースに出ようとしたのは、先輩の守屋のため。それをわかっていて、連を止められなかった守屋の葛藤。もう、このへんから私の涙腺はあやしかったです。そして、守屋が次期部長に新二を指名したあたりで、決壊。引退のとこなんて、わずか数行なのに、ボロボロ。
 あとはもう、何回泣いたかわかりません。
 みっちゃんの過去の話。
 若菜が磐田からの帰りに、新二に「神谷くんのほうが、すごい」と言うところ。
 もちろん、この巻のクライマックス、新二が自分を見失って、そこから戻ってくるところは、もう大泣き。駅伝の応援に駆けつけた新二が気づいたこと。

「走ることが、等しく、尊いのだ。短距離でも長距離でも、タイムにも順位にもかかわらず、限界にチャレンジして走ることが、単純に尊い。」

 もう、これを読んだ時には、涙がとまりませんでした。実感として、わかるのです、これは。走るのが遅くても、一生懸命練習している子とか、私はたくさん見てるので。そういう姿に感動して泣きそうになったことも何度もあるし、彼らに勇気づけられることも多いので。
 自分のそういう経験に裏打ちされて、この巻には激しく心揺さぶられました。
 この巻のサブタイトル「ヨウイ」通り、まさに新二と連にとっての「ヨウイ」の1年でした。「ドン」で思いっきり走り出す彼らと出会うのが楽しみです。

2006年12月16日 (土)

一瞬の風になれ1 イチニツイテ

1057「一瞬の風になれ1 イチニツイテ」佐藤多佳子   講談社   ★★★★

新二の兄は、高校サッカーのスター選手。兄に憧れ、サッカーを続けていた新二だったが、高校入学と同時に、サッカーをやめてしまう。
 一方、幼なじみの連は、中学時代に全国で名を残したスプリンター。しかし、中学三年の時に、ふいと走るのをやめてしまった。
 春野台高校に進んだ二人は、それぞれのなりゆきで陸上部に入り、4×100mリレー(4継)の選手になる。天賦の才能をもつ連と、それを追う新二。二人のレースが今始まった。

 読む前から「これは絶対好きな話だ」と確信していました(笑)佐藤多佳子さんのブログを読んで、丹念に時間をかけて取材をされて書かれた話だと知り、非常に期待していました。そして、期待に違わぬおもしろさでした。
 「偉大な」兄をもった新二が主人公。その兄を尊敬しつつも、自分の限界を感じて苦しくなって、サッカーから陸上へ転向した新二。
 ところが。まるでそれが運命であるかのように、新二の周りには、すごいやつらがゾロゾロ。練習嫌いだけど美しいフォームをもつ連はもちろんのこと、鷲谷高校の仙波とか高梨とか・・・。彼らに圧倒されながらも、彼らに追いつきたくて、追い越したくて、新二は走るのです。
 新二の語りで展開する物語は、明るく軽快です。新二は新二なりに、けっこうグルグルしているのだけど、突き抜けたような明るさがあって、気持ちいいです。熱い新二と、クールな連、緩衝材のような根岸のバランスもとってもいい。
 エピソードの一つ一つは、わりとベタだと思うのだけど、まっすぐな気持ちで書かれている感じで、こちらも素直に読めました。
 何より、100mフラットレースだけでなく、4継というリレーを題材にしたのが非常にうまい!と思いましたね。連みたいなタイプでも「走りたい」と思う、4継の魅力。2巻でどう展開するのか楽しみです。

熊18号 > 面白いですよね~、コレ。今、僕の中で陸上小説ブームで、『風が強く吹いている』や『RUN!RUN!RUN!』なども読みました。
今、図書館から借りて二部を読み終わったんですが、三部が借りれるのは二週間後くらいという状況らしく、失意のどん底にいます…。速く読みたい…。もっと速く走れるようになりたい…。 (2006/12/17 00:37)
ざしきぼっこ > わたしも昨日読み終わりました。私は足が遅いので風のように走るっていうのは実感沸かないですが。仰るとおり、チームプレーのリレーっていう題材が生きてますね。続編が楽しみです。 (2006/12/17 12:23)
まゆ > 熊18号さん、女性作家の描く陸上小説として3作品セットで新聞でも取り上げられたみたいですね。「風が~」もとてもよかったのですが、これまた素敵な物語です。私は三冊一気読みするために、買っちゃいましたよ。 (2006/12/17 18:44)
まゆ > ざしきぼっこさん、私も実感わかないです。でも、うちの特設陸上部のリーダー、今年の目標が「風になる」でした(笑)そういう感覚なんでしょうね~。 (2006/12/17 18:46)
青子 > まゆさん、私も新聞の広告見ました。それぞれの巻を「イチニツイテ」「ヨウイ」「ドン」って上手いつけ方だなと思いました。↑は満点ですね。運動神経は0に近い私なので手を出しかねてますが、ちょっと惹かれます。 (2006/12/17 20:24)
まゆ > 青子さん、大変失礼しました。レスしてくださってたのに、見落としてました。ごめんなさい。
この話、走るの苦手な人でもオッケーですよ。かく言う私もその一人です。佐藤さんがものすごく時間をかけて丁寧に取材されているので、わかりやすいです。 (2006/12/23 19:39)
青子 > いえいえ、ちょっと遅いレスだったので、こちらこそ失礼しました。もう最後まで読まれたのですね。熊18号さんやイギーさんの100人待ちなど聞くと、すごい人気作品ですね。まゆさんも満点だし、図書館派の私はちょっと辛いです。 (2006/12/23 23:48)
まゆ > 青子さん、でも、これは待ってでも読む価値があると思いますよ~。おすすめします。 (2006/12/24 21:40)
青子 > まゆさんがそうおっしゃるなら、気長に待ってみようかなぁ。来年から、区の図書館がインターネット予約を始めるので、待ち人数が把握できるようになるようなんです。さっそく、予約してみますね。さて、何人待ちでしょうね。 (2006/12/25 19:37)
まゆ > 青子さんの感想、気長に待ってますね(笑) (2006/12/26 21:50)

2006年7月 3日 (月)

スローモーション

991「スローモーション」佐藤多佳子   ピュアフル文庫   ★★★

 高校1年の千佐は、ワルくもないけどいい子でもない。6歳上で半分血のつながったニイちゃんは、元不良で今は無職でふらふらしてる。教師の父と、専業主婦の母と、門限8時の家庭。
 気になるのは、同級生でいつもスローな及川周子。みんなの輪からはずれている彼女には、不穏なうわさがあって・・・。

 解説が「空色勾玉」の荻原規子さんというところが豪華ですね。
 これを読んで、全編に漂う雰囲気が何かに似ている・・・と思っていたのですが、荻原さんの解説を読んで納得しました。紡木たく「ホットロード」の世界です。ワルいけれど、根は優しくて、寂しがり屋で・・・という、あの世界。なんとも言えない透明感と、せつなさ。道理で、なつかしい気がしたはず。
 かといって、感傷的すぎることなく、それぞれの登場人物が千佐の目を通して描き出されていきます。最後も安易な大団円にせず、でもほんの少し何かが動き出した感じで終わるところが素敵です。
 佐藤多佳子初期作品ということですが、「サマータイム」とはまたちょっと趣が異なります。

ほっそ > こんにちは。この本とは全然関係ない話ですが、私まゆさんが999冊目または1000冊目に、どんな本をのせるかずっと前から楽しみにしているのです(*^_^*)
991冊目ということで、いよいよカウントダウン!待ってま~す。 (2006/07/06 08:38)
まゆ > ほっそさん、お気づきでしたか(笑)最近体調良くなくて、なかなか読むペースがあがらないのですが、とりあえずカウントダウンに入りました。1000冊目、何になるか、楽しみにしててくださいね(というほどのことではないけれど)。 (2006/07/07 19:46)

2004年9月23日 (木)

神様がくれた指

612「神様がくれた指」佐藤多佳子   新潮文庫   ★★★★★

 1年2ヶ月ぶりに刑務所から出てきたスリの辻。ギャンブルがやめられない占い師の昼間。偶然の出会いから同居することになった二人は、ある事件に否応なしに巻き込まれていく。

 昨日からちょっといろいろありまして、少々落ち込んでいます。そういう時に、こういうのを読むのはまずかったなあ、と。とっても心に響いてしまって、泣けてしまいました。
 プロのスリとして誇りはもっているものの、その稼業ゆえに幼なじみの咲への想いを認められない辻。家族との埋められない溝を抱え、弁護士になることをかたくなに拒否し、占い師として生きる昼間。この「ふらふら」している二人に共感したり、反発したり。読みながらこちらの感情がめまぐるしく変わりました。
 初めは辻に共感し、途中からは占い師として悩む昼間に共感し・・・。彼らが「ふらふら」せずにはいられない気持ちもわかる気がするし、そういう者どうしが信頼しあえる関係ってのに憧れたり。
 特に、弱っている今の私には、昼間の(というか、マルチェラのと言うべきか)の言葉が、やけにしみてきました。
 エピローグは秀逸ですね。このラストシーン、すごく好きです。

さくら > 辻と昼間のつながりにジーンときました。ドキドキ感もあり深い部分もあり、いいお話ですね~。 (2004/09/24 09:30)
まゆ > スリと占い師。めちゃくちゃうさんくさい二人なんだけど、この関わり方がいいですよね。佐藤多佳子さん読むの、これで3作目ですが、今のとこハズレなしです。 (2004/09/24 19:32)

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